トレンドを追う側から創り出す側へ。Vid Thё Kidの挑戦

インタビュー

『BIG UP!』を利用している注目アーティストをピックアップして紹介するインタビュー企画。第11回目はVid Thё Kidが登場。

EDMが世界の大きなトレンドとなり、音楽フェスでも主要ステージでパフォーマンスを披露するようになっていくことで、その魅せ方も大事なクリエイティブの要素となってきた。そういった流れの中でVid Thё KidというDJ&ヴォーカルユニットが生まれるのはとても自然なことだったと思う。生歌とベースミュージックの融合は大きなステージでこそ、その力を発揮する。着実に大きなステージへと歩みを進める彼らに、そのルーツや目指すべきものについて話を聞いた。

洋楽を中心としたそれぞれのルーツ

結成の経緯を教えてください。
IBuKi

IBuKi:

僕は宮崎出身で高校卒業と同時に上京してきたんですが、その頃エンターテイメント集団を作りたかったんです。その為にはまずボーカルが必要だと思ってTwitterで探していたところ、Kylieが高校の文化祭で歌っている動画を見つけたんです。アカペラでKaty Perry の「Roar」を歌っていたんですけど、“これは絶対将来やばくなる”と思って声をかけたんですよ。上手かったし、その度胸がすごいと思って。

Kylie

Kylie:

最初声かけてもらったとき、東京でIBuKiがイベントをやるからそこで歌ってほしいって言われたんです。でも、イベント後はTwitterは繋がっているけど特に連絡はとってなかったんですよね。

IBuKi

IBuKi:

Kylieが留学いったから余計にね。

Kylie

Kylie:

それで期間があいちゃったんですけど、急に連絡がきて…。

IBuKi

IBuKi:

そこでKökiに出会ったんです。元々は友達の繋がりで間接的に知っていたんですけど、去年の1月くらいからInstagramのストーリーに曲をアップしているのを見て、Kylieと合わせたらやばいのができるなと思って「会いたいです」って連絡して。Kökiとはその時が初対面でした。それでKylieに「やばいトラックメーカーがいるから」って話をして、3人で会って一緒にやっていこうということになりました。

では出会ってまだ間もないんですね。
Köki

Köki:

全員会って1年くらいですね。

出会って間もない3人がユニットとして活動を進められているのは、音楽的な背景が噛み合っているのかなと思うのですが、みなさんそれぞれの音楽的ルーツを教えていただけますか?
Köki

Köki:

僕は子供のころはJ-POPをずっと聴いていたんですけど、高校を卒業してからメタルやハードロックにハマって、海外の古いものから新譜まで片っ端から聴きました。

どんなアーティストがお好きでしたか?
Köki

Köki:

Rage Against the MachineやNickelback、FALL OUT BOY、 Bullet for My Valentine、Marilyn Manson、Linkin Parkとかですね。

そこからなぜダンスミュージックに?
Köki

Köki:

だんだん飽きてきたというか、聴くのが作業になってきちゃって。バンドの音楽は大体ギター、ベース、ドラム、ボーカルと構成が決まってるじゃないですか。ギターの歪ませ方やリズムの取り方で好みが決まることが分かって、つまらなくなってしまって。その時にレーベルに入ってA&Rの仕事をし始めて、ダンスミュージックを聴く機会が増えたんですけど、次から次へと聴いたことのない、知らない音が出てくることがとても新鮮で。そこからダンスミュージックやヒップホップを聴きはじめました。

そこから作ってみようと思ったきっかけは何だったのでしょう?
Köki

Köki:

レーベルで働いている時、目の前で曲を作る過程を見ていたのでダンスミュージックの作り方はなんとなくわかっていたんです。これなら自分でもできそうだと思って事務所にあった古いiMacで作り始めました。やり方がわかった状態で始められたのは大きかったですね。

元々の楽器経験は?
Köki

Köki:

楽器は全然弾けないです。なので自分のやり方は多分めちゃくちゃだと思います(笑)。曲作りを始めたのはヒップホップが先だったんです。ヒップホップはだいたい1個のリフを展開していくので、これだったら作れそうだなって思って。

ヒップホップで参考にしたアーティストは?
Köki

Köki:

Lil Uzi Vert、DJ Mustard、Mike Will Made-It、Metro Boominとか、その辺を片っ端から聴いていましたね。

IBuKiさんはどうですか?
IBuKi

IBuKi:

