TikTokで注目の音楽プロジェクト・0amが仕掛ける戦略的な楽曲作り
インタビュー
『BIG UP!』を利用している注目アーティストをピックアップして紹介するインタビュー企画。第81回目は0amが登場。
5歳のきのこオタク”ゆづっこ”の声をサンプリングした「毒きのこの曲」が動画配信プラットフォーム・TikTok上で話題となり、若い世代を中心に活動が注目されている音楽プロジェクト・0am。彼女らが2022年6月1日にリリースした新曲「UneUne」は、チルなトラックに合わせて梅雨時の「気分の乗らなさ」を歌った、極めてパーソナルな一曲だ。
彼女たちが心のうちを等身大の姿で曝けだす理由は、2人の活動拠点であるTikTokとも深く関係している。今回、メンバーであるMAKIADACHIとCOMiNUMに、彼女らの現在のスタイルがどのように形成されていったかをインタビュー。数々のエピソードには、彼女たちがTikTokの世界で音楽を発信し続けるための“戦略”が散りばめられていた。
タイプが一緒だと気付き「2人で組むとなんでもできそう」と感じた
- 結成は昨年10月と聞いて驚きました。お二人はそれ以前から面識が?
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COMiNUM:
確かに0amとして初めてリリースしたのは去年の10月なのですが、付き合いは結構長いんですよ。出会ったのが2017年とか。0amの前にも『MAKIADACHI&COMiNUM』っていう名義で2曲リリースしています。
- おお、そうだったのですね。お二人での活動をスタートさせたきっかけは?
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COMiNUM:
最初はそれぞれがDTMで打ち込みをして曲を作るスタイルのソロ活動をしていたんです。たまたま対バンで会ったのが最初だったのですが、お互いに似たようなスタイルでやっている同性のアーティストにほとんど会ったことがなくて。楽屋で話をして、私が主催する<DAW女子会>っていう打ち込み系の女性シンガーを集めたイベントに、MAKIADACHIも出てもらうようになりました。
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MAKIADACHI:
本当に珍しくて衝撃だったんですよね。作詞・作曲だけじゃなく、打ち込みまで全部をやっている女の子にほとんど会ったことがなかったから。曲作りのことで誰にも相談ができないので、抱える悩みも似ていて。
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COMiNUM:
お互い孤独だったし(笑)。引きこもって作業することが多い分「仲間をみつけた」ってことが嬉しかった。お互いソロでやりつつも活動に疲れかけていた時期がちょうど重なったのもあり、悩みを打ち明ける中で「一回一緒に作ってみよう」となりました。それで実際に曲を作ってライブで披露したら反応も良く、自分たちも手応えがあったんです。
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MAKIADACHI:
「面白いからMVも作っちゃえ!」って(笑)。でもその時は2人組で活動するつもりもなくて、お互いがソロで活動するなかで「たまにコラボしようか」みたいなテンションでした。
- そこから0amというユニットでの活動を決心したのは?
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COMiNUM:
コロナ禍が大きいのかな。ライブもできなくなったし。
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MAKIADACHI:
そうかもね。緊急事態宣言が出て2人とも心が摩耗し「ソロ活動、どうしよう」という不安があったんですよね。それでライブ活動もできない中、ちょうど私がゲームのMinecraftにハマっていたんですよ。それでCOMiNUMにも一方的にiPhoneアプリを送りつけたことがあって。
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COMiNUM:
まんまとハマりましたね。緊急事態宣言で何もやることがなかったから、やらざるを得なくて(笑)。最初は電話を繋ぎながらダラダラ一緒に遊ぶだけだったのですが、MAKIADACHIから「ここでライブをしよう!」と誘われて。
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MAKIADACHI:
時々私がMinecraftの中にステージを作り、アバターでファンの方向けにライブ配信をしていたんです。そのゲストとしてCOMiNUMにも出てもらって。それがめちゃくちゃ楽しかったんですよね。それだけじゃ物足りなくなって、夏ごろにライブハウスを借りて、『LIVE in Minecraft』として実写の配信ライブもやりました。グリーンバックの前でリアルライブをして、Minecraftのステージを合成して。そしたらそれも反響をいただきました。
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COMiNUM:
ま全部自分たちでやったから過酷だったけど、作業は苦じゃないというか。「やると決めたらやりきる」という性格もタイプが一緒だと気付き、「2人で組むとなんでもできそう」って感じました。そしてもう一度Minecraftライブをやることになり、2021年1月に「G.A.M.E.」というオリジナル曲を一緒に作ったんです。サブスクでもリリースしたところ、周囲からも反響があり、2人でやることに改めて手応えを感じました。それで、2021年5月に『MAKIADACH&COMiNUM』名義でTikTokアカウントを開設したんです。
TikTokを活動の拠点とする理由
- なぜそこでTikTokに至ったのでしょうか? もともとTikTokはソロ活動でも活用されていたんですか?
