KADOMACHIが奏でる豊かなアンサンブル。人懐こさのなかに垣間見える芯の強さを紐解く
インタビュー
『BIG UP!』を利用している注目アーティストをピックアップして紹介するインタビュー企画。第92回目はKADOMACHIが登場。
名古屋出身の男女4人組バンドKADOMACHIは、音楽でメンバー同士がおしゃべりしてるような豊かなアンサンブルが独特の人懐こさを醸し出す。その実、リズムの緩急やブラックミュージックからの影響を感じるグルーヴやコード感も顔を出すあたりに、ありそうでないバンドの曲者感を感じる部分も。
現在のメンバーでは約4年の活動歴を持つが、今年の4月に〈murffin discs〉が主催するオーディション<murffin AUDITION 2021-2022>で準グランプリを獲得。〈murffin discs〉から11月16日にリリースした3曲入りシングル『カド・マル・サンカク』で、より多くのリスナーにKADOMACHIの音楽が届きそうな今、メンバー全員の音楽的なバックボーンやニューシングルの着想などを訊く。
4人それぞれのルーツとバンド結成の経緯
- メンバーのみなさんが音楽に興味を持つきっかけになった出来事を教えてもらえますか?
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小栗 翔(Ba., Cho.):
小学校のときに来た転校生に ONE OK ROCKの「Re:make」を聴かせてもらって、「めちゃくちゃかっこいい!」ってなって、そこでバンドを始めたいと初めて思ったんです。ほんとはドラムがやりたかったんですけど、叔母がベースを持ってて、それをもらったんで、しょうがなくベース始めたんですよ。LUNA SEAが好きで、見た目が同じベースを買ったけど、別に弾きたいとかじゃなくてずっと眠らせてたみたいで。それをもらって始めた感じですね。中学生になってからは「バンドメンバーを集めたい」と思ったので、高校には軽音部のある学校に行って、まず細川に声をかけました。
- 小栗さんがバンド結成の言い出しっぺなんですね。細川さんは?
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細川 尚弥(Vo., Gt.):
小学校5〜6年ごろにオレンジ色のウォークマンを買ってもらってから、めっちゃ嵐とポルノグラフィティを聴いてましたね。一旦それで音楽聴くブームは終わって。中学生になって、どうやら幼馴染の石濱がアコギをやってるらしいぞってなったんです。
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石濱 優(Gt., Cho.):
二人とも美術部だったんですけど、活動がすごい地味で、何やってもいいみたいな雰囲気で。で、たまたま先生が持ってきてたアコギをクロッキーの時間にモデルに持たせてみんなが描くっていう。
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細川 尚弥(Vo., Gt.):
そのときに石濱がゆずの「夏色」のイントロを弾いてて、「かっこいい!」ってなって(笑)。「俺にも教えてよ」って言って、父親が置いていってたボロボロのクラシックギターをチャリの前かごに入れて、石濱の家に行ったんです。
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一同:
(笑)。
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細川 尚弥(Vo., Gt.):
それがだんだんエレキギターに変わっていき、中2の後半ぐらいに俺と石濱が同時ぐらいにRADWIMPSを知って。よく釣りに行く幼馴染がいて、そいつが「RAD聴けよ」って言ったんですけど。で、そのタイミングでライブ観に行って、多分僕の人生初ライブがRADWIMPSの日本ガイシホール。もう感激しちゃって。石濱も行ったよね?
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石濱 優(Gt., Cho.):
行った。
- RADWIMPSはいつ頃の?
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細川 尚弥(Vo., Gt.):
盤で言うと『×と○と罪と』(2013年12月作品)で、そのツアーに行ったのが最初だった。
- 石黒さんはどうですか?
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石黒 瑞穂(Dr., Cho.):
最初に音楽に触れたのは小学校のときの鼓笛部のトランペットで。そんなに新しいことにチャレンジする性格でもないんで、中学校に入ってからもまた音楽系やろうかなと思って吹奏楽部に入って。担当楽器が決まる前に一回全部の楽器を体験してから希望を出すんですよ。で、打楽器が一番かっこよくて、第一希望で出して、第六希望ぐらいまで出すんですけど、全部通らなくて。
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細川 尚弥(Vo., Gt.):
どういうこと(笑)?
