見せかけのエネルギーではなく曲の良さで魅了したい。The Relaxinsが模索し続ける自分たちなりのロックンロール

インタビュー

『BIG UP!』を利用している注目アーティストをピックアップして紹介するインタビュー企画。第120回目はThe Relaxinsが登場。

兵庫県西宮市出身の4ピースバンド・The Relaxins(ザ・リラクシンズ)の最新EP『lamp』が、2024年1月24日に配信リリースされた。初期衝動をそのまま体現したような荒々しさやスピード感のある今までの作風とは一転、今作はテンポ感もゆったりとした4曲が詰め込まれている。

一聴して感じるその違いが生まれた理由についてはもちろん、バンドの変遷から今、彼らはどんな活動をしていきたいのか?という未来の話まで、メンバー全員に話を伺った。

ザ・リバティーンズに憧れて現在の体制に

The Relaxinsが今の4人になったのは2021年とのことですが、このメンバーに至るまでの経緯を教えてください。
ハユル

ハユル(Vo. / Gt.):

オリジナルメンバーが僕と、ベースのトモスエで、ダニー・D・ボーイとオニマルは後から入ってくれました。トモスエとふたりになったときに、ドラムを入れてスリーピースでやろうかという話になって、ドラマーを募集したんです。そしたら何故か、元々面識があったダニー・D・ボーイが「ギターを弾きたい」と声を掛けてくれて、まさかのギターが加入するということになりました(笑)。

トモスエ

トモスエ(Ba.):

僕らも戸惑いはしたんですけど、一緒にスタジオで合わせてみた後にファミレスで話したんですよ。そのときにダニー・D・ボーイに「ヤバいギターは弾けますか?」と聞いたら、「俺はね…弾けると思うよ」と答えてくれたんです。

一同:

(笑)。

ダニー・D・ボーイ

ダニー・D・ボーイ(Gt. / Vo.):

そうだったね(笑)。当時の彼らは、シンプルな日本語ロックンロールをしていて、僕自身もその音楽性に惹かれました。ライブも何度も観たことがありましたし、その上で、「僕が入ったらもっと良くなるのにな」とも思っていたので、声を掛けました。

ハユル

ハユル(Vo. / Gt.):

なので、弦楽器隊の3人が揃ってから、ドラマーが決まったんですよ。オニマルにも当時サポートしてもらっていて、そのときからいいなと思っていて。でも、彼がバンドメンバーとしてやっていくことに興味があるのかどうかが分からなかったので、東京での2本のライブを一緒にやってもらうことでバンドの楽しさを感じてもらおうと画策していたんです。そしたらオニマルが発熱してしまって、1本キャンセルになっちゃって。作戦失敗かなと思ったんですけど、関西に帰ってきてから「一緒にバンドやりませんか?」と声を掛けたら、すんなりOKしてもらえました。

オニマル

オニマル(Dr.):

ハユルの言う通り、「バンドを絶対やりたい!」という前のめりな気持ちは抱いてなくて。でもそれは否定的な感情だった訳ではなかったので、誘ってもらえて嬉しかったです。僕自身、どこにも加入してなく、ひとりでドラムを叩いていたので、バンドをすることで「自分の幅を広げることにも繋がるんじゃないか?」と考えたことも、加入の決め手だったと思います。

元々は初期衝動あふれるザ・ロックンロール!という楽曲が多いように思うのですが、みなさん自身はそれぞれどういった音楽を聴いていたんですか?
ハユル

ハユル(Vo. / Gt.):

僕はTHE BLUE HEARTSをきっかけに、彼らが影響を受けた70年代のパンクやThe Rolling Stones(ザ・ローリング・ストーンズ)などを通って。それから日本語でロックンロールをやっているバンドも聴いていました。

トモスエ

トモスエ(Ba.):

黒猫チェルシーや毛皮のマリーズといった、2000〜2010年代の日本のロックンロールを聴いていました。そこから系譜を辿るように、ソウルやブルースを聴いていって。でも、昔からずっと聴いているのはYUKIですね。今はいろんな音楽を聴いてます。

ダニー・D・ボーイ

ダニー・D・ボーイ(Gt. / Vo.):