僕は父親がディスコに通っていて、家でも洋楽が流れているような環境だったので、自然と洋楽が身についてました。小学4年生の頃に父親が海外出張のお土産で洋楽のミックスCDを買ってきてくれたんですけど、そこにはFlo Ridaの「Low」やFergieの「Fergalicious」が入っていたんです。そのMVを見てみたら、すごくパーティー感あって“こういうのやりたい!”って思って。それから自分で色々と掘って聴くようになりました。

小学生でそのパーティー感に憧れるのはすごいですね。
Köki

Köki:

とんだマセガキですよ(笑)。

そこからどんな音楽を聴いていたんですか?
IBuKi

IBuKi:

ビルボードのトップ100に入るようなアメリカのメジャーシーンを追っていました。そうしていくうちにDJをやりたいと思うようになって、高校3年生の頃にDJを始めて、文化祭で初めて人前でプレイしました。田舎だったのでクラブミュージックの概念なんてありませんでしたけど、トラップやダブステップを流したらみんな盛り上がってくれていました。

DJは誰かに教わったんですか?
IBuKi

IBuKi:

最初は地元でDJをやっている人に繋ぎ方を教えてもらいました。それからEDMを聴くようになって、Hardwellのプレイとセットリストを見ながら曲の種類や繋ぎ方を学んで、再現できるように練習していたんです。マッシュアップの方法もHardwellから学びましたね。

そうやって各アーティストのDJセットを研究して行った時にDiploの存在を知って“これだ!”って思いました。正直、今流行っている曲を流すのは簡単だけど、Diploは今後流行るであろう曲をプレイしてみんなに共有していくんですよ。そういう姿勢にすごく影響を受けたので、世界のどこにいたとしても最先端を追っていきたいと思うようになりました。

Kylieさんはどうですか?
Kylie

Kylie:

私はずっと4歳上のお姉ちゃんに憧れていて、ファッションや音楽もお姉ちゃんにすごく影響を受けてきたんです。お姉ちゃんが洋楽を好きになったタイミングで私も一緒に聴くようになって、当時流行ってたJustin Bieber、Avril Lavigne、Katy Perryをよく聴いてました。英語は理解できなかったけど海外シンガーのノリが好きだったんです。

そこから歌詞の内容が気になるようになって、Avril Lavigneの「Girlfriend」の和訳を見た時に、こんなにストレートに伝えちゃっていいんだって驚いて。こんな風に歌えたらかっこいいなって思ったのが、英語で歌うようになったきっかけの一つです。日本の歌詞は言い回しや表現が上手だけど、私はそういうのが得意じゃなかったんですよね。

あとKaty Perryの「California Gurls」のMVの世界観がすごく好きで、こんな風に世界観を表現できるようになりたいと思ったんです。強く影響を受けたアーティストは特にいませんが、きっかけを作ってくれた人はAvril LavigneとKaty Perryですね。

留学したのは海外の音楽が好きだったからですか?
Kylie

Kylie:

音楽をやっていくなら英語で歌いたいし、英語を勉強しておいて損はないかなと思って、高校3年生の間はカナダで過ごして英語を習得しました。

向こうでは音楽活動をしていたんですか?
Kylie

Kylie:

カナダで初めてボイストレーニングに行ったんです。そこでは英語で歌う際の発音についてたくさん指導してもらいました。帰国してからもボイストレーニングは受けましたが、日本は表現技術についての指導が多いんですよね。

なるほど。他にも帰国後は何か活動されていたんですか?
Kylie

Kylie:

バンドを組んだり、アコギで弾き語りのライブをしていました。私もアメリカのトップチャートに入るような音楽が好きだったので、その時流行ってたものをカバーしたり。ダンスミュージックは音が多いから明るい曲に聴こえるけど、しっとり歌えば切なく聴こえるし、ガラッと聴こえ方が変わるところが好きだったんです。

トレンドを発信する側に

皆さん共通して現行の海外のトレンドを抑えている印象ですが、その中でも3人の好みの共通項はどういう部分だと思いますか?
Köki

Köki:

メロディがしっかりした上で、タテノリもちゃんとあるようなバランス感が一番重要で、その割合が似てるんだと思います。

IBuKi

IBuKi:

曲を作るときも意見が分かれることはあんまりなくて、すんなり決まりますね。

イメージしてる音が近いんですね。先日はリリース直後のAviciiの曲をカバーされていたりと、スピード感をもって活動されてるなと思ったんですが。
Köki

Köki:

Aviciiのはノリですね(笑)。

IBuKi

IBuKi:

あの時はマイクスタンドを買って、試し録りで歌ってもらったんですよ(笑)。リリース直後でカバーしてる日本人はいなかったから、日本初カバーじゃないかってことで自分たちで映像を撮ってアップしたんです。

その感覚や感度はすごく大事だと思います。スピード感を意識してる部分はあるんですか。
Kylie

Kylie:

スピード感は持っていたいですね。私たちがイケてるなって思うアーティストはトレンドの先端を上手く取り入れていて、そういう事を私たちもやりたいと思うから。イケてるものへのアンテナを張った状態で活動していきたいなって思います。

IBuKi

IBuKi:

ダンスミュージックはトレンドの移り変わりが早いので、その時にやらないといけない。今はトレンドを必死に追いかけている状態だけど、いつかは僕ら発信でトレンドができていくような存在になりたいですね。

音源制作だけでなく、今後はライブ活動も今後増えてくると思いますが、ステージの構成ではどのような点を大事にしていますか?
IBuKi

IBuKi:

DJセットでノンストップで繋いでいますが、できるだけ緩急をしっかりつけて、激しいところと聴かせるところをはっきりさせています。

Köki

Köki:

海外のデカいフェスのメインステージでかけても間違いないようなセットにはしています。そのまま使えるであろう曲を使っていますね。

これまで野外でのライブの経験はありますか?
Kylie

Kylie:

まだやったことないんです。今応募してるのオーディションに通れば初野外ステージになるので、ぜひ実現させたいと思っています。

IBuKi

IBuKi:

僕らは生で歌っているので、そのライブ感を生かして色んなステージに立っていきたいですね。

Köki

Köki:

DJセットで生歌を絡める人はあまりいませんから。

フィーチャリングのボーカルを呼ぶ事はありますけどね。
Kylie

Kylie:

あとはDJが歌っちゃうとか。

IBuKi

IBuKi:

The ChainsmokersとかKrewellaとかね。それ見て、曲を流すだけじゃなくて自分たちの曲を歌うスタイルで行きたいと思ったんです。

EDMのフェスでも各アーティスト魅せ方にも趣向を凝らしていますもんね。ドラムを叩いたり、ピアノを弾いたり…。
IBuKi

IBuKi:

僕らもオーケストラを呼びたいねって話をしています。

曲作りではトレンド感があるものを抑えていきたいということでしたが、軸として大事にしているのはどんなところですか。
Köki

Köki:

ダンスミュージックにもいろいろジャンルがありますが、その中でもベースミュージックであることが軸です。

ベースミュージックであると同時にポップさも感じました。
Köki

Köki:

そうですね。その路線で日本でベースミュージックをやっている人はあんまりいないんですよ。海外ではいっぱいいるんですけどね。

6月26日にリリースされる楽曲は初のコラボレーション楽曲になるんですよね。
IBuKi

IBuKi:

激しい曲を作りたくて、活動を通して知り合ったerika dollとKID CROWの2人に参加してもらいました。

今後もコラボレーションは続く予定ですか?
Kylie

Kylie:

私はめちゃめちゃやりたいと思っています。海外で今リリースされる曲はほぼ誰かがフィーチャリングで入ってますよね。ポップシンガーがラッパーとコラボしてることが多いし、そっちの方が普通だと思ってて。日本のポップシーンでは全然見ないから何でやらないのかなって思ってます。

やはり海外は意識していますか?
IBuKi

IBuKi:

海外進出は当初から考えていました。ちゃんと世界で通用する曲を作るというのが前提としてあるので。

そのために今取り組んでいることなどありますか?
Köki

Köki:

海外のプレイリストに入ることは重要だと思っています。

Kylie

Kylie:

あとはフェスに頻繁に出れるようになりたいですね。

IBuKi

IBuKi:

今は韓国や中国の勢いもすごいから、日本人として負けてられないなって気持ちはあります。

Köki

Köki:

今は中国人のラッパーとコラボレーションの話も進んでいるので、それを機にまずは中国進出していきたいですね。僕らもグローバルに活動範囲は広げて行きたいと思っています。

Kylie

Kylie:

でも日本人を置いていくわけではなく、日本人にもウケるものを作りたいです。ダンスミュージックに対しては「チャラそう」って反応が多いけど、それは色んな曲があることを知らないで言ってるだけかもしれない。だから、私たちの音楽をきっかけにダンスミュージックや洋楽を好きになってくれる人が増えたらいいなって思います。

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