“大人としての”関係者との付き合い方、出会い方

コラム

皆さんこんにちは。作曲家で音楽プロデューサーの齊藤耕太郎です。前回までの3記事、ご覧いただきありがとうございました。第4回目は、アーティスト、特にセルフプロデュースで活動するDIYミュージシャンの方々に向けて、皆さんが成長していく上で絶対に外せない「“大人としての”関係者との付き合い方、出会い方」について書きます!

僕はもともと、博報堂という広告会社で5年営業を務めました。学生時代、身勝手極まりなかった僕のことを一端の社会人に育て上げてくれたのは会社員時代の皆さん、そしてその当時から今に至るまで僕を支えてくれる、社外で出会った素敵な大人の皆さんです。

その経験があって、僕は今、アーティスト個人の活動、CM音楽のプロデューサー、作曲家としての両面の活動において、お仕事のきっかけから大きな人生相談まで、34歳になった今も多くの先輩、そして若き尊敬する仲間に恵まれています。今のフロントラインの皆さんは若くして人間がとてもできていたり(僕の周りは全員そう)、音楽をやりながら会社員として働いている方もいたりと聞きます。僕がこんなことを言うのは釈迦に説法からもしれません。

でも、少なくとも自分は、自分以外の誰かがあって今がある。そんな自分を変えてくれた価値観や考えを、このリアルで会って話しにくい今だからこそ、文章にして皆さんにも共有できたら嬉しいです。それではいきます!

1. 大きなチャンスは自分以外の誰かがくれるもの

どれだけ腕っぷしでのし上がってこようが、大きな成果を残せる人は絶対にその人1人の力で登り詰めないと僕は思います。必ずその人を応援したい、何か力になろう。そう思ってくれる、別の能力を持った誰かがサポートするから大成するんだと僕は思います。

それは若ければ若いほど、「目上の、ビジネスを知る大人」である場合が多い。そんな大人が、誰かに自分の力を使うときに一番大切にしていることってなんだろう。僕は最近まで、そこの本質について考えていました。でも最近、その答えが出たんです。

「(成功して)幸せになってほしいから、応援する」

たったこれだけなんです。

つまり、その人の人柄、周囲と人間関係の築き上げる様、信頼を得る様、それらの総合的な判断のもとで「ちょっとピンチがあっても、ちょっと危険要素があっても、応援したい」そう思ってくださるのだと。僕は、その想いに気づけた時、自分がいかに「気持ちの先行投資」をしてもらっているのか、強く身に染みたんです。

もちろんビジネスとして具体的な投資を受けて成立する関係もあると思います。「こいつは未来が明るい。だからお金を出そう。」そんな大人もいるかもしれない。でも、例えば僕たちが全くの無名だったとして、そんな僕らのどこに期待してくれてるのか。

結局、動機が何であれ、同じだと思うんですよね。

2. 音楽が魅力的なのは当たり前

誤解を恐れずに言えば、ここ10年で全く時代は変わってしまいました。僕が10代、20代前半だった頃は、僕が「音楽をやりたい!」と叫んでいたら、「腕がなくとも導いてくれた」先輩がいて、基礎を作ってくれた方がいました。しかし、現代はハッキリいって「”作品をリリースした”ところからが音楽家としての始まり」となりました。

理由は明快です。楽曲のリリース、アーティスト活動が、完全に自由化したからです。ここ、BIG UP!の尽力も大きな一端を担っていると言えましょう。

音楽を聴いて、心に残るものがなければ、そもそも話が前に進まない。完成度が高いのは当たり前で、その中に「アーティストの人間味」「心を動かす要素」がなければホンモノとは思われない。つまり、出会いはSpotifyやApple、YouTubeを一聴した瞬間に決まるんです。

その、「音楽のクオリティが素晴らしく、故に”好き”と思える大前提」があった上で、僕はその人の人間味に触れた時に、応援したいと思えるんじゃないかと思うんです。

コミュニケーションの方法は、コロナ禍を通じて大きく変化しました。SNSに現れる自分が、その人を表すものになりました。

そんな何層にも重なる人間像を見て、人はその人に魅了され、応援し、その人の喜びを自分のものとして思え、希望を託す。つまり全方位、自分が考える自分らしさで世に立たなければいけない。そしてそのクオリティに対して、自分自身で全責任を背負えなきゃいけない。誰もが簡単に自分の楽曲をアップロードしてリリースできる時代だからこそ、その審美眼は非常にシビアになっていると感じます。

