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RADIOHEAD について

2020年6月21日 21:21

RADIOHEAD THE BENDS

たまに現代日本に生きる若者と我々のようないい歳した中年とどっちが幸せか考える時がある。

Spotifyで24時間自由に音楽聴ける環境は幸福そのものだが、CDが擦り切れる程何度も音楽を聴き続けた時間もそんなに悪くなかったと思う。ある程度時間が経過すると、つまるところ同じ時間をどう過ごしたかという記憶の中の話でしかなくなってしまう。その時間にどれだけその音楽へ自分が心動かされたかどうか。果たして自分にとってどっちが良かった記憶だったのか。

昔だ。CDを擦り切れる程、音楽を聴いてたあの頃の方が音楽に心動かされていた。何故だろうか。簡単だ。何もかもが満たされていなかったから。すべてが明るみになる世界よりただただ暗闇の世界の方が私たちは喜びや恐怖を感じることができる。我々の感覚世界は刺激に満たされてもそれはそれで退屈なものとなる。何もかもがリアルな現実よりも決して有り得ない漫画の世界の方が感動を呼び起こされるように。

一切は心だ。外の世界より人間の内的世界の方が刺激的であり得ないくらい狂っていると思う。音楽も同じだ。

RADIOHEAD の2ndアルバムを聴いてるとありそうであり得ない世界に連れて行かれてしまう瞬間がある。それはやっぱりCDを擦り切れるほど聴くことしかできなかったあの時代しか存在しえない逆説的な幸福だったと思う。不自由さからしか得られない自由さについて。

人間の生はすべて逆説的だ。そもそも言語自体が逆説的なものだと思う。もうすぐ我々の新しい音楽をレコーディングする日が近づきつつある。そこで何が起こるか。おそらく何も起こらないだろう。願わくば遡行しかできない我々が偶然の神にせめてもの慈悲があらんことを。すべてが裏切られますように。

 

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