短期間で急速的な成長を遂げるヤユヨ。無我夢中で駆け抜けたこの1年を語る

インタビュー

『BIG UP!』を利用している注目アーティストをピックアップして紹介するインタビュー企画。第34回目はヤユヨが登場。

昨年、シーンに彗星の如く現れた3人組バンド、ヤユヨが6月10日に1stミニ・アルバム『ヤユヨ』をリリースした。

ささくれ立ったオルタナティブなバンド・サウンドに、キャッチーなメロディ・ライン、そしてボーカル・リコの圧倒的な存在感を放つボーカルを武器に、ライブハウスを中心にジワジワとリスナーを拡大させてきたヤユヨ。人懐っこいサウンドとは裏腹に、繊細な心情風景を描き出すリリックは大きな共感を集めている。結成から1年ほどながら、昨年12月に発表された代表曲「さよなら前夜」のMVはすでにおよそ90万再生されるなど、その勢いはまだまだ止まらなそうだ。

そんなヤユヨの3人にリモート取材を敢行。絶妙なバランス感覚で成り立つヤユヨの作品を紐解くことに。

「定まらなかった」方向性――ジャンルに縛られないヤユヨ結成譚

外出自粛やライブの開催などもなかなか行えない状態が続いていますが、いかがお過ごしですか?
ぺっぺ

ぺっぺ:

緊急事態宣言が解除されたので、練習はそろそろやろうかっていう話をしているところです。それまでは音源データを送り合って、それぞれ家で練習していました。

こんな長期間に渡って一緒に演奏できないのは辛いですよね。
ぺっぺ

ぺっぺ:

はい。そもそも私たちは高校の同級生同士で結成しているので、これだけの期間メンバーに合わないっていうこと自体が初めてで。

ぺっぺさんがバンドの発起人だったそうですね。そもそも、この3人が仲良くなったきっかけというのは?
ぺっぺ

ぺっぺ:

リコ、すーちゃん(サポートメンバー)とは学科もクラスも一緒で、学科が違うはなとは軽音楽部で出会いました。でも、みんな本格的に仲良くなったのは軽音を通じてという感じですね。軽音では先輩からのアドバイスで、SCANDALの「瞬間センチメンタル」やSHISHAMO、aikoさんなどの曲をコピーしていました。

メンバーそれぞれ音楽の趣味もバラバラだったとお聞きしました。どのような音楽を聴いていたのでしょうか?
リコ

リコ:

私はずっとaikoさんを聴いていました。バンドものは高校生になってから聴き始めて。特に印象的なのはクリープハイプ、SIX LOUNGE、忘れらんねえよとか。あとはお母さんが歌ってくれる古い歌謡曲も昔からよく聴いていました。

はな

はな:

中学生くらいからONE OK ROCK、MAN WITH A MISSIONなどを聴いていました。高校生になってからはクリープハイプなども聴くようになりましたし、今はサニーデイ・サービスなどを聴いています。

ぺっぺ

ぺっぺ:

私は中高でRADWIMPS、クリープハイプ、SHISHAMOといったバンドを聴いていて。高校になってからSuchmos、DYGLなど、インディ系のバンドや洋楽にも手を出すようになりました。あと、お母さんの影響でフジファブリック、Mr.Childrenなども好きでずっと聴いていました。一番影響しているのは、そういう90年代〜2000年代くらいのロックだと思います。

おそらく軽音楽部には他の部員もいたと思うのですが、その中でヤユヨのメンバーが固まったのはどのような経緯で?
ぺっぺ

ぺっぺ:

私たちが所属していた軽音楽部はバンド・メンバーを3年間固定するという決まりがあって。部内で私とはな、すーちゃんが組んだバンドでは、リコはコーラスだったんです。

リコ

リコ:

私が軽音楽部にボーカル志望で入部したのが1年生の10月頃だったので、既にどのバンドにもボーカルがいたんです。そこで、同じクラスで仲の良かったぺっぺやすーちゃんのいたバンドにコーラスとして入れてもらいました。結局、他のバンドのボーカルが抜けたので、そこのバンドでメインボーカルになったんですが、三人がいるバンドでも卒部まで楽しませてもらいました。