中学生くらいからTHE BLUE HEARTSを聴いていて、高校時代に軽音部に入ってからは、Green Day(グリーン・デイ)やBlink 182(ブリンク 182)といったアメリカのポップパンク、そこからThe Who(ザ・フー)やThe Clash(ザ・クラッシュ)、ガレージリバイバルと言われるThe Strokes(ザ・ストロークス)やThe Libertines(ザ・リバティーンズ)を聴いてました。特にThe Libertinesにハマって、同様にツインボーカルができたら面白そうだなと思ったのもあって、このバンドに加入したんです。

トモスエ

トモスエ(Ba.):

ギターを弾きたいと言って入ってきたけど、結局ボーカルもやるっていう(笑)。

オニマル

オニマル(Dr.):

僕は幼い頃からエレクトーンを習っていて、ドラムも小学校4年生くらいからやっていたんですけど、音楽を聴くという習慣があまりなかったんです。家では、親が好きだったMr.Childrenなどが流れてはいました。大学時代に軽音部に入ってからBUMP OF CHICKENを聴きましたけど、それまではあんまり聴いてこなかったです。でもそこから「いろんな偉大なドラマーの音を聴きたい」と思うようになって、洋楽・邦楽問わずジャンルレスに聴くようになりました。

ロックンロールのマッチョな思想が嫌だった

4人の共通点はあれども、どこかに偏り過ぎてないところが今のThe Relaxinsの音楽性に繋がっているように思います。全員が上京するという大きな環境の変化もありつつ、今作『lamp』を聴くと、大きな転換期を迎えているように感じますが、考え方の変化については、思い当たることはありますか?
ハユル

ハユル(Vo. / Gt.):

(2021年から)約1年間このメンバーで関西で活動しているときは、ふたりが入ったことで全く違うバンドになった気持ちは抱きつつも、曲の作り方にしろ、表現や演奏の仕方にしろ、加入以前の感覚を持ったままバンドを続けようとしていた節があるんです。でも、2023年に上京してから、そのやり方に行き詰まりを感じたんですよね。この4人で演奏していてもあんまり気持ち良くなれなかったし、これはどうにかしなきゃいけないなと考え始めたのが、2023年の初めくらいでした。

ダニー・D・ボーイ

ダニー・D・ボーイ(Gt. / Vo.):

東京に来て焦りもあって、ライブをたくさんやっていたんですけど、一旦ライブを控えて楽曲作りに向き合おうとなりました。

ハユル

ハユル(Vo. / Gt.):

そこでメンバーみんなで、「なんでバンドをやっているのか?」「どうしてバンドをやりたいのか?」といった、かなり深いところまで話し合いました。その中で、僕たちはライブでがむしゃらに感情を爆発させるというよりも、しっかりと完成度の高い曲を作りたいし、4人で演奏して気持ち良くなりたいよねという話になったんです。

そうだったんですね。
ハユル

ハユル(Vo. / Gt.):

今まで僕らはずっと日本のロックンロール・シーンでやってきて、ライブバンドのかっこよさはもちろんあるけども、一歩間違えると大道芸になってしまうというか、派手にやったもん勝ちな面があるなと思うようになったんです。お客さんもそういう激しさを喜んでくれるのは分かっているんですけど、「それは見せかけのエネルギーなんじゃないか?」と考えるようになったら、自分たちが気持ち良くなれなくて。ロックンロールの体育会系というか、マッチョな思想が嫌だったんですよね。なので、そこから離れて「自分たちはどうしようか?」となった結果が、今作の作風の変化にも繋がっています。

ダニー・D・ボーイ

ダニー・D・ボーイ(Gt. / Vo.):

僕は、東京に来てから“洗練=無駄なものを削ぎ落とす”をテーマに掲げて、必要最低限なんだけどそれで充分と思えるようなアレンジを追求するようになりました。例えば、ギター&ボーカルがコードを鳴らして、リードギターがその中で弾く、といった、オーソドックスな作りをやめたいなと思ったし、その意図は前作(2023年リリースのシングル)「SHELTER IN THE RAIN / WORDS OF LOVE」にも込められています。
とはいえ、あの頃は方向性は見えていても、実際に満足いくほど昇華しきれていなかったなと思います。でもその頃から、ギター1本でコードを作るのではなく、ギター2本とベースの演奏が上手く絡むようにしたいという気持ちが強くあって、それはアレンジとして今作でも活きていると思います。

