DIYアーティストでも自分たちで広告展開をする方法〜 Instagram広告を配信してみよう〜

コラム

音楽活動をしていく中で、楽曲制作、MV撮影、ライブの開催…などなど、活動内容は多岐にわたると思いますが、
まず自分の楽曲を広めて多くの人に聴いてもらうためにはどうしたら良いか?というところで悩んでいる方はたくさんいるかと思います。

やり方として、楽曲の更新頻度を上げたり、SNSを活性化させたり、ひたすらに良いコンテンツを作ることに注力してみたり…など色々なアプローチがあると思いますが、広告展開を視野に入れてみるのはいかがでしょうか?

広告、というとDIYアーティストにとっては敷居が高いように感じる人もいるかと思いますが、やり方によっては本当に少額から、気軽に広告を打つことができるので、認知を広めると言う意味で非常に有効な選択肢かと思います。

本記事では、DIYアーティストがどのように広告展開をしていくのが良いか、様々な側面からメリット・デメリットを交えて解説していきます。

Instagram広告を打ってみよう

広告というと、大きなレーベル/事務所に所属しているアーティストならばレーベル/事務所の人間や広告代理店が広告を配信してくれる、なかなか個人では難しい、と感じている方も少なくないと思います。

しかし、DIYアーティストの方でも「Instagramのアプリ」という普段使用されているもの/アプリから気軽に広告を打つことができます。

YouTube広告などもアプリから広告配信することは可能ですが、広告専門のアプリやアカウントが必要であり、通常のYouTubeのアプリではないこと、
また弊社ではInstagram広告がDSP(音楽配信サービス)などの活性化=再生数、リスナー数などの数値を上げていくこと、について最も適していると感じているため、
今回は気軽さ/おすすめ度から総合的に判断しInstagramアプリからの広告配信、について説明していきたいと思います。

InstagramアプリでInstagram広告を配信する流れを解説

①アカウントタイプの切り替え

Instagramアプリから広告配信するにあたってまず必要なことは、アカウントがプロアカウントになっていることです。
すでにプロアカウントにしている方は②にお進みいただき、まだ個人アカウントの方はアカウントタイプを変更しておきましょう。
やり方は、「アカウントトップページ右上にある三本線→設定とプライバシー→アカウントの種類とツール→プロアカウントに切り替える」で変更可能です。

また、プロアカウントにする際
・クリエイター
・ビジネス
とアカウントタイプを選べますが、音楽活動用のアカウントであればクリエイターで問題ありません。

プロアカウントに変更するメリットとして、

  • Instagramインサイトが利用可能
    (フォロワーやフォロワー以外の訪問者、また投稿の閲覧数など様々な数値を把握することができます)
  • お問い合わせ/DM機能が利用可能
  • 予約投稿が可能
  • Facebookと連携させておくことで、管理者以外の人でも投稿を管理できるようになる

などがあります。Instagramをビジネスの場で活用していきたい場合はほぼデメリットがないといえますので、この機会に切り替えてInstagramを運用していくと良いでしょう。

②広告で使用する投稿を選択

Instagramアプリからの広告出稿は、投稿をそのまま広告として使用する形になります。
ですので、投稿に使用している画像・キャプションは広告に適した形にする必要があります。

アーティストとして自身の楽曲などを宣伝するのであれば、MVなどの映像素材を使用した投稿を広告用に使用するのが良いでしょう。
また、キャプションにはアーティスト名/曲名はマストで入れ、その他リリース日やアピールしたい項目(YouTubeで配信中!など)を入れておくと良いでしょう。
(広告用の映像素材に関する詳細は、後述します)

このような形で広告が表示されます↓

広告用の投稿が用意できましたら、投稿画面の右下に「投稿を宣伝」というボタンがあるのでここから広告入稿を進めていきます。

③広告の配信内容について設定する

1.広告の目標

「投稿を宣伝」ボタンを押したあと、広告の目標について選択するページが出てきますが特別な目的がない限りは「ウェブサイトへのアクセスを増やす」に設定しましょう。

ウェブサイト欄にはユーザーを誘導したい特定のサイトURLを入れることができますが、
YouTubeのMVや各種DSP(音楽配信サービス)を網羅的に入れているスマートリンクのURLを入れるのが良いでしょう。