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COMiNUM:
私だけアカウントは持っていたのですが、そこまで活用はできていなかったです。2人でカバーの動画を撮った時にMAKIADACHIもアカウントを開設して。その流れでMAKIADACHIのアカウントからMinecraftライブの映像もアップしたら、知らない人からたくさんリアクションをいただき「TikTok、面白い!」と気付きました。
そこで「まだ出会ったことない人たちにも自分たちの音楽が届くかどうか、一回試してみよう」ってことになり、誰にも一切告知しないまま1ヶ月毎日投稿をスタートさせたんです。 -
MAKIADACHI:
お互いソロのTwitterアカウントとかはあったけど、そこでも何も言わずにね。オリジナル曲からカバー、DTMの打ち込み動画などをアップし続けたら、ちょっとずつバズるようになりました。特にYOASOBIの「怪物」をカバーした動画は手応えあったよね。
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MAKIADACHI:
そうそう。それで「9月に『MAKIADACHI & COMiNUM』としての集大成となるライブをしよう」と決め、5〜7月中はTikTokに専念し、8〜9月はライブで披露するための曲作りに集中しました。そして10月から0amを始めよう、と。
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COMiNUM:
TikTokに可能性を感じていたので、0amはまずは、SNSを中心としたプロジェクトにしよう、と決めていたんです。だからこそライブを“区切り”と考えました。ただ2人での持ち曲が3曲しかなかったから、1ヶ月くらいで曲を5曲作って。「ALARM」も「108」も「MARS」もその時に生まれたんですよ。いずれも最終的に0amとしてリリースするときにブラッシュアップしたのですが、当時はインスピレーション頼りで、勢いのまま作った気がします。
- なるほど。そうやって現在のTikTokを中心としたスタイルにたどり着いたんですね。現在5万人ものフォロワーを抱えていらっしゃいますが、ファンが増えたきっかけはなんだったのでしょうか?
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COMiNUM:
年明けにTikTok側から連絡を受け、「大久保佳代子さんのバズる音源を作ろう」というTBSラジオの企画に参加したんです。スタッフさんと大久保さんが考えた歌詞にトラックとメロディを用意し、毎週Podcastの収録に出演させてもらっています。しかも大久保さんという超一流のエンターテイナーや、番組内のTikTok担当者さん、スタッフさんとお話しすることができて。とにかく得るものが大きかったです。
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MAKIADACHI:
「TikTokではカッコつけよう」みたいな意識が無くなったよね。当時は実際に会った人からも「2人はそんなに仲良いんだね」って驚かれていたし(笑)。だからTikTokライブや普段の投稿でも、親しみやすい、パーソナルな部分を出していくようになりました。少しずつ素を出し始めてから、フォロワー数にも変化があったと思います。
親しみやすく、受け手の“共感”を意識しながら曲を作る
- 「セブンでモナカ」をはじめ、直近では「毒きのこの曲」が幅広いTikTokユーザーに使われてバズっていますよね。TikTok用の楽曲はどのように作っているんですか?
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COMiNUM:
TikTok用の曲は結構柔軟に作っています。普段のリリース曲は、最初にMAKIADACHIがトラックを作っているのですが、TikTok用では私も打ち込むことがあります。TikTokは情報量が多すぎると使いにくくなっちゃうので、シンプルかつ面白くて耳に残るような、ちょっと変な音が入るように意識しています。
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MAKIADACHI:
逆にリリース楽曲は分担がはっきりしていました。当初は私がトラックを作り、メロディーを2人で考え、それをCOMiNUMが持ち帰って歌詞を書き、言葉をブラッシュアップしながら一緒に録っていく、みたいな感じで制作していました。
@__0am__ ゆづくん@yz.910 に呼ばれた気がして🍄 #ロトスコープ #トレンド音源募集中 #毒きのこ #ゆづっこ #オリジナル曲 #tiktokcreatoracademy ♬ 毒きのこの曲 feat.ゆづっこ – 0am
- 今は違うスタイルを採用しているとか?
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MAKIADACHI:
前作の「Little Shy」から、メロと歌詞は自分で歌っているパートを自分で担当することにしました。ここ2作くらいはその作り方が型についてきました。
- 音楽面で影響を受けているアーティストは?
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MAKIADACHI:
2人で共通で好きなアーティストはCHARLI XCX。
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COMiNUM:
「やられた〜」「かっこいい〜」って言いながら、いつも聴いています。
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MAKIADACHI:
あと宇多田ヒカルさんは2人とも大好きです。2人ともまったくルーツが違う人間ですが、時々共通するんですよね。私は母が洋楽好きで、小さい頃からずっと洋楽を聴いて育ちました。J-ROCKが好きだった時期もあるのですが、高校からその派生でUKの音楽も聴くようになったんです。
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COMiNUM:
私は逆に邦楽好きの家で育ちました。並行して小さい頃からダンスをやっていた影響でR&Bやヒップホップにも触れていて、その後はシンセポップにもハマったりして。そんな感じの2人なので、0amのトラックはMAKIADACHIの洋楽のエッセンスが強く、メロディには私の歌謡曲ルーツのエッセンスも入るので、2人の“良いとこどり”ができていると思います。
その一方で、制作時に「それ、MAKIADACHIっぽすぎるでしょ?」とか「COMiNUM感が強いね。」とか「サビでそのメロディは0amっぽくないね」みたいな意見を2人で出し合うこともあるんですよ。
- お互いの「ソロっぽさ」をどう捉えていますか?
