幾年先でも色あせぬ、小野雄大の唄
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雄大をご紹介します。
逃げない強さを胸に
何かを言いわけにして生きるのは、自分を守る常套手段だ。「こんな年だから」「やっていることがマイナーだから」「見る目ない人が多いから」私たちは傷つくのを避けるために、いくらだってそれっぽい理由を用意できる。危険を感じない環境は最高だが、皮肉にも挑戦できる時間を奪っていく。
小野雄大は、昨年末にサラリーマンを辞めた。週末ミュージシャンを辞めた。そして、言いわけをしながら音楽と向き合うことも辞めた。今の彼には、逃げることを辞めたからこその強さがある。
彼が歌っているのは、普遍的な日常のひとかけらだ。前々前世から君のことを探さないし、会いたくて会いたくて震えることもない。誰かの言葉に傷ついたり、夢のようなときに思いを馳せたり。昔の人も、おそらく未来の人も共感できる言葉で歌詞を紡いでいく。一歩間違えれば、誰にでも歌えるものになってしまう危うさを秘めた音楽を、人生の厚みや彼の人柄で小野雄大だけの音として鳴らしているだ。隠れ蓑から全身をだし、「いい音楽ができたから、たくさんの人に聞かれたい」と公明正大に宣言している今の彼は、シンガーとしてあがり調子以外の何物でもないと思うのだ。
先日配信が開始された『素粒子たち』は、2020年2月中頃にわずか3日間でレコーディングされた今の大野雄大が詰まってる作品。小野の弾き語りをベースに、ジャズやファンク、ブルースと様々な表情を覗かせる楽曲たちは、どんなテンションにも寄り添ってくれそうなほどカラフルだ。時を経ても色あせない名曲揃いの1枚に、ぜひ手をのばしてほしい。
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・渋谷すばる
・折坂悠太
・グッナイ小杉
・うたたね