遷移先についての詳細を書きますと、

YouTube

→全年齢を通して、利用率がかなり高く老若男女に訴求できるため遷移先に適している

スマートリンク

→各種DSPを網羅的に入れたスマートリンクであれば、どのDSPを使用しているユーザーにも基本的には対応できるので遷移先に適している

HP

→アーティストの認知、という面では良いが情報量が多すぎるため初見のユーザーにきちんとHPの詳細まで見てもらえる可能性は高くない。よって、楽曲視聴にも繋がりにくく遷移先には適していない

特定のDSP

→アーティストとして力を入れたいDSPはあると思うが、広告を見たユーザーがそのDSPを使っているとは限らない。Apple Musicに遷移する広告をSpotifyユーザーが見ても意味がないため、遷移先には適していない。
(海外はSpotify利用率がかなり高いので、海外中心でSpotify遷移の広告を打つのは選択肢としてはアリ)

となります。
ご自身がどのように/どこで音楽を広めていきたいか考えた上で、最適な遷移先を選んでいただければと思います。

2.ターゲットオーディエンス

次に「ターゲットオーディエンス」について聞かれますが、ここは「自動」に設定しておくのが無難です。

自動に設定しておけば、アカウントのフォロワーに類似した人たちに広告を配信することができますので、比較的親和性の高い層に広告を打つことができる上、細かいターゲット設定も不要で手間がかからないためです。

ただし、アカウントのフォロワーが純粋に音楽を好きな人たちだけではない場合や(音楽以外での面でアーティストとして大きな露出があり、音楽以外の属性を持つフォロワーが大量にいたりなど)
フォロワーに類似した人たち以外にも広告を配信したい場合などは、「カスタムオーディエンスを作成」という欄から自分で指定したオーディエンス層に広告を配信することができます。

例えば、「日本に住んでいる」「音楽やフェスが好きな人たち」などで指定するとこのような形になります。↓

最後に、予算と配信期間について聞かれますので一日あたりどれくらいの予算を投下したいか/何日間配信したいかを選択して、
最後の「広告を確認」画面で広告のプレビューや推定リーチ、コスト概要などを確認し
問題なければ「投稿を宣伝」を押し、広告費の支払い情報を入力すれば広告が配信されます。

広告インサイトを確認しよう

広告配信が終わりましたら、今回の配信がどうだったのか、振り返るのも重要です。
どのような層にリーチし、どのような層から反応があってどのように数値が積み重なったのか把握しておきましょう。

広告配信の成果については、広告インサイトより確認できます。
広告インサイトは、広告に使用した投稿の左下に「インサイトを表示」と出てきますのでそこから確認できます。

広告インサイトから確認できる項目・項目ごとの意味はこちらの通りです。
(項目ごとの意味は赤文字で記載しています)

「オーディエンス」からは、広告が配信された性別・年齢・地域の分布が確認できます。

広告が多く配信された性別・年齢層・地域などが分かりますので、自分の音楽とどういった層がマッチしているのか、良い分析の機会になるかと思います。

こちらの画像を例に、広告がどのような結果だったのか解析していきましょう。

まず重要なのは消化金額に対してどれほどウェブサイトへアクセスしてもらったか=設定した外部サイトに遷移してもらえたか、です。

今回の目標としては外部サイトとして設定しているSpotifyへの送客数最大化となりますので、まずはどの程度の人たちがSpotifyに遷移したのか把握しておきましょう。

今回は遷移数は9で、広告を見てクリック→Spotifyに遷移、という流れが9回起こりました。
これの費用対効果としては、「ウェブサイトへのアクセスの単価」欄から判断できます。
今回の1遷移あたりの獲得単価は¥82とあります。

獲得単価は、ターゲティングの仕方や時期によってもかなり変動しやすいので一概に平均値的なものを定義づけるのは難しいのですが、
今回のターゲティング「ターゲティングオーディエンスは自動を選択、日本のみに配信」を踏まえますと概ね平均的な数値で配信できたのではないかと思います。
(今回のターゲティングだと、平均レンジは60~100円程度ではないかと思います)

大体の費用対効果は上記の数値で判断できますが、実際Spotifyに遷移した後に音楽を聴いてくれているか否かは、適宜Spotify for Artistsなどで確認するとより良いかと思います。
広告実施期間と併せて再生数やフォロワー数が伸びているようであれば、広告の効果があったと言って良いでしょう。

