楽曲の配信登録(デリバリー)には細心の注意を払うべき

コラム

Gerbera Music Agencyの金野です。アーティストのSNS広告やピッチングを支援する会社を運営しています。今回はコラム企画の4本目として、楽曲配信登録(デリバリー)のミスを回避するために必要な情報を紹介します。

▼過去のコラムはこちら
1.【コラム】YouTubeの活用方法を理解する -アルゴリズムの構造を掴む-
2.【コラム】Spotify for Artistsの活用方法を深く理解する -プレイリストに入るためには?-
3.【コラム】Spotifyプレイリストのフォロワーを増やす方法 -コンセプトと更新と外部流入の確保がキモ

【事例1】アーティストアカウントが2つ存在してしまう

楽曲を正しく配信登録すれば、通常は配信ストアごとに1つのアーティストプロフィールページから楽曲が配信されます。しかし、何らかの理由でアーティストプロフィールページが2つに分離してしまうことがあります。1曲目がアーティストページA、2曲目が同名のアーティストページBから配信されるといった具合です。

以前弊社クライアントでも、同一アーティストのリリースなのにも関わらずSpotify上でアーティストプロフィールページが2つ存在してしまい、両者を統合するまでプロモーション施策が実施できないという、非常にもったいない経験をしました。このようなミスを起こさないよう、まずは楽曲を配信登録する際にはメタデータにスペルミスや無駄な余白が発生していないかどうかを必ず確認するようにしましょう。

また、非常に厄介なのですが、スペルミスなどがなくても、配信ストアによってはアーティストページが分かれてしまうことがしばしばあります。アーティストページの分離が発生してしまった場合は、ディストリビューターを通じて修正のリクエストを行いましょう。

余談ですが、活動途中にアーティストの名義を変えた場合、基本的には旧名義と新名義でアーティストページが分離してしまいますが、ディストリビューターに統合を依頼することで親名義のアーティストページにまとめることができます。名義変更を行い、かつ両アーティストページを統合したいアーティストの方は参考にしてみてください。

【事例2】同じ曲が2曲に分離してしまう

すでにリリースしたシングルをアルバムなどで再リリースした場合に発生しがちなのですが、同じ曲が2つに分離することがあります。分離すると単純に楽曲の分析がしにくくなりますし、再生回数のカウントも分離してしまうため、累計で100万再生に到達したにもかかわらずその告知がしにくくなるなど、もったいない思いをしてしまいます。

こうした現象を回避するにあたってはISRCを理解する必要があります。ISRCは、「International Standard Recording Code」の略称で、日本語で「国際標準レコーディングコード」といいます。楽曲情報を管理する為に、各国のレコード協会から発行されるコード番号です。

既存配信済みの楽曲をアルバムなどで再度配信する場合は、配信登録時に同一のISRCを入力すれば分離を防ぐことができます。同一楽曲の再リリースを行う際は同一のISRCを入力するようにしましょう。

BIG UP!登録楽曲のISRCの確認・登録方法はこちらからご確認ください。
よくある質問

【事例3】自分の楽曲が同名の別アーティスト名義でリリースされてしまう

配信登録した楽曲が、別のアーティストからリリースされてしまうというケースを散見するようになりました。「配信ストアへ切り離しの依頼→配信」までに発生するタイムラグで大幅な損をしてしまうだけでなく、巻き込んでしまった別アーティストにも迷惑をかけてしまうため、なんとしても回避したい事例です。

こうした現象は、同名のアーティスト名が存在するアーティストが楽曲をリリースする場合に発生しがちですので、「ゲスの極み乙女。」など、特殊性の強い名前で活動しているアーティストの場合はさほど心配する必要はないかもしれません。一方で、アルファベット数文字のアーティストなど、同名が起こりうる名前で活動しているアーティストは注意が必要です。

