共感性を大事にしたいーー次世代シンガーソングライター・れんが描きだす等身大の感情

インタビュー

『BIG UP!』を利用している注目アーティストをピックアップして紹介するインタビュー企画。第94回目はれんが登場。

2022年9月にデビューシングルのリリースから1周年を迎えた19歳のシンガーソングライター・れんが、12月7日に9作目となる新曲「空っぽ」をリリースした。

SNS投稿動画の視聴総再生回数が1億回を突破するほか、ONE OK ROCK・Takaとのセッションも果たすなど、今年大きな躍進を遂げたれん。心に染み渡るような透明感のある歌声と、共感性の高い歌詞で若い世代を中心に多くのリスナーを虜にしているのは、彼自身の感情に真っ直ぐ向き合いつつも、他者の感情に対する想像力と共感力を兼ね揃えているからなのだろう。

今回のインタビューではそんな彼に躍進の1年となった2022年を振り返ってもらいつつ、音楽制作との向き合い方やこれからの活動に対する想いまで存分に語ってもらった。

SEKAI NO OWARIのライブに魅了された幼少期

ーまだ10代とは思えないほど説得力のある音楽を作る方だなという印象を持ったのですが、小さい頃からいわゆる音楽漬けみたいな感じで育ってきたんですか?

いや、全然そんなことはなくて。でも歌は、家族みんな好きでした。自宅に昭和のカラオケ機器があったので、小さい頃から親戚が集まるときなどはよく歌ってました。でも幼少期からずっとサッカーをやっていたので、高校3年生の夏のインターハイまでは音楽よりサッカー漬けの毎日でしたね。

ーカラオケ以外で、音楽というものを認識したきっかけは?

小学生の頃、テレビで観たSEKAI NO OWARIのライブです。感動したというか、子供ながらに音楽ってすごいなって思ったあの衝撃は今でも残ってます。SEKAI NO OWARIのライブって、憧れの要素が強くて。当時はそこまで思ってなかったかもしれないけど、ちょっと羨ましいというか、僕も歌が好きだったから「いいなあ」っていう感情があったんですよね。まさかこんなに早く自分の曲をリリースしてライブができるようになると思ってなかったけど、いつかはこんな風にみんなの前で歌えるようになれたらっていう漠然とした思いはあったので。

ーすごく自然な感じで夢を抱いていたんですね。「絶対に自分もやってやるんだ!」みたいな感じじゃないように思います。

そうですね。僕、基本的に「なってやるんだ」みたいなのはあまりなくて。サッカーも“好き”だからこそ続けられたと思うし。僕の性格上、好きじゃないとできないんです。だから音楽もそうなんだろうなって思います。

ー他にはどんなアーティストに興味を持ちましたか?

中学の頃からずっと、ONE OK ROCKを聴いてました。サッカーに行く前も、モチベーション上げるために聴いてましたね。Takaさんのことはめっちゃ尊敬してますけど、Takaさんになりたいとかじゃなく、リスペクトの気持ちを持って自分というものを出していけたらと思います。

ー共演もされていましたね。

はい。TikTokで僕を見つけてインスタをフォローしてくれたうえに、インスタライブも観にきてくれて、セッションすることになったんです。僕は初めて行ったライブがONE OK ROCKだったんですが、まさかそのTakaさんと一緒にやれるなんて。だいたいインスタライブを観にきてくれた時点で「…は!?」ですよね。意味がわからない(笑)。

ーそうですよね(笑)。

最初は、なんで僕なんだろうって思ったんですよ。当時はカバーばかりで自分の楽曲リリースもしてなかったから。でも理由を聞いたら、直感だったって。ボーカリストとしてリスペクトしてますし、人間性もすごく優しくて、いつも弟みたいな感じで接してくれるんですよね。早いもので、あれから約2年経ちますけど。

ー17歳でそんな経験するなんて、世界がひっくり返ったみたいな感覚になりそうですね。

本当に(笑)。サッカーの練習終わりだったんですけど、インスタのフォローが返ってきた時点でロッカールームを走り回りましたから(笑)。

自分の感情をダイレクトに伝えたくて、オリジナル曲を作り始めた

ーその後、自分のオリジナル曲を作ってみようと思ったきっかけは何かあったんですか?

やっぱり、オリジナル曲を作れたほうがいいよなっていうのはありました。自分の感情をダイレクトに伝えられたほうが、アーティストとしてもそれに越したことはないから。それまで1コーラスとかは作ったことがあったんですが、フルコーラスちゃんと作ってみようと思って作ったのが、1stデジタルシングルとして出した「嫌いになれない」だったんです。

ーあの曲が人生初のオリジナル曲ですか!?

