YouTubeの効果的な活用法

コラム

アーティストのYouTubeチャンネルの登録者を増やしたり、動画の再生数を増やしたりしたいと考えた時に、まずは何をしたら良いのか分からないことも多いかと思います。
YouTubeは、MVなどの映像を公開するだけの一方通行なプラットフォームではありません。
アーティスト/リスナーの双方向のコミュニケーションが可能なプラットフォームに日々進化しており、ファンベースの成長や再生数の増加を行ううえで重要な役割を担っています。今回は、 双方向のコミュニケーションにおいてYouTube上で行うべき大切なことを紹介します。その他、YouTubeチャンネルの収益化に関しても解説します。

基礎的なことをやろう

概要欄にスマートリンクを入れて、MVを気に入ってくれた人がサブスクで聴きやすいようにしよう

MVの概要欄3行目以内に楽曲のスマートリンクを配置することで、「もっと見る」ボタンを押さなくてもスマートリンクをクリックできます。(「もっと見る」ボタンを押して説明文を読むリスナーは多くはないため、3行目以内にURLを入れることが重要です)
MVを気に入ってくれたリスナーに他のサブスクやプラットフォームにも訪問してもらうために、上記設定を行いましょう。

以下のフォーマットを参考に入力してください。
  • 【タイトル】
    アーティスト名「楽曲名」Official Music Video
  • 【概要欄】
    ダウンロード/ストリーミング配信はこちら:(※SHARE LINK!等を記載)
    ※頭の3行以内にストリーミングへのLINKを入れると効果的。
  • Twitter:
  • lyric:
  •               

  • credit:
  •               

  • その他SNSやHP、物販リンク等:
  •               

  • ハッシュタグ(アーティスト名や楽曲名)

動画についたコメントに反応しよう

MVなどについたコメントに対して、ハートボタンを押す/返信をしましょう。
反応をもらったリスナーにはYouTubeから通知が行くため、リスナーは高確率でMVを再訪してくれます。
結果としてMVの再生数もアップしますのでぜひ行いましょう。

マルチランゲージ対応をしよう

MVには、自身のファンがいる国の言語を字幕で入れるようにしましょう。
多言語の字幕を入れるのが中々難しい場合は、せめて英語だけでも入れておきたいところです。

なお、英語歌詞はざっくりとした内容のものであればDeepL翻訳を使用することで効率的に作成可能です(精度は完璧ではありませんし、歌詞のニュアンスごと翻訳してくれるわけではありませんのでチェック/修正は必要です)。

多言語対応の字幕があることで歌詞の内容を理解できるため、海外リスナーに楽曲を好きになってもらいやすいというメリットがあります。

また、アーティスト名なども英語の名義を表記しておくことで検索結果に自身の動画が表示されやすくなり、再生数も獲得しやすくなります。動画のタグ(概要欄のハッシュタグではなく、検索にヒットさせるためのタグ)にもアーティスト名の英語表記、楽曲の英語表記を入れましょう。楽曲の英語表記はディストリビューターにデリバリーした際に入力した英語表記を入れてください。

ローマ字表記も入れよう

MVの字幕や、またはコメント欄のトップにピン留めする形で歌詞のローマ字表記も追加しましょう。

ローマ字表記を入れておくことで、海外リスナーがYouTube ShortsやTikTokなどで「歌ってみた」を投稿することが可能になるため、UGCの増加に繋げることができます。

歌詞のローマ字化については、Chat GPTを搭載したAIチャットくんに歌詞のローマ字化を依頼するだけで簡単に変換可能ですので、ぜひ活用してみてください。
※AIチャットくんをLINEで友だち追加し、「以下の歌詞をローマ字表記にしてください」と打ち込めばローマ字を出してくれます。

YouTube Shortsを活用しよう

YouTube Shortsとは、YouTubeが新しく取り組んでいる動画フォーマットのことです。

15秒~60秒程度の短い動画で視聴者に対しいかに端的にチャンネルの魅力を訴求するかが問われますが、
Shortsをうまく活用すれば、まだフォロワーなどが少ないチャンネルからの発信でも多くの再生を獲得することができるため、力を入れて欲しい項目です。ミュージックビデオを公開した際やライブ映像を録画した際は積極的に9:16のショート動画を作成し投稿していきましょう。

(YouTube Shortsの詳細などについては、追ってまたコラムを執筆させていただきます。)

YouTubeのコミュニティを活用しよう

YouTubeコミュニティとは、自身のチャンネル上に画像や動画をテキストを交えて投稿できるページのことで、Facebookのフィードと似ています。

チャンネルからのちょっとしたお知らせや、Q&A、また視聴者投票などさまざまな機能を兼ね備えています。

MVなどをYouTubeチャンネルで公開した後に、時間差でコミュニティにもMVを投稿することで再度流入を促すこともできます。
「MV ○万回再生突破!」といったお知らせなどを投稿したり、リスナーとの細かいコミュニケーションに役立つので積極的に活用しましょう。

自身のチャンネルを公式アーティストチャンネル化しよう

公式アーティストチャンネルとは、YouTubeが定めた要件を満たしたアーティストの公式なチャンネルのことで、アーティスト側にもリスナー側にも大きなメリットがあります。

アーティストの公式なMVが複数のチャンネルからアップロードされている場合、公式アーティストチャンネル上で多くのコンテンツをまとめて表示できますしトピックチャンネルなど複数のチャンネルの登録者を統合することも出来ます。

