新潟から世界へと発信するWAPLAN。海外への憧憬と野心を語る

インタビュー

『BIG UP!』を利用している注目アーティストをピックアップして紹介するインタビュー企画。第23回目はWAPLANが登場

どこに住んでいるかはいよいよ関係なくなったのだと実感する。ローカルからグローバルを捉えようというアーティストが新潟県在住のソロアーティスト、WAPLANである。学生時代に見たビルボードチャートに感銘を受けた彼は、世界で聴かれる楽曲を自身で制作すべく、英語もわからないまま海外のシンガーにオファーを開始。ウェブを通したやり取りのみで、始めての楽曲「Better」をリリースしたのが今年の2月である。そこで掴んだ手応えと反省を踏まえて、現在「For Me (feat. Weldon)」、「A Lil Crazy (feat. TyteWriter)」、「I Don’t Wanna See You Anymore (feat. GATS)」のを3ヵ月連続リリースを行っている。

彼の凄いところは、フィーチャリング・アーティストはもちろん、ミックス・マスタリングのエンジニア、さらにはリリックビデオの制作陣まで、そのすべてを海外のスタッフで固めてチームを組んでいるところだ。「新潟から世界へ」をテーマに挑戦を続けるWAPLANに、Skypeでのインタビューを試みた。

「場所」じゃなくて「人」の時代

ー地元から世界へと音楽を発信していくWAPLANさんの活動について、今日はじっくり話を伺いたいと思います。

はい。よろしくお願いいたします。

ーまずはWAPLANさんがこれまでどういう活動をされてきたのか伺えますか。

元々新潟を拠点にYour FriendsというJ-POPのグループをやっていまして、作曲家として楽曲提供を行ったり、2013年くらいからDJとしても活動していました。それらと平行して、「新潟から世界に発信する」というテーマでWAPLANの活動を始めたのが去年です。

ーWAPLANを始動させた最初の動機はなんですか?

16歳くらいの頃、洋楽を紹介するBillboard TOP40という深夜の音楽番組を見た時に衝撃を受けたんですよね。ヒップホップの曲にも惹かれましたし、後ろにいるDJがめちゃくちゃカッコよくて、洋楽というものに物凄くビビッときた瞬間でした。で、それからクラブDJを目指してターンテーブルを買って、レコードを集めていきましたね。

ーどんなものをよく聴ていました?

当時流行っていたEminemだったり、Gang Starrは特によく聴いていて、DJ Premierが作るトラックが凄く好きでした。ただ、やっぱり自分の憧れていた洋楽を自分自身の手で作りたいっていう夢はずっと抱いていたので、0から独学で作曲を始めたんですけど、洋楽を作るのは難しかったです。

ーどういう理由で?

シンプルで音数が少ないのに、どうしてこんなに厚みのあるカッコいい曲ができるんだろうってずっと思っていました。J-POPでは楽器を重ねてレイヤーして、綺麗なメロディラインを作ることを意識しているんですけど、洋楽はシンプルなのに奥深くて、低音の使い方は全く違うと思います。

ーそうした難しさを感じていた中、実際にWAPLANという活動に踏み切れたのは何故ですか?

3年くらい前に、シカゴに住んでいる全然知らない黒人からFacebookに友達申請がきてたんです。承認したところ、相手から「俺はラップやってるんだよ」ってメッセージがきて、挨拶している内に彼と一緒に曲を作ろうという話になって。そこで作ったものが自分の中では洋楽ぽくできた感覚があったんですよね。

ーなるほど。

それが「今ならできるかもしれない」と思えるきっかけにもなって、より世界へと挑戦したいという想いを強くなっていきました。

ーそこで海外に移り住むのではなく、上京するわけでもない。あくまで地元の新潟にいながら活動しようと思ったのは何故ですか?

