『Beyond The Campus vol.2』 – HALLEYインタビュー –

インタビュー

⾳像で導く間接的世界平和とは

はじめに

『Beyond The Campus』とは、早稲⽥⼤学の公認サークルWaseda Music RecordsがBIG UP! zineとタッグを組み、学⽣アーティストにインタビューを⾏う企画です。本企画はリレー形式となっており、第1弾アーティストThe Bagpipesさんのご紹介を受けまして、第2弾のゲストとしてHALLEYさんにインタビューを行いました。

結成の経緯について

-まず、結成した経緯やオリジナル曲を作った経緯について教えていただきたいです。

清⽔)結成はフワっとしているというか、たまたま同じタイミングでTHE NALEIO(早稲⽥⼤学の軽⾳サークル)に新歓で集まった奴らです。ほぼ。
⾼橋)そうね。
清⽔)俺とテヒョン(張)が最初の新歓に来て、オリジナルでやっていくっていうよりは取 り敢えずサークルのバンドを組もうってなりました。次の回で他のメンバー探そうってなった時に、Gtの晴(登⼭)と鍵盤の⼼(⻄⼭)が来て、2⼈に声を掛けました。継(⾼橋) とテヒョンが学⽣団体の友達で、ベースをやっていたので呼んでくれました。
張)そう。ちょうどベースが必要だったんで。THE NALEIOって意外と敷居が⾼いんです。 ブラックミュージックサークルで、バンド制サークルなんです。
清⽔)固定バンドのね。
張)新歓がセッションなんですよ。即興演奏会みたいなのをスタジオでやるんですけど、それで友達ができたらバンドを組んで⼊会するシステムです。
清⽔)バンド結成イコール⼊会なんです。
張)そう。だからそこで友達ができなかったり、バンドが組めないと⼊会できないんです。
清⽔)怖い要素が2つあって、まず先輩が後ろで⾒ているっていう怖さと、OBも後ろで⾒ているっていう(笑)。
登⼭)僕と今⽇いない⼼(⻄⼭)は⾼校の先輩と後輩で、そこにフォークソング部があったんです。僕の代で軽⾳部になったんですけど、顧問になってくれた先⽣に教えてもらって、⼤学でもやりたいねってなって⼀緒に新歓に⾏きました。
張)バンドやろうってなった順番は、晴と⼼、僕と清⽔が新歓。最後に呼んだのが⾼橋です。その間は1週間くらいです。結成して⼀か⽉経たずに顔⾒せライブがあったんです。顔⾒せライブが終わったその⽇の夜に継(⾼橋)の家に集まって朝まで寝ずに1曲作ったのが 「breeze」って曲です。その後曲をもう2曲作って、8⽉に初ライブをしました。その時 作った曲と「breeze」の3曲が今出しているデモのEPです。
清⽔)7⽉17〜18⽇に「breeze」を作って、初ライブは8⽉23⽇ですね。
張)その2週間後に僕はカナダに⾶んでます。僕がいない間インストバンドでやってくれていました。

