Analogfishが獲得した“身軽さ”とは?結成25周年で迎える新たなフェーズ

インタビュー

『BIG UP!』を利用している注目アーティストをピックアップして紹介するインタビュー企画。第126回目はAnalogfish(アナログフィッシュ)が登場。

日常の風景や心象を描きつつ、鋭く社会と対峙するクールな作風を持つ下岡晃(Gt.&Vo.)と、同じプロセスを辿ってもどこか心温まるポップな楽曲へ落とし込む佐々木健太郎(Ba.&Vo.)。異なるふたりのフロントマンを擁する3ピースバンド、Analogfishのキャリアは今年で結成25周年を数える。

2020年2月に開催したSHIBUYA CLUB QUATTRO公演を境に事務所を独立。と、同時にコロナ禍に突入したバンドの状況もごく自然な形で前作アルバム『SNS』(2021年)に反映されていた。しかもやはり、下岡の曲には危機感が、佐々木の曲にはそんな時代や社会であっても愛しい煌びやかな街の風景が描かれていた。この両軸はAnalogfishならではだろう。

『SNS』以降の配信シングル「Radio Star」「おもいつくかぎりのすべて」「Super Loud」「Broken Lovers」では各々違うカラーを打ち出してきた彼ら。今回は独立後の活動を振り返りながら、2024年5月8日に配信リリースされた「Lady Lady」の制作背景や、今後についての展望を新曲の作者でもある佐々木健太郎にじっくり訊いてみた。

コロナ禍と独立を経て高まったバンドの結束力

ー2020年に開催した20周年ライブのときに独立されて。それ以降いかがですか?

独立した年がコロナ禍だったんですよ。だからもう普通にバンドをやることがままならなくて、独立したっていう実感がないまま今まで体験したことのない世界になっちゃったんで、それに振り回された感じはありますね。
でもメンバーだけで決めれば全てが動いていっちゃうフットワークの軽さはあって。それに、コロナ禍だったし、ここで一丸とならないと続けていかれないなっていうのは3人とも無意識に感じてたと思うんですよね。独立によって、すごく結束力が高まった気がします。

ーブッキングやグッズの製作もメンバーでやるわけですよね。

そうですね。ずっと事務所の人とかにお任せしてたことも全部自分たちでやるんで、逆に今までお世話になってた人たちがどれだけのことをしてくれてたのかにも気づけたし。「ここは削れるな」とか「ここはもうちょっと節約できる」というお金の流れも自分たちで管理できるんで。たとえばライブの動員ひとつとってもそのライブで稼いだお金が次のレコーディングの費用になったりするし、そういうのがわかることでより(活動が)シンプルになった感じはありますね。

ー制作面では、初めて下岡さんと佐々木さんが共作されたりも。

今まで、下岡は下岡、佐々木は佐々木みたいに立ち入っちゃいけない領域もあったんですけど、もう「新しいことをやってみよう」って、自然とふたりとも変なこだわりがなくなって協力し合えるようになりましたね。

ー独立後のアルバム『SNS』をリリースした後に何か課題は出てきましたか?

バンドが25年目なんですけど、年齢ももう45で、結構体力の衰えとかも如実に出てくるし、脳みそも体なんで、体の衰えと比例するように20代のときに湧き出たような創作意欲とかが落ちたりするんですよね。そういう曲がり角に今ちょうど戸惑ってるところっていうか。だからこの25年やってきたことと自分の年齢を鑑みて「どうしようかな」とは思いました。でも、やっぱりバンドをやっている自分が一番人生の中で価値があるっていうのは強く思っていることなので。たぶんどんな人も悩みながらバンドをやってると思うんですけど、25年の重みや45年生きてきた重みもあるし、それは今後どうやっていこうかなみたいなところは正直ありますね。

ーある種『SNS』っていうアルバムはコロナ禍と向き合わざるを得ないところもあった内容だと思うんですけど、2024年の今はその先っていう時代感があると思うんです。心境としては当時と違うものがありますか?