アメリカに行って作ることも考えたんですけど、今はネットが発達しているから、自分が生まれ育った街から届けられるんじゃないかって思いがありました。やっぱり生まれ育った土地が一番落ち着くし、ここには仲間もいて過ごしやすいんですよね。あと、作曲家として3年ほど前にメジャーアーティストさんに楽曲提供したことがありまして。その曲をアルバムのリード曲的として扱っていただいて、オリコンチャートのウィークリーで当時3位に入ったんですよ。その時に「これはもう場所じゃなくて人だな」って思いが芽生えました。今の時代は、都心にいなくとも自分の実力や想いがあれば発信ができてしまう。国内でそれを実現できたのだから、世界も行けるんじゃないかなって思いました。

ーなるほど。

それからは着々と準備をしていって、歌の上手い人を見つけては「一緒に曲を作りたいんだ。歌ってよ」ってコンタクトを取るようになって。当然メールを送っても返ってこないこともあるんですけど、そこで返事をくれたのがブリトニー・スピアーズ(Britney Spears)やLil Wayneのプロデュース経験もあるMyah Marieというシンガーソングライターでした。彼女がファーストシングル「Better」のヴォーカリストで、そこで手応えを得て、今年の2月からWAPLANとしての活動を本格的に始めました。

世界中を巻き込む曲を作りたい

ー英語は堪能なんですか?

いえ、中学生レベルの英語は話せますけど、実はやりとりは全てGoogle翻訳で行っています(笑)。

ー簡単な日常会話のやりとりならともかく、それで制作のやり取りが成立するものなんですね。

うん、9割は通じますね。

ーそうなるともう、移動する必要もないし、言語がわからなくても関係ないぞと。

そうですね(笑)。関係ないのかなと思います。特に今回はリリックビデオもアメリカの方に依頼して、ミックス、マスタリングはデンマークの人にお願いしているので、いろいろな国の人に新潟からコンタクトを取って制作ができているんですよね。

ーエンジニアはフレット氏ですね。どういう経緯で彼を発見し、どんな意図があってオファーしましたか。

ネットにエンジニアのマッチングサイトを見つけたんです。

ー凄い時代ですね。

そこでいろいろ音を聴いていく中で、「絶対この人だ」って思ったのがフレットでした。彼にお願いすることで、プリプロの段階ではちょっと物足りなかったものが一気に洋楽っぽくなるし、そこに欧州の柔らかい質感が入ってくるのがいいなと思っています。編集の時にアナログ機材を使っているんじゃないかっていうくらい柔らかい音に仕上げてくれるというか、ギター以外は大体打ち込みで作っているトラックが、1回アナログ感が追加されて返ってくる感じが凄く好きです。

ーちなみに、WAPLANさんの活動で刺激を受けているアーティストはいますか?

AmPmさんからは刺激を受けています。

ーなるほど、彼らも海外で成果を上げているアーティストですね。ちなみに、WAPLANさんのSpotifyのリスナーはどういう割合ですか?

日本と海外が半々くらいです。アメリカ、ヨーロッパ、アジア辺りも多いですね。

ーアジア人が世界に挑戦していく上で大事なことはなんだと思っていますか?

僕はビート感だと思います。低音はやっぱり全然違うので、僕ももっと成長していきたいところです。

ー歌詞はどのように書いてますか?

毎回ヴォーカルの人に曲の雰囲気に合わせて作ってほしいという旨だけ伝えて、歌う人に任せています。僕は英語が話せないんですけど、楽曲は海外のチームで作っていくのをコンセプトにしているので、全部英語にしてます。

ー制作チームを全員海外のスタッフで固めているのに意味があるんですか?