-その時期に我々のオーディション企画に出演してくれましたよね。

清⽔)ボーカルがいなかったので勝ち上がれないことは分かっていて、⾳源を出してみて反応をいただけたら嬉しいよねって感覚でした。
張)僕がいない間、インストのみんなはそれぞれ練習してパワーアップを重ね、⾳楽理論が全く分からなかった彼(清⽔)は曲を作り、我々HALLEYの楽曲の半分くらいは彼(清⽔)の作曲から始まりました。
清⽔)彼(張)もカナダにいる間曲を作ってくれていました。
⾼橋)⾵邪引いてなかった︖
張)⾵⼟病か分からないけど、喉が潰れてしまって歌えない時期が半年以上あったんです。これはもうミュージシャンにならないとダメだよっていうお告げだなと思いました(笑)。ちゃんとコンポーズ(作曲)しないとこの世界で負けるんだぞっていう(笑)。
清⽔)普通、喉が壊れたらミュージシャン向いてないぞって感覚になるよね(笑)。
張)試練だと思いました(笑)。カナダにいた9カ⽉で、トラックは計100曲作りました。その中で良いなと思ったのは3、4曲です。その3、4曲を⽇本に戻ってきてすぐにメンバーを呼んで僕名義でライブをしました。今聴くと、⽇本で作る曲とカナダで作った曲の質感は全然違います。場所で変わるんだなと。
⾼橋)本当にそう。
張)僕が作る曲は、粗が無いというか、クリーンなR&B。HALLEYはダークでバンドっぽい。
清⽔)⼤枠で⾒たら似て聴こえるかもしれないけど、作⾵の違いは少しある。
張)HALLEYの曲は清潔感がない(笑)。
登⼭)HALLEYは⾳楽的に危ないことをクリーンに聴かせようとしてるというか。
張)聴きづらいものを聴きやすくする努⼒というか。
登⼭)例えば「Breeze」とかも。2⼩節ごとにずっと転調しててキーがどんどん変わってるんですけど、ビートも⼀般的なJ-POPにはないようなビートを使っています。違和感がキャッチーなメロディーの下にあることで、全体は凄く馴染んでるけど、今まで聞いたことない感じを作ろうとしています。
張)確かにそうだね。僕が作る⾳楽の⽅が、バックのミュージック、⾳楽とメロディーがかなり⼀致するんですよ。解釈が⼀致するんですけど、HALLEYの場合は、まずその作曲の段階からそうなるしかないだろうっていう作詞の仕⽅なんですけど、メロディーと僕のボーカルはほんとに1ミリも気にしないんですよ。まず曲を作ってからメロディーを乗せるってこ とをするので。
登⼭)「こういうことをやってみたい」って気持ちが先⾏してます。

-挑戦とかこういうこと、新しいことやってみたいなみたいな。やってから⾊々付け⾜している感じですかね。

張)まずボーカル抜きで⾯⽩いものを作ってから、ボーカルで更に⾯⽩くさせるっていうことをしています。
登⼭)そうそう、それを更にちゃんとキャッチーなものに収めないと、R&Bにもならないし。歌物にならないから。
張)売れたいって⾔ってもね、売れない⾳楽作っても意味ないから(笑)。

-初めてしたライブについてのお話などありますか︖

張)初めてしたライブが結成から2ヵ月とかでした。達成感半端なかったっていうのめっちゃ覚えてます。
清⽔)しかも楽曲制作より先に会場のブッキングをしてました。オリジナル曲は3曲のみで30分。正直無理です。だからジャズスタンダードのアレンジを詰め込みました。
張)しかも何がやばいってMCなし。

-なかなか聞かないですよね。

清⽔)8⽉のライブまでに作った曲があって、またそこから⽇を経てテヒョン帰ってきてから何曲か⼊って、そこからシングルをリリースしようってなった時に、その段階で曲が8、9曲ぐらいあって、3曲ぐらいかいつまんでシングルを作りました。その中の1つが代名詞の「breeze」です。
登⼭)曲が出来た順にリリースはしてないですね。

-音楽との最初の出会いやきっかけはありますか?

⾼橋)俺は教会に⼩さい頃から⾏ってて、遊ぶ時とか教会でずっとゴスペルが流れてて、当時は⽇常の中の⼀部だったんですけど、歳を重ねてから聞くと楽しいって気持ちなるのがゴスペルでした。⾊んな⾳楽を聴きますけど、やっぱりゴスペルを選んで聴いてます。ベースを初めて触ったのは⼩学⽣の頃です。教会でバンド編成を作る時に、ベースがいなかったのでベースをやりました。
清⽔)⼩学校1、2年⽣ぐらいの時にMichael Jacksonの訃報を⾒て、⽗ちゃん⺟ちゃんCD買ってよって⾔って、それを100回ぐらい聞き込んでました。凄い覚えてるのは、スピーカーで低⾳が鳴ってる時、体にうってくる感じが凄く好きでした。⼩学校4年⽣の時に吹奏楽部に⼊って、それを1番出せる楽器なんだろうなって考えた時に、ティンパニーとかドラムとかだなって考えて、ドラムを始めました。中学に⼊ってからはオーケストラを、⾼校では友達と⾳楽をやってました。
張)僕も教会育ちなので、ずっと教会に通ってた影響を受けてます。賛美の時間が⼤好きでした。その時から歌うことに対して羞恥⼼は無かったです。丁度⺟が賛美リーダーだったのでずっと聴いてました。⾃分が歌えるんだって⾃覚を持ち始めたのは、幼稚園の頃でした。幼稚園の先⽣がピアノを弾きながら、クラスメイトが集まって、園児が歌う時に、僕1⼈で 裏声を出してたんです。そしたら先⽣に「裏声出せるんだ凄いね」って⾔われて、その時初めて、「あ、歌えるんだ。」って思いました。中学1年⽣の僕がタイに1年間住んでた時に、家主の娘さんが置いていったギターがあって、そのギターをずっといじって遊んでました。⽇本に帰ってきた時に、⺟にギターを買ってもらって、その時から弾き語りを始めました。
⾼橋)僕は⽣まれてから中3までずっと⾹港にいて、その時に⽗親が⾳楽をやっていたので家にギターがあって、⾃分もたまに触ってました。中1の時に、アメリカから来た友達がめちゃくちゃヘビーメタル好きで、そいつと仲良くなってメタルにハマりました。そいつがギター持ってたので、僕も親にギターを買ってもらって、⼀緒に部屋にこもって沢⼭練習してました。今でも結構ファンクギターが好きです。後ろに徹してグルーブを作ってるみたいなのが凄く好きです。