3. 誰かに自分を売り込む時に大切なこと

以前は、音楽業界、芸能界の門は限られた個人同士のつながりで固く閉ざされ、それこそ「原宿でスカウトされて」「ライブハウスに偶然レーベルの人が来ていて」など、都市伝説のような出会いでスターダムを駆け上がるストーリーが光り輝いていました。でも今は、基本的にはどんな方法だろうと、自分自身で輝いた人間に注目が集まり、SNSを通じて声を掛けるケースも珍しくないと感じます。

輝いている人には、ただ輝くだけでなく、輝いた先できちんと仕事を一つ一つ積み重ね、原石を宝石に磨いていく「プロセス」がきちんと存在する。その「プロセス」を良い形で辿った人が、幸せに近づいていくんだと周りを見ていて感じます。

良い形でキャリアを磨く人たちの共通点を紹介しますね。

とにかく、人より目立つ

僕の場合は、Spotifyとnoteが最初のきっかけになりました。当時プレイヤーが多くなく、そこで結果を出すことが今ほど難しくなかったから、一点突破を目指した結果、バイラルチャートを席巻でき、その模様を綴ったnoteが盛り上がった。

無名の個人アーティストが、Spotify公式プレイリストに入るためにやったこと

Spotifyバイラル50で1位になった、無名CM音楽クリエイターのホンネ

この時のポイントは、

1. 無名を強調
2. 競合が少なかったnoteを中心に攻める
3. ノウハウを全て語る

という3点でした。有料セミナーで話せそうなことを、無料にして、記事の拡散を狙ってリンクから試聴増を狙ったら、案の定うまくいったという事例です。

Spotifyで話題になったのはただの「点」です。SNSでバズるのと同じ。その「点」を活かして、いかに「線」、そして「面」としてアーティスト像を築き上げるかが重要です!

次に。

丁寧な自己紹介の場を持つ

チャンスとなるきっかけは何も、自分1人で火を起こすことばかりではありません。むしろ、自分から特定の誰かにメッセージを送って、その1人をきっかけに一点突破!という可能性は全く少なくありません。

僕も日々、いろいろなアーティストの方から音源を頂戴します。音源をリリースしたばかりの方から大手レーベルの方まで、色々な方の音源を聴きます。その中で、優先的に聴きたくなるのは音源以外に気を遣えている方のもの。

  • 自己紹介用の資料
  • (あれば)所属するレーベル
  • 音源は必ず「ストリーミングリンク」で!
  • (データはDL期限があったり重いため身内じゃないと保存しません)
  • SNSアカウント
  • (あれば)過去の実績(受賞歴、参加作品など)

もちろん、全くの無名の「金の卵」な方の発掘は、掘り当てた時にとても楽しい。でも、正直見落としてしまうことも多々ある。僕でそうなのだから、万単位の募集が集まるオーディションなどはもっとそう!だから、可能なかぎり「簡潔に」「濃密な」内容のプロフィールを伝えるのが良いかと思います。

仕事の実績や受賞歴は、量を書きすぎる必要はなく、むしろメディアの取材記事のリンク、くらいが僕は好きです。メール文面はスッキリさせて、リンク先で濃厚に読ませる。第一印象を重くするより、相手が興味を持ってから濃い情報を見せる方が有効かなと。

大人のマナーを心得たメール

ビジネスマンな大人はビジネスマナーを心得ているメールしか普段読まないので、資料や音源が良くてもメールがアホそうだとその時点で足元を見られがちです。本人のキャラにもよりますが、僕が知らない方にメールをお送りする時は、

 

  

〇〇様(僕は印象を柔らかくするために「さま」と書くことも)

お世話になっております。
作曲家で音楽プロデューサーの齊藤耕太郎と申します。
突然のご連絡、失礼いたします。

〇〇で△△様(会社の場合は「貴社」)のことを知り、
是非僕の(一番丁寧なのは男女問わず「私」だけどあえてキャラ作るために)作品を
聴いていただきたくご連絡いたしました。

音源リンク
〇〇〇〇
↑なるべくYouTubeなど直リンク推奨。音楽業界人宛ならSpotifyやAppleも可。
↑MVに自信がある場合は音源のみよりMV推奨。
↑アルバム全曲は絶対に聴いてもらえないため、極力送るのは1曲のみに。

この楽曲は、Spotifyのプレイリスト「New Music Wednesday Japan(例)」ほか
全○つのプレイリストにてピックアップされました。
また、Apple Musicではオルタナティブ(例)のバナーにも選出されました。

その他、取材いただいた記事を添付いたします。
お時間ございましたら、是非ご覧ください。
https://www.barks.jp/news/?id=1000171447

ご多忙のところ恐れ入りますが、もし興味を持っていただけましたら
お返事いただけますと幸いです。何卒、よろしくお願いいたします。

齊藤耕太郎 Kotaro Saito
〇〇〇(メール以外の連絡先)