たぶんみんなも一緒だと思うんですけど、止まらない円安とか、物価もどんどん上がってるじゃないですか。で、そういうムードがだんだん自分の心を侵食してくるっていうか、まったく明るい兆しが見えないし、かと言って別にすごい不幸なわけでもないですけど。日常は戻ってきたけどこれは本当に今幸せなのか?と思ったり、先行きが暗いようにしか思えないんです。年金のこととかもいろいろ考えますしね。
あと、僕はパン屋でも仕事してるんですけど、どうもこの4年間で働く人の意識が変わっちゃったんじゃないかなっていうのはなんとなく思ってるんです。コロナ前はパン屋で働きたいって熱意を持ってくれる人もいて、最近はそういう熱のある人が少なくて。今働いてくれているスタッフさんは最高の方たちなんですけどね。

ーコロナのときってみんな一様に大変だったというか。もちろん、追い詰められた業界もありますが、過ぎ去ったことで明らかになることもあると。

そうですね。なんかここからですね、コロナ禍が何だったのかいろんな面で影響が出てくるのって。

ー収録曲の「Saturday Night Sky」に顕著だったように、『SNS』は“こんな時代だけど挫けてない”っていう部分もあったと思うんですけど、今はそうも言ってられないなという感じですか?

僕は東日本大震災のときのほうがショックがでかくて。だからコロナって――僕もコロナに2回かかりましたし、経験したことのない苦しみはあったんですけど、原発が壊れたり、津波で何万人も亡くなってしまったりとか、あのインパクトに比べたらコロナ禍はあんまり食らわなかったっていうか。下岡は感度が高いんで、最初は影響しちゃったところがあったかもしれないんですけど、僕はそんなになかったんで、あえて煌びやかにしようとかも思わなかったし、自然にやってましたね。

ー『SNS』以降にリリースされたシングル4曲がいいですよね。全曲曲調も全然違っていて。

ああ。たぶん下岡が原点回帰っていうか、僕らが青春を過ごした90年代のオルタナの音楽とかその辺がドンピシャなんで、最初の3曲はそういう90年代のオルタナティブな音楽を現代の解釈で作ったんだと思います。時代が巡るっていうか、周りの音楽を聴いててもそういう感じがするし、少しずつ新しい音楽にも90年代のあの感じが回ってきている気がします。僕が作っているわけではないので正しいとは言い切れないけど、たぶんそれが大きいんじゃないかな。

ー『SNS』以前は、むしろ下岡さんははあまり曲を作ってらっしゃらなかったんですよね。

そうですね。長野に行ってりんご農家をやりつつ東京と二拠点生活みたいなこともしてたし。それもすごいカッコいいなと思ったんです。そういうのを選ぶのも下岡っぽいなと。まあ、音楽以外に興味が行ってた時期なんじゃないですかね。

アジアを見据えた曲作りやライブがしたい――キャリアを積んだ今思う面白がれる可能性

ーところで、リリースの形態がサブスクリプション中心になったことが最近の楽曲のスタイルに影響を与えた部分はありますか

今月、台湾に弾き語りしに行ってきて。Spotifyとかに自分たちがページを持っていると、どこの国の人が何人聴いてくれたとかってわかるんですけど、それで見ると東南アジアのリスナーがすごく多くて。特に台湾とインドネシアの人が多くて、日本とそんなに変わらないぐらいいるんです。だから「これは行きたい」ってずっと思ってて。ちょうど青山の月見ル君想フというライブハウスの寺尾ブッタさんが台北でも店をやられてるんで、何度もアタックしました。
後々バンドにつなげたいから、どのぐらいお金かかるかもわからないし、まず弾き語りで行ってみて様子を見てこようっていう感じでブッタさんにお願いしてやらせてもらったんですけど、すごく温かく迎えてくれて。普通にコンビニで日本の音楽がかかってるし、みんな思った以上に日本人のこと好きだし。台湾は50年間日本の統治下だったじゃないですか。それでおじいちゃんおばあちゃんが日本語が喋れるから、孫の代の人も日本語がわかるとか、すごい近い感じがして。ちょっとワクワクするなあって。僕らはもう結成25周年ですけど、海外でライブする、特にアジアでと考えたら、今僕らが面白がれる可能性がここにあると思いましたね。