影響を受けた楽曲について

-影響を受けた楽曲5選を教えていただきたいです。

清⽔)選び⽅から話すと、各々の⾃分のルーツというか、⾃分に影響を与えたであろう楽曲を1つずつ選んでます。まとまりはあまりないです(笑)。
登⼭)1曲⽬はMadvillanの「Raid」です。⾃分は、ジャズヒップホップ系のヒップホップが好きで、この曲を初めて聴いた時に、ビート感やサンプル元とかが⾯⽩くて、めっちゃかっこいいなと思って。このビートに対してこう歌うんだ、といった発⾒があったりとか。 ⾊々な発⾒がこの曲に詰まってます。盤を通して聴きまくってるけど、1番好きな曲を選びました。

-ありがとうございます。それでは2曲⽬は︖

清⽔)2曲⽬は僕の選んだ「Smack’em」です。
これはGhost-Noteっていう、テキサスのSnarky Puppyっていう有名なフュージョンのプロジェクトがあって、そのドラマーとパーカッショニストが独⽴して組んだ、新しいパンク向きのバンドです。僕が⼤学1年⽣、コロナ禍の時に、ちょうどゴスペルサークル⼊って、 Michael jacksonとかもあいまって、THE NALEIOとかでそういうジャンル(R&Bやファンク)やりたいってなったけど、結局コロナで⾊々なサークル活動が無くなって、家に引きこもってゴスペルとかを掘りまくってる時に、何かのタイミングでGhost-Noteに辿り着いて、「これやばい」ってなりました。 コピーしまくって、1年間くらい聴き倒してて、そこからTHE NALEIOに⼊って。⾃分の1つの⼤きな転換点なんじゃないかな。この頃は正直R&B全般に詳しいわけじゃなくて。THE NALEIO的なスタンダードは無知なままというか、Michael JacksonとGhost-Noteしか知らない状態でTHE NALEIOに⼊ったことを振り返ると僕を形成してくれた曲の1つかな、という感じです。
清⽔)3曲⽬は⻄⼭セレクト。
張)彼はRoy Hargroveの「I’ll Stay」という曲を選びましたね。
清⽔)渋い曲ですね。Roy Hargroveの『Hard Groove』っていう、ジャズファンクの2000年代の作品。この時代D’AngeloとかErykah BaduとかR&Bの世界もネオソウルという ⼤きな時代を築いている時に、当時Roy HargroveもSoulquariansっていう⼤きなグループをしながら⾃分の作品を磨いていました。僕の感覚からすると渋いです。
張)渋い。しかも浮いてない︖
清⽔)浮いてる。浮いてるって宣⾔すると、こいつ(⻄⼭)が後から「そんなことねえよ」っ て⾔うかもしれないけど(笑)。
登⼭)RHファクターの盤は⾳が良すぎて、正直今のミックスとかそういう今のプロダクションでもめっちゃ参考にするくらい、2003年とは思えないです。
清⽔)でも本当になんかミックスだけじゃなくて楽曲としても現在に影響してんだなこれって思う。知らない⼈に聞かせたら2003年って分からないんじゃないかぐらいの。
登⼭)でもこれ(「I’ll Stay」)は2003年ってわかるくらい渋さのある曲。⻄⼭はこの盤を 聴き込んだ結果この曲が最終的にキタんだろうな(笑)。
⾼橋)4曲⽬は「Love Theory」っていうR&Bゴスペルって⾔ったらいいんですかね。1番有名って⾔ってもいいぐらいの曲です。
張)ここからゴスペルに⼊る⼈結構いるんじゃないかな。
⾼橋)僕が今まで聴いてきたようなゴスペルとは違うゴスペルを初めて聴いて。ゴスペルっぽくないけど、めっちゃかっこいい、、ってなって。
これをきっかけに僕はR&Bとかを好きになったのかなと思っています。⾃分の中では HALLEYっていう⾳楽性、ネオソウルとかR&Bていう⾳楽性があるけど、その前に⾃分の知ってたゴスペルからR&Bに繋がった結果、今の⾳楽性との架け橋になってるし、R&Bが好きなんだなって気付いた作品でもあって、⾃分の⼈⽣が変わった曲です。