 

みたいなメールを送ります。

これだけシンプルに丁寧に送っても、返信いただける時とそうでない時があります。興味を持ってもらうために、できる努力は惜しまないことが相手に誠意として伝わると僕は信じています。ちなみに相手はメールを日々大量に見る可能性があるため、添付資料は極力避け、リンク送付にしてメールの容量圧迫を抑えることもマナーの一つです。

※これはあくまで僕のメールの一例なので、こなれてきたらより噛み砕いてカジュアルにするなど、皆さんの言葉を交えて活かしてもらえたら嬉しいな。

4. Clubhouseの登場で、より「音楽業界」と繋がりやすくなった

2021年の1月末に、突如日本でもブームとなった音声SNS「Clubhouse」、皆さんも名前はご存知ですよね。これ、音楽のシーンを一気に変えうる新潮流だなと感じました。

Clubhouseはトピックを立てて、「一切履歴が残らずに」不特定多数の人と音声会話を楽しめる”未来のラジオ”のようなもの。興味が近い人同士が集まると、スピーカー(会話する人)がリスナーの中から話したい人を会話に加えて、自由に話が盛り上がる、とても面白いSNSです。何が面白いって、リスナーの方もどんな人かが見えるから、スピーカーとして話しながらリスナーの方からピックアップできるところ。急に、有名人から一般の方がピックアップされる可能性すら、かなりあるんです。

例えば僕は結構な頻度でトピックを立てて喋っているのですが、先日はスピーカーとして話してくれた作曲家の方の紹介で、別の作曲家の方、しかもドラマや映画などのトッププレイヤーの方が僕の「Room」でお話してくれました。他にも、お会いしたことない音楽ビジネス関係者の方とも仲良くなり、始めて1週間ほどでも出会いが拡がりました。

実は、この記事を書く直前にも、BIG UP!のプレイリスト運営をされているDIGLE Magazine江藤編集長が僕の立てた「Room」に参加してくれて、音楽メディアがアーティストをピックアップする時に考えていること、プレイリスト運営において大切にしていること、そのためにClubhouseがいかに有益な情報収集、ネットワークの源になるかを語ってくれました。彼にアポを取ったわけではなく、僕が記事を書く前に「Clubhouse脳になろう」と急に立てただけで、真昼にたくさんの音楽ビジネスマン、リスナーの皆さん、そしてグローバルに活躍されているアーティストの方も遊びに来てくれたんです。

どうでしょう?一気に自分の作品が、世に広がる可能性があると思いませんか?

Clubhouseはまだユーザーが伸びている段階なので、2月1日段階ではまだまだ一気に注目を集められるチャンスがあると思います。そのために必要なのは、ここでも「自己紹介」の能力。具体的には

  • プロフィールを充実させること
  • 「Room」のタイトルは端的かつターゲットが明確に伝わるものに
  • 人が話に盛り上がっている中、手を挙げて会話に入る「勇気」←最重要!
  • 自分の話ばかりせず、会話全体が楽しくなる「ネタ」を投じること←超重要!

    

の4つ。

使ったことがない方にはイメージつかないかもしれませんね。

例えて言うなら、スナックが連なった雑居ビルのようなものです。

興味のある、盛り上がってそうな場所を探して人が自由に出入りして、その場で「面白い人」を見つけて話を聞いてみる、みたいな空間がソーシャルに存在しているんです。有名人が入室したら、その「Room」に一気にオーディエンスが流れてくる。だから、一夜にして注目を浴びるチャンスが、誰にでもあるんです。僕が作った「Room」に来てくれて、「挙手」マークを挙げてくれた方はどんどん壇上に上がってもらいます!

いかがでしたでしょうか?
発信の仕方は本当に多様になっていて、でもそれでいて、結局音楽そのものが仕事として機能していくかどうかは「人間と人間のやりとり」なんだとここ最近改めて強く思います。しかもコミュニケーション術が増えたことで、世代も国境も超えて音楽を作り、リリースはもちろんプロモーションだって力を合わせてできる時代。

最終的には、「どうやって伝えるか」じゃなく「何を伝えるか」が大事なんだなと、とっても強く思います。その「何」を表現する手法がこんなに魅力たっぷりな時代、マジで全員売れるチャンスがある!僕もそう信じる1人として、これからも音楽活動を地道に頑張っていきます。皆さん!一緒に楽しみましょう!!


Kotaro Saito / 齊藤耕太郎

よかったら僕のSNSフォローや音源試聴もしてください。
Instagram
Twitter
note

最新アルバム「VOYAGER」
https://friendship.lnk.to/VOYAGER