ミリオンストリームを達成したDIYアーティストが目指す、「自給自足」とは #2

コラム

皆さんこんにちは。作曲家で音楽プロデューサーの齊藤耕太郎です。普段、Kotaro Saito名義で自らの楽曲をリリースしています。詳しくは僕のnoteをご覧ください。

Kotaro Saito note
https://note.com/kotarosaito

#1はこちら
【コラム】ミリオンストリームを達成したDIYアーティストが目指す、「自給自足」とは #1

プレイリストに入るって、そんなに大事?

音楽ストリーミング市場において、全てのアーティストの可能性をブーストする登竜門といえば「プレイリストでどう紹介されるか」だったりします。僕自身、そもそも何でこんな風に人に偉そうに自身の経験談を語らせてもらっているかといえば、出したアルバムの数曲が突如Spotifyのオフィシャルプレイリストに入ったからです。

その時の状況をnoteに書いたところ、こちらもバズって相乗効果に。

【note】無名の個人アーティストが、Spotify公式プレイリストに入るためにやったこと。

程なくして、SNSで話題の楽曲ランキングとされる「日本バイラルトップ50」に楽曲がランクインして、あれよあれよという間に2曲が1位と2位に。まだまだ日本ではストリーミング黎明期だったこともあり、この出来事は音楽業界関係者の皆さんに注目してもらえました。

以来、1~2年ほど僕はプレイリストに曲が入ることを中心に考えながらリリース活動を続けました。2019年はとにかく「世界に音楽を届けたい」と声高らかにありとあらゆる場で言い放ち、自分が考える「世界に伝えたいこと」を曲にし続けてきました。毎月、本当に真剣に楽曲制作に挑んで、Spotifyのプレイリストに入ること、曲の再生回数を「稼ぐ」ことは、アーティスト活動2年目にしてはまずまず達成できたはず。これらの活動実績に対して、Music-Ally Japanが選ぶ年間ベストマーケティングアクトにも選んでもらいました。ビリー・アイリッシュらと並ぶとは、光栄です。

でも、プレイリストに楽曲を入れるための戦術って、手段であって目的ではないんですよね。
僕の場合、結構そこで壁にぶつかりました。

結局プレイリストの力にぶら下がって再生してもらえていただけの僕の音楽作品は、外された瞬間に一気に再生回数が落ちてしまいました。そのとき、「大切なのは有力なプレイリストに入ることじゃなくて、自分自身に発信力があることなんだ」と気がつきました。勿論今でも、プレイリストの存在は僕にとっても重要。毎回きちんとサブミッションはする。でも、それはリリース活動に対する「全体の10%程度」のタスクでしかないんです。

プレイリストに入ることはキッカケだったり、知ってもらうための窓口的な役割だと思うんです。大事なのは曲を聴いて興味を持った後に、ウェブ上でどのような動線を自分で引けているかだと今は思う。YouTubeに楽曲の魅力を深めるようなMVはあるか?SNSでアーティスト本人の人となりは見えてくるのか?noteで楽曲の世界観を深められるのか?検索したときに、メディアの取材記事は出てくるのか?

そういう意味で、お仕事でこうして自分の話をしながら記事を執筆できる場をもらえていることは、僕にとって最高のプロモーションの場でもあるんです。プレイリストへのアプローチ以上に、今は自分の経験を伝えていくことに僕は情熱を注いでいます。

僕が目指す、自給自足アーティスト像とは

読んで字の如くなのですが、これまで触れてきた3章から導き出せる僕の考える理想の音楽家の在り方は、小学生の頃から僕が好きだった某テレビ番組の某村(って書いて伝わるのかな)の企画のように、自分たちで畑を耕し食材を作り、木を切って家を建てて暮らし、それ自体をコンテンツとして発信していくようなもの。つまり、

  • 自分たち自身が心の底から生み出したいと思える音楽を自分自身で作っていく
  • 自分たちが考える自分らしいアーティストイメージを作り上げていく
  • アーティストが主体となってMV、アートワークなど音楽以外の制作チームを持つ
  • 自分たちと、ファンの皆さんとの間で生まれる空気感を少しずつ拡げる
  • 拡げていける施策を自分たちとファンの皆さんとで一緒に考えられる場を持つ
  • 新たな才能溢れる音楽仲間をいつでも温かく迎え入れられる状態を保つ
  • 人だけでなく、”理念に共感できる”企業も”ファン”として迎え入れられる場を持つ
  • 自分たちのメッセージがキッカケで、一つの市場が産まれ、経済循環を産む

