節目を迎えたSAKANAMONが進む道とは
インタビュー
『BIG UP!』を利用している注目アーティストをピックアップして紹介するインタビュー企画。第2回目はSAKANAMONの藤森元生が登場。
ギターボーカルとしてのルーツ
ー今はSAKANAMONとして活躍されている藤森さんが音楽を始めたきっかけは何でしたか?
小5の頃、3つ上の兄が突然CDを買ってきたんです。GLAYの2枚同時発売シングル「誘惑」と「SOUL LOVE」。CDって1枚1,000円くらいするから僕的には「漫画が5冊も買えるのに!」って感覚だったんですけど、兄が「いいんだよ、これが」って。それをなんとなく横で聴いて、音楽というカルチャーを覚え始めました。
そこから音楽ってかっこいいなと思って、お父さんが昔から持っていたアコギを触り始めて、だんだん曲を作り始めるようになりました。
ーギターは誰かに教わったんですか?
いや、昔あった『BANDやろうぜ』とかの雑誌をみながら、見よう見まねでコードを覚えて当時流行っていたゆずとかを弾き語りで練習しながら覚えました。
ー他の楽器ではなくギターを選んだのはお家にギターがあるからという理由ですか?
いや、それよりも兄の影響が大きかったですね。兄がギターを始めたんですよ。兄がやってることがやりたかったんです。
ーバンドはいつ頃始めたんですか?
中学に入ってから、「4人組のバンドがやりたい!」と思って仲間を集めてBUMP OF CHICKENとかを文化祭でやったりしました。他にも色々やりましたけど、主に日本のロックバンドの曲をやってましたね。
ーその中で、ギターボーカルとして憧れのイメージはありましたか?
“前髪が目にかかって見えないのがかっこいい”とか思ってましたね。当時の子供の考えることですから(笑)。高校入ってからはASIAN KUNG-FU GENERATIONとかくるりとか、文系の匂いがする音楽がめちゃくちゃかっこいいなと思って。当時僕も眼鏡かけていたので、彼らにシンパシーを感じてメガネギターロックがかっこいいと思っていました。
ーSAKANAMONはユーモア溢れる歌詞や活動が印象的ですが、そういったユーモアセンスはどういうところからの影響なんでしょうか?
お笑いが好きなので結構みてますね。最初はラーメンズから入って、バナナマン、おぎやはぎ、さまぁ〜ずとか空気が面白いというか、等身大の友達感があって親近感がわく感じがすごく好きなんです。
結成10周年を超えて見えたもの
ーSAKANAMONは2018年で結成10周年を迎えましたが、改めて感じることは何かありましたか
達成感とかはないんですよ。企画やツアーはたくさんやっていますけど、「10年経ったな~」って思うことはあまりなくて、地続きでやっている感じです。
ー振り返ってみて、ターニングポイントとなった時期などありますか?
バンドを始めて1年目の時ですね。前のドラムが抜けたんです。そこで先の事とかふわっとしていたバンドから、ちゃんと売れるためにライブをやって、もっと頑張ろうって目標を定めたんです。そのタイミングでキム(木村)さんが入ってきましたし。
ー木村さん加入後、ずっと同じメンバーで活動してきたと思いますが、藤森さんは他のメンバーをどのように見ていますか?
ベースの森野さんは根が暗くて僕と近いんですよ。でもめちゃくちゃ真面目で、セットリストとかスケジュールとか事務的な役割は彼がやってくれていて。
キム(木村)さんはムードメーカですね。僕らとは逆の人間なんです。根が明るくて、あっけらかんとしているパーティーボーイがいてくれるからライブでも盛り上げられるんだと思います。彼がいてくれるから暗くならないというか。
ーそういうバランスが長くバンドを続ける秘訣なんですね。
そうですね。みんな共通してなんだかんだ気使いなんで、がっつりとした衝突したのもないですし。僕がいうのもなんですけど、みんな大人になりましたね。
ーどの辺りでそれを感じますか?
焦りがなくなった所ですかね。森野さんも昔はすごい子どもだったと思うんですよ。感情の表現がストレートで、デビューする前は焦っていたのか結構ツンツンしていた感じがありました。それに僕を「みんなは俺が引っ張っていく!」みたいな、いわゆるギターボーカル像に当てはめたかったんでしょうけど、僕がポンコツすぎるし、そうなるつもりもなくて。でも、ある時「藤森くんはそのままがいいよ」って諦めてくれて、そこから平和になりました(笑)。
ー「いわゆるギターボーカル像にはなりたくない」ということは、自分の中で違うギターボーカル像があったんですか?
