Instagramの効果的な活用方法 〜ショート動画を通じてファンベースを構築する〜

コラム

2010年に登場して以降、さまざまな変化を遂げながら進化してきたInstagram。
今や、一般企業の多くがPR/広報活動のためにInstagramアカウントを持っている時代になってきました。

アーティストのPR活動にも欠かせない存在となりつつあるInstagramですが、具体的にInstagramを使ってどのようにリスナーとコミュニケーションをとったりPRに活かせば良いのでしょうか?
本記事では、最近のInstagramの動向も交えて効果的な活用方法を解説していきます。

Instagram活用で重要となる「リール(Reels)」とは?

これからInstagramを活用していくにあたって、まず取り入れて欲しいのが「リール」です。
リールとは、Instagramが2020年に立ち上げた新しい動画フォーマットのことです。
それまでもストーリーズで動画形式のコンテンツを作成することは可能でしたが、リールはより撮影機能が充実しているため手軽にクリエイティブなコンテンツを作成することが可能です。

リールの主な特徴は以下となります。
・最長90秒の動画フォーマット
・撮影機能が充実、BGMやARエフェクトなども使用できる
・発見タブやフィードなど様々なところで露出できるため、フォロワー外のユーザーにも投稿をみてもらうことができる

参考:https://about.fb.com/ja/news/2020/08/reels/

よくストーリーズと比較されるリールですが、ストーリーズは基本的にフォロワーにしか表示されない、また24時間で消えてしまうコンテンツなので、よりクローズドなコミュニケーションに向いていると言えます。
反面、リールは前述の通り露出面が多いため、より広域のコミュニケーションに向いていると言えるでしょう。

なぜリールが重要なのか?

TikTokが台頭し、若い世代(特にZ世代と呼ばれる世代)はTikTokからあらゆる情報を得るようになってきました。
音楽、美容、グルメなどなど…。
TechCrunch社の調査によると、若い世代がSNSに費やす時間の中でも、TikTokの割合が年々増加しているそうです。
Instagramは、そういった可処分時間の奪い合いにおいてTikTokを打倒しなければいけない状況下におり、リールなど新しいサービスをローンチすることでユーザーの活性化を図っています。

Metaの創業者であるマーク・ザッカーバーグ氏も、Facebookの投稿にて「Instagramはこれからリール等に投資していくこと」を示唆する内容の投稿をしています。

この投稿によれば、FacebookとInstagramにおいてユーザーがリール投稿の視聴などに費やした時間が30%以上増加したとあり、
リールの成長がFacebookとInstagramにおいて全体のエンゲージメントを促進しているとのこと。
また、フィード投稿とリール投稿のエンゲージメントについて比較すると、フィードは減少傾向、反対にリールは上昇傾向にあるようです。

グラフ:Later Blog,How Reels Have Impacted Feed Post Performance
https://later.com/blog/instagram-reels-engagement/(参照:2022-09-01)より引用し一部改変

以上のことから、ユーザー側もInstagramを活用していく上でMetaが注力している「リールという波」に乗った方が良いと言えるでしょう。

リールはフィードやストーリーズよりも表示面が多い(発見タブやリールタブ、フィード、プロフィールページと4つの表示面があり、ストーリーズやフィードよりも表示面が多い)ためフォロワー外のユーザーなどにも投稿を届けることができますので、音楽活動の宣伝をより多くの人に見てもらうには絶好の場と言えます。

リール投稿のアルゴリズム

Instagramが公式に発表しているアルゴリズムによると、リールのアルゴリズムは
・クリエイティブツールを使用している
・9:16の縦長の動画を使用している
・Instagramのライブラリにある音源/または自身のオリジナル音源を使用している
などの投稿を優遇するとのこと。

また、@creatorsの投稿(Instagramのクリエイター向けの公式アカウント)によると、ユーザーのリール欄には
・誰の投稿を多く見たり、いいねやコメントをしているか
・どのようなタイプのコンテンツに関する動画を多く見ているか
・投稿を見る時のスクロールの速さはどうか(≒スクロールせずきちんと投稿内容を見ていると、そのコンテンツを好んでいると判断される)
などの複数のシグナルによってユーザー毎に適した投稿を表示させているとのこと。

以上の点を踏まえ、
リール上のエフェクト機能を多く使用した9:16の動画で、音源を使用していて、
より多くの人にいいねやコメントをしてもらえたり最後まで視聴してもらえることがリールのアルゴリズム上良いと言えるでしょう。

音楽のPRなどを目的としてアーティストがInstagramを使う以上、一般ユーザーが日常の投稿などで多用しているエフェクト機能などを使用するのは少し難易度が高いかも知れませんが、9:16の動画に自身の音源を使用する、といったところまでなら気軽に行えるのではないでしょうか。

