悲しいほどの美しさを宿すピコの歌

PICK UPアーティスト

BIG UP! ユーザーの中から、今聴きたいアーティストをピックアップ! 今回はピコをご紹介します。

残酷なほどの綺麗さを

男性・女性どちらもの声を発声でき、さまざまな枠を越えた表現を魅せる“両声類”シンガー。
その火付け役であり、インターネットシーンから登場したアーティストとしても先駆け的な存在として支持を集めるピコが、約9ヵ月ぶりとなるシングル『海月の幽霊』をリリースした。

今作は、『ロミオとシンデレラ』『歌に形はないけれど』などでも知られる人気ボカロP・dorikoが作曲を務めた。
静かに透き通った音像は美しく、海や星空を想起させるものでありながら、その一方で深い闇も感じさせる奥深さがある。
深海に沈んでいくように、星が見えない暗い空を見上げているように、綺麗なものの影にフォーカスを当てているようだ。
ピコによる詩は柔らかく叙情的に行き場のない悲しみを描き出し、そしてなにより、歌声に滲む感情が聞き手の心を痛いほどに震わせる。
音から、メロディから、言葉から、声から……冷たくも美しい感傷が押し寄せる1曲になっている。

秋の冷えた空気に残酷なほど映える月明かりが、部屋に差す一人の夜。失ったものを数えたくなってしまう時。
そんなシチュエーションの中、じっくり浸って欲しい楽曲だ。