風町ほっけを読むように聞く

PICK UPアーティスト

BIG UP! ユーザーの中から、今聴きたいアーティストをピックアップ! 今回は風町ほっけをご紹介します。

語るように歌われる言葉

ボカロP/シンガーソングライターとして活動中の風町ほっけ。
シングル『つかまえて、海』も初音ミクバージョンと本人が歌っているものとがあり、本人歌唱のものが配信リリースされている。

風町ほっけの音楽を聞くと、「ストリートテラー」という単語が頭に浮かぶ。
彼の歌声に浸るとき、まるで絵本や童話を読んでいるような、次の言葉を心待ちにして一枚ずつページを捲るような気持ちで楽曲と向き合いたくなるのだ。
海というどの時代も変わらない場所で、愛という誰もの根底に流れる深い感情について歌うこと。
それに誠実に向き合う優しさと寂しさが、詩のひとつひとつから、それを包む音選びのすべてから伝わってくる。

さらに魅力的なのは、YouTubeにアップロードされている初音ミクバージョンと彼が歌うバージョンとでは見える情景がまた少し違うところだ。
同じ曲、言葉でも、機械音声であるボーカロイドの歌になると、過去から未来へと託された手紙を開く切なさ、戻れないどこかに思いを馳せる寄る辺なさが強調されるのだ。
対して、風町ほっけの声は、現在ここにいる私に対して語りかけ届けようとする切実さに満ちており、共にバトンを紡いでいくやわらかな覚悟が芽生える。

語り部のようなアーティストという点で、折坂悠太や青葉市子などが好きなリスナーにも彼の音楽と出会ってほしい。
時を越えても誰かの心に届くであろう、儚くも強い楽曲だ。