ーいいことですね。

で、やっぱりいろんな国の人が聴けるっていうのはサブスクのすごくいい面だなと思って。ただ、YOASOBIとか一部の人はすごく回転する(再生される)けど、日本語を使う人が世界で見ると少ないんで、たぶん日本の音楽は不利だとは思うんですよ。けど、最近タイとか台湾とかシンガポールのバンドとかをサブスクで聴いてても、昔に比べたら身近に聴けるようになってる感じがして。カッコいいバンドもいっぱいいるし、言葉はわからなくてもアレンジとか声色で伝わってくる熱があるから、そんなに言語って関係ないのかなとも最近思ってて。だからこれから作る曲は、歌詞ももちろん大事なんですけど、東南アジアのバンドもたくさん聴いて、その中で自分たちはどう立ち振る舞うかっていうのをわかった上で曲を作りたいなっていうのは一つあったりしますね。

ーAnalogfishが目指してることと彼らとの接点を見出した曲を書いてみようかなっていう?

それもあるし、東南アジアの人たちのほうが英語もガンガン喋れるし、アジアとかに行くと日本人って全然元気ないなと思う部分がすごくあって。自分ももちろんそうなんですけど(笑)。

ー若いですよね、国が。

そうなんですよ。音楽の熱も上り調子だし。やっぱり日本のバンドの曲って結構ガラパゴスっていうか、日本の中だけで内輪でやってるような感じがあるっていうかあるのかな。自分は視野が狭く陥りがちなんで、もっと英語だけじゃないいろんなアジアの国の曲を聴いて視野を広げて、その中で日本のバンドとしてどう振る舞ってどういう曲をリリースしていくのか。そういう文脈の中でAnalogfishがどう新しくなっていけるかっていうのは考えていきたいなとは思ってますね。

ーシンプルに東南アジアの若い世代のアーティストやバンドで佐々木さんがいいなって思う人はいますか?

台湾のThe Chairs(椅子樂團)とか、タイのYONLAPA(ヨンラパ)とかFOLK9(フォークナイン)とか、あとは最近あんまり音源リリースしてないんですけどフィリピンのMellow Fellow(メロウ・フェロウ)とかその辺りが好きですね。

新曲の発端はヘンリー・ダーガーと日常のふとした光景

ー5月8日にリリースされた「Lady Lady」ですが、この曲の制作はどんなタイミングで進んでいたんですか?

曲自体の元ネタは前からあったんですけど、バンドでセッションするようになってライブでやるようになったのはちょうど1年ぐらい前からで。トリオのときは形にできなかったんですけど、7年ぐらいギターをサポートしてもらってるRyo Hamamotoくんがいたことが、この楽曲が形になった一つの大きい要因だと思います。Ryoくんってシンガーソングライターでもあるから、すごくアーティストの表現したいコード感も汲んでくれるんで、僕の楽曲と親和性が高いギターを弾いてくれて。

ー何が最初のアイディアとして出てきたんですか?