ぺっぺ

ぺっぺ:

そうやって、一緒に活動していくにつれてリコの声の魅力に気づいたんです。これは唯一無二の個性だなって。なので、高校卒業のタイミングで声を掛けて結成に至りました。

ヤユヨを結成するにあたって、最初に音楽的な方向性などはある程度決めたのでしょうか。
ぺっぺ

ぺっぺ:

話し合ったんですけど、定まらなかったんです。なので、「ジャンルに縛られない」ことをバンドのコンセプト的なものにしました。「これやりたい」「あれやりたい」が多過ぎるし、私たち自身も色々な音楽が好き。だったら決めなくていいんじゃないかって思って。作品毎、もしくは季節毎でもいいし、その時その時のインスピレーションに沿って自由に作品を作っていこうって決めました。

ぺっぺさんとリコさんは軽音楽部とは別に、近所のバーなどでも弾き語りをしていたそうですね。
ぺっぺ

ぺっぺ:

私が弾いてリコが歌う形で、椎名林檎さんやクリープハイプ、GLIM SPANKYなど、色々演奏させてもらいました。

リコ

リコ:

お客さんが私たちの親世代の方が多いので、「今の若い子ってこういう音楽聴いてるんや」って言ってもらえるのが嬉しかったですね。

高校生でそういったバーなどで弾き語りをやるっていうのも珍しいですよね。
リコ

リコ:

私の家のお向かいさんがバーなどで演奏する方で。その人に誘われて近所のお店で歌わせてもらうようになりました。最寄り駅に2つくらいそういったお店があるんです。

「とにかく次のライブを」――ひたむきに動き続けた1年間

昨年12月には自主制作シングル『さよなら前夜』をリリースしました。
ぺっぺ

ぺっぺ:

結成してライブをするようになり、「せっかくライブ観てもらう機会があるんだから、グッズとか作らないとダメじゃない?」ってなって。そこからバンドのSNS運用なども始めました。でも、結局「曲が聴けないとダメじゃないの?」っていうことで、自主制作CDを作りました。

はな

はな:

当時は右も左もわからない状況だったので全て自分たちでやってみようと話し合い、レコーディング・スタジオの人にお願いして録ってもらって、「さよなら前夜」のMVも友達伝手で繋がった方に制作してもらいました。

自分たちの活動が加速し始めたのポイントを挙げるとすると、いつ頃だと思いますか?
リコ

リコ:

『未確認フェスティバル』と『さよなら前夜』のMVは大きかったと思います。そこから色々なライブハウスにブッキングしてもらえるようになって。でも、常に一生懸命だったからどこがきっかけになっているのかわからないですね。

ぺっぺ

ぺっぺ:

確かに。今も加速してるのかどうかわからないっていうのが正直な心境かもしれないです。

リコ

リコ:

「とにかく次のライブを頑張ろう」って、それしか考えてなかったかも(笑)。

今までのお話を聞いていて、ライブにかける想いがとても強いことがわかりました。そういった姿勢はどこから生まれたのだと思いますか?
リコ

リコ:

私たち自身がライブを観て感化されることが多かったので、それがきっかけになっているのかもしれません。ライブで初めて観て、その場でファンになったバンドもいますし、やっぱりリアルな場でパフォーマンスを体感してもらう、目の前の人に音楽を届けるっていうのはすごく大事なことだなと思います。

ぺっぺ

ぺっぺ:

私たち、小さいライブハウスから大きい会場まで本当にたくさんのライブを観に行ってたんです。多い時は週イチ以上のペースで行ってましたし、しょっちゅうみんなで「あのライブヤバかった」とか話したり。そういう経験や得た感情がたぶん私たちに根付いていて。だから同じような体験をリスナーの方に与えたいっていう思いが生まれたんだと思います。

