Wang Dang Doodleが語るブルース愛。ポップスへと昇華した独自サウンドが生まれた背景
インタビュー
『BIG UP!』を利用している注目アーティストをピックアップして紹介するインタビュー企画。第72回目はWang Dang Doodleが登場。
MOMIJIとKAHORIからなる2人組ユニット、Wang Dang Doodle。ダンサブルな4つ打ちからトラップ以降のヒップホップまでを飲み込んだ折衷性の高い打ち込みビートに、ブルースハープやギターを大胆に取り込んだ独自性の高いサウンドが話題を呼んでいる。その組み合わせの斬新さもさることながら、楽曲を聴き込むほどにブルースへのリスペクトや造詣の深さが感じられ、それが楽曲に高い説得力を付与している。
ときにブルージーに、ときにソウルフルに、ラップも交えつつ歌い上げる赤髪のMOMIJI。そしてギタリストでありながらも確かなトラックメイク・センスをみせる青髪のKAHORI。果たして、彼女たちはなぜブルースを今日的なポップスに取り入れるのか。そして彼女らの原動力とは。今回のインタビューではそこに込められたブルースへの愛について、思う存分に語ってもらった。
直感派のMOMIJIと、理論的なKAHORI、ふたりのルーツ。
- Wang Dang Doodleについてお聞きする前に、おふたりともとても興味深いキャリアをお持ちのようなので、これまでの足取りをお聞きしたいです。まずはMOMIJIさんから、どのように音楽に興味を持ったのかなど教えてもらえますか。
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MOMIJI:
姉がポケバイの元全日本チャンピオンなんですけど、クラッチやブレーキなど、両手両足で異なる動きが必要なので、レッスンの一環でドラムを始めたんです。そのドラム講師の方がたまたまブルースマンで。姉のレッスンについて行っていたら、気づいたら私も一緒にやってました(笑)。それが3歳くらいのときで、それ以降はThe Blues Brothersのコピーバンドをやったり、物心つく頃にはAretha Franklinが大好きだったり、そんな子供でした。
- お姉さんと同じく、最初はドラムから入ったのでしょうか?
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MOMIJI:
私、当時はすごく体が小さくて。幼稚園でも背の順で一番前でしたし、ドラムキットに座っても届かない場所が多くて。手が小さいからギターも持てないし、そもそも根性がなかった(笑)。なので、タンバリンを片手に歌ったりコーラスをしたりしてました。
ただ、その後出会った近藤房之助さんやブルースの師匠から「今は歌だけでもいいかもしれないけど、後々絶対に役に立つから楽器もやった方がいい」って言われて、ブルースハープを練習することになりました。でも、ブルースハープも中々難しくて、泣きながらベンド(ブルースハープの奏法)をしていた記憶があります(笑)。
- その後は色々なバンドで活動しつつ、KAHORIさんもメンバーとして在籍していたMr.MOMIJI BANDでは2018年にフジロックへの出演も果たします。このバンドはどのようにして結成されたのでしょうか。
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MOMIJI:
色々な事情があり、参加していたバンドがなくなって、ひとりきりになったタイミングがあって。でも、「やっぱりバンド組みたいな」と思ったので一時期ブルース・セッションに頻繁に参加していて、そんな中、ある日制服姿の女の子が「私、「Johnny B. Goode」だったら弾けます!」って言ってきて。おもしろそうなのでステージに上げたら自分からイントロを弾き始めて。コイツ、イケてるなって(笑)。
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KAHORI:
正直、全然弾けてなかったと思う(笑)。
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MOMIJI:
そのまま「ブギできる?」って弾かせてみて、「できるな」って思ったので「採用!」って。それがKAHORIとの出会いですね。
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KAHORI:
そのすぐ後に家族としゃぶしゃぶを食べていたら電話がかかってきて。「あのさ、バンドやんない?」って(笑)。
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MOMIJI:
セッションの次の日くらいだよね。速攻で声を掛けました。
- それはやはり何か感じるものがあったから?
