シティポップとロックの融合。The Sunnysが目指す音楽の形とは

インタビュー

『BIG UP!』を利用している注目アーティストをピックアップして紹介するインタビュー企画。第20回目はThe Sunnysが登場。

シンセとギターが織りなす煌めくサウンドと、余白のあるリズム、そして儚い余韻を残す音色。The Sunnysは日々の中で感じるささやかな光を鳴らしている。結成当時は熱いロックサウンドを鳴らしていたというThe Sunnysが、転機を迎えたのは2年前リズム隊のメンバーチェンジがあった頃。現メンバーでグルーヴを形成していく中で、徐々に今の音楽性が開花していったのだろう。新曲の「city lights」はこれまでよりもタイトなリズムとシンプルな構成で、<何か良い事があるような気がして/僕らドキドキしてる>という未来への期待を歌っている。ロックを出発点に、シティポップの要素を取り入れアイデンティティを見出してきた彼らの理想を聞いた。

ロック meets シティポップ

4人はどういう経緯で出会って結成されたんですか。
Shoma Arai

Shoma Arai:

僕とFujimotoが同じ会社に入社する時に、一緒にバンドをやりたいねって話していたのがきっかけです。まあ、彼はダメになってしまったんですけど。

ダメとは?

Eita Fujimoto

Eita Fujimoto:

僕は留年したので、入社できなかったんです。

なるほど(笑)。
Shoma Arai

Shoma Arai:

それでもバンドは一緒にやろうって話して、彼と今いるメンバーとは別のベースとドラムの4人で結成して。2年前にそのふたりが脱退して、今のメンバーになりました。Itoは僕が一個前にやってたバンドで一緒にやっていて、大学の先輩です。Hasegawaはたまたまネットで知り合って、今はちょうどこのメンツでの活動が初期より長くなってきたくらいですね。

皆さんが10代の時に熱狂した音楽はなんですか。
Shoma Arai

Shoma Arai:

僕はフィッシュマンズです。歌詞よりも音に強く惹かれて、熱狂的に聴いていたなと思います。


Eita Fujimoto

Eita Fujimoto:

僕はスピッツですね。唯一オリジナルアルバムを全部ちゃんと追いかけているバンドで、スピッツはいつ聴いても新しい発見があるので凄いなと思います。 80年代のキラキラとしたギターポップを聴いたり、最近流行っているAlvvaysみたいなドリーミーなバンドを聴いた後、もう1回スピッツを聴いてみると、彼らは昔からそういう音をやっていたりするんですよね。

ItoさんとHasegawaさんはどうですか?

Kohei Ito

Kohei Ito:

僕は10代の頃はストレイテナーをめちゃくちゃ聴いていました。

じゃあ最初に惹かれたベーシストはひなっち?

Kohei Ito

Kohei Ito:

そうですね(笑)。高校で初めてバンドを組んだ時、リーダーのヴォーカルからベースをやるならテナーを聴けって言われて。プレイ面でも影響を受けています。

Sho Hasegawa

Sho Hasegawa:

僕はTHE BACK HORNです。

実は男くさいロックが好きなんですね?
Sho Hasegawa

Sho Hasegawa:

今やっている音楽性とは全然違うジャンルを聴いてきたと思います。THE BACK HORNのように歌詞が魂に突き刺さるようなバンドが好きで、ギターもベースもドラムもめちゃめちゃ熱く弾いてる感じがバンドだなって思いました。

The Sunnysのドラマーとして影響を受けているバンドはありますか?
Sho Hasegawa

Sho Hasegawa:

People In The Boxは凄く好きです。細かいニュアンスを出しつつちょっと熱いところがあったり、タイトなグルーヴを基盤にしながら遊んでる感じは参考にしてるかもしれないです。

資料には「シティロックバンド」って書かれてますけど、このキャッチは自覚的に掲げてるものなんですか?
Shoma Arai

Shoma Arai:

「シティポップっぽい感じをやっているけど、精神的にはロックな気がする」っていうのを誰かがTwitterに書いたんですよ。それを丸々パクった感じです(笑)。

つまり、それが凄くしっくりきたということですね?
Shoma Arai

Shoma Arai:

凄くしっくりきましたね。

両方の要素をお聞きしたいんですが、まずシティポップの要素は何を目指して取り入れたものですか。
Shoma Arai

Shoma Arai:

僕のルーツにシティポップの音楽が結構あって、角松敏生や山下達郎は小っちゃい頃から親の影響でずっと聴いていたんです。それで、このメンバーとサポートのキーボードでできる音楽って何かなって考えた時、シティポップのような音楽性なんじゃないかなと思ったんですよね。そういう音楽のほうが聴いてもらいやすくもあるし、自分達もやってて楽しいんじゃないかっていうところがありました。

じゃあ仕上がりにロック感が出てくるのは?

Kohei Ito

Kohei Ito:

一番大きいのはギターですね。うちのバンドの特徴は、Araiが作るメロディがキャッチーで耳に残りやすいのと、Eitaくんのギターがメロディアスでフレーズが強いところだと思っているんですけど、シティポップではあんまりこういうギターは弾かれないのかなと。僕らはその分ボトムがシティポップを意識をしてるというか、それと上音のロックっぽい部分が融合するとこういう音になるのかなと思います。

具体的にイメージしているものはありますか?

Kohei Ito

Kohei Ito:

僕はここ3、4年くらいのシティポップの流れで、ceroはめちゃめちゃ好きで聴いてます。そういうのが流行り出す辺りから黒っぽいベースやジャズも聴くようになったので、どちらかと言うと自分もそういうベースをやりたい気持ちがあります。

このバンドのロック感を担ってるのがギターと言われていましたが、Fujimotoさん自身は自分が出す音をどういうふうに自覚していますか。

Eita Fujimoto

Eita Fujimoto:

僕はそもそも自分が好きな音楽がスピッツやART-SCHOOLだったし、いわゆるシティポップっぽい界隈で聴くのも、シャムキャッツのようなちょっとネオアコっぽいキラっとした感じのバンドだったので。単音でブリッジミュートしてオシャレに弾くよりかは、リバーブがかかっていてメロディアスなギターが好きなんですよね。

なるほど。
Shoma Arai

Shoma Arai:

バンドとしては結構変わってきているんですけど、彼だけは基本的にこの4年間でほぼ変わってないんですよね。

一同:

(笑)

Shoma Arai

Shoma Arai:

初めてこのバンドでスタジオに入った時に、Fujimotoは軸になる人だなって思ったんです。この感じのギターを弾く人って珍しいし、少なくとも自分の周りでは一番いいギターを弾いていたから、この人のリフをバンド全体で推そうっていうの意識が初期は強かったです。それに、実際その時はまだロックの要素が強くて、4人の熱さみたいなところでやっていたので、精神性の面でも結構合ってたんですよね。

もうちょっとギターロックっぽかったと。
Shoma Arai

Shoma Arai:

そうですね。それが今の体制になって、バンドの音が変わってきて。彼もバランスを見れるようになったと思います。

The Sunnysが抱く都市の風景

配信リリースされる「city lights」をはじめとして、このバンドの音楽はロマンチックな瞬間を描いているように思います。ある意味現実の街よりも、理想の都市を歌っているのかなと思いました。
Shoma Arai

Shoma Arai:

なるほど。

華やかなイメージを抱きますが、Araiさんは実際に「シティ」というものをどういうふうに捉えていますか。
Shoma Arai

Shoma Arai:

賑わっているイメージですね。「city lights」で言えば、東京でなくてもいいし海外でもいい、どこにでもある街をイメージして歌っています。そこに明かりを灯したいと思って書きました。

明かり?
Shoma Arai

Shoma Arai:

僕は出身が群馬で、元々地域活性化のようなことをしたくて大学にも通っていたんです。僕は中三の中途半端な時に群馬から神奈川に引っ越してきたんですけど、その時のカルチャーショックが凄かったんですよね。めちゃめちゃ田舎の平日はひとりも道を歩いていないような町から、ド観光地のみなとみらいに来て。もうカルチャーが全然違うんです。群馬に住んでいた頃は3つしか高校を選べなかったのに、横浜だと300校もあって。何この辞書!みたいな(笑)。でも、群馬にだって街はあるし、どこの街も活性化されてたらいいのになって思って。街が楽しい場所であればいいなと思うので、そういう気持ちが若干入っている気はします。

