フクリュウの”ゆく年くる年” ~Have a Nice Day!とグレース・ヴァンダーウォール~

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 テン年代ラストスパートとなる2019年ベストアルバムを紹介しよう。ハバナイの通称で知られ、アグレッシヴなライブ空間を生み出す東京発4人組ディスコ/ロックバンド、Have a Nice Day!

 

そのサウンドは、強力なメロディーとフレーズを持つキラキラしたシンセポップを基調とする歌ものエレクトロだ。そこに、シンガロングを誘う歌詞にエモーショナルな火が灯されることで音楽に魔法がかけられていく。ライブハウスを軸とする東京アンダーグラウンド・シーンで頭角をあらわし、クラウドファウンディングを活用してお台場Zepp Diver Cityにてフリーパーティで2,000人を集めたオルタナティブな存在であった彼ら。しかしながら、10月に先行配信した2019年を代表する屈指の名曲「僕らの時代」が、ユースカルチャーを描いた映画『チワワちゃん』(岡崎京子原作)主題歌に抜擢されたことは事件だった。そんな、DIY精神を持って自らの道を切り開いていたハバナイが116日、まさかのメジャーレコード会社、エイベックスからアルバムをリリースした。インディペンデント・イズムを大切にしている彼らだが、スピリットは変わらず、より開かれた世界へと意識に変化が起きているのかもしれない。ハバナイは中心人物、浅見北斗によるポップカルチャーの歴史に根ざした価値観によって動き出す。オーディエンスとの関係性はフラットでありクラウドが楽しむためにバンドは機能する。時にライブ空間では罵倒が飛びかうが、浅見によるあしらいがエンタテイメントのような掛け合いを生み出す。キャッチーかつエバーグリーンな普遍性を感じさせる音楽とともに、ライブにおける一期一会の“生きている”という実感を味わえるかけがえのない瞬間だ。インターネットの普及によって民主化され解体されたヒットの価値観。そんな時代においてハバナイが生み出すナンバーこそ今この瞬間に鳴っていて欲しい普遍的なサウンドなのだと断言したい。音楽と溶け合える高揚感。まずは、アルバムに収録された外側に開かれたビッグアンセム「わたしを離さないで」、「僕らの時代」、「Night Rainbow」。ライブで欠かすことのできない「愛こそすべて」、「ファウスト」、「フォーエバーヤング」から聴いてみて欲しい。

 

2019年という孤独と寄り添いあえる全11曲。あなたもハバナイの虜となるはずだ。

 

 2019年は、ビリー・アイリッシュの年だった。2020年はどうだろう? ティーンネイジ・ドリーマー、グレース・ヴァンダーウォールに注目したい。

 

1122日に全世界配信され、1225日に日本のみでCDリリースされたミニアルバム『レターズ ヴォリューム1』が素晴らしい。

これまで、彼女の代名詞であったウクレレを封印。ビートやコーラスなど音像へとこだわったサウンドへのチャレンジに着目したい。そもそものはじまりは公開オーディション・リアリティ番組『アメリカンズ・ゴット・タレント』だった。当時弱冠12歳にして、すべて本人によるオリジナル・ソングで優勝。その才能は瞬く間にして世界中に広がった。最新曲「イントロ(グッチ・シューズ)」では“たった今 グッチの新しい靴をゲットしたんだ”と若者らしく外見を気にする他者との距離感を描き、「ウェイスト・マイ・タイム」では甘酸っぱい恋心と若さゆえに時間を持て余す贅沢さをテーマとする親しみやすさも魅力のひとつだ。

 
CDのみボーナス・トラック2曲が収録され、なかでも「ハイドアウェイ」が秀逸なポップチューンであることも付け加えておこう。2020年、ディズニー映画『Stargirl』主役に抜擢されるなど、今最も輝くを解き放っている15歳の新しい才能だ。

 

 

文・ふくりゅう(音楽コンシェルジュ)
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