19歳シンガー・Salaがシーンに見せつけた才能の“片鱗”

インタビュー

『BIG UP!』を利用している注目アーティストをピックアップして紹介するインタビュー企画。第71回目はSalaが登場。

2021年1月に1stシングル「Loved More」をリリース以降、FLEUR・熊井吾郎とのコラボ楽曲「Bossa」、Shin Sakiuraをサウンドプロデュースに迎えた「Together」の発表を経て、同年11月にEP『Fragments』をリリース。“飛ぶ鳥を落とす勢い”でハイレベルな楽曲制作を行ってきた19歳のアーティスト・Salaにとって、2021年はまさに飛躍の年だった。

年を重ねるごとに、彼女の成長スピードはどんどん上がっていくことだろう。そして数年後に彼女のヒストリーを振り返ったとき、“2021年”は間違いなく重要なターニングポイントとして音楽シーンに認知されるはずだ。Salaが昨年の活動を通しどういったことを考え、何を得てきたか。そして今後どのように音楽と向き合っていくのか。「今までの話」と「これからの話」その両軸をテーマに彼女に話を聞いた。

3年間眠り続けていた楽曲を解放すると決めた

―他メディアの取材で、ご自身の音楽のルーツとなっているミュージシャンにアリアナ・グランデを挙げていらっしゃいましたよね。

はい、小学校5年生の時に母がアルバムを買ってくれて、そこから聴くようになったんです。曲もファッションも憧れていました。あとはMISIAさんやSuperflyさんのようにパワフルな歌声に憧れを持っていて。そういう歌声になりたくて練習していたのは記憶にあります。
あと、高校に入った頃に知ったジャンルR&Bからの影響も大きいかもしれません。最近ではSIRUPさんやiriさんが好きでよく聴いてます。

―ソウルフルな楽曲、歌声がお好きなんですね。そこから実際に歌を歌い始めたのは?

高校1年生、16歳の時からです。実兄であるミュージシャン・Ryoma Takamuraが楽曲を思いついた時にデモを送ってくれるので、それに対し歌を乗せて返すのを繰り返すようになりました。

―当時から現在に至るまでにどれくらいの曲を作っていたんですか?

そこから実際にレコーディングに移った楽曲もあれば、デモで止まった楽曲もあります。なので、今までどれくらい曲を作ってきたかが正直分からず……(笑)。ただ、その時点で「Bossa」や「Together」のようなシングル曲はベースがほぼ完成していたんですよね。
2020年にコロナ禍が訪れ、あまり動けないなかでも本格的に音楽活動を始めよう、とは思っていて。3年間のなかで生まれた曲をちゃんと出していくために準備をして表に出せたのが、2021年でした。

―じゃあ、今回2021年11月にリリースされたEP『Fragments』の楽曲のなかには、3年前にすでに生まれていた楽曲もある?

そうです。例えば「Shadows」は高1のときに生まれた曲で、当時の声をそのままリリースしました。「Shadows」と同時期に作った「Fullmoon」は今回録り直しましたけど、構成はほぼそのままの状態かもしれないです。いずれも初々しい感じが残っていると思います。逆にシングル第一弾で出した「Loved More」は、2021年のリリースをめがけて制作しました。

―高1の時にすでにここまで難しい楽曲を歌えているとは……。でも、数年前に出した曲を2021年にリリースすることに抵抗はありませんでしたか?

むしろ「やっと出せたな」くらいのテンションでした。歌い直したいという気持ちもなかったし。今回出した楽曲は個人的に気に入っているか否か、という判断軸もあったのですが「ある程度形になっているかどうか」という基準もあったんです。なので、どの曲を発表するかは割とすんなり決まりました。ただ、先ほども言った通りデモ段階で止まっている楽曲もあるので、もしかしたら今後2022年以降にちょっとずつリリースしていくかもしれません。

コラボレーションを通して感じた自身の成長

―2021年のシングルカットでは「Bossa」で熊井吾郎さん、FLEURさんとコラボレーションし、「Together」ではサウンドプロデュースにShin Sakiuraさんを迎えていますよね。

そうなんです。本当にありがたい。もともとFLEURくんとはSNSで繋がっていて、お互いの曲を聴くなかでやり取りをしていました。FLEURくんが大阪に住んでいるので、遠隔でデモを送り合うなかで、熊井さんのビートを使わせてもらうことになり「Bossa」が生まれました。そして熊井さんのつながりで井上惇志さん(showmore)にピアノアレンジもいただいたりして。最終的にFLEURくんが東京へレコーディングをしに来てくれて、楽曲が完成しました。

―熊井さんとSalaさんはどういう繋がりがあったんですか?