また、アーティストは公式アーティストチャンネルのアナリティクスを利用できるようになるので統合された登録者のデータを一括で扱えるようになります。
トップページのカスタマイズなども細かくできる為、リスナーがMVにアクセスしやすい導線でコンテンツを配置するなども可能です。

自身の楽曲配信を依頼しているディストリビューターに公式アーティストチャンネル化の依頼をすれば多くの場合対応してくれるので、ぜひ対応して欲しい項目です。詳細は以下をご確認ください。

■公式アーティスト チャンネルについて
https://support.google.com/youtube/answer/7336634

※BIG UP!ではお問い合わせフォームにてOAC化の申請を受け付けております。

定期的にトラフィックソースを確認しよう

YouTube Studioのアナリティクスから、各動画の再生数やトラフィックソースを定期的に確認するようにしましょう。
トラフィックソースとは、アーティストのチャンネルに訪問するリスナーが何を経由してチャンネルに訪問しているのかを把握できる項目で、「視聴者があなたを見つけた方法」を指します。
YouTubeの関連動画やショートフィード、ブラウジング機能経由で再生数が伸びている場合はYouTubeのアルゴリズムによって伸びている可能性が高く、YouTube検索や「外部」経由で伸びている場合はテレビやTikTokといったYouTubeの外で何かしらのバズが発生した可能性があります。
何かしらのスパイク(急激な再生数の増加)が起こっている際にどんな要因でバズが起こったのか、分析することで施策の立案に役立ちます。
基本的にスパイクが発生したタイミングはアーティストが認知を広めるチャンスタイムですので、スパイクが収束してしまう前に検知し、スパイクをブーストさせるための手を打ちましょう。

Content IDについて理解しよう

Content IDとは何か?

Content IDはYouTubeにおける動画やチャンネルに割り当てられた識別子、及び自動コンテンツ識別システムのことで、著作権で保護されたYouTube上のコンテンツを簡単に識別・管理することができます。

Content IDがあることで、著作権の管理者(≒アーティスト本人やレーベルなど)は他のクリエイターが楽曲を使用した場合における収益を得ることが可能になります。また、権利元にとって望ましくない動画を視聴できないようにブロックすることも可能です。

■参考:Content ID の仕組み
https://support.google.com/youtube/answer/2797370

Content ID利用のメリット/デメリットは?

Content IDを利用すると、下記のようなメリット/デメリットがあります。

【メリット】
・YouTube内におけるアーティストの作品の利用状況をモニタリングでき、著作権侵害の防止/コンテンツを守ることができる
・アーティストのコンテンツを使用している動画(=UGC)から、収益を得ることができる

【デメリット】
・アーティスト本人が自身の音源を使用した動画を公開していても、Content IDに感知され楽曲使用に関して申し立てが来る
→一般的に楽曲のContent IDの管理を行っているのはレコード会社/音楽出版社/ディストリビューターです(ディストリビューターが管理している場合が多いです)。
管理者がContent IDの申し立て申請をしていれば音源使用者がアーティスト本人であろうとContent IDのシステムに感知され、申し立てが来ることになります。また、Content IDの管理を委託している会社には手数料を支払う必要があるため、自身の楽曲を使用して投稿した自身の動画も管理手数料を支払う対象となります。

ただし、アーティストが管理者に異議申し立てを行い、それを承認してもらえればContent IDの管理対象から外すことができます。

どういうときにContent IDを使うべき?

アーティスト自身の楽曲が多くの動画に使用(UGCの発生)されていて、それらを収益化したいときに有効です。
ただ、この収益化もUGCが発生しているからといって一概に収益化をすべきというわけではありません。
判断が難しい項目ですので、次項で詳しく説明します。

Content IDを利用する際に注意すべきこと

前述の通り、Content IDの管理をディストリビューターに委託するにあたっては手数料が引かれます。
これは自身の楽曲についても手数料の対象になります。なので、UGCが全く発生していないアーティストの場合、管理を委託せず、自身のチャンネルを収益化させて、YouTube AdSense経由で広告費を受け取るか、自身でアップロードした動画は異議申し立てを行うのをお勧めします。

■参考:YouTube のチャンネル収益化ポリシー
https://support.google.com/youtube/answer/72851

このように、Content IDの管理などについては中々判断が難しく、アーティストごとの置かれている状況により最適な活用法が異なります。


アーティストがYouTubeを有効活用する方法についてお話しました。
ただただMVを公開して再生数を伸ばしていく、ということ以外にも、戦略的に活用していくことでよりファンベースの構築やチャンネルの活性化に役立ちます。

DIYアーティストには少し敷居が高く感じられる項目もあるとは思いますが、ひとつひとつできるところから取り入れてみてください。

<金野和磨 プロフィール>

Gerbera Music Agency株式会社 代表取締役。日本大学卒業後、人材サービス会社、音楽ITサービス会社、デジタルマーケティング会社などを経て、音楽業界特化型のインターネット広告代理店として同社を設立。Instagram広告やYouTube広告、TikTok広告をはじめとしたインターネット広告全般を扱い、レコード会社/音楽事務所など170社超の広告プロモーションをサポートしている。最新のアドテクロジーを音楽マーケティングに落とし込めることが強み。
Spotifyプレイリストメディア「Pluto」も運営しています。

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