kidaiが詩と音で描く別れ

PICK UPアーティスト

BIG UP! ユーザーの中から、今聴きたいアーティストをピックアップ! 今回はkidaiをご紹介します。

ノンフィクションのリアリティ

楽器を使わない新世代のシンガーソングライター・kidai。
関西最大の10代発掘プロジェクト「十代白書」2021年度大会のファイナリストに残ったことから注目を集めはじめ、リリースを続ける彼の最新シングル『ハナウタ』はノンフィクションのラブソングだという。

ギター、ドラム、そしてさまざまな打ち込みの要素……イントロから流れ込んでくる音の重なりを聞いた時点で、これを自分自身で作曲している彼のスキルとセンスを感じることができる。
たとえば、水が跳ねるような効果音を用い、楽曲に透明感を与えると同時に「寂しさ」や「悲しみ」といった情感も演出しているところからは、楽器よりも作曲ソフト等に親しんだZ世代ならではの感覚を垣間見られる。
ラブソングと言いながら、この『ハナウタ』の中で歌われるのはどうにも苦い恋愛の終わりの風景。
いつかは同じ空間にいた「君」が歌っていた鼻歌を思い出して、似たメロディで歌を作っている、というリアルな詩が、楽曲の解像度をぐんと上げている。
儚さと激しさを併せ持ったトラックがその景色を包み込み、切なさが滲むkidaiの歌声を際立たせていて、誰もの心の中にある“別れ”の想い出を呼び覚ましていくようだ。

“chill hop music”をテーマに活動を続けるkidai。
彼の今後のリリースも楽しみだ。