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MAKIADACHI:
敢えて特徴を挙げると、COMiNUMは洋楽系のトラックに邦楽メロが乗っているのが良さだと思います。私は逆に自分のメロはアンニュイな感じなんだと思ってます。
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COMiNUM:
アンニュイで“洋楽サウンド”という感じ。もともとMAKIADACHIのファンなのですが、0amでやる時はもう少しキャッチーさや伝わりやすさがあった方が良いのでは、という話をしたりします。2人で作る曲はみんなが口ずさめて歌えるけど、サウンドは踊れる、という意識をお互い強く持っていますね。
- 歌詞制作においても「みんなが歌える」は意識の中にあるのではと思いました。
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MAKIADACHI:
歌詞を作る時はメロディーへのノリ方を意識するので、私がやたら韻を踏みたがるんですよ。それがCOMiNUMにも伝染していて。その上で、伝わりやすく、遠回しにならないような意識は働きます 。“あるある”を言えたらなって。
- 新曲「UneUne」は特に“あるある”をキャッチーに捉えた印象がありました。
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COMiNUM:
2人の間で「0amとして梅雨を楽しむのか、梅雨を嘆くのか」が話題になったんですよね。梅雨、基本的には嫌いなんですよ。髪の毛もウネウネするし、心もモヤモヤするし。それなら、髪の毛のウネウネと心のウネウネを重ねて「楽しむわけでも嘆くわけでもなくありのままで良いよね」と歌う曲にしました。
- そもそも“梅雨で髪の毛がうねる”っていうパーソナルなテーマを取り上げた理由は?
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COMiNUM:
TikTokは聴いた人が音源を使って動画を投稿してくれるから、人々の生活のなかで「どうやって使ってもらえるか」「どういう人たちに届くか」に焦点がいくんですよね。そうやって受け手のことを考えるなかでたどり着きました。
- 先ほど「当初はTikTokでもカッコつけていた」とおっしゃっていましたが、TikTokで誰がどう受け取りどう使うか、という意識は0amを結成した時からすでにあったんですか?
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MAKIADACHI:
最初はむしろ「自分たちがやっていきたいこと」や「今思ってること」にフォーカスしていました。でも自分たちの中でTikTokという場所が大きくなったことで、多くの人へ届くものを意識するようになったかな。
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COMiNUM:
最初の三作(「ALARM」「108」「MARS」)はTikTokを意識せずに作ったんですよね。でも「108」はブラッシュアップをしていた頃が、TikTokがめちゃくちゃ伸び悩んでいた時期と重なっていて。当初の「108」では、カッコつけて“人々の煩悩”を客観的に歌っていたんですけど、「TikTokに上げても伸びない」「なんで誰も見てくれないんだ!」っていう自分たちのモヤモヤを隠しながら歌っていることに疑問を持ち始めたので、レコーディングの前日、夜中にベッドの中でLINEのやり取りをして全部歌詞を書き直しました。
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MAKIADACHI:
私たちの人間性や考え方に正直じゃないと、届くところに届かないんじゃないかなって。「Little Shy」の《友達になりたいな》という歌詞も受け取ってくれる人たちのことを考えながら歌っています。「私たちは人見知りだけどもっと仲良くなりたい」と。「Little Shy」はTikTokも意識しつつ、自分たちをさらけ出そうとした曲。制作スタイルも変えてみたし、0amの中でも新しい方向を目指せるようになった曲です。
- 最後に、0amとして活動することでの目標はありますか?
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COMiNUM:
たくさんの人に届く音楽を作りたいです。映画の主題歌も書き下ろしてみたいし、テレビ番組でも歌いたいし、大きいステージで歌いたい。行けるところまで行って、大きくなり続けたいです。そのうえでTikTokという発信ツールがあるからこそ、まずはTikTok発信のヒット曲を出したい。
TikTokは本当に夢があります。ここで本当に世界へ行けるんじゃないか、って思うよね。 -
MAKIADACHI:
思っちゃうね、本当。実際に届くからね。
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COMiNUM:
これからも 2人だからできる活動を続けながら、世界につながっていけたらいいなって思います。
Presented by.DIGLE MAGAZINE
【Information】
RELEASE:
Digital SG「UneUne」
2022年6月1日より各配信サービスにて配信中
▼楽曲配信先URL
https://big-up.style/crSIDZiKRX
New Digital SG「毒きのこの曲」
2022年6月10日より各配信サービスにて配信