では、ヤユヨのみなさんが考える、良いライブの条件、要素とは?
リコ

リコ:

難しいですね……。私の場合、ライブをする度にまだまだ反省点などを痛感することが多いので、全員が完全に満足できるように頑張りたいです。

ぺっぺ

ぺっぺ:

失敗はいいんですけど、悔いは残したくないですよね。私、ライブ始まる前に「今日はここは意識してな」とか「ここミスらないようにな」って、メンバーひとりひとりに言っちゃうんです。なので、ライブ終わった後、誰かひとりでも落ち込んでたら「次、もっと頑張ろう」って思うし、逆にみんな満足気な表情をしてたら、「あぁ、今日はいいライブができたんやな」って思います。あと、ライブ後の物販でお客さんから頂く反応や感想など、客観的な意見も参考になりますね。

はな

はな:

私もぺっぺと同じく、ライブ終わった後のみんなの顔で判断してるかも。いいライブができた時は、みんなすごくスッキリした顔してるよね。

リコとぺっぺ、ふたりのソングライターとしての個性

ヤユヨはリコさんとぺっぺさん、2人がソングライティングを担当していますが、楽曲制作のプロセスはどのような形で?
リコ

リコ:

私の場合は歌詞やメロディを作って、自分で録音したものをスタジオに持っていくっていう感じですね。

ぺっぺ

ぺっぺ:

私も同じですね。ただ、曲も歌詞も基本的に自分が好きなように書くんですけど、歌うのはリコなので、音域だったり歌い回しの部分で後から調整もしますね。

それぞれ、リコさん、ぺっぺさんの作る曲に対してはどういう印象持っていますか?
ぺっぺ

ぺっぺ:

リコの作る曲はすごくリアルで、聞いていいのかどうかわからないんですけど、たまに聞いちゃうんです。「これって、何か実体験があったん?」って(笑)。でも、どうやら実体験と想像の半々くらいで作っているらしいんです。実際に体験した出来事や感情を、空想の物語と混ぜて表現する。だからこそ、誰もが共感しやすい曲がかけるんじゃないかなって思ってます。

リコ

リコ:

ぺっぺは曲の中の主人公の性格とか物語の細かい舞台設定も考えて作ってるらしくて、そういうのを聞いた上で曲を聴くと、「ほんまや。スゴッ!」ってなります(笑)。例えばぺっぺ作詞作曲の「メアリーちゃん」っていう曲だったら、私もその主人公になりきって歌うように心がけています。

はな

はな:

ぺっぺの曲はひとつの小説を読んでるような感覚になります。リコの曲は、リアルな友だちの本音みたいな感じ。私はいちリスナーとして、どちらの曲も純粋に好きだなって思いますね。

6月10日にはCDリリースに先駆けミニ・アルバム『ヤユヨ』の配信がスタートします。本作には「kimi_no_egao」「いい日になりそう」の2曲が新録されます。
リコ

リコ:

「kimi_no_egao」は大学の友達との何気ない会話から生まれた曲です。恋人がいない友達が「彼氏欲しい」って言ってるのに対して、「恋なんてしなくても、大体幸せだよ」って言ってたのがすごく印象的で。それがサビの歌詞「君がいなくてもだいたい幸せだと/思えるようになったけれど」っていうラインに繋がりました。

この曲は元々「Instagram」っていう仮タイトルで。確かに失恋ちっくな感じにもなっているんですけど、個人的には友人関係にも当てはまる内容だと思うんです。あまり会わなくなってしまった友達とも、SNSを使えば簡単にそれぞれの生活が覗ける。大学の友達からの会話と、そのSNSでの体験を合わせて作った感じですね。

「いい日になりそう」は作詞がリコさん、作曲がぺっぺさんの共作曲ですよね。
リコ

リコ:

クレジットはそうなってるんですけど、正確に言うとどっちもふたりで詰めていった感じですね。

ぺっぺ

ぺっぺ:

この曲はすごく歌詞で苦戦したよね。

リコ

リコ:

そうだね。レコーディング直前まで試行錯誤してた。結果として原型がほぼなくなって、唯一残ったのがタイトルにもなった「いい日になりそう」っていう部分(笑)

これも実体験から生まれた曲なのでしょうか。
リコ

リコ:

この曲は私の中では珍しくポジティブな気持ちから生まれた曲で。朝起きた時って、昨日がどんなにめちゃくちゃでも自分次第で前向きなスタートを切れますよね。そういう感情を曲にしました。でも、最初はあまり上手く表現できなかったので、ぺっぺと一緒にどんどん改善していきました。

ふたりでガッツリ組んで作る曲というのは、「いい日になりそう」が初めてですか?
ぺっぺ

ぺっぺ:

そうですね。歌詞だけ、曲だけならあるんですけど、両方ともふたりで相談して作り上げたのはこの曲が初めてだと思います。

リコ

リコ:

私の曲は恋愛だったり友人同士だったり、対人関係がテーマになっている曲が多いんですけど、この曲は「私」だけの気持ちから生まれたものなので、それが難しかった要因のひとつでもあると思います。

ソングライターとして、リスナーからの反応、コメントで印象的だったものはありますか?
リコ

リコ:

「さよなら前夜」の「君が画面だけの人になっても/平気かもと思ってしまった」というラインは「よく共感しました」っていう言葉をもらうことが多くて嬉しいですね。「kimi_no_egao」にも繋がる題材なんですけど。

現在のヤユヨの代名詞的楽曲とも言える「さよなら前夜」は、元々もっとバラード的な楽曲だったそうですね。
リコ

リコ:

私が弾き語りでデモを制作した段階だと、テンポも抑えめでしっとりとした感じでした。ただ、曲の内容が私の曲の内容がすごくパーソナル内容だし、具体性もあったので、切な気な感情を込めて歌い上げると何か恥ずかしくて(笑)。それで、もうちょっと明るく、軽快なサウンドにアレンジし直しました。

外出自粛を余儀なくされ、最近ではメンバーと顔を合わせずに楽曲制作するようになったそうですが、そういった環境の変化は作品にも作用していると思いますか?
リコ

リコ:

私の場合、ぺっぺみたいに架空の物語や人間関係を取り入れつつ作品を作るようになりました。でも、あくまでも自分の感情や日常ともリンクすることを意識しています。完全に空想の話にはならない。創作と現実、7対3くらいで書いてます。いかんせん人と会えないので(笑)。

まだまだ無我夢中の3人。その行く末やいかに

このような状況になってしまったので、フェスなどへの出演は中々難しそうですが、ヤユヨとしての今後予定している動きを教えてもらえますか?
リコ

リコ:

まだやってみたことないんですけど、配信ライブには興味があります。

はな

はな:

今、ファンの皆さんにライブをお届けできていない状況がもどかしいので、早く何かしらの形で今のヤユヨを皆さんの元に届けたいなと思っています。

バンドとしての長期的な展望、目標などはありますか?
リコ

リコ:

何かあるかな……。でも、それを決めたらバンドが終わっちゃうような気がしてしまう(笑)。

ぺっぺ

ぺっぺ:

まだバンドを初めて1年ほどなので、3月くらいまではライブして音楽作ってライブして……の繰り返しで、無我夢中だったんです。遠い目標を目指して動くのではなく、とにかく次の一歩を考えて活動してきたので、目標やゴールといったものは今は考えられないですね。あ、でも私個人の夢はあります。野外フェスのめっちゃ大きいステージでコール・アンド・レスポンスしてみたいなって。他のアーティストさんがやってるのを見て、「めちゃくちゃ気持ちいいだろうな〜」って思って。

リコ

リコ:

aikoさんがやってるみたいなやつね。「男子ー!女子ー!」って(笑)。

(笑)。リーダーのはなさんはいかがでしょう?
はな

はな:

まだまだ一歩ずつ進むことに一生懸命な段階ですが、幅広い人に聴いてもらえるようなバンドになればいいなと思っています。

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