トモスエ

トモスエ(Ba.):

去年の話し合いをきっかけに、誰かひとりでも欠けたら、バンドとして、曲として、成立しないような音楽をやりたいと思い始めていたので、そういったアレンジの方法はかなりしっくりきました。曲を作ることやライブをすることの意味をより深く考えるようになりましたし、ロックンロール由来の音量の大きさや速さに委ねるのではなく、もっと質の高い音楽を作りたいと思うようになりましたね。あとは、個人個人の想いをそれぞれ爆発させるのではなく「バンドとしてどう高まっていけるか?」と考えられるようになったのも、大きな変化ですね。

オニマル

オニマル(Dr.):

バンドとしての流れの面でも、バンド中心に生活ができているという面でも、上京前と比べると今のほうが明らかにやりやすくなってます。

質の高い音楽を突き詰めたい――理想のバンド像と現在のムード

2023年以降、ハユルさんとダニー・D・ボーイさんが共同で楽曲制作を行うようになったとのことですが、そういった制作方法の変化についてはいかがですか?
ハユル

ハユル(Vo. / Gt.):

これまでは自分の想像の枠内で曲ができ上がっていたけど、共作にすることでそれを超えてきてくれるという面白さがありますね。

ダニー・D・ボーイ

ダニー・D・ボーイ(Gt. / Vo.):

元々僕が加入したときは、自分が歌う曲は各自が作るという分担制だったんです。それが、基本的にはハユルが0から1を作ってきて、そのアレンジを僕が担当するというやり方が、今のところ一番しっくりきていますね。ハユルが言ってくれたように、想像を超えていきたいと思いますし、驚かせたい!という気持ちを持ってやっています。

ハユル

ハユル(Vo. / Gt.):

共作というか、分業に近いよね。僕がブロックを用意して、ダニー・D・ボーイがそれを組み立ててくれるというか。自分がやることに集中できるというメリットもあります。

今作『lamp』は、そういった変化を踏まえて作られた4曲ということですが、きっかけとしてできた曲はどの曲ですか?
ハユル

ハユル(Vo. / Gt.):

4曲目の「叫び出したい」は、僕が以前弾き語りで作っていた曲で、今の制作方法に変わってからようやく納得できる形でバンドアレンジに落とし込めた曲です。この曲は、結構みんなでスタジオで調整していきました。いろいろな方法を試しながらの制作だったので、本当に常に過渡期という感じでしたね。

ダニー・D・ボーイ

ダニー・D・ボーイ(Gt. / Vo.):

1曲目の「海辺のパヴ」と2曲目の「花束かれた」は、今の制作方法を踏まえた上で一番理想に近い形にできた曲ですね。「春嵐」は僕が作った曲なんですけど、初めて歌詞をハユルに丸投げした曲です。

自分が歌わない歌詞を書く、という経験はどうでした?
ハユル

ハユル(Vo. / Gt.):

めっちゃ難しかったですね。何度も彼からNGを出されました…。母音の歌いやすさ/歌いにくさや、言葉の並びから得られる印象の違いなどをシビアに指摘されたので、かなり勉強になりました。

ダニー・D・ボーイ

ダニー・D・ボーイ(Gt. / Vo.):

口の動かし方って、人によって全然違うもんね。

ミックスの一部と、全曲のレコーディングやマスタリングを自分たちで行ったということで、こちらもかなり勉強されたのだろうなと思いました。
トモスエ

トモスエ(Ba.):

昨年リリースした「SHELTER IN THE RAIN」や「WORDS OF LOVE」も、自分たちでレコーディングとマスタリングを行い、ダニー・D・ボーイにミックスをしてもらったんです。

ダニー・D・ボーイ

ダニー・D・ボーイ(Gt. / Vo.):

そのときには正直あんまり納得できなかったので、それからめちゃくちゃ勉強しましたね。その原因がレコーディングなのかミックスなのかが分からなかったので、今作はミックスの一部をプロの方々にもお任せしつつ、自分の曲は自分でやってみるという対照実験的なことをしてみました。

音作りもかなり試行錯誤されたんですね。みなさんそれぞれが思う好きな曲や、聴きどころを教えてください。
ハユル

「花束かれた」は、最後まで「もっと良くなるんじゃないか」と迷い続けてましたね。

トモスエ

トモスエ(Ba.):

