“周波数”で考える曲づくり!with GarageBand #1

コラム

はじめまして。作詞・作曲・編曲家の谷口尚久です。

20年ほど前、自分が音楽業界に飛び込んだ時には、作曲と編曲は別の仕事でした。確かに、これら2つに必要な能力は違うものです。作曲ができるから編曲ができるとは限りません。逆もそうです。また、両方できたとしても、作曲家とは違う人が編曲することで、違う発想が加えられ豊かな音楽ができるという考えもありました。
その後、レコード会社のコンペというシステムが一般的になり、作曲家は編曲をしないと曲を聴いてもらえなくなります。さらにコンピュータでできることが大幅に増えたことにより、いつの間にか作曲には編曲も含まれるようになりました。
そして今や、曲をつくるという行為は、音のミックスまで含むのが常識となっています。つまり、作曲や編曲のみならず「音像をつくる」ことが、曲をつくることなのです。

このような現状を踏まえ、自分で曲をつくって配信している皆さんに何か役に立つ話ができないか…。そんなブレストを BIG UP! のスタッフ陣とさせて頂き、この度連載を始めることとなりました。

題して「“周波数”で考える 曲づくり!」

つまり、音楽を「色んな周波数が出っ張ったり引っ込んだりしている時間の流れ」と考えるのです。

魅力的な周波数の動きを考えること。そして、その動きをドミノ倒しのように配置することが、DAWにおける曲づくり。
再生ボタンを押せば、作ったドミノが倒れていき、曲として聴こえます。人に音楽を聴いてもらうというのは、時間軸に沿った周波数の動きを聴いてもらうことなのです。
これは、「曲づくり=音像をつくること」という今の音楽のつくり方にマッチしています。こんな切り口で音楽を捉えて、このコラムを進めていきたいと思います。

というわけで、次回から3回、低音域・中音域・高音域の3つに分けて、日頃自分が音づくりの際にどんなことを気にしているかを、皆さんにお話します。

しかも、皆さんと同じDAWを共有するために、MacやiPadやiPhoneにプリインストールされているGarageBandをベースに話を進めることにしました。どうですか?興味を持ってもらえましたか?

では第一回のコラムを始めましょう!

第一回:周波数で考えるための準備

目で確認しよう

周波数の動きを目で確認するのに一番便利なのは、皆さんお馴染みのマルチバンドEQ(イコライザー)です。GarageBandにもありますね。下のAnalyzerというボタンを押せば、このように↓鳴っている音を視覚化できます。
(もしこのように表示できるものを持ってなければ、Voxengo社のSPANというフリーソフトもありますので試してみてください。)

音は空気の振動です。横軸に数字がありますね?例えばこの100という数字は、空気が1秒間に100回振動している音という意味です。簡単ですね。
100Hzという、この低い音。楽器で言えば、リズムのキック、そしてベースが存在する場所です。次回はこのキックについて掘り下げていきますのでお楽しみに。

ループ素材で曲は作れるけれど…

GarageBandには様々なループ素材が用意されています。これらを並べれば曲が出来ます。あとは歌やラップを乗せれば、BIG UP! で配信ができてしまいます。なんとも、すごい世の中になったものです。笑

実際にGarageBandにループ素材を並べてみましょう。目についたものを適当に、リズム・ベース・ピアノ・ギターの順に並べてみました。

 リズム:2-Step Back Flip Beat 01
 ベース:2-Step Electric Bass 01
 ピアノ:Classic Rock Piano 10(ただし3,4,7,8小節目の左手をDからGに変更)
 ギター:12 String Dream 01
(Apple社の規定によりプロジェクトファイルをアップできないので、ご自分で並べてみてください。)