-ありがとうございます。それでは5曲⽬は?

張)これはThe Walls Groupの「Perfect People」っていう曲なんですけど、これもKirk Franklin系譜ではあるんですけど、ゴスペルでR&Bで。
ちょっと古い、ちょっと古臭いんですけど、2014年に出てる盤なので。中学⽣くらいかな聴いたのかな。ゴスペルとR&Bがフュージョンしているような、近代的なゴスペルを初めて聴いたのがこの曲で、ずっと聴いてましたね。後半に凄くかっこいいリハモナイゼーションが出てくるんですけど、それがえぐられるくらい⼤好きで。この⼈の歌い⽅にも凄く影響を受けています。韓国のソウルシンガーたちや彼らの歌い⽅に。僕のボーカリストとし ての原点かなと思って選びました。

楽曲について

-⾳楽を通して伝えたいメッセージはありますか︖

張)いろんなアーティストのインタビューとか⾒ると、やっぱり⾔葉で語るものってとても薄いんですよ。私が経験した苦労の中から⽣まれたアルバムですとか、世界を平和にしたいですとか、勇気を与えたいですとか、薄いじゃないですか。
登⼭)敵作ってる(笑)。
張)何がメッセージ性を裏付けるか、強くするかっていうと、やっぱり⾳像なんですよ。何が⾔いたいかっていうと、そのメッセージを伝えるために、⾳楽にどれぐらい⾃分の努⼒と感情を落とし込めたかどうかっていうのがとても⼤切で。結局どのぐらい⾃分が⾔いたいことがあっても、どうしても⾔う内容って薄っぺらい。その薄っぺらい内容がドンと⼼に響くには本当に苦労しなければいけないし、本当に⾃分の⼈⽣がどのぐらい変わったのかっていうのを伝えるために⾳楽に落とし込むこの作業が凄く⼤事。その作業をしっかりやってて、尚且つ⼈⽣も厚みのある⼈⽣を送って来た⼈たちの⾳楽だからこそ⼈々は感動を覚えるのかなという⾵に思います。しかもやっぱり詩じゃなくて、歌詞ってフランクなものも沢⼭あるし、詩的な歌詞もあるけど、⽇本の詩とか英語の詩は⾔葉だけで全てを伝えなきゃいけないから、格式張っているというか。⾔葉が難しかったり、状況をしっかり要約しなきゃいけなかったりって学問が発達するんですけど、⾳楽に関してはそういう学問があまりない。その理由は、そういう⾔葉を⾔葉の⼒より⾳楽の⼒で後押しするからだと僕は思って、どれぐらいその⾃分のメッセージと哲学と、⼈⽣経験と体が感じている全てのものを⾳楽として落とし込む、⾳楽と⼀緒にメッセージを出すっていうのがとても⼤事だと思っています。なので、僕たちがどういう⼈⽣を⽣きてるのかっていうのを、如実に⾳楽を通して⽰したい。時と場合によって、⼈⽣のどこのタイミングで僕がその⾔葉を語るかによってメッセージが変わってくると思いますけど、メッセージとしては、今までの⼈⽣、僕が1年後、2年後作る⾳楽は、1年後の⾃分がどういう時を過ごした、2年後の⾃分がどういう時を過ごしたかっていうのをメッセージとして据えたい。という意味で特にメッセージは無いです。
清⽔)俺もそれは分かる。全ての楽曲が⼈に勇気を与えるために作っているかというと、少なくともそうではない。
登⼭)⾃分は、メッセージとかは無いんですけど、凄く遠い間接的な世界平和活動だと思っ ています。例えばラーメン店主さんが凄く美味しいラーメンを作るじゃないですか。 別にラーメンにメッセージがある訳ではないけど、お客さんがラーメンを⾷べて、昼から仕事頑張れるとか、そういう積み重ねで全体が変わっていくと思っています。そういうことは得意な⼈がそのことをやればいいというか。⾃分だったら、⾳楽です。
清⽔)間接的世界平和は解釈が⼀致する。
登⼭)⾃分が⾳楽が出来ることに希望を⾒出してるから、良い⾳楽を作ることで、凄く遠い何かがちょっとずつ変わったら⾯⽩いなって思っています。
