花のように生活を彩る楽曲を作りたい。瑞々しい音を奏でる新鋭バンド・Gum-9が大事にするアイデンティティ
インタビュー
『BIG UP!』を利用している注目アーティストをピックアップして紹介するインタビュー企画。第136回目はGum-9(ガムナイン)が登場。
下北沢を中心に活動している4人組バンド・Gum-9が、2025年2月26日に2nd EP『Bloom Ur Days』をリリースした。日々の生活の中で生まれるリアルな感情や、恋愛の渦中や別れの中で起こりうる寂しさと強がり、相手を思うからこそのすれ違いなど、平均年齢24歳である彼らの等身大の想いを宿した5曲が詰め込まれている。
インタビュー取材自体が初となる彼らに、結成の経緯や彼らが思うGum-9らしさ、今後の展望などを訊いた。
RADWIMPS、Taylor Swift、ボカロなど。バンドを形成する多彩なルーツ
- Gum-9結成のきっかけは何だったんですか?
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小林尚輝(Ba.):
東京都高等学校軽音楽コンテストにこのメンバーで出場したのがきっかけです。
- それまでそれぞれバンドを組んでいた経験はあったんですか?
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古賀大蔵(Dr.):
なかったですね。尚輝以外の3人は、中学の頃から遊びで楽器をやっていましたけど。
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小林尚輝(Ba.):
僕は中学生の頃は野球ばっかりやっていたので、高校に上がるタイミングで古賀に誘われてベースを始めました。
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宮本龍人(Vo. / Gt.):
僕は高校時代はギターボーカルではなくピンボーカルだったんですよ。ちゃんとギターを始めたのは大学に入ってからでした。
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高橋悠司(Gt.):
僕は中学1年生の頃にギターを始めました。
- じゃあ、オリジナル曲を作るという経験もGum-9が初めてだったと。
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宮本龍人(Vo. / Gt.):
そうですね。Gum-9を組んでから、当時は部員が少なくてほぼ活動していなかった高校の軽音部を立て直して、少しずつバンド活動ができる環境を作っていったんです。曲作りは悠司の家にこもってひたすら書いていて、そのときに初めて完成したのが「ひかりよがり」という曲で。最近はライブでも、本当に大事なときにしかやらないんですけど…。
そういうふうに友達の家に集まって曲を作ったり、軽音部内でコピバンをやったりするのが単純に面白かったんですよね。なので、コンテストに出て手応えを感じてGum-9を続けることにしたというよりかは、バンドをやることが単純に楽しかったからそのままやっている、という感覚に近いです。
- みなさんは好きな音楽も近かったんですか?
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宮本龍人(Vo. / Gt.):
僕と悠司と古賀はRADWIMPSが好きで、尚輝はちょっと違ったよね?
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小林尚輝(Ba.):
そうだね。Taylor Swift(テイラー・スウィフト)などのポップスが好きで、むしろロックバンドの曲は全然知らなかったです。RADWIMPSも知らなかったくらいだし。
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宮本龍人(Vo. / Gt.):
あと、全員共通だどボカロが好きですね。
- そこからバンド名はどうやって決めたんですか?
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宮本龍人(Vo. / Gt.):
コンテストに向けて各々フレーズを持ち寄っていく中で、古賀が思いついたギターのリフが、SUM 41(サム・フォーティワン)の曲のリフに似ている印象だったんですよ。
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古賀大蔵(Dr.):
全然似てなかったんだけどね(笑)。
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宮本龍人(Vo. / Gt.):
今思えばマジで全然違ったよな(笑)。でも、そこからバンド名を決める上でのインスピレーションを受けて、英語と数字の組み合わせを模索したんです。その結果、僕らが九段下の中学校出身ということから“9”を付けて、“G”については字面や語感で決めました。なので、ちゃんとした意味が宿っているのは“9”の部分だけです(笑)。
- なるほど(笑)。コンテスト以降、ライブハウスで行った初めてのライブはいつだったんですか?
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小林尚輝(Ba.):
いやぁ、それがわからないんですよね……。でも、2019年の前半だった気がします。
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宮本龍人(Vo. / Gt.):
僕ら、結成日も覚えてないんですよ。だから周年が祝えないっていう(笑)。
- それはもったいないかもしれない(笑)。そこからオリジナル曲もたくさん作って活動を進めていった今でも、「売れたい!」という気持ちより「バンド楽しい!」という気持ちのほうが強いんでしょうか?
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古賀大蔵(Dr.):
それがGum-9の活動を行う上での大前提であり、根幹にある気持ちですね。
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宮本龍人(Vo. / Gt.):
結成してから8年くらい経つ中でつらいことももちろんあったし、バンド活動における難しさも知るようになりましたけど、やっぱり楽しいという気持ちのほうが強いです。
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高橋悠司(Gt.):
本当に、結成当時のテンションのまま突き進んでいる感覚ですね。最近はありがたいことにバンドとしての勢いもついてきしたし、その分出会いも増えて、バンドの課題も見え始めてきています。それは、“売れたい”という目標で続けていたら得られなかったものかもしれないので、そういう意味では自分たちらしく成長できているのかなと思います。

クリーンな歌声と爽やかなメロディがGum-9らしさ
- 手応えも感じ始めてきた中で、今作『Bloom Ur Days』を制作していくにあたり、事前に構想や作風についてはどう考えていたんですか?
