悲しい涙を消すために。Made in Raga-saが日本一を目指すワケ
インタビュー
『BIG UP!』を利用している注目アーティストをピックアップして紹介するインタビュー企画。第22回目はMade in Raga-saが登場。
Title List
ストレートに突き抜けていく歌とメロディ、そしてその下で暴れまわるリズム隊。一卵性双生児の樹(Vo&G)と拓海(Gt&Cho)、そしてタッカー(B)と泰尊(Dr)の4人からなるMade in Raga-sa(メーディンラガーサ)は、互いの個性をぶつけ合いながら、ひとつの塊になって迫ってくるような音楽を奏でている。双子のふたりを中心に結成され、現体制となったのが2年前。新人発掘オーディション「GIANT LEAP」で、最優秀アーティストである「GRAND PRIZE」を獲得するなど、来年以降台風の目になっていくポテンシャルを秘めたバンドである。4人のルーツから『and A』に込めた意志、そしてバンドに懸ける野心についてメンバー全員に語ってもらった。
4人のルーツ
- 一番最初の音楽の記憶って何ですか?
-
樹:
僕はロードオブメジャーです。母親が好きだったので幼少期からずっと聴いていて、全曲歌えるぐらい染みついています。ONE OK ROCKも、音楽にハマってからはどんどん聴くようになりました。
- 双子ということはルーツは同じものになるんですか?
-
拓海:
一緒です(笑)。ELLEGARDENもずっと車で流れてましたね。
- 理想としているアーティストや、プレイヤーとしてリスペクトしている方はいますか?
-
樹:
細美武士さんのような伝わる歌を目指してます。細美さんの英語の歌詞って、英語なのに言ってることが伝わってくるんですよね。僕もそういう歌を歌いたいです。
-
拓海:
曲を作る人としても細美さんは凄く好きです。細美さんの書く曲には悲しい感じがあって、そこにドキドキするんですよね。ELLEGARDENの曲はハッピーなことを歌っていてもちょっと悲しい気がして、そこに惹かれていました。
- リズム隊のおふたりはどんな音楽を聴いてきましたか?
-
タッカー:
僕はサザンオールスターズと福山雅治さんをずっと聴いてきました。バンド始めるまではほとんどそのふたつを聴いていて、あんまり他のバンドは聴いていなかったと思います。
- 一番好きな曲は?
-
タッカー:
「エロティカ・セブン」が大好きです(笑)。あとは「イエローマン 〜星の王子様〜」も好きですね。福山雅治さんは「心color〜a song for the wonderful year〜」かな。
- バンドには何がきっかけでのめり込んでいったんですか。
-
タッカー:
僕はやりたいこともなくフラフラしてたんですけど、高2くらいの時ですかね。連れが「楽器やろうや」って言ってきて、そのまま楽器屋さんに行ってギターを始めました。でも難し過ぎてこんなんやってられるかと思って(笑)。それでもっと弦を減らしてくれと言ったら、その友人がベース用意してくれて。
- それで四弦を手にしたと(笑)。
-
タッカー:
そうです(笑)。そこでこれを見ろって言って映画の『BECK』を見せられて、そこからベースにのめり込んで今に至ります。
- なるほど。泰尊さんはどういうふうに音楽にハマっていきましたか?
-
泰尊:
僕は小っちゃい頃よくアニメを見てたので、最初はアニソンを聴いていて、がっつり音楽にハマったのはRADWIMPSです。YouTubeで聴いたのがきっかけで、「おしゃかしゃま」は特に好きです。
- ドラムを始めた理由は?
-
泰尊:
ニンテンドーDSの、大合奏バンドブラザーズっていう楽器を演奏するゲームに中学生の頃ハマって、そこではドラムが一番簡単やったんです。それでこれなら現実でもいけるんちゃう?って思って音楽室に行って、ドラムを叩いてみたのがきっかけです。その時は全然できなかったんですけど、その後MステでX JAPANを見て、カッコいいな、僕もこうなりたい、と思ってドラムを始めました。
- 今は手数が多いドラムを叩いてますよね。
-
泰尊:
もうちょいシンプルなものも好きなんですけど、双子の要求が凄いんですよ(笑)。結構注文が多くて、それをこなしていくと最終的に手数が多くなるっていう。僕も楽しんでいるんですけど、ライヴは大変ですね(笑)。
- それは樹さん達がドラムにどういうものを求めてるからなんですか?
-
樹:
歌やメロディはメッセージを伝えることを一番に考えているので、シンプルに作ってるんですけど、その分ドラムとベースで味を出せたらなと思っています。それで手数が多いものや、テクいプレイスタイルの曲が増えていますね。
- じゃあベースにも同じくらい要求を?
