「DAWで響く!メロディ作りのテクニック。」第三弾!avex ボカロクリエイターコース講義レポート
コラム
2024年4月に開講した、avexボカロクリエイターコース。ボーカロイドを使った音楽を作ってみたい、独学で学んできた音楽制作を本格的に学び直したい、好きなことを仕事にしたい。そんな思いを胸に、ボーカロイド(その他合成音声ソフトを含む)を使用した音楽制作を、制作から発信まで、360°学べる、実践型オンラインスクールです。
コラムでは、avexボカロクリエイターコースの講義をいくつかピックアップして、内容を少し紹介します。
第三弾としての今回は、12月に行われた近藤隆史講師の「DAW(Studio One)を上手く活用したメロディの作り方」についての講義をレポート!「メロディを作る」をテーマにどうやってDAWを活用していくかというところで講義を進めていきます。
講義概要としては以下の目的で進めていきます。
・メロディ作りに焦点を当てた課題に取り組んで、センスや引き出しを増やす
・キャッチーなメロディーを研究して、決められた小節でキャッチーなメロディーを作る
・完成度が高くなくても、アイデアをいっぱい出す
DAWを使った音楽制作をする人必見!DAWのガイドブックも執筆する、近藤隆史講師が与えるメロディ作りの新たな選択肢とは!?
実際にMIDIのダウンロードしたコード進行を使いながら、メロディについて研究していきましょう。
Title List
メロディ作りのアプローチ
メロディを作る時は、インスピレーションを引き出す環境作りが大切です。ここでは、いくつかのメロディ作りのアプローチを紹介します。
まず一つ目は、ピアノの音以外でのメロディ作りです。
ピアノだけでメロディを考えるのが難しいと感じる場合もあります。その時は、シンセサイザーで音を変えてみたり、ドラムを加えてみたり等、メロディが生まれやすい環境を作りましょう。音色を変えてみたりすることで、様々な音からメロディを想像することがしやすくなったり自分の気持ちを持っていきやすくすることで、インスピレーションが湧きやすくなります。
2つ目は、テンポを変えることによる、メロディ作りの環境作りも効果的です。テンポを変えることで思いつくメロディや楽曲の雰囲気も変わります。例えば、遅いテンポでは16分音符や32分音符等、小さな単位の音符が増えることでリズムに動きが生まれやすくなります。このように、テンポに合わせてメロディの形を変えることも、より魅力的なフレーズを作るアプローチの一つです。最初にどういう雰囲気のメロディを作ってみようかなと、テンポを調整してみるのも一手です。
そして、3つ目は、コード進行からメロディを作ることです。
既にやったことのある方も多いのではないでしょうか。コードに合わせて相性の良い音を並べ、メロディとして構築する方法があります。特に、Studio OneではMIDIのイベントをコードトラックに放り込めばコードを表示することができるので、視覚的に音程や、音のハモリを確認しながらメロディを構築することができます。
これらのように、メロディを作るための環境作りは複数あり、そこから自身の制作スタイルを確立したり、それまでと異なる曲調の楽曲を作る時など、様々な角度からメロディのインスピレーションを得ることが大切です。
ここまで、元となるコード、テンポトラック、コードトラックが表示できるようになりました。ではここでメロディ用のトラックを作っていきます。
メロディとハモリを自在に操るテイク選びのテクニック
Studio Oneでは、「テイクを録音」「テイクをレイヤー化」にチェックを入れるとテイクをレイヤー化して録音し、複数のテイクを比べて最適なものを選ぶことができます。
例えば、下の画像のように1つのトラックで何回かテイクを録音し、録音したテイクをオケと混ぜて比較しながら、「ここ使いたい!」という最適なテイクを選んで部分的に切り替えて繋いでいくコンピングのようなこともできます。
テイクごとにトラックを分けてしまうことも多いかと思いますが、1つのトラックの中で調整することができるのはレイヤー化のポイントです。マウスでメロディを入力する方も多いと思いますが、コード進行に合わせて適当に鍵盤を弾きながら後からピッチを研究するのも良いと思います。

また、マウス入力やステップ入力の場合「トラックリスト」という便利な機能もあります。
コード進行を見ながら自分でメロディを考えたいので参照するノートデータをおいておきたいことがよくあると思いますが、そんな時「トラックリスト」を活用することで、複数のトラックを同じ画面に表示して編集することもできます。これによりメロディと他のトラックとのバランスを見ながらハモリやコーラスを考えることができます。イベントをダブルクリックするとエディターが開き、編集したいイベントをアクティブにすることで複数のトラックを表示することができるので、エディター上でコードのパートを見ながらメロディーを考えて、更にカウンターライン・ハモリを考えることもできます。

