近づかんとって (2023 remastered)
2020年、世界がコロナ禍で混沌とするなか発表した『近づかんとって』をリマスタリング。
Donna Summer『Hot Stuff』からインスパイアされたメロディとギターに、あえてそれとは真逆の「心も体も閉ざした苛立ち」を載せて世情への嘆きを表現した。隔たりから生まれる偏見への行き場のない想いを込めている。
リマスタリングではよりサエ子の声にフォーカスをあて、ギターの輪郭を鮮明に。また、トラックの音に広がりを持たせ、より没入感のある仕上がりにしている。近視のサエ子的エレクトロニック・ロック歌謡。
MsMe creative studio
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本作『近づかんとって』は、コロナ禍で世界中の人々が自宅軟禁生活を送っていた2020年5月に発表した楽曲です。どうして3年たった今、リマスタリングをして再度発表するのか。ここで少し語らせていただきます。
この曲のデモができたのは遡ること4年前、2019年でした。そのころ抱えていた表現者としての「生きづらさ」を歌詞に詰め込み、サエ子らしくない「感情的」な歌唱を狙いました。紆余曲折を経て世に出せるタイミングが2020年5月になったのは偶然でした。当時の世の中は「ソーシャルディスタンス全盛期」です。図らずもタイトルの「近づかんとって」そのものの社会になっていました。
思い入れがあるのでタイトルの変更はしたくない。とはいえ、コロナ禍で社会が自粛傾向になっている最中、私としても落ち込むことが多くなっており、この曲をリリースすべきか悩みました。皮肉にも、この曲で怒りを向けていた「表現者としての生きづらさ」である「不謹慎」という概念に囚われてしまっていたのです。
結局、2020年の時点では宣伝をせず、ひっそりとリリースするに留めました。そしてそのことをずっと後悔してきました。なぜなら、川内啓史さんの攻めたベース、木下卓郎さんの獣っぽいギター、こおろぎさんのドロドロしたアングラアレンジ、原裕之さんのエンジニアリング…全てが最高だからです。
今回、私のそんな想いを発売当時の2020年にレコーディング & マスタリングを担当してくださったエンジニアの原裕之さんが受け止めてくださり、当時より一層広がりを持たせてリマスタリングして下さいました。2023年版ではボーカルを一層際立たせ、さらにこの楽曲の “感情表現” の要であるギターに広がりと深みを足しています。発売当時に聴いてくださった方も、今回はじめて聴く方も、ぜひよろしくお願いいたします。
近視のサエ子 2023年5月