だからAraiさんがシティを書くと、必然的にリアリティよりもちょっと非現実感が出る?
Shoma Arai

Shoma Arai:

観光地にいる外国人みたいなイメージかもしれないです。半分夢を見ているから、見えてないものも見えてるんですね。


Eita Fujimoto

Eita Fujimoto:

彼に限らず、僕らはみんな郊外のほうに住んでいるので、ルーツがないんですよね。最初からシティに住んでいる人にとっては、クラブに行って仲のいい友達と遊んで飲んで帰るみたいなものがシティポップになると思うんですけど、僕らの場合は全員幻想というか、そういう生活をしている人は誰ひとりとしていないので(笑)。そういう人達が音楽としてのシティ感を取り入れた結果、こうなったのかなと思います。

なるほど。音楽的には「city lights」は比較的シンプルな構成で、音数もそんなに詰め込まずに綺麗に音を聴かせる楽曲なのかなと思います。

Kohei Ito

Kohei Ito:

そうですね。『bouquet』っていう3曲入りのEPが、このメンバーで作った初めての音源なんですけど。実はそれと同じくらいの時に「city lights」の原型はできていて。でも、当時はそこから先を作り上げられなかった曲なんです。

というのは?

Kohei Ito

Kohei Ito:

色々詰めて、打ち込みを入れたり、何回か合わせて試行錯誤したんですけど、当時は全然ものにならなかったんですよね。この4人で活動していく中で、やっとなんとなく思い描いていたことが形になってきたので、いわば2年前の自分達が目指してた姿になってきたというか。今の自分達をよく表せている楽曲かなと思います。

何故最初に作った時には形にならず、今完成させることができたんだと思いますか。
Shoma Arai

Shoma Arai:

集まった頃はまだ4人の個性がThe Sunnysという箱に馴染んでなかたんですね。逆に言うと、個人が持っている力だけでどうにか作れたものが『bouquet』で、「city lights」はそれよりももっと音を削ぎ落としたいと思っていました。それはThe Sunnysとしての活動をしていかないとできない状態だったのかなって思います。この4人でライヴや録音を続けて、共に時間を過ごしたからできた楽曲ですね。


Kohei Ito

Kohei Ito:

このメンバーになりたての頃って、個々のリズム感で合わない部分があって、音数を抜いて聴かせられる曲を作るのが難しかったんです。そこが慣れてきて、お互いのノリやグルーヴがわかってきたのが大きいと思います。

何故ミニマルな音でやりたかったんですか?
Shoma Arai

Shoma Arai:

The Whitest Boy Aliveっていうベルリンのバンドで、Kings of Convenienceのアーランド・オイエ(Erlend Oye)がやっているバンドがあるんですけど。彼らはテクノをアナログでやる感じの4人組で、リズム隊が鬼のように上手くて。そういう音楽ができたら一番カッコいいと思うんですよね。空間があって、鳴ってない音も聴こえるような居心地のいい音楽。僕らもだんだんそういうことをできる体制が整ってきたかなって思います。

Sho Hasegawa

Sho Hasegawa:

いい感じにジャムれるバンドになってきましたね。レコーディングしたフレーズを遊びながらライヴでできるようになってきて、楽曲の幅が広がってきました。


Kohei Ito

Kohei Ito:

今はそれぞれの関係性も見えてきて、肩の力抜いて取り組めてるところはあるのかなと思います。スタジオでも気負わないというか、その場のフィーリングで組んでいく感じがあって。凝り過ぎてない、いい意味で脱力してできてるのかなと思います。

Shoma Arai

Shoma Arai:

そうだね。始めたころは絶対売れるぞ、絶対売れるぞって気持ちでがむしゃらに頑張ってたんですけど、確かに今は気負わなくなってきました。

なるほど。上音のキラキラした音色だけじゃなく、新曲はこれからいいことが起こる予感や期待を歌っている歌詞も印象的でした。
Shoma Arai

Shoma Arai:

「city lights」はバンドを続けるのが大変で病んでいた時期に、新しくこのメンバーでやっていこうって時に書いた曲なので、やっとバンドができる、ライヴができるっていう気持ちがちょっと入っています。それまでの曲は感傷に浸るような曲が多くて、それは自分の性格からそういう曲ばかり書いちゃうんですけど。ちょっとでも明るくなれるような曲を書きたいと思って、この曲に関してはすごく開けている気持ちでいました。前のアルバムだと”個”で聴いてもらうイメージだったけど、「city lights」は皆で聴ける曲かなと思います。

逆に言うと、Araiさんにとって音楽は、感傷に浸りたい時に聴くものだった?
Shoma Arai

Shoma Arai:

そうですね。僕は悲しい時に悲しい曲を聴いちゃう人でした。自分に酔っているんですよね、俺は。

でも、エゴイズムに浸れるというのは音楽の楽しみ方のひとつだと思います。
Shoma Arai

Shoma Arai:

だからそういう人に届く音楽を作りたいんですけど、僕は欲張りなので両方の手を握りたいんですよね。悲しい曲を聴くような人にも届いてほしいし、ハッピーな人にもちゃんと届く音楽を作りたいと思っています。

ピンチでもあり、チャンスでもある

先ほど結成当初は売れたいという気持ちが強かったと言っていましたが、今はどういうシーンで戦っていきたいと思っていますか?
Shoma Arai

Shoma Arai:

大衆に聴かれるシーン…ですかね(笑)。あまりにも聴かれな過ぎる時間があったので、それは脱したかった。メジャーアーティストと戦えるぐらいの気持ちでやっています。

自分達の出す音がポップになってきた?
Shoma Arai

Shoma Arai:

うん、ポップになったんじゃないかなと思います。


Eita Fujimoto

Eita Fujimoto:

曲の面でも精神性の面でもかなりポップになりましたね。ライヴをやる時の音量ひとつ取っても、聴き心地がいいところを狙うようになってきていて。僕は毎回ライヴの度にギターがうるさいって言われてたんですけど。

(笑)。

Eita Fujimoto

Eita Fujimoto:

それでもカッコいいフレーズを考えたから聴いてくれ!って気持ちで出してたんですけど、今はそういうエゴは取り除かれて、ポップなものを提供していきたいってい気持ちがバンドとしても持っています。

ちなみに、この音楽性で活動していく中でシンパシーを感じるバンドはいますか?

Kohei Ito

Kohei Ito:

いや、ブッカーの方には誰と合わせればいいのかわかんないって言われることが多いですね(笑)。同じ空気でやってる人にはまだ出会ったことがないような気がします。

というのも、indigo la Endのようなセンチメンタルな感触があるギターロックの要素もあると思うんです。
Shoma Arai

Shoma Arai:

そうですね。以前はインディゴみたいなバンドとやったらハマってた感じはありました。

でも、今はそういうバンドともハマらないし、がっつりシティポップをやっているバンドとも食いあわない?
Shoma Arai

Shoma Arai:

そうなんですよね。今はギターロックとシティポップが融合しすぎちゃってるところがあるのかなって思います。


Kohei Ito

Kohei Ito:

だから今の状況はピンチでもあるけど、逆にチャンスでもあるのかなと。どっちにも属せてないんですけど、両方に属せるポテンシャルはあるので。イベントのカラーや求められる音によって出す音を変えられるようになれば、バンドとしてひと皮むけるのかなと思います。

今後どんな音楽をやっていきたいですか?

Eita Fujimoto

Eita Fujimoto:

台風で中止になった山のうえコンサートに出る予定だったんですけど、SNSで見るとかなり自由な空間で、音楽もあって、ヨガもあって、ご飯も食べれる凄く気持ちよさそうな空間だったんですよね。僕はそういう場所が、今のThe Sunnysのモードに合うのかなと思います。曲に多様性が出てきたし、バンドのマインドとしても気持ちのいい音を出そうって固まってきたので、今後はライヴハウス以外の場所でもライヴをやっていきたいです。

Sho Hasegawa

Sho Hasegawa:

ピースフルでいろんな人が気ままに自由に聴けるバンドだと思います。自分達からそういう場を発信していきたいし、音源もCDショップで売るのはもちろんのこと、それとは違った発信の仕方をして模索していきたいですね。

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