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石黒 瑞穂(Dr., Cho.):
で、なんかまあクラリネットになったんですけど、めちゃめちゃ悔しくて。ドラムがやりたかったんで、部活とは別でショッピングモールの中にある楽器屋さんで中1から習い始めました。クラリネットは部活でやりながらドラムはずっと一人でやってたんで、みんなでバンドでやってみたいと思って、軽音部がある高校に入って(メンバーに)出会ったっていう感じですね。
- リスナーとしては何を聴いてたんですか?
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石黒 瑞穂(Dr., Cho.):
その頃は関ジャニ∞を聴いてて。関ジャニ∞もバンドやってるんですけど、その曲でドラム叩く練習もしてましたね。初めてのライブも関ジャニ∞をナゴヤドーム(現・バンテリンドーム ナゴヤ)に観に行ったのがルーツで、高校の同じぐらいのときにRADWIMPSに出会って。私は『RADWIMPS 4〜おかずのごはん〜』(2006年)で「ふたりごと」に出会って衝撃を受けて。ジャニーズからバンドに入っていったっていう感じですね。
- 石濱さんは?
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石濱 優(Gt., Cho.):
私はちっちゃい頃に、半分親に言われるがままピアノを始めて。で、中学生ぐらいになってゆずを聴くようになって、めっちゃ聴き込んでるうちに弾きたいなあってなって、アコギに移りました。で、高校の吹奏楽部でパーカッションをやって(笑)。その頃までは結構受動的というか、されるがままに音楽をやってたんですけど、細川に「バンドやらん?」って誘われてからは、「曲書いてみよう」と思い始めて。わかりやすい始まりはそこかもしれない。バンド組んだから、曲書き始めたみたいな。
- じゃあこの4人で一緒にやり始めてからはコピーじゃなくてオリジナルを?
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細川 尚弥(Vo., Gt.):
うですね。この4人になってからはコピーはやってないんじゃないですかね。
- ちなみにこのKADOMACHIというバンドネームですが。
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石黒 瑞穂(Dr., Cho.):
何だったんだろ? “角”って落ち着くよねみたいな。
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細川 尚弥(Vo., Gt.):
そう。“〜まち”がなんとなくいいって最初思ってて(笑)。で、「角っちょって落ち着くから“かどまち”ってどう?」「うんまあいいんじゃない」っていう(笑)。
- 日本語が良かったんですね。
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細川 尚弥(Vo., Gt.):
それはちょっとこだわりがあったかも。
- 日本語で、しかもローマ字表記なのは珍しいかもしれない。
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石黒 瑞穂(Dr., Cho.):
ローマ字にしたほうが見た目がなんとなくいいねみたいな感じだったんだよね? たしか。
「音楽の話をするというよりKADOMACHIの話をしてるかも」
- そして2020年の「黒い怪獣」の配信リリースが最初ですか?
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石濱 優(Gt., Cho.):
2018年にCDとしてリリースした『カドダラケ』っていうのがあって、それに収録されてるんですけど、配信されたのは2020年のアレンジのものですね。
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細川 尚弥(Vo., Gt.):
僕がちょっとアレンジしてリリースし直したっていう感じなんです。「黒い怪獣」は石濱が書いた曲なんですけど、それを基点に結構いろいろ動いたことが多いねっていう感じの曲ですかね。だから結局始まりではあるかな。
- 高校生ぐらいまでの志向からは想像できないぐらい、それこそはっぴいえんどやサニーデイ・サービス、星野源さんなどの要素を感じる曲で。
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石濱 優(Gt., Cho.):
『カドダラケ』の後、私ははっぴいえんどとか結構聴いたので。
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細川 尚弥(Vo., Gt.):
そうだね。2020年にアレンジしたタイミングでは結構いろいろなものを聴き始めたかな? だからギターフレーズに影響が出てたりとか、僕のアレンジでキメ感がちょっと渋くなったりとかはあったかもね。
- 2年間でいろんなものを吸収・昇華してるってことですかね。
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細川 尚弥(Vo., Gt.):
そんなかっこいい言葉でいいのかっていう(笑)、我々からしたら。
- いやいや。KADOMACHIは作曲する人が作詞すると決まってるんですか?
