ボーカロイド調声 応用編 ~アーティキュレーションで理想の表現に近づける~ 第二弾!avex ボカロクリエイターコース講義レポート

コラム

2024年4月に開校した、avexボカロクリエイターコース。VOCALOID™を使った音楽を作ってみたい、独学で学んできた音楽制作を本格的に学び直したい、好きなことを仕事にしたい。そんな思いを胸に、VOCALOID™(その他合成音声ソフトを含む)を使用した音楽制作を、制作から発信まで、360°学べる、実践型オンラインスクールです。
コラムでは、avexボカロクリエイターコースの講義をいくつかピックアップして、内容を少し紹介します。

第二弾としての今回は、5月に行われたびび講師の調声についての講義をレポート!ボカロPとして前線で活躍するびび講師が明かす、一段階上の調声テクニックとは?
VOCALOID™を使う人必見!あなたの調声を劇的に変えるかもしれない調声テクニックに注目!

調声をするときに意識して欲しいこと

ボーカロイド調声をするときは、”足し算”と”引き算”で考えると分かりやすいです。
最近はAIの歌声合成が主流になってきていますが、通常のVOCALOID™を使用する場合は”足し算”で考えると分かりやすいです。というのも、打ち込んだだけでは、曲に馴染むような調声がされないため、曲に馴染ませるために、付け加えて行く作業が必要になるからです。一方で、AIの歌声合成については、ノートを打ち込んだだけでも曲に対して自然な調声になっていることが多いため、引き算をしてより曲に馴染ませる作業が必要になります。例えば、しゃくりが強すぎる部分を直してみたり、AIだと音が外れることが多いため、音程を直したりします。

VOCALOID™、合成音声を調声する上で意識して欲しいことは”調声と曲が合っているか”です。極論べた打ちでも問題はなく、必ずしも調声する必要はありません。DAWのプラグインで調声したり様々な方法があるので、自分なりの調声を確立するのも一つの方法です。

パラメーターを使って表現の幅を広げてみよう

では、実際に調声について今までの復習をしながら見ていきます。

子音の表現を取り入れてみよう

子音を調声することで、より細かな歌唱表現をすることができます。
いくつかのパラメーターを使って見ていきましょう。
まず、ベロシティを使ってみます。
ベロシティとは、子音の長さを調整するものです。子音の長さによってどれくらいその音を発音するか、どれぐらい語尾を伸ばすか等を調整することができます。
例えばVOCALOID™の場合だと、ベロシティを一番上まで上げるとと、子音は短めですが、ベロシティを極限まで下げると、子音が長くなります。

また、子音の長さによって強弱を変えたりもします。例えば、子音が長い方が子音が目立って聞こえるため、次の音に向かって音を溜めているような表現をすることができます。
子音を長くすると、次の音と区切られているような印象になるため、特に「っ」「ぱっ」「ぺっ」といった破裂音では、発音を際立たせることができます。
ただし、キャラクターによって発音の強さや子音の長さも異なることもあるため、キャラクターのデフォルトの歌唱に合わせて調声していく必要があります。
最近のボカロ曲だと、スタッカートが効いた楽曲や、ボカロ曲っぽいと言われるテンポが速い楽曲等で、子音の長さを調整してあげることで、はっきりとした発音や、曲調にあった歌唱にすることが出来ると思います。

ベロシティ以外の子音の調整方法

また、ダイナミクスを調整することによって子音を調声することもできます。
ノイズの部分のダイナミクスを下げることで、ノイズを軽減することができ、ベロシティやタイミングを使って子音を調声するときに比べて、よりクリアな子音を表現することができます。
ここまで子音の調声についてお話しましたが、レガートで滑らかに歌わせる人や、短くくっきりとした特徴のある方等、子音の長さがそのボカロPさんの歌わせ方の特徴になっていたりするので、好きなボカロPさんの子音の調声に着目して、研究してみてください。

ビブラートの表現を広げてみよう

ビブラートにおいても子音と同様、細かな表現を加えることができます。
例えば、ビブラートにおいては、VOCALOID™のエディターやソフトにデフォルトで沢山入っていますが、ダイナミクスやピッチベンド、ピッチベンドセンシティヴィティを編集することで、語尾にかけてより細かなビブラートを表現をすることができます。
パラメーターに関しては、ベロシティ、ダイナミクス、ピッチベンド、ピッチベンドセンシティヴィティこの4つがあれば、大体なんでもできます。何からいじればいいかわからない方は、まずここから始めてみると良いと思います。