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宮本龍人(Vo. / Gt.):
2023年にリリースした1st EP『See you. Halo,』に収録されている「スイセンノウ」という曲が好評だったんですけど、これは花の名前なんです。僕自身が花が好きということもあって、今作に入っている「オスマンサス」や「ポインセチア」も花の名前を付けていて。そういった経緯もあり、今回のEPを出すにあたって自分たちが大事にしていることを改めて考え直したときに、花のように誰かの生活を彩ることができる楽曲を作ることかなと思いました。そういう意味で、一貫性が出ている作品になっていると思います。
- 自分たちが思うGum-9らしさが、タイトルやテンポ感においても表現できた作品なんですね。
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小林尚輝(Ba.):
そうですね。先ほどの話のように、伝えたいことややりたいことがあって始まったバンドではないので、活動していく中で自分たちらしさを模索している段階なんですよね。基本的に宮本が曲を作っているので、その表現を上手く補助できるようにするのが、僕の役割なんだろうなと思っています。
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高橋悠司(Gt.):
宮本が作るメロディと綺麗な歌声がこのバンドの大きなキーになっているよね。その魅力を最大限引き出せる曲調は、やっぱりミドルテンポやバラードだと思うし、そこをいかに気持ちよく聴かせることができるかどうかを考えています。
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古賀大蔵(Dr.):
そうだね。特に邦楽の歌モノだと、歌詞の内容と歌にバンドのアイデンティティの主柱があると思いますし、Gum-9としてもそこが強みだと思っています。
- バラードやミドルテンポが一番マッチしているという今のGum-9ですけど、今作の1曲目にある「ラストガール」や、昨年リリースされた「サマーエンドサマー」「夜鷹」は、躍動感と疾走感のある楽曲になっています。そういった楽曲は、ライブ経験に影響を受けたという意識もありますか?
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宮本龍人(Vo. / Gt.):
まさにそうですね。ライブで盛り上がるような楽しい曲も欲しかったし、去年の段階で、ポップスにも挑戦してみたいという意欲が湧いてきたんです。僕は良いメロディが降りてきたときに曲を作ることが多いんですけど、「夜鷹」は《会いたいだけの この気持ちで》というフレーズの歌詞とメロディが一緒に出てきたときに、これをポップスにしないでどうするんだ?と思ったんです。そこから自分たちらしいポップスの曲を作ることに意欲的になれたし、成長する大きなきっかけになりましたね。その上で、今作に収録されている「ラストガール」に関しても、頭にぽっと浮かんできた勢いのあるフレーズをそのまま活かしつつ、今までにない疾走感のあるポップな曲に仕上げていきました。

主軸を明確にしつつ、絶えず挑戦し続けるバンドでありたい
- ポインセチア」では、ストリングスやピアノサウンドも入っていますし、バンドの挑戦がうかがえます。
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宮本龍人(Vo. / Gt.):
最初は同期(音源)なしで、4人で完結できる仕様だったんですよ。でも、こういう壮大なバラードって今まで作ったことがなかったし、曲のポテンシャルを底上げするためには、そういった他の楽器の音を交えたほうがより美しくなるなと思ったので、最終的にこのアレンジにしました。新しいことに挑戦したい気持ちもあったので、そういったバンドの好奇心ともマッチした曲になっています。
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高橋悠司(Gt.):
ギターの音とストリングスの音が干渉しすぎないように、ギターの本数を減らして調整するといった難しさもありましたね。でも、案外スムーズにできました。逆に「オスマンサス」はギターの本数がかなり多いんです。
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古賀大蔵(Dr.):
先行リリースしていた「オスマンサス」は、ポップスに傾倒していく僕らの変遷が明らかに見受けられる楽曲だと思います。楽器の種類や本数を増やしていって、ギターロックファンでない方でも受け入れやすいサウンドに仕上げるという構成は、宮本のクリーンなボーカルとの相性も良かったですし、これからの方向性を考える上での自信になりました。打楽器も入れたし、アコギのパートも複数あるし、コーラスも重ねているんです。そうして、楽曲内の隙間を埋めていきながら作り上げた「オスマンサス」がとても良い仕上がりだったので、もう一段階上の挑戦として、「ポインセチア」でストリングスやピアノを入れてみたという流れがあります。
- 「オスマンサス」は女性目線の歌詞ですよね? 歌い方も柔らかいし、主人公の性別に寄せているような感じがしました。
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宮本龍人(Vo. / Gt.):
そうなんですよ。細かいこだわりなんですけど、男性が言っているような歌詞の部分は重心を低くして歌っていて、その後の女性パートは声色を明るくして歌っているんです。自分が女性だったらどう思うんだろう?という考えが発端で作っていった歌詞です。基本的に僕は女々しい性格ではあるので、歌詞に関しては割と苦労なく書けましたね。でも、やっぱり男性にはわからない心情っていうのは絶対あると思うので、そこを想像して書くのが面白くもありました。
- アレンジや歌詞含め、Gum-9の転換期の始まりとも言える楽曲なんですね。それぞれ挑戦したことはありますか?