歌詞の分かりやすさと説明しすぎないようにするという部分のバランスはいつも気にしてるよね。

ハユル

そうだね。分かりやすい歌詞を書きたいとは思ってないんですけど、歌詞は詩とはまた違うと思っているので、そのギリギリのラインを狙い続けてはいます。

トモスエ

トモスエ(Ba.):

個人的に「叫び出したい」は、リズムについてかなり考えたなと思います。自分がルーツとして聴いてきたリズム&ブルースを重んじながら、自分たちらしさとして昇華できたんじゃないかなと思います。

ダニー・D・ボーイ

ダニー・D・ボーイ(Gt. / Vo.):

僕は「海辺のパヴ」と「花束かれた」ですね。「海辺のパヴ」は、さっき話したような3人でのコード作りがよくできたなと思います。途中のギターソロも、ふたりでリードをやるという挑戦が叶ったものだったので、“洗練”というテーマが活かされているなと思います。「花束かれた」の最後のコーラスも、空間を広げるイメージでニューウェーブ的なリバーブをかけたもので、思い立ったその日に僕の部屋にメンバー全員呼んで、録ったんです。

トモスエ

トモスエ(Ba.):

ひとりずつ「パッパッパ」ってコーラスを歌ったよね(笑)。

オニマルさんの今作についての印象は?
オニマル

オニマル(Dr.):

音楽性としては、昔のThe Relaxinsの感じよりも、今作のほうがしっくりきています。ドラムの話で言うと「叫び出したい」に思い入れがありますね。僕は最近はデモでもらったフレーズの8割をほぼそのまま叩いているので、自分でドラムフレーズを考えることはあんまりないんですけど、この曲の間奏の部分は僕が考えたやつなんです。聴いていて奇抜すぎず、でもちょっと変なことをしているという塩梅が気持ち良くできたなと思います。曲として好きなのは「花束かれた」ですね。曲が良いからドラムは何もしなくていいというか。

曲が良いから、あえて過度なことはしなくてもいいという話は、先程お話ししてくれたThe Relaxinsが求めているバンド像に近づいていることの何よりの証明のように思います。
ハユル

ハユル(Vo. / Gt.):

そうですね。音量もかなり下がりましたしね。一部の天才的ロックンローラーであれば、放出するエネルギーひとつで魅了できると思うんですけど、僕らはその方向性で頑張っても満足いくスタイルを築けないんじゃないか?と考え直して。もっとバンドとして、音楽を突き詰めていこうと思っているので、そう思える表現ができて良かったです。

ここから、2月にはワンマンライブ<The Relaxins ワンマンライヴ‼︎「分かりたくない」>を開催予定、更に今作と対となる作品のリリースも控えているとのことで、盛りだくさんですね。
ハユル

ハユル(Vo. / Gt.):

そうですね! 次作は、今作に収録された4曲とほぼ同時期にできた曲たちなんですけど、結構アッパーな曲が収められる予定なので、楽しみにしていてほしいです。更にその先はまた試行錯誤中なので、自分たちでも未知数なんです。どうなるのかが僕ら自身も楽しみだし、ライブについても、今までの自分たちが培ってきたものを大事にしつつ、いいエネルギーを出し続けていけたらと思っています。

Presented by.DIGLE MAGAZINE





【RELEASE INFORMATION】

The Relaxins New EP『lamp』
2024年1月24日(水) デジタルリリース
※CDは2023年12月13日<The Relaxins ワンマンライヴ!!「何も持っちゃいない」>より販売

1. 海辺のパヴ
2. 花束かれた
3. 春嵐
4. 叫び出したい

▼各種ストリーミングURL
big-up.style/IYaY8wFoZO

外部リンク
> official site > X(Twitter) > Instagram > YouTube


【EVENT INFORMATION】

ワンマンライブ‼︎「分かりたくない」

2024年2月29日(木)at 東京・shimokitazawa THREE

出演 : The Relaxins
special opening DJ!! : Koshin

open / DJ start 19:00
live start 20:00
ticket : ¥2,400(+1D)
U22 ticket : free(+1D)

▼チケット入手方法
①手売りチケット
②バンド取り置き予約
③購入URL
※U22チケットは取り置き予約のみ

外部リンク
> 取り置き予約 > 購入URL