-
泰尊:
いや、タッカーはそもそも自分で入れまくるんですよ。僕は言われて足していくんですけど、彼は最後に引き算するほうです(笑)。
-
タッカー:
アヴォイテク・ピリホフスキみたいなベーシストがめちゃくちゃ好きで、若い時はとにかく音符が多ければ多いほどかっこいいと思って、どんどん手数を増やしてました。ただ、最近だいぶ減らすベースも好きになってきて、亀田誠治さんのベースを勉強しています。
全部を覆したい
- このバンドを結成したのは樹さんと拓海さん?
-
樹:
高校一年の時にはふたりで音楽をやっていて、バンドをやりたいと思った時に高校の友達を誘って始めました。聴いてきた音楽が同じなので、何も言わずともやりたい音楽が一致していましたね。
- 泰尊さんとタッカーさんが入ったのはいつ頃ですか。
-
樹:
2年前ぐらいですね。泰尊とタッカーが一緒にやっていたバンドと対バンをしたことがあったんですけど、その時に僕らはベースとドラムを探していて。凄くカッコいいリズム隊がいるな、と思ってふたりに声をかけました。
- 誘われたふたりは音楽性の部分で通ずるところを感じて入ったんですか?
-
タッカー:
いや、完全にタイミングがよかったからです(笑)。
- なるほど(笑)。
-
泰尊:
昔やっていたバンドで1回対バンしたことがあっただけで、あんまり面識もなかったんです。連絡が来た時も「どの人やろう…?」っていうくらいだったんですけど、いざ会ってみたら面白いなと思って入りました。
- そして今回初の全国流通盤となるミニアルバムを発表します。『and A』はご自身達にとってどんな作品になりましたか。
-
タッカー:
1曲目から6曲目まで飽きることなく聴けるものができたんちゃうかなって思います。疾走感のある曲から始まって、一度重たくなって最後にミドルバラードにいくので、アルバムの中でストーリーを綺麗に感じることができる作品になりました。
-
樹:
それぞれの曲に個性があるアルバムですね。メッセージ性も曲によって違うので、6曲全部合わさって『and A』というアルバムになっている、凄く濃いアルバムになったと思います。
- 泰尊さんはバラエティ豊かなこの作品の中で、1曲選ぶとしたらどの曲になりますか?
-
泰尊:
僕は「あなたを想う歌」をずっとリピートしてます。
- この曲はある意味ドラムが目立たない曲という印象がありますね。
-
泰尊:
そうなんですよ、だから好きなんです(笑)。プレイヤーとしてもいいものを出せた曲ですし、歌詞がめちゃくちゃ好きです。<『どうしようもなく好きなんだよ』>から始まるのが最高で、僕はこういうラヴソングが大好きです。
- 拓海さんは?
-
拓海:
僕は「0.6」ですかね。高校1年の頃に出来上がった曲なんですけど、今回6年ぶりくらいにアレンジし直してみて、ピアノやストリングスが入ることで生まれ変わった印象があります。
-
樹:
この曲の作曲は僕なんですけど、拓海は元々バラードを書くのが上手くて、リアレンジは全部弟に任せています。彼のアレンジが入ることで、今までの「0.6」とは全く別の曲になりました。
- 拓海さんは、作品の全体像ではどんな印象を持っていますか?
-
拓海:
今回収録されてる曲は大体樹の作った曲なので、聴いてくれる人にも樹っぽいニュアンスを感じてもらえるようなアルバムになったと思います。
- 同じルーツを持ち、同じバンドで共に作曲をしてきたふたりは、音楽性の部分ではどこに一番の違い感じますか。
-
樹:
僕は結構ロック寄りの曲が好きなんですけど、拓海は日本の歌謡曲とか、メロディアスな曲が好きなんですよね。性格も拓海は内に秘めるタイプなんですけど、僕は発信するタイプで、曲を作る時も弟は練りに練ったものじゃないと出してこないというか、完璧主義的なとことがあります。僕はもう作ってる段階でどんどん出していくんですけど、弟は出来上がった状態で出してきますね。
- なるほど。
-
泰尊:
楽曲も拓海はちょっと冷たい部分があるけど、樹は熱めの曲作ってきますね。
- 樹さんはロックのどういうところに惹かれますか。
-
樹:
強さですかね。ロックにはバチバチの強さを感じていて、そこにワクワク感が生まれるのかなって思います。自分で作曲する時もそういう部分を心がけて、激しい曲でわくわくさせる曲を書くのが好きです。
- 強さっていうのはもう少し具体的に言うとどういう理想ですか?
-
樹:
全部を壊したいというか、覆したいという思いがあります。
- 何を覆したい?