例えば、下の画像のように、メロディに合わせてハモリを作るために、音階やリズムを調整することができます。


同じ画面でメロディやリズムの噛み合わせを視覚的に確認することで、足りない部分に音を加えたり、「何か物足りない!」と感じる部分を補うことができます。この機能はメロディを研究するには使い勝手が良いのでぜひ挙動を把握して使ってみてください。
またコードに合わせてメロディを研究するときに、コードにメロディが埋もれてしまうのでオクターブで調整をしたい場合、「トランスポーズ」を12や24などにすることでエディター上の表示はそのままオクターブ上でメロディを鳴らすことができるので、参考ノートに沿ってメロディを研究することもできます。

更にスケールやコードトーンに合うか確認したい時に便利な機能「スケールパネル」もあります(Studio One ver.7以降)。

この機能をオンにすると、選択したコードとスケール(画像の場合はキーがFのブルーススケール)の音の鍵盤に色がつくので、色がついたところに合わせて音を入れたらスケールに合わせたフレーズを作ることができます。またピッチ表示を「スケール内」にすると対象スケールの音のみが表示されるようになるので、この中で音を入れたら凄く変な不協和音になるような破綻は避けられます。

この辺りの機能はピッチを選ぶ点で使い勝手が良いと思います。この機能はDAWごとに個性があるので、自分の使用するDAWごとにピッチを使用する機能がどれなのか確認してもらうとメロディやソロ作りに役立つと思います。ポイントとなるのは、このコードの時のドミナント/ペンタトニックはどのスケールが使えるかからアプローチすると、何のスケールを選んだ方が良いのか決まってくると思うので他の講義も参考にすると良いと思います。スケールから作るのが難しい場合は、コードの機能を確認してその機能で使えるスケールを調べて選択すると良いと思います。
また、先ほど触れたように、トラックリストを使ってハモリやコーラスを作成することも可能です。
例えば、音階を単に下げるだけでは平行進行になってしまったりもう少しコードトーンを追いかけたいなど理想イメージがあると思うので、ピッチ表示を「スケール内」にしてメロディの音階を見ながら、より滑らかな音階や変化を加えることで、表現豊かな響きのハモリを作り出すことができます。


ランチャー機能を使った新しいアイデア作り
最後に、Studio Oneの「ランチャー機能」を活用した楽曲制作をご紹介します。
ランチャー機能をONにすると、シーンを作成し、Spliceなどライブラリからサンプルパックを読み込むことができます。またMIDIの録音やオーディオを録音してループも可能なので、自分でフレーズを作ることもできます。これらを組み合わせることでオリジナルのサンプルを作成し、アイデアを視覚的に整理しながら新しい楽曲を構築することが可能です。
素材作りやシーン構築を通じて、これまでとは異なるアプローチで新しいアイデアを生み出すことができるので、ぜひ試してみてください。

これまで、DAW(Studio One)を使った楽曲制作のコツをご紹介してきましたが、DAWは単に制作をサポートするだけでなく、メロディ作りの段階からインスピレーションの幅を広げるための強力なツールです。
今回は前半MIDIでメロディを作ることに焦点をあてましたが、鼻歌や口笛で歌ったものをメロダインで修正やMIDIノートに変換するのも面白いと思います。編集ビューの面白い機能も色々紹介しましたが、Studio OneはProだと楽譜になるので学びも兼ねてこういった方法を試してみるのも面白いと思います。
ぜひ、これらの方法をご自身の楽曲制作に取り入れて、より豊かな音楽を生み出してみてください!
〈近藤隆史 プロフィール〉

東京音楽大学トロンボーン専攻卒。東京音楽大学音楽学部非常勤講師、文教大学情報学部非常勤講師。音楽におけるコンピューター、コンピューターにおける音楽、どちらの面からも研究・発信・育成をおこなう。
音楽ソフトウェアやハードウェアの企画・開発・サポートなどに携わり、コンピューター・音楽・教育・クラッシック・ジャズ・ポップス、など多彩な経歴を生かした目線での、執筆活動や演奏・制作をおこなっている。
Studio One日本正規代理店の全面的な協力を得てStudio One ガイドブックを執筆。
自己レーベル「BirdieDonut」主宰。アーティストプロデュースおよび音源の制作と配信もおこなう。
avexボカロクリエイターコース
自分のイメージ、理想に近い歌声を再現してくれるVOCALOID™。
ボーカロイドを操り、音楽作品を創り出す、ボーカロイドプロデューサー、略して「ボカロP」。
ボカロクリエイターコースでは、オンライン講義とDiscordを併用することで講師と生徒がコミュニケーションを取り合いながら、音楽を作る上での考え方や理論をより実用的に学ぶことができます。
音楽を作りたい、好きなことを仕事にしたい、その第一歩をボカロクリエイターコースで、共に歩み出しましょう。
※「VOCALOID(ボーカロイド)」並びに「ボカロ」はヤマハ株式会社の登録商標です。