サッカーしかやってこなかった人生なので(笑)。それこそコロナ禍でギターを始めて、作曲もそこからですし。

ーそういうクオリティーじゃないですよね。れんさん、人生何回目ですか(笑)。

(笑)。でも僕も、作れるわけないと思ってたんですよ。本当に。今世の中にある曲たちに勝てるわけないって。あ、音楽において勝ち負けを考えるのは違うと思うんですけど、客観的に自分と他の曲を比べたときに「なんか違うな」ってなっちゃう気がしたんです。でもそこからなんとか、これまで自分が好きで聴いてきたメロディーラインとか、好きなコード進行とかを自分なりに織り交ぜたり、口ずさんだりしながら作ってみたんですよね。

ー歌詞に関しては?

当時、僕が17歳くらいのときだったと思うんですけど、先輩の友達が彼氏に浮気されちゃったって話を相談として聞いたことがきっかけになりました。

ー浮気の相談ってヘビーですよね。

人の話を聞くのは割と好きなほうなんです。だから自分なりに飲み込んで、解釈をしながら書いていきましたね。相手も悪いんだけど結局は嫌いになれない、そばにいてほしいんだろうなっていうのが伝わってきて、そこで生まれたのが《嘘でも好きって言って》っていう1フレーズでした。

ー人生初のオリジナル曲が生まれたことで、自分なりの感覚も掴めたんじゃないですか?

なかったです、本当に。スタッフさんにも言ったんですよ、「この1曲で終わりです。もう無理」って(笑)。でもなんだかんだ絞り出して、(3rdシングル)「赤」とか、まだ発表されてない曲とかを同じ時期に作りましたね。

ーその流れで人生初のレコーディングなども経験しているわけで、お話を聞いているとすごく度胸があるというか、きっと何事にも動じない人なんだろうなという印象です。

よく「落ち着きがあるね」みたいに言われるんですけど、全然緊張しますよ。でも、サッカーをやってたからっていうのはあると思います。サッカーもいろんな人に見られながらプレーしますし、監督を含めて大人と関わることも多かったから、その経験が生きてるのかなって。

ーなるほど、その感覚はすごくわかりやすいですね。では音楽の面で、自分はどういう方向性でいきたいのかとか、そのあたりはどんな道筋を考えていたんですか。

漠然と、バンドではないなと思っていました。サッカーをやっていた頃から、エゴイストとまではいかないけど、プレーでちゃんと自分を表現したい、観客に自分をアピールしたいという気持ちがあったので。バンドとなると、ただでさえ価値観も人間性も全然違う人たちが集まるのに、ひとつの楽曲のために意見を交換しあって作っている。すごいなって本当に尊敬するけど、僕は、自分で完結できるのであれば完結させたいなと思うんです。それだったら、責任も自分だから。

共感性を大事にした曲作り

ーれんさんの楽曲は、同年代の人が共感できる等身大の魅力がありますが、大人にとっても、痛いところを突かれたなって刺さる歌詞が多いと思います。歌詞の題材は、日常から見つけることが多いですか?

そうですね。僕、共感をめちゃくちゃ大事にしていて。いくら自分で曲を作って「いいな」と思っても、聴いた人が歌詞の意味がわからなかったりしたら意味がないから。人には見せられない弱みって絶対みんなあると思うんですけど、そういうところも大事にしてますね。(5thシングル)「氷解」は、そういった弱みを受け入れるっていうか「それでいいんだよ」「そのままでもいいんだよ」というのを伝えるイメージで作りました。

ーそれは、自分にもそう言ってほしいという気持ちがあって?

どうなんだろう? あまり自覚はないですが、自分で作っているから少なからず自分のなかにもあることなのかなとは思います。

ーたとえば「最低」の“泣いてる君”と“黙って見ている僕”や、「ゆらせ」で《さぁ行け》と言ってるほうと言われているほうなど、両方に自分自身の感覚や目線がちゃんと生かされているように感じるんですよね。

たしかに「ゆらせ」は現役でサッカーやってた時代を思い出して、こういう歌があったらアガるなとか、こういうことを思ってたなっていうことを歌詞に入れました。でも、たとえ実体験に基づいていてもそうじゃなくても、きっと自分のなかにはどっちもあると思うんですよ。