清⽔)僕は国際政治、国連に興味があります。⼤学で政治学の授業があって、その先⽣の授業が良いんです。「君たちが世界を動かしたいなら国際機関に⼊るんじゃなくてインフルエンサーになりなさい。君たちが国連を⽬指して⼊って、今⾃分の中に思ってる世界平和像を 反映させられるかっていうとそういう訳ではない。 今君たちが1番⼒を持てるのは、かいつまんで⾔っちゃうと、SNSでアクティビティストとして動くことだったりするのかもしれないよ。」という授業の締めくくりをしたんです。それまでは⼤学院に進んで、国連⼊ってとか、キャリア形成とか考えたんですけど、⼀回全部⾃分の中で良い意味で⽩紙に戻しました。結構その時と⾳楽にのめり込むタイミングが⼀致して。間接的世界平和と聞いて共感しました。
登⼭)直接歌詞に世界平和を願うような歌とかは全然ないけども、良い⾳楽を作れば、良い⽅向になってくんのではないかなって思ってます。それは全世界に対してとかじゃなくて、 ⾃分の周りの⼈間の範囲とかでも全然良いと思うけど。ただHALLEYに関しては、どんどん規模を⼤きくしていけば、やりたいことが沢⼭出来るなっていうビジョンがあって、それに向けてどんどん今活動しています。
⾼橋)少し戻るけど僕は、テヒョン(張)も⾔ってたように、⾳楽を通して伝わることって、その⾳楽が良いって思った時にその⾳楽を作ってる⼈、その⼈たちがいた環境を皆⾒るんです。実際その⼈たちってどういう⼈たちなんだろうって、我々に⽬がやっぱ当たると思うんです。HALLEYが歌詞で⾔いたいことと、実際裏で会った時にしていたことが全く違ったら凄くかっこ悪いし、説得⼒無いなって思います。なので、⾔葉の中で⽭盾を持たせないように⽣きたいです。
張)ステージはさ、⾃分の⼈⽣を溶けこましてるよね。
⾼橋)どこの世界でも嫌な⼈はいると思うんだけど、そういう⼈たちが結局⼒を持っちゃって、得して、本当に良い⼈が損する世界もある。そうなっても、HALLEYは真っすぐでいたいよねって思うし、HALLEYってそういう⼈たちなんだなって思われたいです。皆真っすぐ⽣きてる⼈たちだなって思うから。
張)結局、⾳楽と歌詞が密に接しちゃっているっていうのが⾳楽だと思うので。その中で、曲1つ1つにメッセージがあるかって⾔われたら、ぶっちゃけないのが事実ではあるけど、それは結構ポジティブな意味で。というのも、友達と会って喋る時に、よし、今⽇はこれを 話そう、あれを話そうって会いに⾏くわけじゃないじゃないですか。それと⾳楽は全く同じだと思っていて、僕が作る歌詞1つ1つには僕の感情が込められている。僕の⽇々の浮沈み、浮いてる時と沈んでる時の歌詞を書いてるし、沈んでない時の歌詞も書く。そういうのをオーディエンスが聴く時に、会話のように受け取ってくれたら、それがメッセージじゃないかなって思います。こういう⾵なことを考えたとき、みんなの⼈⽣はどうですか、って⾃分のことを考え直す時間にもなるだろうということを思いつつ、徒然草のようにしてるわけです。
登⼭)HALLEYの作品を作るときに、アルバムとか、EPとかで、コンセプトとか考えるんですけど、コアコンセプトの段階では、メッセージがあるとかじゃなくて、創作の初速を与える、0から1にするきっかけがコンセプトです。例えば2つの⽅向で迷った時に⽴ち返ってこっちだって選べるようにコンセプトを⽴てるっていうだけで、コンセプト⾃体にメッセージ性があるわけではないんです。
張)ただ、メッセージ性の無い詩は要らないって昔の英詩の評論家が⾔ってたんです。世の中には意味があり得ない歌詞が多すぎる、っていうことですね。頑張っていこうぜみたいな適当な歌詞なのに意味ありげな歌詞を書く⼈は好きじゃないんですよ。詞に込める思いは絶対あります。曲ごとに込めるメッセージが変わっていくのだけれども、全体を通してのメッセージみたいなのは無くて。ただ1つ1つ詩を通して何らかを語る点ももちろんある。そういうことです。
清⽔)そこは作品の完成度とかに関わるもんね。作品の完成度を低くしたいって訳じゃないよね。メッセージ性がないから何でもいいってわけじゃなくて。
登⼭)そうそう。
清⽔)作品の「質」とか「練度」はあるから、そこは追求するけど。でも必ずしも世界平和 に直接的に向かう訳じゃないです。
登⼭)この作品はこういうことを語ろうみたいなものはあるけど、活動全体を通して何かを伝えよう、とかはないっていう。難しいな(笑)。
張)表現者っていうことですね。

