『Beyond The Campus vol.6』‐Healthcare and medicalインタビュー‐

インタビュー

  • こだわりから生み出される独自の世界観とは
  • はじめに

    『Beyond The Campus』とは、早稲田大学の公認サークルWaseda Music RecordsがBIG UP! zineとタッグを組み、学生アーティストにインタビューを行う企画です。本企画はリレー形式となっており、第5弾アーティストVOLTAさんのご紹介を受けまして、第6弾のゲストとしてHealthcare and medicalさんにインタビューを行いました。

    結成、オリジナル曲を作った経緯

    バンド結成の経緯やオリジナル曲を作った経緯についてお聞かせください。

    アサヒ)俺がバンドやりたいなと思って集めようとしたのがスタートです。僕ら半分以上が駒澤大学の軽音のサークルなんですけど、軽音のサークルはコピーバンドしか無かったので、自分たちのオリジナルのバンドをやりたいなと思い、声を掛けました。声掛けすぎて5人くらい集まっちゃったので5人メンバーがいるんですけど(笑)。その他のボーカルのユキちゃんとはクラブで会って、話して友達になって、その流れでユキちゃんのSoundCloud見つけて声を掛けました。バンドを組みたい割に曲とか作ったことなかったので、ユキちゃんに歌ってもらうという形で5人で結成しました。
    レン)昨年の11月。年末だね。
    アサヒ)昨年の年末にドラムをパーカッションに移動させました。ドラムが空いたので、新規のドラムを加入させようと思い、俺の後輩の友達だったドラマーを誘って、今は6人編成です。

    楽曲の制作はユキさんがやられてるんですか?

    アサヒ)そうですね。基本的にはユキちゃんがデモを持ってきて作るというのがありつつ、セッションで作ることもあります。

    初めて配信した楽曲や初めてライブした日のお話

    初めてライブした時の話についてお聞かせください。

    ユキ)初めてライブしたのが今年の4月の下北沢THREEです。今私ギターボーカルなんですけど、最初の方は私がベースでレンくんがギターでした。
    アサヒ)ベース弾きながらたまに歌ってたよね。
    ユキ)うん。今とは全然違う感じで。
    アサヒ)どうだった?それまでさ、ライブハウスでライブしたことってあった?
    ユキ)人生初だった!人前で演奏するのが人生初。
    アサヒ)歌うのも?
    ユキ)うん。でも「あ、こんな感じなんだ〜」で終わっちゃった(笑)。

    お客さんを実際に目の前にして演奏した時の感覚ってまだ鮮明に覚えてらっしゃいますか?

    ユキ)意外と人の顔見る余裕はあって、結構ライブ中は俯瞰しちゃいました。今もそうなんですけど(笑)。それが悩みでもあるんですけど、その時からちょっと一歩下がって見ちゃうから緊張もあまりできないです。

    我々Waseda Music Recordsの企画、「lull」に出演していただいた時はどのような感覚でしたか?

    アサヒ)La.mamaに出演した時だ!めっちゃ楽しかったよね。対バンもすごいかっこよくて。
    ユキ)あんなにお客さんがパンパンなの初めて見ました。
    アサヒ)そうだね、同世代で凄く勢いのある、いわゆるカルチャーシーンの最前線でやっているような子もいたり、インターネットカルチャーシーンで世界的に話題のアーティストもいたりとかして。
    レン)Waseda Music Recordsって形態が特殊じゃないですか。だからシンプルにそれに興味を示してたよね。
    アサヒ)普段はライブハウスでやることがほとんどで、それが面白くないわけじゃないですけど真新しさとかはないじゃないですか。それに対して、企画して、ブッキングして、、という自分たちと割と感度が近いというか、似た目線でお邪魔出来るというか、それに興味を示したっていう感じです。

    このアーティストとこのアーティストの組み合わせ新しいから見てみたい!という基準を、特にこだわったイベントでした。

    アサヒ)うんうん。それこそね、さっきもちょっと話したけどカルチャーシーンが似てるようで似てない、ちょっと離れたところがくっついて、ひとつの筋書きになって凄く面白かったです。