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MOMIJI:
そうですね。私は基本的に勘に従って生きているんですけど、「こいつとやりたい」って感じたらすぐに行動に移しちゃうんです。
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KAHORI:
でも、MOMIJIの直感力ってすごく優れているなって思っていて。私は逆に頭で考えてから動くタイプなんですけど、MOMIJIが直感で判断したことって大抵上手くいくんです。Wang Dang Doodleを始動させたこともそうだし、イベントの出演やサポート・メンバーの人選だったりもそう。私がいくつか候補を絞って提案して、MOMIJIに選んでもらうっていうパターンが多いですね
- すごくバランスがいいふたりなんですね。では、KAHORIさんはいかがでしょう? 中学生時代から様々なコンテストでグランプリやベスト・ギタリスト賞などを受賞しているようですね。
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KAHORI:
音楽を始めたのは両親からの影響が大きいです。父がギタリスト上がりのベーシスト、母はキーボディストで、元々ふたりともバンドマンだったんです。母は家で音楽教室を開いていて、近所の子供を集めてバンドを組んだりもしていました。私も幼少期から音楽に触れる機会が多かったので、中学に上がってからは軽音楽部に入りました。
- 「Johnny B. Goode」のような50年代〜60年代のロックに触れるのはいつ頃からなのでしょうか?
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KAHORI:
それも両親で。特に母はThe Rolling Stonesが大好きで、お腹にいるときから聴かされていたらしく(笑)、家にはそういった古いロックンロールのレコードやCDがいっぱいありました。中学の軽音では最初SCANDALやONE OK ROCKのカバーなどをやっていたんですけど、私が天の邪鬼な性格で、他のバンドがやらないような音楽をカバーしたいって思って、そこで家のCDを改めて漁って聴くようになりました。中学2年生くらいでThe Beatlesやハードロックを好きになって、「洋楽知ってる私、カッコいいっしょ」っていう感じで悦に浸りつつ(笑)。
- それから50年代のロックなどへと遡っていったと。
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KAHORI:
そうですね。父から「ロックが好きなら、そのルーツも聞いてみたら?」って言われて、ブルースやファンクなども聴くようになりました。聴いているうちに弾きたくなってきて、それでブルース・セッションに行くようになって。
- KAHORIさんはMOMIJIさんと初めてセッションしたときのことをどのように覚えていますか?
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KAHORI:
すっごい緊張しました。「Johnny B. Goode」だけ弾ければ「(ブルース・セッションに)行けるよ」って言われていたので、それだけは練習して。で、練習してきたからには弾きたいじゃないですか。それで恐る恐るステージに上ったら、まさかのもう1曲弾かされるっていう(笑)。私は当時からMOMIJIの活動を追っていて、彼女がいるからこそ行ったんですけど、そのときの彼女は金髪でピンヒール履いてて、めっちゃギャルって感じで怖かったです(笑)。
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MOMIJI:
(笑)。
「このままではこの世からブルースがなくなってしまうんじゃないか」
- 話が戻りますが、Wang Dang Doodleの前身となったMr.MOMIJI BANDは、当時どのようなヴィジョンを描いていたのでしょうか。
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MOMIJI:
このままではこの世からブルースがなくなってしまうんじゃないかっていうことを考えていたので、とにかくブルースを広めたかったんです。あとは女子高生でブルースに興味ある子なんて他に出会ったことがなかったので、とにかく(KAHORIに)ブルースをやらせたかった(笑)。
「チョーキングできるならFreddie King弾けるっしょ」「Freddie Kingの「Same Old Blues」弾けるようになったらお前はブルースマンだ」って言って(笑)。 -
KAHORI:
……どうやらそうらしいです(笑)。
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MOMIJI:
最初は色々とカバーしてたよね。ブルースからファンク、ロックンロールまでとにかくたくさん。そこからオリジナルに発展していくだろうし、私の意思も伝わると思って。
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KAHORI:
しかもスタジオで練習したりせず、ほぼ全部ぶっつけ本番でライブするんです(笑)。「この曲やったことないんだけど」って言っても「スリーコードだからすぐできるっしょ」って言われて。軽音部でバンドスコアなどを見ながら練習してきたこれまでの常識が覆されました(笑)。
- なるほど(笑)。
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MOMIJI:
あと、当時のドラマーがポエトリーラッパーの娘で、ファンキーなドラムを叩くんですよね。どんな曲をカバーしても、ずっと(リズムが)跳ね続けるんです(笑)。これは逆におもろいなと。ずっとブルースをやってきた私と、ロックを通ってきたKAHORI、そしてファンキーなドラマー。この3人の個性を活かしたファンクでソウルなブルース・バンドを目指そうと考えていました。
- そんなMr.MOMIJI BANDは2019年に活動休止となってしまいます。
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MOMIJI:
ドラマーがバークリー音楽大学に進学することになって。
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KAHORI:
おめでたい理由なんで、「寿活休」です(笑)。
- (笑)。
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KAHORI:
新しいドラマー入れて同じことをやるのではなく、このふたりで新しいことができないかなって考えて、打ち込みを取り入れることにして。
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MOMIJI:
打ち込みでブルースをやったらおもしろいんじゃね? っていう考えのもと、名前もWang Dang Doodleと改め再スタートを切りました。ただ、実は私もKAHORIも元々ソロでも活動していて、それぞれ事務所に所属していたんです。その関係で大人の事情もあり、一旦ストップせざるを得ない状態になってしまい。
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KAHORI:
Wang Dang Doodleとして動き始めて、2019年の3月にお披露目ワンマンをやって、5月に活動休止になりました(笑)。
- それが解消され、今年3月にクラウドファンディングを実施し、活動再開したと。
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KAHORI:
ふたりともフリーになった代わりに、資金が持ち出しになってしまったので、スタートを切るのが遅くなってしまうなと。それでクラウドファンディングを行うことにしました。
- ちなみにWang Dang Doodleというユニット名はブルースの曲名ですよね。
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MOMIJI:
はい。Howlin’ Wolfバージョンも有名なんですけど、私たちがイメージしたのはKoko Taylorのバージョンで。作曲はWillie Dixonという人で、「Hoochie Coochie Man」というめちゃくちゃ有名なブルース・ナンバーも書いている人なんです。
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KAHORI:
ブルース・スラングをいっぱい使う人なんだよね。
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MOMIJI:
そうそう。私たちの名前にもそういうスラングを入れたいと思っていて、「Wang Dang Doodle」はシモネタありきなんですけど、「朝まで遊ぼうぜ」っていう感じの内容で。ブルースで朝まで遊ぶって、最高くね? って(笑)。
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KAHORI:
それにWang Dang Doodleってブルースのこと知らなくても、何か口にしたくなるような語呂のよさがある気がして。
- そういった背景を知らずとも、今のサウンドにも合っているような気がします。賑やかなイメージというか。
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MOMIJI:
本当ですか! それは嬉しいです。
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KAHORI:
いえ〜い(笑)!
ブルース警察も恐れず、次の世代へ
- Wang Dang Doodleはブルースを新たな世代に広めることを掲げていますが、改めておふたりからブルースの魅力というものをお聞きしたいです。
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MOMIJI:
いいですねぇ(笑)。私の場合は子守唄がRobert Johnsonみたいな、きっと多くの人とはブルースとの出会いや距離感が大きく異なると思うんです。身近にあって当たり前、やれて当たり前、みたいな。
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MOMIJI:
現代の若い子にとって取っ付きにくい音楽であることはわかるけど、ブルースって本当に簡単なんです。スリーコード弾ければ誰でもできるし、カッコいいし……何でなくならなきゃいけないんだって思っちゃうんですよね。だからこそ、次の世代に繋げたい。みんなが好きなヒップホップもロックも、全て辿ればブルースに行き着くんだよって、伝えたい。ウザいかもしれないけど(笑)。
正直、「ブルースは売れない」って何度も言われてきて、私もやめたいって思ったし、実際に離れた時期もあったんですけど、それでも最終的には戻ってきてしまう。もう私の人生にはなくてはならないものなんですよね。私、「若いヤツにブルースなんてできるか」ってビール瓶を投げつけられたこともあるんですよ。
- それは酷すぎますね。歴史が長ければ長いほど、そういった原理主義者も増えがちです。いわゆるブルース警察というか。
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MOMIJI:
そう! 本当にそうなんですよ!
