チロと衛星が奏でる、変哲もない愛しき日々
PICK UPアーティスト
BIG UP! ユーザーの中から、今聴きたいアーティストをピックアップ! 今回はチロと衛星をご紹介します。
ささやかさに詰めた美学
ささやかなお気に入りを身の回りに散りばめることは、日常を愛す手段として有効だ。どうしても欲しくて買ったスニーカー、譲れないこだわりのトイレットペーパー、ご褒美に頬張る焼きそばパン。ちょっとしたキラキラは、ありきたりな日々を特別にはしなくても、愛しいものにしてくれる。チロと衛星が紡ぐ音楽も、まさしくそういうものだと思うのだ。
彼らは2021年に始動した4ピースロックバンド。カラッとしたギターサウンドとキャッチーなメロディーが印象的で、そこに乗るボーカルの声もとてもエモーショナルである。
パッと聴きで「いい」と思えて、何度も聴くごとに「好きだなあ」が増していく。その秘密は丁寧な楽曲構成にあるのだろう。音の入る瞬間にこだわり、気持ちいい長さのサスティンを研究し、本当に必要な音で厚みを作る。だからこそ、ささやかな一言や情景をドラマチックに描き、愛しいものとして昇華できるのだ。
先日配信が開始された『the チロ』は、1st E.Pとなる作品。全曲通しても約20分とコンパクトな作りだが、1枚聴いたあとには温かい短編を読んだあとのような充足感がある。日常にそっと花を添えるつもりで、ぜひ聴いてみてほしい。