↓自身の音源を使用している

また、SNSマーケティング支援を行っているLater社のブログでは、リール投稿において以下の点にも注意すると良いとのことです。
・週に3-4回投稿する
・ハッシュタグをつける(3-5個が良い)
・アピールしたいURL(新譜やライブの情報などが載っているサイトなど)をプロフィールページに貼り、URLに飛んでもらえるような文言と共にリールの投稿文に記載する
・リール上でトレンドになっている投稿(いわゆるミーム)を自身のアカウントでも投稿する

↓ハッシュタグを使用している

↓投稿文にプロフィールページにあるURLに飛ぶよう誘導する文言が含まれている

全てのポイントを押さえて投稿していくのは難易度が高いですが、まずは更新頻度やハッシュタグなどから取り入れていくと良いかと思います。

リール動画のフィード/ストーリーズへの共有をしよう

リールは、通常フィードとは分けて扱われておりアカウントの投稿一覧でもフィードタブ/リールタブとあるのですが、リール投稿時に同時にフィードにも投稿することが可能です。

また、ストーリーズへ転用することも可能なのでリール投稿時にフィード/ストーリーズどちらにも投稿するようにしましょう。
リールで発信した内容を再び発信することで新たな流入を促せますし、フォロワーのタイムライン上で流れてしまったりなどを防止することができます。

↓リール投稿時に出てくる下記の画面で、フィードにも投稿が可能です。(「フィードでもシェア」はデフォルトでチェックが入っています)

↓ストーリーズへの投稿は下記の通りで、リール投稿の右側にある飛行機マークを押せばシェアできる画面へと進んでいきます。

プロフィールページのリンクマネジメント

プロフィールページは、アカウントの顔となるページです。
掲載できる情報は限られますが、ここを充実させておくことでよりフォロワーなどプロフィールページに訪問してくれた人とエンゲージメントを高めることができます。
lit.linkや、Linkfireなどスマートリンクを手軽に作成できるツールは沢山ありますので、アーティストの各種DSP(Spotify、Apple Music、LINE MUSICなどなど)、YouTube、TwitterなどのSNS、色々な情報を取りまとめたものをプロフィールページに配置しておくと良いでしょう。
配置しておくことで、DSPやYouTubeなどの再生も促すことができます。

(スマートリンクの活用については、追ってまたコラムを執筆させていただきます。)

また、スマートリンク以外にもプロフィール文に入れておきたい要素として
・自分を形容する名詞(シンガー、トラックメイカー、ダンスボーカルグループ、など)
・音楽のジャンル
・直近でリリースされた/される予定の新譜や、出演予定のイベント/ライブなど
も入れておくと良いでしょう。

初めてプロフィールを見たユーザーにも、パッと見た一瞬でなるべく多くの情報を与えられるようにしておくことが重要です。
アイコンなどもできるだけお顔やアーティストロゴを大きく写したものにしましょう。
また、アカウント名をアーティスト名と同一にしておくことで認識しやすくなりますのでこちらも行っておきましょう。

ストーリーズの定期投稿をしよう

リールと同様に、ストーリーズも定期的に投稿するようにしましょう。
理由としては、ストーリーズにはリールにはない機能としてURLを貼り付けて楽曲のMVやスマートリンクに送客することが可能なためです。
(リールや通常のフィード投稿ではURLを貼り付けてもクリックすることができません)
ですので、MVやDSPなどの各種URLをストーリーズ内に貼り付け、積極的に送客を促していくと良いでしょう。

また、@creators(Instagramのクリエイター向けの公式アカウント)もリールやストーリーズなど様々なフォーマットの投稿をすることでより新しいフォロワーの獲得やリーチの拡大につながると発表していますので、リールに重きを置きつつもストーリーズも投稿し外部送客&アカウントの評価向上も狙っていくと良いでしょう。

↓ストーリーズ投稿時、以下のリンク欄からURLを貼り付けることができます。

↓ハッシュタグや「Spotifyで再生」などの導線も効果的です。
(「Spotifyで再生」はInstagram上ではなくSpotifyのアプリ上から楽曲をストーリーズにシェアする必要があります)

ストーリーズのハイライト化をしよう

ストーリーズは24時間で消えてしまうコンテンツですが、ハイライト化してプロフィールページに展開することが可能です。

大事なお知らせや周知を促したい内容のストーリーズなどは、ハイライト化してプロフィールページに置いておくと良いでしょう。

ハイライト化することでInstagram上のコンテンツ量も確保できますし、過去に旧譜の宣伝などを行ったストーリーズなどを置いておくことで旧譜への導線も残しておくことができます。

アカウント全体で行うべき投稿のポイント

リールやストーリーズなどをアーティストとしてどう活用していくべきかについて説明してきましたが、Instagramのアカウント全体としてアルゴリズムに優遇してもらうためにはどうすべきか?という点について触れたいと思います。