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細川 尚弥(Vo., Gt.):
基本的には作曲したやつが作詞もするっていう感じですね。
- みなさんが各々で吸収してるものをあまりまとめようとせず、そのまま入ってる感じがしてて。それが他の邦ロックの流れとは全然違う印象を持たせるのかもしれない。
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細川 尚弥(Vo., Gt.):
嬉しいですね。
- そして今年の4月に<murffin AUDITION 2021-2022>を受けていて、やはり何か次のアクションを起こしたい感じだったんですか?
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細川 尚弥(Vo., Gt.):
もう完全にそれでしかないですね。「もう自分たちだけでやってられっか!」って感じです。大学を卒業するタイミングだったっていうのもあって。僕と石濱は結局一年休学して、もうじき卒業なんですけど、それもあって将来を考えるタイミングだよねっていうので、「ちょっと拍車をかけたい、かかったらいいなあ」と思って、一か八かで受けました。まあ、一か八かなりに自信はあった感じなんですけどね(笑)。
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石黒 瑞穂(Dr., Cho.):
なんとなく応募してみるっていうか、「いいんじゃない?」みたいな。あんまり今までそんなにオーディションムーブみたいなのはなくって。
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細川 尚弥(Vo., Gt.):
<未確認フェスティバル>まではちょっと燃えてたけど、その三次のライブ審査までいって燃え尽きてた時期があったんですよ。「もういいや」っていうか、「オーディションなんてクソやん」って思ってた時期が(笑)。擦れてたんですよ。それで内向的な音楽になった感じはあるね。
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石濱 優(Gt., Cho.):
というかそれ以降、アンサンブルとか、音の重なりとかに注目してて。で、今〈murffin〉のオーディションで準グランプリになって、またオープンになりつつある。
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細川 尚弥(Vo., Gt.):
〈murffin〉のオーディションの日にたまたまワンマンを入れてて、「行けないです。今回はすみませんでした。ここまで通してくれてありがとうございました」って伝えたんですけど、なんとワンマンに来てくれて。
- 観にきてくださったんですね。
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細川 尚弥(Vo., Gt.):
そう。で、そのときのワンマンもライブハウスじゃなくライブカフェみたいなところで。 なんか「ほんとに大丈夫かな?俺たち」って思いながら。
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石濱 優(Gt., Cho.):
結構その時期はガチャガチャだったね。いろんなもの取り入れたり、路上ライブやったり。
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細川 尚弥(Vo., Gt.):
それこそ僕が録音できるのもあって、ライブで録音してその日にそのCDを売るみたいなイベントを作ってみたりだとか。でも、それやっててどうなるの?って言ったらなんかどうなるかちょっとわからんし。「面白いね」っていうだけっていうか。
- なるほど。そういうユニークな企画もバンドが盤石になったからというより、面白いことをやらないと不安だったから?
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細川 尚弥(Vo., Gt.):
どこか特徴的でありたかったんだと思います。
- 現時点では聴くものが広がったと思うんですけど、音楽的な共通言語として「今、これ熱いね」みたいなことは話さないんですか?
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石濱 優(Gt., Cho.):
Vulfpeck(ヴルフペック)とか?
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細川 尚弥(Vo., Gt.):
バンドとか音楽で言うとそうだね。とか、KADOMACHIの話、自分たちの話とか。
- じゃあデモを持ってきて「じゃあやるか」ってなるまでは具体的にあまり話さない?
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石濱 優(Gt., Cho.):
たしかに。ここは(細川と石濱)話すか。
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細川 尚弥(Vo., Gt.):
デモとか新しくできたメロディを二人で共有してたりするんで。
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小栗 翔(Ba., Cho.):
で、完成したらやっと俺と瑞穂に流れてくる。
- 作家チームはどんな話をしてるんですか?