ワンマンバンドぽい感じにはしたくはなかったんですよ。“SAKANAMONといえば藤森元生”というよりは、3人が平等で二人三脚的なバンドにしたくて。逆にいうと「俺についてこいよ」っていうのは苦手で。別にいい事だとは思うのですが、自分自身がやっていると寒いなって思います。
ー10周年でアルバム『・・・』をリリースされましたが、何か節目を感じる部分はありましたか?
いつも通り作ったつもりですが、「テヲフル」は別れの曲だったり、「ロックバンド」はこれからの曲だったりと具体的なテーマの曲なんで10周年だなって感じます。今までそういう曲はなかったんですよ。初めてストレートな曲を書いたというか。今までは具体的なことは歌いたくないタイプだったんです。
でも、バランスなんですよね。ストレートな曲はメジャー1発目では書けなかったと思うし。そういう意味では、10周年だからこそかける曲をかけたかなという気がします。
ー昔だったら恥ずかしくて書けなかったということでしょうか?
そうです。“こんなストレートに言えない!”みたいな。今までの小難しい曲の中に、ストレートな曲が差し色として入るからいいんですよ。
ー曲の作り方は昔と変わりましたか?
昔は“降りて来るの待ち”だったんです。誰からも急かされないし、1シーズンに1曲できればいい方でしたね。でもそんな流暢なこと言ってられない世界だから、今はなんだかんだ作れるようになりました。
ーそれはこれまでの積み重ねの結果ですかね?
それもありますが、やってみたら意外とできたのかもしれないです。ただ、最近はやってみたら出来るは出来るんだけど、グッとこないんですよね。今は自分の中のマンネリとずっと戦っています。
音楽を続けていく為に売れたい
ー今後の目標として、過去のインタビューでは「売れたいね」という話をしていましたが、藤森さんが「売れたい」と思う根底にあるものは何なんでしょうか?
「売れたい」って気持ちは最近になってやっと自覚できるようになったんですよね。前までは言わされている感じもあったというか…。
ーどうして最近変わったんですか?
「大人になって危機感を感じた」って言うとざっくりして面白くない回答になりますが、ずっと好きな音楽ができればどんな環境でもいいけど、それを続けていく為には売れなきゃいけない。ただ現状維持すら難しい世の中だと思うので、現状維持するためにも売れなきゃだめだと思って。
ー上を見ていなければ先には進めない、ということですね。
こんないい曲書いてるのに響いてないな、もっと聴いて欲しいなってずっと思ってますし。もっとSAKANAMONを知って欲しいし、もっといい曲書かなきゃなって。それ聴かせるためにはもっと売れなきゃなって思うんです。
ー1月14日にリリースされた「コウシン」を皮切りに3ヶ月連続シングル配信リリースとなりますが、これはどんな思いからだったのでしょう?
10周年が終わって、これからどうするのかっていう答えがなくて。なので3ヶ月連続配信することで、みなさんのリアクションを確認しながら曲を作っていきたいと思ったんです。実験ですね(笑)。
ーリリースに時間がかからない配信だからこそ、反応を見てすぐに活かせますもんね。
本当はアルバムを出したかったんですけど、どんなアルバムにしようかって迷っていて。そういうことも含めて今回の配信曲の反応を見て、どんなアルバムにするか決めようと思っています。
ー今度やるリクエストツアーもそれと同じ意図ですか?
そうですね。みんながどういうのをやってほしいのか知りたくて、お客さんに丸投げっていう(笑)。
ー今後やってみたいライブの企画などありますか?
ずっと言っているのは、「サカナ」がつくバンドを集めたサカナロックフェスティバルっていうのをやりたいですね。会場は水族館で音に合わせてイルカが飛ぶ!みたいなやつ。
あと僕らはアルバムにほぼ1曲ずつ女性ボーカルをゲストに迎えた曲があるんですけど、その曲限定のライブとかもやってみたいです。あとは居酒屋でライブしたり。サカナクションさんとかとも一緒にやりたいですね。僕らはオープニングアクトでいいんで(笑)。
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