もともと兄が「吾郎塾」(熊井が運営する音楽スクール)でサンプラー・MPCのレクチャーを受けていて、兄から紹介を受けました。そしてShinさんは熊井さんからの紹介を受けて存在は知っていて。私が16歳の時に挨拶をさせてもらったこともあったんです。
そのうえで「Together」はベースとなる楽曲がすでにある状態でShinさんと話し合い、オファーをさせていただいた経緯があります。

―お兄さん以外のアーティストとコラボするのも、Salaさんのキャリアとしては初めての経験になりますよね。実際にレコーディングをしてみていかがでしたか?

音楽について専門的な知識もまだなく、活動を始めたばかりの状態のなか、関わる機会をいただけたのは嬉しかったです。とにかく「こんなに歌の上手い人がいるんだ」と感激しました。私自身も新しい歌い方を覚えたり、ディレクションをしていただくなかで音楽の技術を身につけることができたり、と学ぶことが多かったです。
例えば3年前に作った「Shadows」はメインマイク1本だけで収録しているんですけど、その時は自分の声を重ねる発想がそもそもなかったんですよね。でもFLEURくんが声を重ね録りしてハモりを作っている様子とかを見て「こんなことができるんだ、やってみよう」って。自分でもEPの中の楽曲を聴き比べた時に成長を実感します。

―では、一連の楽曲を制作し、さまざまなことにトライする中で特にハードだった出来事はありましたか?

「Together」は歌うのが難しかったですね。サビのキーも高いし言葉がタイトに詰まっているので、結構練習を重ねました。実は、2年前くらいに「Together」のベースは完成していたんです。メロディは当時とそのままなのですが、構成とアレンジが大きく変わっていて。レコーディングに参加した時も正直テイクで戸惑っていたのですが、Shinさんがギターで音をとってくださって頼もしかったです。あと「Night」はレコーディングに時間がかかりましたね……。

―どういうところで苦労したんですか?

基本的に歌詞は兄が書いているのですが、「Night」が一番感情を込めて歌っている曲なんですよね。その表現は初めての試みでした。
この曲は『エターナル・サンシャイン』という映画がテーマになっているので、映画を実際に観て「なんとなくこういうイメージだ」と考えながら、兄と相談しつつ歌い方を決めました。1日で納得した歌が歌えなくて、結局2日間に分けて収録しました。

片鱗をのぞかせた“反響の年”、そして今後の成長

―EPのタイトルである『Fragments』は和訳すると“断片”という意味になりますよね。あらゆる制作活動に挑戦した数年間の集大成となるEPを、こう名付けた背景を教えてください。

まだ出していない曲があるという意味もあるし、自分がこれからどんどん成長していくだろうという意味もあります。「これからの未来に期待してください」というメッセージを込めて、このタイトルにしました。逆にどれだけ成長しても、完成することは多分ないはず。「これを達成すれば終わり」というものではないので、どんどん成長していきたいです。

―今のお話からも、2021年がSalaさんにとってまさに飛躍の年だったことが伝わってきました。では昨年を振り返り、Salaさんにとって、一番手応えがあったことは?

まずはみんなに自分の曲が届いて、レスポンスをもらえることが嬉しかったです。今まで楽曲が眠っていた時間もあったからこそ、人から感想をもらえることが初めてで。2021年は一言でいうと「反響をもらえた年」でした。
あとは、今回のコラボレーションに限らずアーティストとのつながりが増えたことは痛感しています。今までライブをしたことが無いからこそ、音楽の世界を知らなかったんです。特に同い年のシンガーさんとたくさん知り合えたし、彼らの作る音楽を聴ける機会が増えました。実際にまだ直接お会いできていない人もいるので、2022年は人と会う年にしたいですね。

―では、2022年に挑戦したいことはライブ?

ライブですね。まだステージに立ったことが無いから、想像もつかないんです。アーティストの皆さん、本当に「ライブが楽しい」って言うじゃないですか。私も昨年2021年12月に初めてインスタライブで『Fragments』の6曲を披露する無観客配信を行ったんですけど、それですら視聴者の方から反応をもらえることが本当に楽しかったんです。きっと、実際に歌を聴いてくれている人と対峙したらもっと楽しいはず。早く人前に立って、お客さんの反応を生で感じたいです。

―どういう場所でやってみたいですか?

うーん、一番やってみたいのは横浜で開催される〈The Greenroom Festival〉です。私の地元、神奈川なんですよ。本当にいつか出たい! あとは〈OTODAMA SEA STUDIO〉とか……。
そのためには引き続き楽曲を制作していき、ワンマンに挑戦できるほどの曲を生み出していきたいです。2020年〜2021年は楽曲をリリースする年でした。これからはリリースすることと、生で歌うことを並行する年になると思います。

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