-
樹:
「できない」って思ってる人が多すぎて、それを変えたいんですよね。僕はマインドとしては「何でもできる」と思っていて、たとえば空を飛ぼうと思ったら飛べると思うんですよ。僕らはそれが無理だと思っているから飛べないだけで、本気で思ってる人は飛べると思ってるんです。
- 「できる」と思っていることが現実になっていくと。
-
樹:
そう。「できない」と思った途端に人は考えることをやめてしまうから、僕はなんでも「できる」と思うことが大事だと思います。だから今ある風潮や常識をブチ壊していきたいですし、自分次第でなんでもできるよっていうのをこのバンドで証明していきたいです。
- たとえば<警察が犯罪を、政治家でさえ浮気を するようなこの時代に正しさはあるのか?>っていう歌詞がありますが、歌詞を読んでいると、樹さんは世界をそんなに信じていないんじゃないかと思いました。
-
樹:
そうですね。あんまり周りを信じてないというか、疑っているんだと思います。僕は周りに合わせることが苦手だし、当たり前になってる常識も、実はそんなに正しいことではなくて。多数派が常識になっていくけど、それって本当に正しいの?という気持ちが心にありますね。
- だから「全部自分次第で変られる」っていうのを歌で示していきたいと。
-
樹:
そうです。
- 他のメンバーもそういう気持ちはありますか?
-
タッカー:
僕は今回のアルバムの中で「アシミレイト」が一番好きなんですけど、この曲は「同化すんなよ」ってことを歌っていて、僕もそういう思想で生きてます。みんな同じ髪型してるバンドマンとかオイオイオイって思っちゃうタイプで、誰かと同じことしてどないすんねんっていつも思っています。
- ロックバンドというフォーマットが、決して時代の主流ではないですよね。そんな中ロックバンドで社会の空気を覆していきたいと思えるのは何故ですか。
-
樹:
僕は売れることに興味がないというか、それよりも自分達の力でどこまでできるか試したい。だからたえば、どこかの事務所がお金を積んで「きみ達を売れさせてあげるよ」って言っても興味がなくて。難しいことをやるほうが絶対楽しいと思うし、この4人でどこまでいけるのか挑戦することが人生の目的です。
- これからどういうバンドやプレイヤーになっていきたいのか、今思い浮かべてるビジョンがあれば教えてください。
-
泰尊:
僕はRADWIMPSの山口智史さんがめちゃくちゃ好きで、凄く楽しそうに叩くところを本当にリスペクトしてます。僕も楽しんで叩いて、聴いてくれる人を笑顔にすることを心がけています。
- 笑顔にしたいというのは?
-
泰尊:
文化祭で演奏した時に、「泰尊のドラムは見てて元気になる」って言われたことがあって、それが凄く自信になったんです。その時にドラムを叩くことで人を元気にさせられるんやって気づいて、それからはできるだけ沢山の人を笑顔にしたいと思ってドラムをやるようになりました。
- ホームページにも「誰かを救えるような音楽をコンセプトに活動」と書かれていますね。
-
樹:
バンドのロゴも、ジャケットや作品のタイトルも、僕らのメッセージに沿ったものにしています。僕らは世界中から涙を消したいっていう思いがあって、『and A』のジャケットもそれを意識したイラストにしました。
- ああ、だから涙をペンキで消しているんだ。
-
樹:
そうです。僕はできるだけその悲しい涙を自分達の歌で消していけたらと思っています。なので僕らが目指すべきところは、聴いてくれた誰もが幸せになってくれること。聴いてくれた人が前向きになってくれる音楽を作ることです。
-
泰尊:
言い方は恥ずかしいですけど、僕はヒーロー的な存在になりたいです。戦隊ものみたいな何人かいるイメージで、Made in Raga-saがそういうバンドになったらなと思います。
- タッカーさんは?
-
タッカー:
僕も4人で一緒に上がっていって、しんどい人を救っていければなって思います。バンドが大きくなっていくにつれて、4人それぞれの個性を突き詰めて、バンドとしても個人としても成長していけるように頑張りたいです。
-
樹:
日本一を獲ろうっていうのはバンドとして決めていますね。今回の『and A』というタイトルにはいろいろな意味を込めていますが、そのひとつとして、アルファベットのトップには”A”があるという意味で、バンドとしてトップを獲りたいっていう思いも込められています。
- どこまで行けたら、日本一だって実感できますか?
-
樹:
誰もが知っているようなバンドになることですね。僕はMade in Raga-saを、街を歩いてたら自然と流れてるくらいの音楽にしたいです。大きなフェスでライヴをやるのもいいんですけど、フェスに来る人はそもそも元気をもらいに来れる人だと思うんです。本当に悲しんでる人はフェスにも来れないと思うので、そういう人達がふと流れてくる音楽に救われるためには、やっぱりどこにいても流れてくるような音楽にならなきゃいけないなと思います。
涙を消したい
Presented by.DIGLE MAGAZINE