学⽣⾳楽シーンについて

-学⽣⾳楽シーンにおいて⾳楽を広める⽅法は何だと考えていますか?

清⽔)学⽣⾳楽シーンはサークルが切り離せないなと。というか、ほぼサークルによって成り⽴つものだと思っていて。学⽣同⼠、⼤学同⼠の交流って結構多くて、僕も早稲⽥のTHE NALEIOに⼊ってから⼀気に世界が広がったというか。隣⾒たら東⼤⽣とか藝⼤⽣もいるし。早稲⽥の他のサークルにも顔を出す ようになったし、⻘学や法政のジャズ研との繋がりも出来たりとか、上智のゴスペルサークルに⾏ったりとか、そういうふうに輪が広がります。そこで⼀個の⼤きな界隈があって、そういうところに我々は結構⽀えられてるなって。慶應にも沢⼭友達がいてライブに来てくれたり、⼀緒に⾳楽やろうぜって⾔ってくれたりセッションやったりしますし。僕らはそういう⾵に⾃然に広がっていきました。他⼤学の知らない1年⽣に「HALLEYの⼈ですよね」っ て⾔われたりするけど、それってやっぱり界隈があるからかなと思っています。
登⼭)ミュージシャン同⼠の繋がりが、学⽣には結構⼤事です。
清⽔)他の界隈の⼈からガードするんじゃなくて、仲良くしてるからこそっていう部分はあります。
張)僕も早稲⽥に来て初めてこんなに⾊々な⾳楽知ってる⼈いるんだっていうのと、僕と似通った⾳楽の趣味を持ってる⼈がいるんだっていう発⾒が同時にありました。学⽣で1⼈で⾳楽やりたいって思ってる⼈はまず早稲⽥に来ればって思います。
清⽔)俺もそう思う(笑)。
登⼭)変わるよね、相当。
張)他の⼤学に⾏けばとかじゃなく、まず早慶に来た⽅が良いよって僕は多分⾔うと思います、学⽣に。もし有志を探したいんだったら。
清⽔)早稲⽥⼤学学⽣会館地下1階に来たほうがいいよってね。
張)マジでマジで(笑)。界隈としてもう既に確⽴してる。そこからカラコルムの⼭々が出たりとか、僕らを紹介してくれたThe Bagpipesとか。
登⼭)めちゃくちゃ仲良い(笑)。
張)この後紹介するBLACK BERRY TIMESもそうですし。カラコルムの⼭々とThe Bagpipesに関してはフジロック出てますから、この界隈からちゃんと認められるぐらいのところまで⾏けるっていうのが証明になってるんじゃないかなと。⾳楽を広める⽅法と、今の話がそこまで直結してはいないんですけど、学⽣ミュージシャンに出会いに⾏くっていうのがまず絶対必要なんです。学⽣ミュージシャンの界隈に⾃分の⾜をちゃんと突っ込んでいくのと同時に、外に向こうとしないと。The Bagpipesもカラコルムの⼭々も同じでずっと外に向こうとしてるバンドで、そういう⾵に外に向いて、例えばオーディションに⾏ったりとか、ライブハウスのライブに出たりとか、あるいはもうライブハウスにデモ送っちゃって出演させてくださいって⾔ったりとか、あとはSNSで⾃分たちを拡散していったりとか。そういう地道な努⼒で、偶然思いもよらぬ場所で声が掛かったり、フジロックに呼ばれたり。
登⼭)今のプロミュージシャン達も⼤体学⽣時代は経験してるから、絶対学⽣の時から⾊々やってるんですよ。だから多分当時から、今のプロミュージシャンの世代とかでも学⽣時代から関わりはすごいあっただろうし。それと同じような構造というか仕組みが多分今もあるっていうのは凄く感じますね。やっぱり先輩たちも先輩同⼠繋がってるっていうのがあるから。