ーたとえば、最低だと言われる自分も、言ってしまう自分も。

はい。「最低」なんかは、そういうごちゃごちゃっとした部分を上手く歌詞にできたかなと思ってます。

ーそういう自分にもちゃんと向きあって歌詞を書いているから、聴いた人が共感できるんですよね。一歩間違えれば、エゴとか自己満足と言われるギリギリまで攻めてる。でもアレンジャーさんの編曲が加わることで、さらに伝わりやすくなっているのもれんさんの楽曲の特徴かなと思いました。

あぁ、よかった。それは嬉しいです。

ーもうひとつ、直接的な苛立ちを言葉にした「赤」やエールを送る「ゆらせ」など、どんなに感情が爆発してる曲であってもそこにはすごく冷静なれんさんがいるような印象を受けました。

表舞台に立つ人は特にそうだと思うんですが、自分に芯がないとやっていけないと思うので。揺らいじゃったらもう、芯がないって言われてしまう時代だし。でもいろんなことを“吸収”はしていきたいなと思ってるんですよね。飲み込めなければ飲み込まなくていいし、くらいのニュアンスですけど。

ーれんさん自身、楽曲を構築する上で何か意識していることはありますか?

僕のなかでは、もちろん歌詞もだけどメロディーがより大事だと思っているんです。そもそも好きなアーティストだったら歌詞もしっかり見て聴きますけど、街で流れてる曲を聴いたときにまず「いいな」と思うのってメロディーなんじゃないかなって。それって大事だなと思っているから、AメロもBメロもサビもこだわって、キャッチーに作るようにしているんですよね。自分で納得できるまで練ってます。

ー楽曲作りにおいては、SNS上での発信ということも意識しますか?

TikTokでは、それこそその秒数のなかでどれだけ聴いてもらえるかが勝負だったりしますからね。聴いてもらえる長さとメロディーのキャッチーさ、歌詞の共感性とか。でもそれは、意識せずにやってたかもしれないです。

ーご自身がSNSというプラットフォームで音楽を聴いてきたから、楽曲にも自然と生かされているんでしょうね。

そうですね、それはあると思います。

ー今後挑戦してみたい楽曲の方向性などはありますか?

漠然と、季節の曲を書いてみたいなというのはあります。今で言ったらクリスマスとか。(2ndシングルの)「Promise」にもそういう雰囲気はあるんですが、もうちょっとがっつりクリスマスっぽい音を入れたりして、クリスマスに特化した曲が作れたらなって。それこそ僕ひとりじゃなくてCo-Writeのスタイルで作れたりしたら、僕以外の人の良さもミックスされてもっといい曲になりそうですよね。日本だけじゃなく、トレンドも文化も違う海外の方ともやってみたいです。

ークリスマスソングってとてもわかりやすい例だと思うんですが、たとえば最近「最低」でれんさんを知った人にとっては、こんな曲も作るんだっていう意外性や驚きにも繋がりそうですよね。

たしかに。「最低」からクリスマスソングって、すごい振れ幅ですよね(笑)。

ーこれからもぜひ、いろんな顔を見せてください。やっぱり1曲で判断されたり、アーティストイメージが固まってしまうのは怖いしもったいないなと思うので。

でも僕は、曲が届けばいいと思ってるんですよ。今「最低」を必要としている人に届けばいいなっていう感じなので、特に怖いものはないかなと。

ーなるほど。ちなみに最新曲の「空っぽ」は「最低」の延長線上という見方もできるかなと思っているのですが、そのあたりは意識している部分もあったんですか?

「最低」の《僕は泣いてる君に黙っていた》っていうサビは1年前くらいにできてたんですね。でもAメロとかBメロとかのパーツを組みあわせていく過程で今の俺には無理だなって勝手に踏ん切りをつけていて。ようやく最近の曲作りの期間で「最低」を作り、「空っぽ」も作ったんですよね。未発表の曲も含めると3週間で3曲作りました。

ーじゃあ気持ち的には地続きな部分もあったんでしょうね。

そうです、そうです。そういうことになりますね。

ー「空っぽ」は12月7日にリリースされたばかりですが、この季節に聴くと余計に沁みる悲しさがありますね。

これはもう、めちゃくちゃ悲しい。さっきも実話だとかそうじゃないとかっていう話をしましたけど、曲を書くにあたっていろんな人の話を聞いたり、自分が経験したり、そこで何を感じたかとかが全部歌に跳ね返ってくるんですよね。「空っぽ」もそれをすごく実感しました。忘れちゃいけない気持ちとか経験を日記に書く人もいると思うけど、こうやって曲にできるのは(シンガーソングライターの)いいところだなと思います。文字を読み返す日記よりももっとアバウトというか、メロディーを聴いただけで思い返せるような感じで作れるのも、アーティストっていうクリエイティブな仕事ならではだなって思いますね。

ーれんさんの曲作りはサビと歌詞が一緒に出てくることが多いそうですが、ライブを意識して作ることもありますか?