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細川 尚弥(Vo., Gt.):
石濱は曲もそうなんですけど、「このMV面白いよね」っていうのを送ってきたり、たとえばOfficial髭男dismのタイアップの曲とか聴いて、「こんなにタイアップに強いバンドすごいよね。やってみたいねタイアップ」とか。石濱と僕は音楽の話してるから、全員で音楽の話をしてるつもりになってるけど、意外と全員ではしてないんだよっていうのに今気づいたかもしれないなあ。だから、そこ(石濱が作ってくるもの)に関しては結構信用しきっている感じですね。石濱が「たぶんこれは違う」っていう発言をしたらうちら3人は信じるんですよ。
- 石濱さんは音楽的な指針なんですね。
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細川 尚弥(Vo., Gt.):
そう。で、クリティカルな意見を言ってるようですごい大雑把なことを言ってくるから(笑)。石濱ってメンバーをまとめてるイメージが僕はあるんですけど、そのやり方が放牧みたいっていうか、「この範囲内でお前ら自由にやれよ」って言われてる感じがする(笑)。
- リーダーシップというか、人心掌握術にも長けた人なんですかね。
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細川 尚弥(Vo., Gt.):
そうだと思う。でもリーダーシップではないんかな?
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石濱 優(Gt., Cho.):
よく「リーダーいるんですか?」って聞かれるんですけど、うちはリーダーがいないのが結構音楽にも出てる感じはしてます。
同じテーマで作ったのに全然違う「いつかのいつも」と「サプライズ」
- 『カド・マル・サンカク』収録の3曲はこのシングルに向けて作った感じなんですか?
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細川 尚弥(Vo., Gt.):
いや、「サプライズ」と「いつかのいつも」は岡村さん(〈murffin discs〉担当者)チョイスで、「これは再録したい」と。ほんとは5曲ぐらいの予定だったんだよね?
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石濱 優(Gt., Cho.):
いっぱいデモを作って。で、その中から「これいいやん」ってことで「スピード」が選ばれて3曲入りのシングルになって。
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細川 尚弥(Vo., Gt.):
結構俺が推した感じもあるけどね。「スピード」でいきたいっすって。「いつかのいつも」と「サプライズ」が並んでいる中で、テンポ感的にも「スピード」が録れたら嬉しいなと思って、「スピード」でいった感じですね。
- 「いつかのいつも」はKADOMACHIなりのモータウンソウル的なものもちょっと感じたんですが、細川さんとしてはどういう着想でした?
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細川 尚弥(Vo., Gt.):
実は「サプライズ」と「いつかのいつも」は同時期に石濱と同じテーマで作ろうぜって言って作った曲なんですけど、僕は半年間ぐらい東京に来てるタイミングがあって、働いてたんです。そのときに作曲するかって言って、「手拍子ができる感じの曲を作ろう」っていうぐらいだったよね?
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石濱 優(Gt., Cho.):
そうだね。裏拍で手拍子ができる。
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細川 尚弥(Vo., Gt.):
じゃあ同じテーマで作ろうって言ってできたのが「サプライズ」(作詞・作曲 石濱)と「いつかのいつも」(作詞・作曲 細川)で、もう完全に人間性の差が出てる感じ。
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石濱 優(Gt., Cho.):
面白いよね(笑)。
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細川 尚弥(Vo., Gt.):
だから結構僕的には面白い2曲が並んだなっていう。
- テーマとしてはビート感とか、若干テンポ?
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細川 尚弥(Vo., Gt.):
そうですね。ライブでやったときのノリとかっていうのを考えたかな。観客をどうやってのせようかっていうのの僕らなりのアイディアで一つのアンサーじゃないけど、クラップっていうのはそれですかね。
- 細川さんの歌詞は割といつもそうなのかもしれないですけど、言葉を信じてはいないけど使わずにはいられないし、みたいなニュアンスを感じます。
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細川 尚弥(Vo., Gt.):
あー、なるほど(笑)。
- うまく伝わったためしがないみたいな。
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細川 尚弥(Vo., Gt.):
そうですね、もう対話からそうです。なんかうまく伝えられてんのかはわからんもんね?