では、この8小節の音を聴いてみましょう。

これだけで、それなりのものができてしまうから怖いですよね…。ここで満足するのもNGではありませんが、次回からはこの曲をいじっていきましょう。

必要なもの

ノートパソコンを爆音で鳴らせば、かっこいい音。でもヘッドホンで聴くと、他のサブスクの音楽とは何か違う…。そんな経験はありませんか?
その違いを言葉で言うなら「迫力」「存在感」「奥行き」「ふくよかさ」など、色んな表現があるでしょう。それを改善するために必要なものを考えてみます。

・モニタリング環境
ノートパソコンだと良い感じだったのに、なぜヘッドホンだと違うふうに聴こえたのでしょうか?それは再生できる周波数の幅が違うからです。
自分のMacBook Proで鳴らしてみると、300Hzあたりから徐々に音量が下がり、200Hzではかなり小さくなり、100Hzより下はほぼ聴こえなくなりました。
GarageBandでトラックにAUSamplerというプラグインを立ち上げ、デフォルトの「Sine 110 Built-in」というサイン波で確認してみると、みなさんも聴いてみることができます。G1がだいたい100Hz、G2がだいたい200Hzです(C3が中央のドとなるYAMAHA表記です)。LogicだとTest Oscillatorを使うと便利です。Ableton Liveでは テストトーン(環境設定のAudioタブにあります)が使えます。
つまり、100Hz以下が聴こえていないのですから、それは判断できなくて当然なのです。

ではどうすればよいでしょうか?
低音がちゃんと聴こえるモニタースピーカーを用意する、というのが当たり前の方法ですよね。それにはオーディオインターフェイスも必要になってくるでしょう。でも、そんなことすぐには無理!という人が多いかもしれません。
というわけで、一番簡単な解決方法はヘッドホンやイヤホンを使うことです。筆者はApple AirPods Proを愛用していますが、40Hzのような低い音でもビックリするくらい聴こえました。
プロのエンジニアの中にはApple AirPods Maxで仕事をするのが最高!という人もいるそうです。ちなみにスタジオ定番のSONY MDR-CD900STは低音に強いヘッドホンではないのでご注意を。

・リファレンス音源
自分の好きな曲を用意しましょう。もしくは、今作っている曲と同じジャンルの曲でもかまいません。目指すべき、そして目指したい曲をリファレンスとして用意して、自分が作っている最中の曲と聴き比べてみましょう。

・あと必要なものは…
闇雲にDAWをいじってみても、なかなか思う結果に辿り着けないでしょう。なんらかの指針が必要ですね。
そんな皆さんに指針となるような考え方を、このコラムで共有できるといいですね。まずは次回、キックを扱う際の周波数について一緒に考えてみましょう。

ちなみに、筆者はこんな本を書いています。
Logic Pro で曲づくり!
つくりながら覚えるDTMのレッスン
10の作例から学ぶ、ビギナーのためのLogic Pro入門書

こちらは、色んなジャンルの音楽を作っている過程をつまびらかにしたもの。
Logicを持っている人はぜひご覧ください。

ではまた!


<谷口尚久 プロフィール>

13歳で音楽指導者資格を取得。東京大学経済学部卒業。学生時代からバンド活動を始める。
自身のグループで高橋幸宏プロデュースのアルバムを2枚発表。
同時期に作詞・作曲・編曲家としての活動も始め、CHEMISTRY・SMAP・V6・関ジャニ∞・SexyZone・中島美嘉・倖田來未・JUJU・TrySail・すとぷりなど多くのアーティストのプロデュース・楽曲提供、また映画やドラマの音楽も多数担当。
東京世田谷にWafers Studioを構え日々制作。
個人名義では「JCT」「DOT」「SPOT」をリリース。

最新作は、自身が主宰するレーベルWAFERS recordsによる『WAFERS records YELLOW』
辻林美穂と川畑要(CHEMISTRY)をフィーチャーした、歌ものポップス。

WAFERS recordsでは、プロジェクトに参加して下さるボーカリストを探しています。
お問い合わせはwafersrecords@gmail.comまで。

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Wafers Studio