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小林尚輝(Ba.):
Aメロ、Bメロ、サビ、という展開ありきの構成ではなく、ずっと同じ温度感で続いていく曲が初めてだったので、どういうテンション感で弾けばいいのか悩みましたね。ここにかなり時間を掛けました。
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高橋悠司(Gt.):
カントリー調のベーシックなベースラインが続く中で、ギターがメインで展開しているので、バランス的な部分でも頭を使いましたね。そもそも本数も多かったですし。
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古賀大蔵(Dr.):
むしろギターしか展開してないってくらいの感じだよね。ギターとパーカッションでステレオ感を成立させているし。
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高橋悠司(Gt.):
そうだね。本数が多くなった理由としては、古賀が、「こんな感じで入れてみない?」っていうふうに提案してくれたものをじゃんじゃん入れていったからなんですよ。
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古賀大蔵(Dr.):
龍人が弾いているパートは右側に置きがちなんですけど、それを両サイドで流しつつ、右側には悠司のメインギターを置いたほうがいいんじゃないか?とか、重厚感を出すために隙間を埋めたいな、といったアイデアが浮かんできたんですよね。ギターの配置を整えたくなって。僕自身はゼロからメロディを作ることはあまり得意じゃないんですけど、龍人と悠司がその分良い曲を書いてきてくれるので、それをより良く聴いてもらえるために構成を考えている感じですね。

- この曲は大きな展開もない分、そういった細かな構成の技が光る楽曲だと思います。
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古賀大蔵(Dr.):
そうですね。この曲のドラムは、ベースと同様クラシカルかつパーカッシブなものなので、アレンジ自体は難しくはなかったですし。悠司のギターやボーカルを際立たせるために音量の機微などは試行錯誤しましたけど、アレンジで言えば他の曲のほうがいろいろとやっています。
- なるほど。Gum-9としても、ロックバンドサウンドだけに留まらず、ポップスに裾野を広げていきたいという意志が宿されているんですね。
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宮本龍人(Vo. / Gt.):
そうですね。でも、「May」やショートチューンの「幸福論」に関しては、これまでのギターロック然としたGum-9もしっかり提示できていますし、作品内での良いバランスが取れているなと思います。この2曲は悩むこともなく自分の中からすんなりと出てきた曲なので、これまでの経験や培ってきたものが反映されているんだと思います。
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小林尚輝(Ba.):
この「幸福論」だけは、ピック弾きでレコーディングしたんですよ。普段は指弾きなので、そこはかなり難航しましたね…。でもその分、ピックならではの疾走感は出ていると思います。
- 作品の最後に向けて駆け抜けていく感じが気持ち良いですよね。ギターロックバンドとして培ってきたGum-9と、ポップスに挑戦をするGum-9が共存する今作を経て、今後の展望は見えてきましたか?す。
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高橋悠司(Gt.):
でも、この今の流れはかなり良いよね。
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古賀大蔵(Dr.):
そうだね。バンドをどうやってパッケージングしようか?というのは恐らくどのバンドも考えていることだと思うんですけど、Gum-9はジャンルに捉われずにいろんなことをどんどんやっていきたいタイプの4人が集まっているんですよね。なので、どれをバンドの主軸にしていくかをもっと明確にしつつ、絶えず挑戦し続けるバンドでありたいです。
- 芯はありつつも、楽曲のバリエーションは増やしていきたいと。
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古賀大蔵(Dr.):
そうですね。バンドの一つの目標って、ワンマンライブだと思うんですよ。自分たちのことを好きなお客さんだけが楽しんでもらえる空間がワンマンだと思いますし、その経験を得ない限りは次に進めないと思うんです。ワンマンができるくらいのバンドの力がなければ、面白い企画を打っても説得力がないというか。なので、目下の目標はしっかりリリースをしていきつつ、ワンマンライブを目指して挑戦を続けていくことですね。

【RELEASE INFORMATION】
2nd EP『Bloom Ur Days』
2025年2月26日リリース
Track List:
1. ラストガール
2. オスマンサス
3. ポインセチア
4. May
5. 幸福論
▼各種ストリーミングURL
big-up.style/Pg2x7WuX43
外部リンク
> official site > X(Twitter) > Instagram > YouTube
【EVENT INFORMATION】
1st Album『YOBAI SUSPECTS』 release oneman live
2024年10月25日(金)at 東京・渋谷WWW
OPEN 18:00 / START 19:00
TICKET:adv ¥4,500(+1D)/ door ¥5,000 (+1D)

