自分たちだけの音楽のカタチ。新鋭・GAMBSが語る柔軟な制作スタイル

インタビュー

『BIG UP!』を利用している注目アーティストをピックアップして紹介するインタビュー企画。第49回目はGAMBSが登場。

洒脱なサウンドに甘いメロディ、そして瑞々しいポップ・センスを有する4人組、GAMBSが1月27日に1st EP『TEENS』をリリースした。

音の差し引きや現代的な編集感覚に優れた彼らの作品には、ロックもダンス・ミュージックもヒップホップも当たり前に吸収する、新世代の感覚が色濃く感じられる。

メンバー・チェンジを経て、コロナ禍の中で本格始動したGAMBS。今回はメンバー4人へのインタビューを敢行。1st EP『TEENS』制作背景、そしてその先の展望を訊いた。

4人のルーツから紐解く音楽観

バンド結成の経緯から教えてもらえますか?
Fumiya

Fumiya(Vo.&Syn):

元々大学の軽音楽部内でバンドをやっていたんですけど、それとは違った、新しくバンドを始めたいと思って組んだのがこのGAMBSです。結成当初からメンバー・チェンジを経て、今の面々に至ります。

現メンバーはどのようにして集まったのでしょうか。
Fumiya

Fumiya(Vo.&Syn):

今のメンバーは全員大学の軽音学部の友達なんですけど、僕から声を掛けました。

Shimon

Shimon(Dr):

ちょっとおもしろいエピソードがあって。Fumiyaさんとは大学内で組んだコピー・バンドで初めて接点を持って。それまではあまり喋ったこともなかったんですけど、とある練習の帰り道に音楽の話をしたことがあって。そしたら後日、いきなり「就職考えてる?」っていうLINEがきて(笑)。

Sukemasa

Sukemasa(Gt):

人生相談みたいな(笑)。

Shimon

Shimon(Dr):

そこまで面識のない先輩からいきなり変なLINEがきて「こわっ!」っていう(笑)。

Fumiya

Fumiya(Vo.&Syn):

就職活動で忙しかったりしたら、バンドに誘うのは申し訳ないなと思ったので(笑)。

Shimon

Shimon(Dr):

もちろん就職は考えていたんですけど、とりあえずバンドについて話を聞いてみたいと思い、ご飯に誘われて。最初はFumiyaさんと1対1だと思ってたんですけど、当時のメンバーも一緒で。その場の雰囲気に流され最初はサポートという形で引き受けることになりました(笑)。

Fumiya

Fumiya(Vo.&Syn):

Sukemasaとkantaの2人は以前から僕らのバンドについて「いいね」って言ってくれてたのと、僕もプレイヤーとして2人のことが気になっていたので、直接誘いました。

Sukemasa

Sukemasa(Gt):

大学内の軽音サークルだと、邦楽のカバーだったり、そういったテイストのバンドが多かったのですが、彼のバンドは洋楽というか海外志向なサウンドを鳴らしていて。当時から少し珍しい存在として見ていました。

Kanta

Kanta(Ba):

当時からオシャレなイメージがありましたね。僕もこういうバンドやりたいなと思っていたところ声を掛けてもらったので、即答でOKしました。

結成当初と今では、音楽性はガラリと変わりましたか?
Fumiya

Fumiya(Vo.&Syn):

結構変わってきたと思います。初期はUKインディやガレージ・ロックのような曲をやっていました。

Shimon

Shimon(Dr):

DYGLとかもカバーしてたよね。

Fumiya

Fumiya(Vo.&Syn):

その一方で、R&Bとかファンクっぽいこともやってみたり。割と散漫としていましたね。

Sukemasa

Sukemasa(Gt):

それこそ「No.045」はファンクっぽいしね。

Fumiya

Fumiya(Vo.&Syn):

「No.045」はリリース自体は2019年なんですけど、この3人が入る前に作った曲なんです。その次に発表した「raindrops」という曲から、この4人で作った曲になります。

みなさんのルーツやバックグラウンドについてもお聞きしたいです。Fumiyaさんが大学卒業後、改めて今のメンバーに連絡した理由というのは?
Fumiya

Fumiya(Vo.&Syn):

