田中タリラの底知れぬ魅力

PICK UPアーティスト

BIG UP! ユーザーの中から、今聴きたいアーティストをピックアップ! 今回は田中タリラをご紹介します。

アンビバレントに惹きつけられる

誰かを楽しませようと思って楽しませること、あるいは、怖がらせようと思って怖がらせること。
他人の心を想定通りに動かすなんて難しい。
さらに言うならば、怖いけれど楽しい、楽しいけれど怖い、といった複雑な感情を抱かせるなど尚更。
それを知っているからこそ、田中タリラというアーティストについて考えるとき、たとえば「鬼才」といった言葉を使いたくなってしまうのだ。

10種類以上の音のサンプリングをベースに構築された、田中タリラの最新シングル『メニュウ』。
彼が掲げる“オトアソビズム”の精神を象徴するようなこの楽曲は、入り組んだバランスで成り立っていながら誰しもを惹き込むキャッチーさを忘れず、妖しさと同時に神聖ささえ漂わせている。
トラックメイカーとして発表してきたこれまでの楽曲とも、田中タリラがもうひとつの軸として活動しているDannie Mayの楽曲ともまた異なる新境地を魅せる『メニュウ』の、その底知れなさ。

これはきっと、新たな才能に出会うときの恐怖、そして高揚なのだろう。
得体が知れないのに、こんなにもワクワクしてしまう。
緻密な美しさと、横暴なまでの存在感の間に酔い痴れる。
そんなアンビバレントな感情を引き摺り出されてしまえば、もうあなたも彼の虜なのだ。