Adam Mosseri氏(Instagramの責任者)のブログによると、Instagramでは「フィード・ストーリーズ」、「リール」、「発見タブ」とアルゴリズムを分けているとのこと。
区分けされたアルゴリズムの中でも、いくつか共通点がありますのでそれらをアカウント全体として抑えておくと良いでしょう。
ポイントとしては、

・コミュニティガイドラインに沿った投稿
・インタラクション性
・アクションの獲得
・最後まで視聴してもらえること
・Instagramの編集機能をなるべく多く使用すること

などが挙げられます。
具体的にひとつづつ解説していきます。

コミュニティガイドラインに沿った投稿

コミュニティガイドラインは、Instagram上の全てのコンテンツに適用されますので確実に抑えておきたいポイントです。
他人の作品/投稿などを無断で使用したり、犯罪を煽るような投稿、また特定の誰かを攻撃するような投稿などは削除される可能性があります。
アーティストがInstagramに投稿する内容の範囲ではコミュニティガイドラインに抵触するものは殆どないかと思いますが、念の為把握だけはしておいた方が良いでしょう。

インタラクション性

アーティスト活動について一方的に発信するだけではなく、コメント欄などでファンからのコメントを返したりいいねをしたり、相互のコミュニケーションを意識すると良いでしょう。
Instagramのアルゴリズムは相互のコミュニケーションを行っているアカウントの投稿を優位に表示してくれるようになります。
この点においては、ストーリーズで「お題」「質問」「アンケート」などのスタンプを活用するのも良いでしょう。
また、ファンの投稿をリポストしたりなども取り入れやすいかと思います。

↓ファンの投稿をリポストしている

↓ファンからのコメントに丁寧に返事をしている

アクションの獲得

リールのアルゴリズム解説でも少し触れましたが、投稿を見たユーザーから、いかに多くのいいねやコメント、保存やシェアなどのアクションを行ってもらえるかも重要です。
投稿内にコメントやシェアを促すような文章を入れてみる、などが取り入れやすいかと思います。

最後まで視聴してもらえること

リールやストーリーズであれば最後まで視聴してもらえること、フィードであれば長い時間滞在してもらえること(一つの投稿に対し長い時間ユーザーが滞在すれば、フィード投稿の内容を全て読んだ/見たとアルゴリズムが判断するため)も重要です。

”最後まで”と言う観点からすると、リールやストーリーズは15秒程度の長すぎない動画の方が最後まで視聴してもらえる可能性が高いですし、フィードの場合はパッと見の印象で投稿を見るのが面倒と感じないものの方が良いので、文字数が多すぎるなどは避けた方が良いと言えるでしょう。

Instagramの編集機能をなるべく多く使用すること

「6.ストーリーズの定期投稿をしよう」でも触れましたが、Instagramはリールやストーリーズ、フィードなど様々な形式のコンテンツを投稿することを推奨しています。
また、これに加えGIFスタンプ、ARエフェクトなどInstagramが用意している様々な編集機能もできるだけ使用した方が良いでしょう。
このような斬新な投稿はアルゴリズムにも良い上にユーザーからも反応がもらえる可能性も上がりますし、インタラクションの面においても良い効果をもたらすでしょう。

NG行為2選

①TikTokウォーターマークの残った動画

TikTokなど、Instagram以外のプラットフォームのウォーターマークがついた動画をリールなどに転用すると、Instagramのアルゴリズムから冷遇され表示回数が減少する仕組みになっているためウォーターマークのついた動画を転用することはやめましょう。

参考:https://www.instagram.com/p/CLFMSunBRX1/

②過剰ないいね/フォローをしにいく(いいね/フォロー巡り)

フォロワーを増やしたり、フォロワー以外の人とのエンゲージメントを高めるために行うことの多いいわゆる「いいね/フォロー巡り」ですが、あまり過剰に「いいね/フォロー」をするとアカウントに利用制限がかかってしまいます。Instagram公式ガイドラインにおいても、下記の通り注意喚起されています。

  • 「いいね!」、フォロー、シェアを人為的に集めたり、同じコメントやコンテンツを繰り返し投稿したり、利用者の同意を得ずに商業目的で繰り返し連絡したりしないでください。スパムのない環境を維持しましょう。

上記の通り、過剰ないいね/フォロー巡りはInstagramのシステムにスパムだと判断されかねませんのでやめましょう。


<金野和磨 プロフィール>

Gerbera Music Agency株式会社 代表取締役。日本大学卒業後、人材サービス会社、音楽ITサービス会社、デジタルマーケティング会社などを経て、音楽業界特化型のインターネット広告代理店として同社を設立。Instagram広告やYouTube広告、TikTok広告をはじめとしたインターネット広告全般を扱い、レコード会社/音楽事務所など170社超の広告プロモーションをサポートしている。最新のアドテクロジーを音楽マーケティングに落とし込めることが強み。
Spotifyプレイリストメディア「Pluto」も運営しています。

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