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KAHORI:
そういう人たちのせいでブルースが敷居高いものに感じられるんだよね。
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MOMIJI:
そういう状況を変えたいっていうのがWang Dang Doodleの原動力にもなっています。私たちの曲はポップだけど、コードの使い方やフェイクの入れ方、ブルースハープもめっちゃ使ってるし、 一つひとつ紐解いていくとめっちゃブルースなんです。だから、私たちの音楽を好きになったその先で、ブルースに辿り着いてくれたらいいなって思います。だからこそ、もっともっと有名にならなければなと。
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KAHORI:
絶対に売れたい(笑)!
- では、KAHORIさんはいかがでしょう?
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KAHORI:
音に魂が乗っている感じがするんですよね。確かFreddie Kingだったと思うんですけど、ブルースを勉強し始めた頃に見た映像が衝撃的で。1音チョーキングするだけで4小節くらい使っていて、衝撃を受けたんですよね。こんなの見たことないぞって(笑)。でも、すごく胸を打つものがあったんです。その1音の中に彼の人生が詰まっているというか。難しいことをしなくてもこれだけ人を魅了できる、その表現力に惹かれたんだと思います。
- それこそ、KAHORIさんが好きだったというハードロックの足し算的なプレイとは逆の美学/方法論ですよね。
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KAHORI:
確かに。私の場合、中学生くらいの頃は手も小さくて力もなかったので、真似するのが難しいプレイも多くて。だからこそ、ブルースのシンプルさに魅力を感じたのかもしれません。その一方で、スリーコードでできるのに、こんなにも奥が深いのかって後からわかるんですけど。
「Robert Johnsonをモチーフに、こんなにポップな曲を歌うやついないだろって」
- Wang Dang Doodleの曲作りについて教えて下さい。いつもどのようなプロセスで?
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MOMIJI:
私がゼロ→イチで、KAHORIがそれを100にしてくれることが多いですね。最初はメロと構成、コード感やリズムなどを投げます。
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KAHORI:
3トラックくらいのデータで送られてくるので、それを100トラックくらいに膨らませます(笑)。で、そのうち煮詰まってくるので、今一緒に住んでるんですけど、MOMIJIの部屋に行って「ちょっと聴いてみてくれない?」って。
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MOMIJI:
朝4時くらいに来たりとかね。でも、私のアイディアは結構な確率で消滅します(笑)。
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KAHORI:
MOMIJIは弦楽器ができるわけではないので、ブルースハープっぽいコードを多く使うんです。それをそのままポップスに落とし込むと不自然な部分がいっぱい出てくるので、そこを上手く直していく。だからこそオリジナリティがあるんだとも思っています。
- Wang Dang Doodleの音楽性は乱暴に噛み砕いて言ってしまえば、近代的なR&Bやヒップホップの要素が強いですよね。そういった音楽には以前から触れていたのでしょうか。
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KAHORI:
私がJ-POP上がりなんで、コードワークなどはそこで自然と身に付いたものなのかなって思います。あと、私はコロナ禍で一度就職したのですが、その期間は精神的に参ってしまって、ギターを嫌いになったしギターのない音楽ばかり聴いていたんです。ドリーミーなインディ・ロックとかハイパーポップとか、その影響は結構大きいかもしれないですね。あと、MOMIJIはダンスをやってたよね?