張)でもこれはすごい伝統的というか、コンベンショナルで、なんかもう太古の昔からあった⾳楽を広めるための⽅法だと思います。
登⼭)確かに。凄く古いスタイルではある。
張)新しいスタイルは⼀発を狙うっていうやり⽅(笑)。でもそれは本当にコロナのおかげで広まっただけであって、凄く外れ値というか、あらゆる可能性の中の1、2パーセントなものであって、そういう⾵にSNSでのし上がってる⼈たちは、やっぱパンデミックがあったからだと僕は思っています。これからどんどんそういうメソッドは広がっていくかも知れないけど。
登⼭)いわゆるシーンみたいなのもやっぱアナログな気がします。
清⽔)テヒョン(張)の話聞いて確かにって思ったのは、俺らとかThe Bagpipesとかカラコルムの⼭々ってそれぞれ別に普段は群れてないんですよ。
登⼭、張)群れてない。
清⽔)例えばフジロックの応募とかもそれぞれ個々でやってて。
張)知らないしね。
清⽔)それで、思わぬところで共演したりとか。だから地盤は持ちつつも界隈って結構それぞれ外に向いてるっていうのはあると思います。
張)だからエジソンの⾔葉が本当に合ってますね。99パーセントの地道な努⼒と、「偶然 誘われた」とか、「偶然どっかの⽬に付いた」っていう1パーセントとの掛け合いじゃない︖ 99パーセント努⼒をしないと広まらないけど、1パーセントのその助⼿的な出会いがない とブーストはされないっていう。そういう世界だと思います。

おすすめの学生アーティスト

-最後に、本企画がリレー形式ということでおすすめの学生アーティストはいらっしゃいますか?

清⽔)BLACK BERRY TIMESです。2⼈組のユニットですね。⾃主制作でアルバム1個出してて、今もシングルを作成してます。レコーディングに周りの⼈を結構呼んでて。次のシングルのドラムを僕が叩いていて、そういった縁もあります。ジャンルも僕らのやってるようなコテコテのR&Bとかに影響を受けてるようなジャンルと、JPOPの融合体のような、より聴きやすいアーティスト。
張)しっかりとポップスとして昇華させたようなアーティストです。

-では、次回の『Beyond The Campus』はBLACK BERRY TIMESさんにインタビューさせて頂きたいと思います。ありがとうございました。

HALLEYプロフィール

張 太賢(Vo.)、登⼭ 晴(Gt.)、⻄⼭ ⼼(keys)、⾼橋 継(Ba.)、清⽔ 直⼈(Drs.)、東京を拠点に活動している5⼈組R&Bバンド。2021年5⽉、早稲⽥⼤学ブラックミュージックサークル「The Naleio」での出会いをきっかけに結成。Jazz、R&B、 Soul、 Gospel、 Funkなどの影 響を強く受け、ポップスでありながらもブラックミュージックの⽂脈を感じさせる⾳像が特徴。

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インタビュアー・エディター︓押⽊珠⾥愛、野⼝愛紗、杉井颯、松島光