表現の幅で惹き込むハイノ
PICK UPアーティスト
BIG UP! ユーザーの中から、今聴きたいアーティストをピックアップ! 今回はハイノをご紹介します。
様々な表情を感じて
作詞、作曲、編曲、歌唱、ギター演奏、プロデュース全てを自身で行い、作編曲家としてのキャリアを重ねたのち2023年よりソロアーティストとして始動したハイノ。ファーストアルバムとなる『aporia』が現在配信中だ。
全7曲を通し、ハイノというアーティストが持つ表現の幅を描き出すこのアルバム。リード曲『ファム・ファタール』や既発表楽曲『イエロウ』を筆頭とした、音の密度が高く軽妙な起伏に富んだロックサウンドにはボーカロイドカルチャーからの影響を強く感じられる。1曲目、2曲目とそうしたパンチのある楽曲が並びリスナーを惹き込んだところで、続く『季節外れの蛍』『wh0re』では、打ち込みをメインとしたサウンドメイクの奥行きを魅せてくれる。爽やかな切なさと重量感のあるダークさ、対極的なムードからハイノが持つ引き出しの豊かさを思い知ることができる2曲だ。
そして『遠雷』『鬣犬』『vow』という3曲が並ぶアルバム終盤の流れからは、勢いのある疾走感とその中で際立つメロディのキャッチーさ、それぞれ異なるアプローチから「生」や「理想」へのメッセージが描かれる歌詞の世界をじっくり味わいたくなる構成に仕上がっている。特に『vow』は、アルバム全体の勢いを抱きとめ、もっとも素直な言葉と歌でハイノが秘める核に接近している1曲のように思える。
アルバム全体を通して聞くことにより、音楽的な幅広さと同時に、今後広がっていくであろうスケール感の予兆も垣間見られる作品だ。