広く言えば似たものを共有しているとは思うんですけど、それぞれ詳しく聞くとバラバラなんです。僕の場合、音楽を能動的に聴き始めたのが結構遅くて。高校3年生の時にSuchmosに出会ってからですね。そこから彼らのバンド名の由来にもなっているLouis Armstrong(ルイ・アームストロング)を始めとしたジャズや、Jamiroquai(ジャミロクワイ)などのアシッド・ジャズ。主にブラック・ミュージックを中心に聴くようになりました。今はオンタイムのヒップホップやポップ・ミュージックなどもよく聴いています。

では、Sukemasaさん、Kantaさん、Shimonさんのルーツについても教えてもらえますか?
Sukemasa

Sukemasa(Gt):

僕は中3の時にGuns N’ Roses(ガンズ・アンド・ローゼズ)のSlash(スラッシュ)に憧れてギターを始めました。それから1年くらいはハード・ロックやブルーズを中心に聴くギター・キッズでしたね。それから色々な音楽を経て、Radiohead(レディオヘッド)に出会い、エレクトロニカやジャズだったりギター以外の要素にも惹かれるようになりました。あと、その時くらいからサウンド・プロダクションについても意識するようになりましたね。

Kanta

Kanta(Ba):

僕は家族であまり音楽を聴かない環境だったので、小さい頃はテレビや映画から流れてくる音楽しか耳にしていなかったです。何か新しいことを始めたくて、高校で軽音部に入ったのですが、そこで色々な音楽を教えてもらいました。特にハマったのは90年代〜2000年代のUKロックなどですね。それはこのバンドでも活きていると思います。

Shimon

Shimon(Dr):

僕の場合は逆に音楽一家で。親父は今もビック・バンドをやっているので、小さい頃からジャズやソウル、R&Bなどが家で流れていました。その中でも、特に記憶に残っているのは小学生の時に聴いたDeep Purple(ディープ・パープル)。そこから親父にハードロック〜プログレなどを教えてもらったり。あとは母が大好きだった80年代のポップスなども自分の血肉になっていると思います。ドラムを始めたのは中学校の時に見学に行って、流れで入ることになってしまった吹奏楽部がきっかけですね。

Fumiya

Fumiya(Vo.&Syn):

そのパターン多くない?(笑)。

一同:

(笑)。

Shimon

Shimon(Dr):

周りに流されやすいというか(笑)。吹奏楽部ではパーカッションを始めて、そこからドラムに繋がりました。リスナーとしての遍歴で言うと、その後Galileo Galileiがカバーしていたことで知ったThe 1975(ザ・ナインティーンセヴンティファイヴ)に衝撃を受けたことが大きいです。そこから色々な洋楽を自ら聴くようになりました。

個人的に、GAMBSの音源を聴いて真っ先に思い浮かべたアーティスト、バンドのうちのひとつがThe 1975でした。
Shimon

Shimon(Dr):

80年代の要素を感じさせつつも、古くない。当時の自分の音楽的趣向と思いっきりマッチしたんですよね。

Sukemasa

Sukemasa(Gt):

The 1975がこの4人の中でリンクする部分なのは間違いないですね。

常に80年代を求めている

この4人で最初に作った曲だという「raindrops」について、この曲はどのようにして生まれ、完成に至ったのかを教えて下さい。
Sukemasa

Sukemasa(Gt):

この4人が集まる前から違うアレンジで「raindrops」という曲は存在していて。このメンバーになって、「じゃあ何からやる?」ってなった時に真っ先にこの曲が挙がったんです。

Fumiya

Fumiya(Vo.&Syn):

元々は僕が高校の時の軽音の友達の家に遊びに行って、そこで原型が生まれました。友達がピアノで王道の進行を弾いてくれて、それに合わせて僕がメロディを付けていく。その時、ちょうど雨が降っていたので「raindrops」という言葉とフックのメロディが浮かんできました。

Shimon

Shimon(Dr):

その時、ちょうどトレンドになっていたローファイ・ヒップホップやチル・ポップと呼ばれるようなサウンドをイメージしてアレンジし直していきました。元々の曲の雰囲気とも合うんじゃないかなと。

Fumiya

Fumiya(Vo.&Syn):