アプリから広告配信するメリット・デメリット

Instagramアプリから広告配信することのメリット・デメリットを挙げておきますと

●メリット
  • 何より、手軽。少ないステップで簡単に広告配信することができる
  • わざわざ広告用のプラットフォームなどから広告に使用する映像素材をアップロードせずとも、すでにInstagram上にある投稿を使用することができる
●デメリット
  • 広告用のプラットフォーム(Meta広告マネージャー)からの入稿ではないので、細かなターゲティングをすることができない。
    例:配信面の調整など(フィード、ストーリーズ、リール、発見タブなどの配信面があるが、どこに広告を表示させるかなどはアプリからは操作ができない)
  • 広告用のプラットフォーム(Meta広告マネージャー)から広告の管理をするわけではないので、細かな調整を行うことができない。
  • 自分たちの楽曲を積極的に聴いてくれるような相性の良いリスナーに広告を優先表示することはできない

などがありますので、ターゲティングや広告の調整にこだわりたい方、広告用の動画を使用して広告配信をされたい方にはInstagramアプリ上からの配信は少し物足りないかもしれませんが
広告をまずは試してみたい、どのような反応があるのか見てみたい、そういった方にはかなりお手軽な方法かと思います。

どんな広告動画が効果的なのか?

広告用に使用する投稿は、なるべく広告として効果の高い素材を採用するのが良いです。
基本的にはMVから切り出したものを使用すると良いですが、切り出しポイントとしては以下があります。

・明るく、視認性の良い箇所
・出演者などの顔がアップで写っている箇所
・文字情報はできるだけ少なくシンプルに

上記を押さえている素材であれば、基本的には広告向きと言って良いかと思いますので、そのような投稿を広告用に使用しましょう。

↓参考例(顔が大きく写っていて、明るい上に音楽コンテンツであることも分かりやすい)

なお、MVなどがない場合はライブ映像や弾き語りの映像などを使用するのが良いかと思います。
リリックビデオなどの文字情報中心の素材は広告にはあまり適していない印象ですので、避けた方が無難です。

広告配信をステップアップさせたい場合

Instagramアプリからの手軽な広告配信の方法について解説させていただきましたが、
メリット・デメリットでもお伝えしましたようにあくまでもアプリからの広告配信は簡易版であり、詳細なターゲティングや広告の細かな調整ができるわけではありません。

よって、得られる効果も広告用のプラットフォーム(Meta広告マネージャー)などを活用した場合と比較すると限定的になってしまいます。

例えば、広告の効果測定などにおいてもアプリ上からですと「3.広告インサイトを確認しよう」で説明しましたとおり分析に使用できる指標は10項目程度ですが
Meta広告マネージャーからですと約100項目ほどの指標が存在します。
・年代×性別で見た時にどの層から反応が良かった
・広告動画の品質は平均以上だったのか以下だったのか
・配信地域別で見たパフォーマンスはどうだったのか
・広告動画を最後まで見てくれた人はどれくらいいたのか
などさまざまな側面から広告の分析をすることが可能です。

もし、広告の効果を向上させたい場合や、精度の高いターゲティングなどを行いたい場合は、広告代理店に依頼するのも選択肢の一つです。
広告代理店に依頼するメリット・デメリットを挙げてきますと

●メリット
  • 広告配信のプロに運用を任せられるので、自分で運用するよりも高い効果を得られる可能性が高い
  • 多くの代理店は広告運用の総括レポートを作成してくれるため、広告の何が良かったか/悪かったか、客観的に見ることができる
  • 広告そのものの数値以外にも、反応の良い具体的な層(年齢や性別、何に興味があるかなど)が分かるため今後のPR/マーケティングに活かせる
●デメリット
  • 手数料がかかる
  • 本当に費用対効果の高い運用をしてもらえるか否かは代理店次第。また、代理店の質も業界内で大きな差がある。

などがあります。

DIYアーティストにとっては広告の費用も中々大きな金額感になってくるかと思うので、熟慮の上決めていただくのが良いと思いますが
もし代理店への依頼をご検討されている場合はぜひ弊社までお声がけくださいませ。


<太田受里プロフィール>

Gerbera Music Agency株式会社 音楽広告事業部所属。
18歳から音楽業界に従事し、コンサート業界の裏方から演者側など主に現場仕事を経験、2020年にGerbera Music Agencyに加わる。
2023年より音楽広告事業部マネージャーに就任。
音楽広告事業部にて様々な音楽広告を実施、日々音楽業界への貢献と広告の進化について考えています。
GMAが運用するSpotifyプレイリストメディア「Pluto」にてプレイリスト「Feel the Japanese GROOVE」を更新中。

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