    音楽との最初の出会い

    音楽との最初の出会いについてお聞きしたいです。

    アサヒ)俺は1歳の時から朝霧JAMとかフジロックに行ってたので、物心つく前から音楽が流れている環境にいました。
    ユキ)自分で聴き込み始めたのは?
    アサヒ)幼稚園の年中の時にRed Hot Chili PeppersとKISS凄い好きでした。CanonのCMでKISSの曲が使われてて、子供たちが白塗りでKISSのメイクしてるのが仮面ライダー的にかっこよかったんです。「KISSって言うんだよ」って教えてもらってからいまだに好きです。バンドの音には全く関係ないんですけど(笑)。でもKISSみたいにかっこよくはなりたいと思ってます。レッチリは凄く影響を受けています。年中の時、2006年のフジロックも見ました。そこからずっとハマっています。
    レン)俺は地元が北海道で、小さい頃は週に1回くらいの頻度で父親に会う生活だったんです。だから小さい頃自分が生活してる家ではあんまり音楽が鳴ってた記憶がなくて…。でも父親と遊びに行く時とかはずっと音楽が鳴っていました。北海道なのでスノーボード行くんですけど、スノーボード行く道で鳴ってた音楽が凄く頭に残ってるなぁ。
    アサヒ)何が鳴ってたの?
    レン)U2だなぁ。あとはThe Offspringとか。
    ユキ)いつから自分から聴きだしたの?
    レン)小学校高学年くらいからパンクを聴きだして、自分がそれまでやってたこととの親和性的にパンクが合って、そこからハマりました。
    ユキ)私が明確に覚えてるのは、お父さんに「マイケルジャクソン聴いた方がいい」って言われたことです。小2の時、マイケルジャクソンのCDを買ってもらってめっちゃかっこいいって思いました。お母さんはTHE FIFTIESとかが好きで、PVもYouTubeで検索して見せてくれて。そこからどんどんハマっていって、自分でディグルようになったのは小3、4くらいです。お母さんにYouTubeを教えてもらってから音楽を沢山聴くようになりました。ロックは中学入るまでは聴いてないです(笑)。
    レン)全然ロックじゃないですね(笑)。
    アサヒ)おい(笑)。
    ユキ)でも両親どっちも矢沢永吉が好きで、ご飯の時もずっとライブ映像とか流れてました(笑)。だから本当にずっと聴いてるで言ったら永ちゃんかもしれない。
    アサヒ)いまだに?
    ユキ)今も今も!
    アサヒ)父ちゃんと母ちゃんの音楽で影響を受けた割合ってどっちの方が大きい?両方な感じしない?混ざってる?
    ユキ)6:4でお母さんの方が大きい。
    アサヒ)あぁやっぱ母ちゃんか。俺逆で、でも同じくらい混ざってる。
    レン)そうだね、あっくん家も音楽好きだよね。
    アサヒ)7:3ぐらいで父ちゃんが大きいな。Renは10:0でしょ?
    レン)10:0で父ちゃんが大きいです。うちの母ちゃんは可愛いだけ(笑)。可愛いだけとか失礼か(笑)。

    影響を受けた曲5選

    影響を受けた曲についてお聞かせください。

    ユキ)ゆらゆら帝国の「冷たいギフト」です。ゆらゆら帝国ってめっちゃロックだけど、ガレージ系のアルバムにこういうふわふわしたのが入ってるのが好きで。他の曲と対比して存在感があって、こういう曲作りたいなぁと思います。もう一曲はD.A.N.の「Pool」です。歌詞と音楽の乗せ方が私の理想だなと思って。最近、ハミング的なノリの延長で音に乗せやすいので英語で作詞してるんです。D.A.N.のPoolって曲は日本語だけど英語の語感のノリが入っていてすごくいいですね。私もこうやりたいなぁと思います。
    アサヒ)ちょっと意外なとこいくんですけど、The Crampsの「Human Fly」。頭悪けりゃ悪いだけいい(笑)。音楽を通して伝えたいことに通ずることです。
    レン)少し考え方が似てるんですけど、The Clushで「London Calling」。これ凄い好きで、CD2枚持ってます。もちろんパンクなんですけど、パンクと言いつついろんなものを取り入れて、色んな人に野次られ叩かれながらもどんどん新しい音楽性を作っていったなかでも、一番飛躍的な一枚だと思います。色々なものをスポンジのように吸収しながら自分たちの真の姿勢、ロック魂みたいなところを変えないという感じが凄くかっこよくて。俺らもそうなりたいなと思います。もう一曲はRed Hot Chili Peppersの「Californication」に収録されている「Porcelain」です。凄く静かな曲なんですよ。バラードでもなく、ドラムの静かな音が鳴ってて、家の片隅でやっているセッションのような感じなんです。さっきのYukiちゃんのゆらゆら帝国とも近いところがあると思うんですけど、結構激しかったりバンドアンサンブルも入ってるなかでそういう曲が入ってくるっていうのが好きです。