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MOMIJI:
うん。昔からダンスを習っていて、一時期は知り合いを頼ってLAにも滞在していました。主にヒップホップ・ダンスをやっていたので、アメリカのメインストリーム寄りのR&Bやヒップホップは耳にしていました。ただ、新しい音楽は基本的にKAHORIに教えてもらってますね。
- Wang Dang Doodleではラップ調の曲も多いですが、それもこのユニットになってから挑戦したことなのでしょうか。
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MOMIJI:
はい。これまでは全くやったことなかったです。
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KAHORI:
ラップは絶対合うと思って、勝手にそういう曲を書いて渡したら「できるじゃん!」って(笑)。そういう意味では色々なジャンルの人に怒られそうなことをやってるなとも思うんです。
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MOMIJI:
うん。これがブルース? って思う気持ちもわかります。
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KAHORI:
私たちがやっているのはあくまでもポップ・ミュージックだと思っています。ただ、その中にはブルースという素晴らしい音楽の要素を組み込んでいて、サブリミナル的にその魅力を伝えていきたいんです。
- 個人的に、ブルースハープをサンプリング的に取り入れているのは発見だなと思いました。こんな方法があったのかと。
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MOMIJI:
嬉しいです。実はサンプリング的な使い方は、C2Cの「Down the Road」という曲にインスパイアされて。GUで買い物していたらたまたま流れてきて、「うわーブルースかかってるじゃん。イケてる〜」って思ってたら途中からビートが入ってきて。「これだ! これがやりたい!」って思いました。
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KAHORI:
Wang Dangがスタートする前にこの曲がMOMIJIから送られてきて、それ以降、これをふたりで追求し続けてるみたいな感じもあります。
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MOMIJI:
一番最初はブルースのシャッフル(・ビート)をDTM上で再現してみたんだよね。
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KAHORI:
そうそう。そしたら教則音源みたいになっちゃって。でも、そこから細かく微調整していって。
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MOMIJI:
ここをもうちょいもたらせて〜とか、「これ何小節?」「3.25小節?」みたいな。
- 冨田ラボみたいなことを(笑)。
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KAHORI:
ふたりでグルーヴを研究していました(笑)。
- では、ようやくですが先日リリースされた「TERRAPLANE」について教えて下さい。タイトルは30年代に製造されていた車のブランド/モデル名ですよね。
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MOMIJI:
そうです。それこそRobert Johnsonの作品に「Terraplane Blues」っていう曲があるんです。それを久しぶりに弾いていたら「そういえばテラプレインっていう車、実際には見たことないな」と思って。それで画像検索したら可愛いらしい車の画像が出てきたんです。「Terraplane Blues」も実は車を女性に見立てたシモネタも織り込まれている曲なんです。
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KAHORI:
本当かどうかわからないんですけど、Robert Johnsonは車の整備士だったっていう話もあって。それくらい車のモチーフが頻出するんです。そういった伝説への思いも馳せた曲になります。
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MOMIJI:
Robert Johnsonをモチーフに、こんなにポップな曲を歌うやついないだろっていうイメージで作りました(笑)。あとはドリーミーな曲にしたくて、リリックはちょっとサイケな感じにしました。
- 途中で差し込まれるバンガーな展開などもお見事だなと。
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KAHORI:
ありがとうございます。MOMIJIから送られてくるデモは途中でキーが変わることとかもあって、それを成立させるためにトラックメイクでガラッと変えたりすることも多いですね。あと、この曲のこだわりポイントとしては、終盤はサンプラーにギターやハープの音をチョップして入れて、それを叩いて音を鳴らしています。
- なるほど。では今後のWang Dang Doodleの展望についても教えて下さい。
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MOMIJI:
とりあえず曲をもっともっといっぱい発表したいですね。
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KAHORI:
アイディアはたくさん思いついているので、どんどん作品をリリースして、私たちのことを多くの人に知ってもらいたいです。あとは色々なジャンルのイベントに出演したいです。バンド・シーンのイベントではバンド形態で、そうじゃないところではまた違ったパフォーマンスで、より広い層にアプローチできればなと。
- 個人的にはヒップホップやR&B系のクラブ・イベントにWang Dang Doodleが出たらすごくおもしろいというか、とても意義があるように思えます。サウンド的にも十分親和性があると思いますし。
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MOMIJI:
出たいです。「ヒップホップ聴いてる俺らカッコいいぜ」から「ブルース聴いてる俺らカッコいいぜ」に変えられたら最高ですよね。
- 最後に、Wang Dang Doodleとして大きい目標や夢を掲げるとすると?
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KAHORI:
やっぱりブルースの魅力を若い子にも広めることですね。そのために、ポップスをやって売れる、でかい箱を埋める、以上。
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MOMIJI:
それでいいのか(笑)。
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KAHORI:
え、これでしょ(笑)。
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MOMIJI:
そうだけど(笑)。でも、やっぱりブルースが他のジャンルの音楽と同じくらい当たり前に、広く聴かれるようになってほしい。そして新しい世代がまた新たなアプローチでブルースをやってくれたら嬉しいなって。そのためにも、諦めずにブルースを続けていこうって、今のブルースマンに言いたいです。
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KAHORI:
上の世代にも下の世代にも言いたいよね。ブルースを守ってきてくれた人たちにも、これからブルースを始める人にも。
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MOMIJI:
そうだね。ブルースを再び広めたアイコン的な存在になれたら理想ですね。
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