ということです。全ては、音楽作品や僕らアーティスト自身、そしてファンの皆さんが主体となって生まれる喜びの輪なんです。大きな資本を持っていたり、僕らのコミュニティの規模を拡大するキッカケをくれるであろう企業の存在も、僕らアーティストが主体にあって、ビジネスメリットではなく「理念」「想い」という感情面で共鳴してもらえることで関わってもらう、という流れを理想としています。

僕にも、応援や理念に共鳴してくれた企業の皆さんがいます。毎作品の衣装協力をしてくださっている、イタリア発の世界的ファッションブランド「MSGM」東京チームの皆さん。僕が個人的に元々ファンだったMSGMは、僕らの音楽活動のみならず、プライベートも彩ってくれています。

MSGMへの想いを綴ったnote

【note】MSGMと、僕らの精神・魂・姿勢

さらに最近、日本に初上陸したマリオット系列の超クールなホテル「アロフト東京銀座」という新たな仲間ができました。彼らと日本のインディシーンを盛り上げていくべく、Live@Aloftという世界的に歴史ある音楽プロジェクトの日本版を立ち上げました。

このプロジェクトについて書いたnoteはこちら

【note】世界的スターたちを生んだアロフトホテルとのコラボ!

僕は博報堂でのサラリーマン生活、職業作曲家(クライアントの課題解決のために音楽を作る仕事のことを指します)を経てアーティストとして現在活動する中で、圧倒的に、アーティストという存在は尊いと心から感じます。

プロとして、仕事として表現活動を行っているとしても、日々の感情変化が仕事の表現にダイレクトに影響します。普通のプロ業、何なら職業演奏家、作曲家でさえも、安定してないことはクライアントや第三者に咎められます。でもアーティストの不安定さって、その瞬間その時にしか産まれない、宝物だって僕は思う。生きていることそのものを誰かの喜びに変えられて、心の内側を表現に伝い漏らすことで誰かの心を癒せる可能性だってある。それは、自分という主体から生まれるメッセージ以外では為し得ないって僕は思います。

一方、だからこそアーティストの存在は不安定かつ、不確定だっていつも思う。表現活動と、経済活動ってなかなか一致させて生きていくのは難しい。

それをしっかり考えて表現活動に勤しんでいる、僕より遥かに若い音楽仲間たちが最近とっても増えてきています。だからある意味、こんなことを僕がいうまでもなく、今頭角を現している人たちは当たり前のように自分で考えて自分で実行し、自分で効果検証をして次のステップへ進んでいる。DIYアーティストで売れていく人って、表現活動の中にビジネスでいう「P (Plan) D (Do) C (Check) A (Action)」が当たり前のように、しかも高速サイクルで含まれているんです。本当に、Z世代と呼ばれる若い世代の人たちには学ぶことが多いです。いつも多くの刺激をもらえて、自分の音楽活動にもすごく影響を受けています。

最初に僕が書いている、

①強力な”仮説”を立てられること
②”仮説”が違うと判断したら、有無を言わさず方向変換できること

これを実践しているから、売れている、注目されているんじゃないかなって僕は思っています。っていうか、ものすごく近い将来、僕がこんな記事を書いたことが陳腐に思えるくらい、DIYで音楽活動して作品的にも経済的にも成功するアーティストが沢山現れるような気がしてなりません。その一端を担えるよう、僕も全力で表現の道を突き進みます!

最後に。

何度も言います。現代の音楽家、特に自分自身の名義で作品をリリースしている「アーティスト」という存在は極めて知的かつ実行力に富んだ、デキる人たちが本当に多いんです。時代が大きく変わる感覚を、僕は2018年に音楽作品をリリースして以降、年を追うごとに感じます。もう、ストリーミング市場のチャートは完全に新世代に様変わりしました。僕も自分らしい音楽家としての在り方を模索しながら、急激に変化し続ける、とっても興味深く面白い音楽産業・市場といい距離感で付き合っていきたいと思っています。

次の寄稿まで幾月か間があります。その時にまた、自分の考えが良き方向に変わっていることを願いつつ、今日は締めたいと思います。よかったら、僕の音楽作品も聞いてみてくださいね。


Kotaro Saito / 齊藤耕太郎

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僕の日々の執筆記事はnoteにて。より具体的な考えや手法を書いています。
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