tomoが重ねる心と景色

PICK UPアーティスト

BIG UP! ユーザーの中から、今聴きたいアーティストをピックアップ! 今回はtomoをご紹介します。

奥深い表現を突き詰めて

孤独の象徴として描かれる時間帯と言われたとき、まず思いつくのは深夜だろう。
音楽という表現においても、ひとりきりで過ごす夜に寄り添うような、共により深いところへ沈んでいくような楽曲は数多くある。
しかし、ラッパー・tomoが選ぶのは違う。
最新シングル『Sunset』は、夕暮れの情景と自らの焦燥感を重ねた重厚な一曲だ。

日が沈みはじめた空の色を写して暗く揺れる海、燃えるように光る地平線。
ジャケット写真が切り取る夕暮れの景色は、一日の終わりが近づく安心感よりも、夜を迎える不安を掻き立てる刹那的な魅力がある。
そうして脳内に立ち上がった黄昏の空気をより深めるように、tomoのラップの一言ひとことが私たちを刺していく。
ネガティヴとポジティヴ、一人でいたい想いと誰かと繋がっていたい願い、そんな相反する感情の間で疲弊していく心の中を吐露するリリックは、昼と夜の間を埋め、人々を揺るがせる逢魔が時そのもののようだ。
そんな重たい質量のあるフレーズたちだが、心地良ささえ覚えながら身を任せることができるのはtomoの流れるようなフロウがあってこそで、ラッパーとしてのスキルの高さを感じることもできる。

新たなアプローチから私たちの心象風景を深めていくtomo。
表現者としての奥深さに驚かずにはいられない。