かふなりの柔く深いラブソング
PICK UPアーティスト
BIG UP! ユーザーの中から、今聴きたいアーティストをピックアップ! 今回はかふをご紹介します。
想いの海へ沈んでいく
1998年生まれ、滋賀県出身のシンガーソングライター兼トラックメイカー・かふ。
様々なジャンルを横断しつつも、トラップをベースとしたトレンド感と清涼感のある楽曲を生み出し続けている。
最新シングル『溺れた鯨』は、はじめて“恋愛”をテーマにして制作した楽曲だという。
恋愛、とひとくちに言っても、どのような関係のどのような瞬間を切り取るかによってその言葉のイメージは大きく変わる。
かふは自身のこの曲を「自己肯定感の低いラブソング」と表現している。
チルやローファイの空気を纏うメロウなトラックの上で、訥々と語るように歌われる詩がひたすらに目指すのは「別れ」というひとつの終着点。
トラックのフレーズがループするたび、溢れ出て止まない思いに押し潰されていく「僕」の姿が目に浮かんで揺れる。
『溺れた鯨』というタイトルに納得感を覚えながら、それを聞いている自分も深く澄んだ海の底へ落ちていくような気持ちになる。
しかし、どうしたってこれはラブソングで、根底に流れるものはあたたかく心地良い。
本人の解説通り自己肯定感が低い「僕」の姿が全面に出た楽曲ではあるが、最後に告げられる《あの日出会ったことを間違いとは言わせないよ》という一言には、「君」とこの恋愛そのものに対する明確な愛が滲む。
苦しいだけじゃない、寂しいだけじゃない、自分で覚悟を決めたなら、このまま沈んでいくのも悪くないと思える。
そんな恋と愛のかたちをあなたも感じてほしい。