僕の最初の5曲が儚い曲ばかりだったということもあって、ライブをやるとなったときに何か盛り上がるような曲をってことで作ったのが「ゆらせ」でした。サブスクで聴いてもらうのももちろんですけど、「この曲、生で聴いてみたいな」って思ってもらえたら、曲のバリエーションとしてもアーティストとしてもさらに幅が広がるのかなと思うので、今後もそういう楽曲は作っていきたいなとは思っています。

より多くの人に自分の楽曲を届けたい

ー12月25日にはクリスマスライブが開催されますが、どんなライブにしたいですか?

クリスマスにちなんだ曲は入れようと思ってます。バンドを引き連れてのライブではないので、SNSでライブ配信をしている延長線上みたいな感じで、会いに来てくれた人にアットホームなライブをお届けできたらなと。より近くに感じてもらえることを意識したいですね。

ー活動開始から1周年。何か心境の変化などはありましたか?

マジで自分のことをすごいとか思っていなくて。曲は聴かれているかもしれないけど、全然まだまだだなと思います。アーティストとして1年ちょっとの卵でしかないなと思っていて、現状に満足できるほどでもないですからね。始めた頃は自分の意見や、自分が正しいと思うことに対してもあまり自信がなかったんですが、曲を出していくなかでだんだんと「自分というものを持ってもいいんだな」「自分は自分でいいや」って結構思えるようになってきたかなとは思います。

ーきっと周りの方々への信頼もあってでしょうね。

はい。関わってもらっているスタッフさんは本当にいい人ばかりなので。

ー今年は10代最後の年でもありますが、何かやり残したこととか、これやっときたいとかはありますか?

ちゃんと遊んどこう、かな(笑)。どうしても人の目を気にしてしまう仕事だから、友達とはしゃいでいるときでもちょっと遠慮しちゃったりとかもあるけど、そういうのは気にせずちゃんと遊ぶ時間も作りたいなって。若さというか、今のうちにできることもたくさんあると思うから、友達とちゃんとはっちゃけて遊びたいなって思います。今だったらスキーとか行きたい。アーティストの友達ともそういう話をしてたんで、今度行ってこようと思います。

ー2023年、アーティストとして挑戦したいことなどがあれば教えてください。

曲を作れたら幸せだなと思います。曲を作って届けることができれば、ライブも自ずとできるようになると思うから。今でもたくさんの方が聴いてくれてはいますけど、僕の曲が来年はもっともっといろんな人に届いてくれたら嬉しいなって思います。

ーご自身の音楽活動における大きな目標や夢はありますか?

通過点としての目標は日本武道館です。(Spotify)O-EAST、Zeppなどひとつずつ段階を踏んで、目標のひとつである武道館には行きたいなと思いますね。せっかくだったら弾き語りとかでやってみたいです。“夢”だと夢で終わっちゃうから、目標としてしっかり見据えてます。今の僕からしたらすごく高い目標ですが、そこに自分が立っているビジョンは想像できるんで。そのためにも、やり続けることが大切かなと思います。

ーでは最後に、読者の皆さんへお伝えになりたいことがあったらお願いします。

曲を聴いたことがあるって人もそうですけど、こうやって僕のことが気になって記事を読んだりしてくださっている人にも感謝を伝えたいです。曲だけじゃなく、こういう人なんだっていうこととかも知ってもらいたいし、それこそ僕はファンの方との距離感を大事にしているので、気軽にSNSの配信とかも観にきてほしいですね。アーティストであり友達みたいな感覚でこれからも一緒にいてもらえたらなと思っています。

Presented by.DIGLE MAGAZINE





【RELEASE INFORMATION】

New Digital Single「空っぽ」
2022年12月7日(水)リリース

▼各種ストリーミングURL
https://big-up.style/RrMl79IwcG

▼Music Video
https://youtu.be/5uiFXAmPUUA

▼Lyric Video
https://youtu.be/yBrjQxK5v6s

外部リンク
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【EVENT INFORMATION】

れん X’mas Live 2022

日時:2022年12月25日(日)
会場:渋谷PARCO・ComMunE
【昼公演】
Open 13:30/Start 14:00
【夜公演】
Open 17:30/Start 18:00

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