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石濱 優(Gt., Cho.):
うん。
- それが結構個性にもなってるし、言い回しもいわゆる日本語ロックで使うのか?っていう珍しい感じの歌詞を書いているのかなと。
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細川 尚弥(Vo., Gt.):
たぶん全然普通の歌詞も書けるんですけど、それを歌ってる自分があんまり好きじゃないなって思って、たぶんこうなってるんだろうなと思います。
- リズムのアイディアで同じテーマで書かれた石濱さんの「サプライズ」はたしかに言葉遣いも違うし、ギタリストが作る曲だなという印象でした。
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石濱 優(Gt., Cho.):
ひたすらユニゾンフレーズを入れたり、ギターが弾いてないときにベースが出てきて、ベースが終わったらドラムが出てきてみたいな、ちっちゃいオーケストラみたいな波は作りたいなあっていうのはありますね。それこそうちのバンドで武器にしたいところはアンサンブルだろうっていうのがあったから。それを前面に出しつつ、ちょっと自分の好きなブラックミュージックを入れるっていう感じですね(笑)。
- ブラックミュージックの要素っていうのが面白いですよね。ヒップホップ的というか。
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石濱 優(Gt., Cho.):
そうですね 80年代のちょっとR&Bが混ざってるぐらいのヒップホップを一時期めっちゃ聴いてて、その影響が滲んで出てる感じがします。
- 「サプライズ」が面白いのはラップ部分で。ここは割と細川さんに対する課題か?っていうぐらい。
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一同:
ははは。
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石黒 瑞穂(Dr., Cho.):
KADOMACHI、ラップなんてなかったもんね。
- 最初からどこか一部分をラップにしたかったんですか?
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石濱 優(Gt., Cho.):
そこの部分は最初はユニゾンのフレーズが入ってて、で、メロがはまんないなあと思って、ラップにしたっていう着想ではあります。で、詞的には結構コロナ禍のことを思って書いてあるところが多いです。
- 実際やってみて細川さんはどうですか。やりにくかった?それとも面白かった?
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細川 尚弥(Vo., Gt.):
この曲は再録する前の音源があって、二音下だったんですよ。そんときは印象がかなり違ったよね? もっとチルっぽかったっていうか。その感じから二音上げて、だいぶ歌い方も明るくしたのがマッチしてんのかどうかっていうのが、ちょっと難しいなっていうのを歌いながら思ってたけど、特に何ら違和感はなく。「いいやん」くらいにしか思ってなかったから(笑)。
- チルアウトだとありがちですもんね。
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細川 尚弥(Vo., Gt.):
そうなんですよね。キーが低いとやっぱかなり印象違ったからなあ。
- この曲はビート感もキモだと思いますが、石黒さんは後ろ乗りのビートをどう体得していったんですか?
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石黒 瑞穂(Dr., Cho.):
音楽をこだわって聴くことがなくて。Apple Musicの『トップ100:日本』とか、そういう流行りものをランダムで流して聴くぐらいの感じだったんで、こういうビートを体得したのはデモをもらって、勝手に身に染みてったみたいな(笑)。勝手にもう体に入れ込まれてる感じがあって。あと、他のメンバーのみんなが聴いてる音楽を聴いて育ったみたいになっちゃって(笑)。
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細川 尚弥(Vo., Gt.):
なるほどね。ルーツKADOMACHIってこと(笑)?
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石黒 瑞穂(Dr., Cho.):
そうだね。KADOMACHIの曲がルーツみたいになってます。
- 面白いです。D’Angelo(ディアンジェロ)聴いててQuestlove(クエストラブ)のドラムを覚えるみたいなことじゃないんですね。
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石濱 優(Gt., Cho.):
結構雑食っていうか、雑食かつ素直に「これいいんだけど」って私のお勧めの曲とかをみんなスッと聴くし、聴き込むよね。
- たしかにKADOMACHIが影響源になってますね。そして新曲の「スピード」は一番意外性がありました。
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石黒 瑞穂(Dr., Cho.):
結構、王道で作ったって言ってたね。
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細川 尚弥(Vo., Gt.):
そう。僕なりにもうおりゃ〜!っていう感じで特に何も考えずに作ったつもりなんですけど、なんかやっぱ変な要素が色々入ってきちゃうもんだなあっていう。
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石濱 優(Gt., Cho.):
最初から転調してたもんね。
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細川 尚弥(Vo., Gt.):
(笑)。最初もう一個、転調があったりしてたんですけど。
- 出だしはリズム&ブルース寄りのロックンロールですけど、曲が終わる頃に違うとこ来たなみたいな。
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細川 尚弥(Vo., Gt.):
たしかに。違う土地連れてかれてんなあっていう。
- なんでこうなるんですかね?