ヘンリー・ダーガーってアウトサイダーアートの人がいるんですけど、その人のドキュメンタリーとかを観てて。あとはそういう、誰かに見られることを前提としてないアートのあり方についてちょっと考えてたところがあったんですね。自分をはじめ、ミュージシャンとかって誰かに聴かれることを前提として作ってるんで、そうじゃないものって自分の表現欲求だけで作られた、ものすごい純粋なものなんじゃないかって。そう思うとちょっと怖さもあるし。それでヘンリー・ダーガーを夢中で見てたことがあるんです。
その時期に一緒にそういう話をしてた女性がいるんですけど、その方が春で環境が変わるって言ってて。スーツを着て出かけていくさまがモラトリアムから強制的に出て行かざるをえない感じがあって、不安とか、でも大人びた雰囲気もあって。その光景を曲にしたいと思いました。

ー《幼い王国の僕を取り残して。》という歌詞がありますが、彼女を見ている視点を何かに例えて書いてたりするんですか

この部分は本当に置いてかれるような感じで。自分は社会に出ている人間なので実際はそんなことないはずなんですけど、今までサブカルの話とかしてた人が門出を迎えて変わっていくのを見て、置いてかれるような寂しさをちょっと感じたところがあって。その心持ちっていうのが自分の中で火種としてずっと残ってて、これ曲にしたいなって変わっていったんですよね。

ーなるほど。このビート感もサウンドもすごくフレッシュですね。

サウンドはここ15年ぐらい一緒にやってもらってる(プロデューサーの)吉田仁さんで、もう還暦を超えてるんですけど、羊文学やTHE COLLECTORS、過去にはフリッパーズ・ギターもやってる方で。いまだに貪欲に新しい音楽を聴いてるし、俺たちの演奏がダメでも(笑)、仁さんに投げればある程度何とかしてくれるっていう信頼があります。レコーディングや作品を作ることにおける、すごく頼りになるメンバーのような存在ですね。

ー2022年頃のインタビューで25周年に向けてアルバムを2枚ぐらい出したいとおっしゃっていたと思うんですが、現状…。

現状、遅れてますね(笑)。

ーシングルもリリースしつつアルバム全体のことを考えるっていうのはどうですか?

作り方として違うフェーズにきてるなって思いますね。今まではアルバムのために2曲ぐらいシングルカット的な曲を走らせといて、その2曲の雰囲気に寄り添うような曲をあと8曲ぐらい集めてアルバムにしてフィジカルリリースするみたいな流れがあったんですけど、サブスクだとその前提がもう崩れてるんで、なんか自分も全然違う知らないところにいるみたいな感じはありますね。

ー予感としてはどうですか? 全部がすごく強い曲で構成されるアルバムになりそうですか?

そうですね。こういう感じで出してるとベスト盤みたいな感じになりそうですよね。逆にそういうものにできたらいいと思うし。

ーそして、2024年10月14日(月・祝)にSHIBUYA CLUB QUATTROで25周年ワンマンがあります。少し先ですが、大まかにどんなライブにしたいですか?

25周年なんで、もちろん聴いてきてくれた人に対して感謝もあるし、集大成的なものを見せれたらいいなと思ってます。あと、25歳以下の人が半額なので、若い人に来てほしいなと思ってて。この10月14日のライブに(活動を)集約しようと思ってて、来年の予定は今まっさらなんです。毎年、年の初めに入れてる恒例のワンマンもいつもだったらもう決まってるんですけど、それも決まってなくて。さっき言ったように、海外のライブはパイプが作れたらやろうと思ってますけど、日本でのライブはよっぽど自分たちが面白がれるものがなければしばらくないかもしれないんで、10月14日のライブを見逃さずに来てほしいなって思ってます。もう、ここに全て置いていくつもりです。

Presented by.DIGLE MAGAZINE




【RELEASE INFORMATION】

Analogfish New Single「Lady Lady」
024年5月8日リリース

▼各種ストリーミングURL
big-up.style/ZRacK0iKKt

外部リンク
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【LIVE INFORMATION】

Analogfish 25th Anv. “So Far” Live

2024年10月14日(月・祝)at 東京・SHIBUYA CLUB QUATTRO
OPEN 16:00 / START 17:00

【チケット情報】
・前売り:一般 ¥5,000(税込)/ 25歳以下 ¥2,500(税込)
・当日券:一般 ¥5,500(税込)/ 25歳以下 ¥3,000(税込)
※全券種1DRINK別

外部リンク
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