ちなみに、ピッチベンドセンシティヴィティとは、ピッチベンドの幅の広さを調整する機能のことを指します。トーク系の調声だとピッチベンドセンシティヴィティが高い傾向があります。
ピッチベンドは、その名の通りピッチを調整できるものを指します。
通常のVOCALOID™の場合は、”足し算”なのでピッチベンドをいじるかノートを分割していじる必要があります。AIの場合もピッチベンドがありますが、個人的にはAIだと元々出力される音源が決まっているので、どう折り合いをつけるかバランスを取っていく必要があります。AIの場合は機能を色々いじりやすくなっているので、微調整として使っても良いかもしれません。AIで自分の思った通りに調声したい場合は、一度まっさらにするのも一つの手だと思います。

ここまで調声について沢山触れてきましたが、実際に曲を作ります!となったら、ダイナミクスもグロウルも…と全てやろうとすると、人間の息が続かないのと一緒でたぶん作業も続きません。作業効率を考えると、一つ一つ絞って、優先順位をつけてやると効率が良いと思います。例えば、最初はピッチベンドのみで全部調声し、足りなければダイナミクスを調整する等。あとは、自分に合うやり方や使うキャラクターによって表現も異なるので、いろんなやり方を知っておくと良いでしょう。
これは私の(びび講師)経験上ですが、まずは絞ってやることが大事です。全てをてんこ盛りにしてもごちゃごちゃしてしまったりすることもあるので、色々な調声を取り入れつつ、絞ることも重要だと思います。
また、ビブラートもその人の特徴が出やすいので、分析してみるのもありだと思います。

上記以外の調声で、よく使われる調声としては下記のような表現が挙げられます。

①ピッチベンドで音頭を調整 – 上から、下からしゃくり

音頭に多い表現。上からしゃくりを入れると可愛らしい印象。

②ノートの終わりの部分のフォール

語尾の音程が下がる。ロック調の曲に多い表現。

③語尾を上げる

かわいい、キャラクターものやアイドル系の楽曲に多い表現。

④語尾の発音記号を調整

発音記号を使って、語尾息を追加すると語尾の雰囲気がすごく変わります。
デフォルトの状態だと発音記号を入力できないため、画面左上「ジョブ」→「歌詞入力モード」→「発音記号で入力」で設定します。

語尾息としてよく使われる発音記号としては、h、p¥、Cがあります。(発音されるされないに関わるので大文字・小文字は注意!)
これらや子音を語尾に使うことによって、歌い終わりの雰囲気を変えることができます。
また、ロック調の楽曲や英詞を歌わせたい時によく使われますが、語尾の母音を変えることで雰囲気を変えることもできます。
例えば、「あ」のノートの語尾に「e」を入れることで、「あ~ぇ」といった表現をすることができます。このように、歌詞通りに入力する必要はなく、したい表現で語尾を変えることで表現の幅を広げることができます。

このように、子音やビブラートの表現等、細かな調声を取り入れることで、より自分が表現したい歌声に近づけることができます。
自分のお気に入りの楽曲やボカロPさんの調声等も研究しつつ、ぜひご自身の調声にチャレンジしてみてください!

※ 「VOCALOID(ボーカロイド)」および「ボカロ」はヤマハ株式会社の登録商標です。


〈びび プロフィール〉

2012年にVOCALOIDのカバーをニコニコ動画に投稿、以降VOCALOIDカバー、調声をメインに活動する。

2021年「流星のパルス」
2022年「88☆彡」
バーチャル・シンガー版
SNOW MIKU 2023「SnowMix♪」
ボカコレ2023春1位「新人類」
2023年 Project VOLTAGE「JUVENILE」

avexボカロクリエイターコース

自分のイメージ、理想に近い歌声を再現してくれるVOCALOID™。
ボーカロイドを操り、音楽作品を創り出す、ボーカロイドプロデューサー、略して「ボカロP」。
ボカロクリエイターコースでは、オンライン講義とDiscordを併用することで講師と生徒がコミュニケーションを取り合いながら、音楽を作る上での考え方や理論をより実用的に学ぶことができます。
音楽を作りたい、好きなことを仕事にしたい、その第一歩をボカロクリエイターコースで、共に歩み出しましょう。

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