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細川 尚弥(Vo., Gt.):
わからない!僕もわからない!教えてほしいです(笑)。
- (笑)。ちょっとサイケデリックな間奏が入るし。
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細川 尚弥(Vo., Gt.):
あれは着想的に言うんだったら、もう機材でしかないですね。俺も石濱も楽器が好きだから、ディレイの発信にハマっている時があって。それを入れたい!っていう単純な発想ですね(笑)。で、だったらその後の石濱のソロはいっぱいリバーブとディレイかけよう!っていう。「どっかにワープしたみたい」って思って、サビのキーが下がったバージョンのやつができて、そっからまた転調するこの変な感じがいいなあと思って。
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石濱 優(Gt., Cho.):
それこそ(細川は)結構頭からバーッて作ってるじゃない? 私は全体を作って、作り込む感じなんですけど、細川は頭から作っていくから、最後どこかに連れてかれる感じになっちゃうのかなと。
- セッション感もあるバンドなのにデモは作り込んでるんですね。
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細川 尚弥(Vo., Gt.):
そうですね。リズムに関しても、作曲者が振ったのを基本的には忠実に弾いてるだけといえばだけなんですけど、そこに結局、プレイヤーの色が乗っかってくるんです。なんで、一切セッションじゃないね?
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石濱 優(Gt., Cho.):
だからRECがセッションみたいな感じ。瑞穂が叩くと「こういう雰囲気になるんだ」っていうのを悪いものとしないというか。デモと違ってもね。
身内以外のプレイヤーを入れた曲も作ってみたい
- では最後に今後の予定だったり、挑戦したいことを教えてください。
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細川 尚弥(Vo., Gt.):
この前、スタジオで初めて鍵盤を入れてやってみたんですけど、その子はかなり応用が効くプレイヤーなんで、何とかまとまったんですけど、これまであんまり4人のアンサンブルに他の楽器を介入させることが一切なかったし、僕が怖かったんですよ。自分たちは他のバンドで弾ける人たちじゃないから、自分たちの身内じゃないプレイヤーを入れるのが結構怖かったんですけど、入れてみたらすごい面白くてね?
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一同:
うんうん。
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石濱 優(Gt., Cho.):
刺激的。KADOMACHI+1みたいなね。
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細川 尚弥(Vo., Gt.):
そういうことも次の展開としてできたらいいなって思ってる。
- 今のヒット曲や再生回数の多い曲を見てるといわゆる王道って?って感じになってるじゃないですか。KADOMACHIが目指していきたいところっていうのはどこなのかな?と。
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細川 尚弥(Vo., Gt.):
僕しゃべっていいですか?
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一同:
どうぞ。
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細川 尚弥(Vo., Gt.):
今、ライブをたくさんやろうってなってて、今までは4人横並びだったんですよ。僕が一番上手にあたる感じでやってたのが最近、センターボーカルになって。いわゆる王道バンドみたいな感じのセットになったんですけど、それでも今までやってた変なグルーヴとか、やりたいアドリブ感とかっていうのは滲んじゃうから。だから一旦意識的には王道なほうに寄ってみようっていうシーズンなんですよね。それでも自然と王道になりきらないといいなぁって思ってるっていう感じかな。
- 見る人はその方が入り口としては入りやすいですからね。
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細川 尚弥(Vo., Gt.):
それはあるかもしれない。
- 王道のセッティングで、実際に演奏をやり始めたら「なんか変わってるね」と(笑)。
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細川 尚弥(Vo., Gt.):
や、それでいいんかなと思って。一旦入り口が大きくなるといいなと思ってます。
- 気が早いんですが鍵盤が入った新曲も楽しみにしてます。
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細川 尚弥(Vo., Gt.):
はい。俺たちも楽しみです(笑)。
Presented by.DIGLE MAGAZINE
【RELEASE INFORMATION】
KADOMACHI New Single 『カド・マル・サンカク』
2022年11月16日リリース
1.いつかのいつも
2.スピード
3.サプライズ▼各種ストリーミングURL
big-up.style/DkQVONc7I3