    音楽を通して伝えたいメッセージ

    音楽を通して伝えたいメッセージについてお聞きしたいです。

    ユキ)今は伝えたいと思ってやってるというよりかは、自分で曲作ってる時からデトックスのように時間の流れも忘れられるというか…ストレス発散的な浄化になるんですよね。
    アサヒ)個人的にはずっとロックのバンドに憧れてきたので、ロックというかバンドやりたいよねって思っています。それでバンドをやるなかで、トーキング・ヘッズとかバンドのアティチュードとか企画力、趣向性でそのバンドの色や音楽性のかっこよさを見せられるアーティストって一定数いると思ってて。言い方がいいか分からないですけど、僕らカリスマがいるようなバンドではないし凄い技術が高いバンドでもないと思ってるんですよ。でもライブの形とか音楽的な魅せ方のアティチュードで示せる音楽性ってあると思っていて、それで伝えるのは難しいし完全にはできてないけど、そういうところで音楽のかっこよさというか…。別に弱いものとして見せたいわけじゃないけど、誰でも音楽できるぞ、かっこよくなれるぞ、と思ってやってます。そういうところは伝わったらいいかな。今僕ら2ヶ月に1回くらい自主企画を打ってるんですよ。その打ってる理由が、ライブハウス側の企画に出るよりそっちの方がいいだろうというのもあるんですけど、自分たちのこういうことをやりたいんだよというのを他のバンドとか内装とかフライヤーとか、全部のところから、一つのイベントから伝えたい。トリとかじゃなくてもいいわけですよ。自分たちが一番いいと思ったところに自分たちを置けばいいので。そういう自分たちのやりたいことを相手に伝えながら、音楽を伝えたいと思ってます。
    ユキ)まぁ…音楽やりたいなって思ってくれたら嬉しいですね。
    アサヒ)適当なこと言うなよ(笑)。
    レン)そんなこと思ってないです!ごめんなさい(笑)。
    アサヒ)僕はもう一個自分でバンドやってて、そっちでは自分で音楽を作っています。創作する時の気持ちとして、世界で最高な音楽と最低な音楽の凄さ一緒っていう感覚がずっとあるんですけど、うちのバンドは捻くれ者が多いので、そういうところは大事にしたいなぁと思います。このバンドではいらないことばっかりしたいし、良い曲であればあるほど崩したいし。個人で言うと、パンクな気持ちで挑んではいます。

    学生音楽シーンにおける音源を広める方法

    学生音楽シーンにおいて音源を広げるという面で意識していることはありますか。

    レン)俺は学生音楽シーンという括り方を意識したことはないですね。あっくんはブッキングの時そういうことを意識することがあるかもしれないけど、あった?
    アサヒ)意識はしないけど、出身大学とか聞いたりはするよね。応援しやすいし繋がりやすいのかも。まぁただ楽しかったらなんでもいいですね(笑)。SNSの運用とかに関してお話できるようなことは無いんですが…。僕らで言うとイベントに関してかな。事務所に入ってないのでメンバーでみんなで割り勘するわけなんですね。金銭面はまず大変ですね。でも楽しいから、やりたいからやるよねっていう思いで僕らはやっていて。事務所に入っていない代わりに、自分たちの好きなように、イベントとしてどうしたらかっこいいかだけで考えられるというのはフリーの学生バンドだからこその楽しいところなのかなと思います。
    レン)それで思い出したけど、唯一と言っていいレベルでやっていることは、シンプルにイベント打つ時に赤字覚悟でチケット代を下げるということですね。学生が来やすいように。社会的責任のない学生だからこそできることだと思います。まだ世間知らずの程でいけるんですよね。
    アサヒ)ここの界隈とここの界隈大丈夫かなぁとか思いつつ、声掛けちゃう(笑)。界隈を作るって難しいと思うんですけど、仲間を広げていくっていう考え方ですね。面白いものは面白いものとして皆繋がってほしいという気持ちです。

    おすすめの学生アーティスト

    おすすめの学生アーティストを教えてください。

    ユキ)The Kunstさんです。ギターもベースもボーカルもやっていて、シンプルなコードでもメロディーが華やかでギターリフも耳に残るところがおすすめです。

    Healthcare and medicalプロフィール

    2023年に活動開始した6人組ロックバンド。世田谷を中心に活動。
    オルタナティブ、シューゲイザー、ドリームポップを主としたノスタルジックなメロディーにメンバーそれぞれの感性を組み込みながら作り出されるサウンドが特徴。繊細さと力強さを兼ねたドラムと3本のギター、ベースによるアンサンブルに歌声が調和する。海外インディーシーンからの影響を強く受けており、マッドチェスター、サウスロンドンカルチャーなどからの影響も色濃い。ジャパニーズポップスと洋楽カルチャーとのバランス感をバンドで映しだす。
    ボーカルユキは語る、「森の中を散歩していたら白くて大きな建物が突如現れて、その建物の中に月がのめり込んでいたんです。その場にいた全員で『月の住所ってここか。』と呟いて終わった夢を見て、それが今もずっと忘れられません。」
    結成して間もなく下北沢THREE、CREAM、秋葉原GOODMANなどでライブを敢行。同年10月にはサンフランシスコのポストパンクバンドRip Roomの前座を務める。各月で自主企画「Naked dinner」を主催しており岩出拓十郎、ろくようびなどと共演している。

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    Waseda Music Records

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    インタビュアー・エディター:野口愛紗、小髙愛梨