チルな雰囲気を出すために、空間系のリヴァーブを多用したりしました。

サウンドはチルな雰囲気ながらも、歌が前面に出ているのが印象的でした。これはEPの他の曲に関しても同様のことが言えると思います。
Fumiya

Fumiya(Vo.&Syn):

やっぱりキャッチーさという部分は常に意識していて、楽器隊それぞれのパートを洗練させるのは大前提にありながらも、その上で歌とメロディをしっかりと聴かせるというのが大事なことだなと考えています。

Shimon

Shimon(Dr):

あと、元々初期のGAMBSは英詞の曲が多かったんですけど、日本で活動して、日本のリスナーを中心に届けるということを考えると、日本語詞も必要だろうという話にもなりました。それも歌やメロディが前に出ていることに繋がっていると思います。

Sukemasa

Sukemasa(Gt):

確かに。日本語詞を取り入れた頃から、そういったアレンジになっていった気がする。

Shimon

Shimon(Dr):

EPの2曲目に収録されている「This feeling」という曲も、この2人(Sukemasa、Kanta)の加入前に作った曲なのですが、最初は全部英詞だったんです。でも、改めてこの4人でアレンジし直す段階で日本語中心の歌詞に書き換えて、完成させました。

歌詞に日本語を取り入れるようになって、Fumiyaさんは作詞に際しての意識などは変わりましたか?
Fumiya

Fumiya(Vo.&Syn):

う〜ん……。

Sukemasa

Sukemasa(Gt):

最初の頃、苦戦してたように思うけど。

Fumiya

Fumiya(Vo.&Syn):

英語をそのまま訳しただけだと、どうしてもダサくなってしまうことも多々あって。言い回しや言葉を変えたり、より頭を使うようにはなったと思います。

Sukemasa

Sukemasa(Gt):

そこで一旦、向き合った感じもあるよね。作詞もそうだし、メロディの乗せ方など、今のスタイルが固まってくるきっかけになったと思う。

Fumiya

Fumiya(Vo.&Syn):

確かに。

歌詞の主題やテーマなどはどのようにして浮かんでくるのでしょうか。
Fumiya

Fumiya(Vo.&Syn):

日々の生活で感じたことや浮かんできたことを記録しておいて、そこから発想を膨らませていくこともありますし、思わぬところからパッと生まれることもあります。例えば、EPに収録されている「Violet」という曲は、Shimonくんが最初のデモを作ったのですが、データを送ってきた時に仮タイトルで「Violet」って付いていて。そのタイトルがいいなと思ったので、暖色の赤と寒色の青を混ぜた菫色をパートナーとの関係性に例える歌詞ができました。

バンドの曲作りにおける制作プロセスは、曲によってバラバラですか?
Sukemasa

Sukemasa(Gt):

最近はある程度、形が見えてきていて、基本的な軸としているのはトラックが先で、Fumiyaがメロディと歌詞をつくったものを、みんなでアレンジしていくスタイルです。

1st EPの制作を経て、GAMBSとしてのサウンドや方向性なども自分たちで掴めてきたという自覚はありますか?
Fumiya

Fumiya(Vo.&Syn):

最初の頃に比べると固まってきたように思います。今のメンバーはみんな積極的に意見も出してくれるので、この4人で作り出すサウンドっていうのがわかってきた。ただ、自分たちのカラーや方向性はある程度固めつつも、あまりジャンルには縛られたくないと考えています。

Sukemasa

Sukemasa(Gt):

すでに新曲の制作もスタートしているのですが、たぶん次の作品でそういった自分たちの特性がより見えてくるのかなと思っています。今の4人がそれぞれにできることを持ち寄って、ある意味、初期衝動的に作ったのが今作。そこから何が変わり、何が残るのか。それが見えてくると、GAMBS印のサウンドというものがしっかりと説明できるようになるのかなと。

ちなみに、今作を『TEENS』と名付けた理由は?
Fumiya

Fumiya(Vo.&Syn):

曲のストックは他にもあるのですが、EPとしてリリースするとなった時に、歌詞の世界観やサウンドの雰囲気がリンクする曲をピックアップして、この4曲になったんです。そのリンクする部分を自分たちなりに紐解いていくうちに、ノスタルジックな感情だということに気付いて。それで『TEENS』と名付けました