もし配信登録したにも関わらず自分のプロフィールページに楽曲が表示されていない場合は、前述のアーティストページ分離が発生していないかどうかを確認すると同時に、同名のアーティストに配信されていないかどうかを確認するようにしましょう。また、もし異なる同名アーティスト名義で楽曲がリリースされてしまっていた場合は、正しいアーティストプロフィールに掲載されるよう、ディストリビューターのサポートチームに速やかにリクエストを行うと同時に、巻き込んでしまった同名アーティスト側にも謝罪の連絡を行うほか、楽曲の切り離しがいつ行われる予定なのかを併せて伝えた方が良いでしょう。

逆に、「巻き込まれる側」になってしまった場合についてですが、普段配信登録を行っているディストリビューターで楽曲を切り離しできる場合とできない場合が両方あるようです。BIG UP!では問い合わせすれば切り離しが可能ですが、もしできないディストリビューターから配信していた場合は巻き込んだ側のアーティストに切り離しを要請せざるを得ません。もし自身から見に覚えのない楽曲が配信されていた際はまずディストリビューターに問い合わせましょう。

その他 注意すべき点

最後に、楽曲を配信登録する際に注意すべき点をいくつか記載したいと思います。

・他アーティストとのコラボ楽曲をリリース時の注意点【BIG UP!で登録する場合】
リリース楽曲にコラボ表記(「●● feat. ▲▲」など)を入れる際は「フィーチャリングアーティスト」欄も忘れずに入力してください。

(※BIG UP!のフィーチャリングアーティスト入力画面)

また、正しい接続詞を使わずに、1ワードでコラボアーティスト名まで入れてしまうパターンが多いようです。正しいアーティスト名を入力しないと、配信申請後に差し戻しが発生するだけでなく、配信後にコラボアーティスト経由で得られるはずだった再生数も得られなくなります。

特にSpotifyはコラボ曲に記載されているコラボアーティスト名がクリックできるシステムになっているため、当該楽曲からコラボ相手のアーティストページに飛ぶことができます。また、自身のアーティストページだけでなく、コラボ相手のアーティストページにも楽曲が掲載されるため、楽曲がより再生されやすくなります。コラボ効果を高めるためにも「フィーチャリングアーティスト」欄を正しく記入するようにしましょう。

・楽曲序盤・終盤に10秒以上の無音地帯がないかどうか
以前、リスナーから配信ストアのカスタマーサービスに対して「音が途切れた」というご指摘(誤解ですが)があったため、BIG UP!では無音は削除いただくよう差し戻しをしております。

・カバー曲やサンプリングの許諾が事前に取れているかどうか
サンプリングについては無許諾で行っているアーティストも散見されますが、著作権侵害で訴訟問題に発展するリスクを負います。

・Explicit(ラベル使用も含む)を申告することで、楽曲が配信されない国があります。
特にHIP-HOPアーティストは注意が必要です。

・歌詞に以下のような表現(但し、例示であって以下記載のものに限定されるものではありません)が含まれる場合は、配信事業者により、配信ができない場合がありますので、注意が必要です。
■犯罪の方法を明細に描写したり、魅力的に描写したりすること
■人身売買、幼児虐待、動物虐待、自殺を正当化すること
■未成年者に悪影響を与える表現を使用すること(たとえば、喫煙・飲酒の推奨、一気飲み・危険な遊戯などの助長など)
■人種、出身、疾患、宗教、信条、性別、国籍、職業などで差別、中傷すること
■麻薬、覚せい剤などの薬物を肯定、推奨すること
■卑猥な表現をすること
■地域、場所及び個人名、団体名が明確に特定できるような表現によって当人または関係者に不快感を与えたり、プライバシー権の侵害になり得る表現をすること


<金野和磨 プロフィール>

日本大学卒業後、音楽配信サービス会社、デジタルマーケティング会社などを経て、音楽プロモーション事業を行うGerbera Music Agency合同会社(ガーベラミュージックエージェンシー)を設立。レコード会社や音楽事務所などのアーティストプロモーションをサポートしています。YouTubeやInstagramをはじめとしたインターネット広告全般、プレイリストへのピッチングなどが強み。Spotifyプレイリストメディア「Pluto」も運営しています。日本から世界に通用するアーティストをたくさん輩出することを目標に活動しています。

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