サコウリョーマが、ピュアに紡ぐ美しさ
PICK UPアーティスト
BIG UP! ユーザーの中から、今聴きたいアーティストをピックアップ! 今回はサコウリョーマをご紹介します。
無償の愛を音楽に
――音楽で誰かを元気づけたいんです。気づきを与えたいんです。
音楽雑誌を眺めていると、ひとりふたりは必ずそんなことを口にする。さも「そうでなければ、音楽をやっている意味がないんです」とでも言いだしそうな勢いで。
そんな思考から一番遠いところにいる人物こそ、YOLKのコンポーザーとしても活動するシンガーソングライターのサコウリョーマだ。
多くのミュージシャンが音楽を通してメッセージを伝えたいと奔走するなかで、彼は「自分の音楽にあまり意味がないかも」と語る。サコウの作品に存在しているのは、誰かに何かを期待する望みではなく、大切な人たちへの無償の愛なのだ。彼の作品が結果として何かを引き起こしたら素晴らしいことだが、それを目的とはしていないのである。
だからなのか、サコウが手掛ける音楽は、ただただ美しい。伝えたいメッセージがあると、それを引き立たせることに意識がいってしまうものだが、彼は“美しくあること”だけに全力を注いでいる。それゆえに、胸の奥にグッとくるような情景を描けるのではないだろうか。
先日配信が開始された『第三都市の海辺』は、架空の場所をモチーフにしたミニアルバム。沖縄に住んでいた経験が強く反映され、あえてずらされたピッチやエフェクターの演出が酩酊感を香らせる。本を読む気力も舞台へ出向く元気もない、パズドラしかできない人に届いてほしい1枚だ。