そうですね。僕の憧れはやっぱりビルボードのチャートに入ることなので。世界に挑戦するにはやっぱり自分が持っていない洋楽のイメージを、ナチュラルに持っている人と一緒にやるべきかなって思いました。特に今回の3曲は、リリックビデオをJustin BieberやThe Chainsmokersの映像を作っているチームにお願いしていて。純粋に一流の人と一緒にやってみたいという思いもあるし、実際一緒に作ると毎回驚きや刺激をもらえるので。そこを期待しているとこともありますね。

ー海外のチャートを目指した先で、どんなことを達成したいと思っていますか。

僕は世界中を巻き込む曲を作りたい。世界中の人をハッピーにするアーティストになりたいと思っています。あと、そうした自分の夢も叶えたい気持ちと同時に、新潟から世界へ発信するという姿を見せたいです。挑戦したい夢を持ちながら、なかなか一歩踏み出せない人に、自分の活動を通じて踏み出してみようって思ってもらえるようなアーティストになりですね。世界へ挑戦している人はいるますけど、まだ音楽で大きな結果を出した方は少ないと思うので、だからこそやる価値があるかなって気がしています。

常に新しい挑戦を

ー既に海外からのリアクションはありますか。

ファーストシングルの「Better」は、好評なコメントの中にも、辛口のコメントもありました。

ーどんなコメントだったんですか?

アメリカの人から、「ヴォーカルはめちゃくちゃいいけどトラックが古いよ」っていう、正直な意見もあって、なるほどなって思いました。それでただキャッチーなだけはダメなんだと思い、今回の3曲はダークな感じも意識しました。

ーダークな感じというのは?

洋楽を聴いていると、突き抜けた明るい曲って少ないですよね。人気の曲こそ明るすぎず、ポップと言われている曲でもダークな部分があったり、マイナーなコード進行やキャッチーじゃないカッコいいメロディがある気がしたので。それをいかに自分で作るかを考えました。

ーなるほど。

あとは音数の少なさと、低音ですね。そこは日本の曲を作る時とは分けて考えています。そうやって自分なりにトレンドを分析しながら、かと言ってあまり流行りに埋もれないようなオリジナリティを出して作ろうとしたのが「A Lil Crazy」です。

ー「For Me (feat. Weldon)」はエレキをフューチャーしている曲ですが、どういうイメージを持って作ったものですか。

エレキを弾いていたらフレーズが出てきたんですけど、なかなかエレキ1本でやる曲は勇気がいるなと思って。そこでシンプルなリフのループの中に、効果音としてヴォーカルを歪ませて影をつけていったんですけど。曲を作る時には常に自分の中で新しい挑戦をひとつ取り入れたいなと思って、挑戦してみました。

ーこれからリリースされる「I Don’t Wanna See You Anymore (feat. GATS)」は?

この曲は一番手応えがあります。バラードっぽい始まりから、サビで大きく広がっていくような、ギャップをつける曲は今まであまりやってきていなくて。この曲では上と下のレンジを広く取って、サビで一気にドカンと行く構成を意識しました。テンポが速くないけど盛り上がるフレーズ、ちょっとダークな曲だけど気持ちが上がるビートができたかなと思います。

ーこの3曲をリリースされて、来年以降はどういう活動をしていきたいと思っていますか。

まだ具体的には決まっていないんですけど、EPを出していけたらなとは思っています。あと、より有名な人とやりたい願望はあって、去年Billboardで1位を獲ったBTSのアルバムの中の一曲を手掛けたプロデューサー達と共作で今作り始めていますね。

ーえ! それも直談判して?

はい(笑)。もうできているので来年には出したいなと思います。

ー今後もずっと拠点は変えずにやっていきたいですか?

現状は新潟でいいと思いますが、正直先のことはわからないです。やっぱり、現地じゃないとできないことっていうのもあると思うので、そこは見極めながらやりたいなと。

ーというのは?

以前ロスに行った時、今海外で活動されているプロデューサーさんとお会いすることができたんですけど。その方がフィーチャリングは日本みたいにコンペで楽曲提供するわけではなく、友達から始まって繋がっていくことが多いよと仰っていて。さすがにそれは新潟じゃ無理だよなと。

ーなるほど。

現地で友達を作って、そこから繋がっていかないといけないなとは思っています。

ー敢えてひとりだけ挙げるとしたら、自分のトラックで歌って欲しいアーティストは誰ですか?

…沢山いますけど、ひとり挙げるとすれば、Justin Bieberにお願いしたいですね(笑)。

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