そういったどこかノスタルジックな世界観の楽曲が多いのは、ご自身ではなぜだと思いますか?
Fumiya

Fumiya(Vo.&Syn):

個人的に80年代の音楽を聴いていると感傷的になることが多くて。今作はサウンド面でも80年代感を強く打ち出しているので、そういった感情に引っ張られているのかもしれません。

ご自身が生まれる前にも関わらず、80年代の作品にノスタルジーを感じると。
Sukemasa

Sukemasa(Gt):

それは僕もありますね。友達の車でDuran Duran(デュラン・デュラン)などがかかってると、自分はその音楽を通ってないのに不思議と懐かしく感じたり。

Shimon

Shimon(Dr):

親とかの影響なのかもしれないよね。僕も音楽だけじゃなく好きな映画も80年代の作品が多い。常に80年代を求めているというか。

Fumiya

Fumiya(Vo.&Syn):

確かに。ずっと80年代の感じがしっくりくるんだよね。

Shimon

Shimon(Dr):

例えば、音楽シーンでは最近90年代とか00年代のリバイバルも起こってると思うんですけど、それをGAMBSに持ち込もうとはあまり思わない。今のところ、80年代のテイストが一番馴染むんです。

プロジェクト・チームみたいなイメージ

新曲の制作もスタートしているとのことですが、現時点ではどのような楽曲が生まれてきていますか?
Fumiya

Fumiya(Vo.&Syn):

ヒップホップやダンス・ミュージックの要素も取り入れたり、オルタナR&Bっぽい曲にもトライしています。EPとはまたガラッと雰囲気が変わりそうです。

Shimon

Shimon(Dr):

曲を作っている時に、その時々で自分たちがハマっている音楽の影響が強く出てしまうんですよね。それが統一感が出づらい理由になっていると思うんですけど、その分おもしろいことができているんじゃないかなと思っています。

Fumiya

Fumiya(Vo.&Syn):

個人的にはヒップホップの要素をもっと強く取り入れたいなと思っています。バンドに上手く落とし込んで、なおかつキャッチーさも忘れずに。僕もラップと歌の中間のような歌い方をするような曲もすでにできているので、それをブラッシュアップしていければなと。

昨年から引き続き、コロナ禍で制限されることも多くあると思います。現状ではどのように活動しているのでしょうか。
Fumiya

Fumiya(Vo.&Syn):

本当はライブも1ヶ月に1〜2本くらいやりたいんですけど、緊急事態宣言もそうですし、それ以前に自分たちの生活もバタバタとしていて中々できていなくて。その代わりにデモをたくさん作っていて、夏頃に新しい作品を出せればなと考えています。顔を合わせる機会は少なくても、制作は進めることができるので。

Kanta

Kanta(Ba):

僕らの場合、最初からデータのやり取りで制作していたので、制作面ではコロナ禍の影響を受けていませんね。

Sukemasa

Sukemasa(Gt):

ある意味、時代に適応したバンドというか(笑)。誰がどの音を乗せたのかわからなくなるくらい、1個のプロジェクト・ファイルをどつき回して作っています。

Shimon

Shimon(Dr):

あまり「バンドやってるぜ」っていう感覚はないよね。いわゆるバンドっぽい制作スタイルではない。

それがGAMBSの個性でもありますよね。
Shimon

Shimon(Dr):

GAMBSならバンドっていうことにこだわらなくてもいいんじゃないかなって思うんですよね。個人的には最近、ダンス・ミュージックもよく聴いているので、それこそビートは全部打ち込みでもいいと思いますし、自分たちにしかできないことをやりたいですね。

Fumiya

Fumiya(Vo.&Syn):

形式はバンドなんだけど、心持ち的にはプロジェクト・チームみたいなイメージの方が近いかも。

Sukemasa

Sukemasa(Gt):

今制作中の曲なんて、ギターの僕が「ギターいらなくない?」って言って、Shimonが「いや、ギターいる」って言い合ったりしてます(笑)。バンドという形式やひとつのジャンルに縛られることなく、自分たちらしいサウンドを見つけていきたいです。

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