マジックアワーに揺れる、一行あけての音楽

PICK UPアーティスト

BIG UP! ユーザーの中から、今聴きたいアーティストをピックアップ! 今回は一行あけてをご紹介します。

瑞々しいまま終わらせて

――おれの大好きな一行あけてを、明日、終わらせる
そう語る正木諧の言葉を目にして脳裏によぎったのは、石田衣良の小説「美丘」の一節だった。
――わたしがわたしでなくなったら、この手で終わりにしてほしい

2014年に結成され2018年3月に解散したバンド、一行あけて。解散理由は公にされていないが、ふと思ってしまったのだ。“一行あけて”は“一行あけて”であるために、終わりにすることを選んだのではないかと。

彼らの紡ぐ音楽は、すべてが瑞々しい。自分たちがいいと思うものを追求する感性もやるせなさを抱えこんだ歌詞も流行を企み顔で取りあげる遊び心も、きっと培えるものではない。大学生という人生のマジックアワーだからこそ、生まれた産物なのである。

先日配信が開始された『夢をみていた』は、結成7年目を記念して配信された3作品のなかのひとつ。解散ライブの際に100枚限定で発売されたもので、静かに恋人との関係を見つめる作品に仕上がっている。“一行あけて”である最期の時間を濃縮した、センチメンタルだが爽快感ある1枚をぜひ耳にしてほしい。