Spotifyアルゴリズムプレイリストの重要性と攻略法
コラム
Spotifyでリスナー数や楽曲の再生数を伸ばしたいと思った時、まずアルゴリズムプレイリストの重要性と攻略法を知ることが重要です。本コラムでは、Spotifyアルゴリズムプレイリストの概要について解説しつつ、アルゴリズムプレイリストにリストインするために効果的な方法を紹介します。
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Title List
Spotifyのアルゴリズムプレイリストの定義
Spotifyのアルゴリズムによってパーソナライズに生成されたプレイリストのことです。
「パーソナライズされたプレイリスト」とも呼ばれます。
Spotify公式HPでは以下のように定義されています。
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パーソナライズされたプレイリストは、各リスナーの好みに基づいて作成されており、内容はリスナーごとに異なります。このプレイリストは、リスナーの傾向 (リスナーが再生、保存、お気に入りに追加、シェア、スキップした楽曲のデータなど) と、好みが似ている他のリスナーの傾向に基づくアルゴリズムによって作成されます。フォロワーが増えるほど、より多くのパーソナライズされたプレイリストにあなたの楽曲が掲載されるようになります。
具体的には「Spotify Radio」、「Discover Weekly」、「Release Radar」、「On Repeat」、「Repeat Rewind」、「Daily Mix」などがアルゴリズムプレイリストに該当します。
Spotify Radio(Radio)
アーティスト、アルバム、プレイリスト、曲に基づいて作成された楽曲コレクションを聴くことができます。それぞれアーティストラジオ、アルバムラジオ、プレイリストラジオ、ソングラジオがあり、それぞれに関連・類似するアーティストの曲と組み合わせたプレイリストが自動生成されます。アルゴリズムによって随時アップデートされているプレイリストです。アーティストや楽曲ごとにRadioが存在するため、他プレイリストと比べて掲載枠が圧倒的に多いことも大きな特徴です。
Discover Weekly
毎週月曜日に更新される、リスナーごとに生成された30曲のプレイリストです。リスナー本人と、音楽の傾向が似ているSpotify利用者のデータを元に生成されます。
Release Radar
毎週金曜日に更新される、リスナーがフォローしているアーティストの最新リリース曲などをひとつにまとめたプレイリストです。リリース日の少なくとも7日前までにピッチすることによって確実にリストインできる貴重なプレイリストでもあります。各リスナーには、1人のアーティストにつき1週間に1曲のみがリストインします。リリース後最大28日間プレイリストに入り続けることができます。なお、Spotifyで配信済みの楽曲が再リリースされた場合はリストインされないので注意が必要です。
On Repeat
過去30日間のうちに最も自分が再生した曲をまとめてくれるプレイリストです。
Repeat Rewind
1ヶ月以上前に聴いた曲の中で自分が最も再生した曲がまとめられたプレイリストです。
Daily Mix(Your Daily Mix)
ジャンルや趣味嗜好によって最大6個のプレイリストに分けられて作成されるものです。例えば、J-POPやアニソンをよく聴いているならJ-POPとアニソン、2つの「Daily Mix1」「Daily Mix2」といったプレイリストが別々に作成されます。プレイリスト内には聴いたことがある曲だけでなく、「よく聴いている曲に似た聴いたことのない曲」も追加されます。リスナーがSpotifyで音楽を聴けば聴くほど、聴取履歴や音楽的な嗜好が反映され、より好みに合致したものへ進化していきます。Daily Mix1〜6の合計で最大300曲の枠があるため、比較的リストインがしやすいプレイリストです。
当社の印象では、この中でもSpotify Radio、Discover Weekly、Daily Mix、Release Radarの4つが特にリスナー数/再生数の向上に寄与してくれるプレイリストです。
アルゴリズムプレイリストが重要な理由
アルゴリズムプレイリストの重要性を理解するために重要なポイントが2つあります。1つ目は他プレイリストと比べてリストインがしやすいことです。
Spotifyが人力で作成するエディトリアルプレイリストはリストインできる曲数に限りがあり、競争が熾烈です。
例えば、Spotifyでも特に人気の「Tokyo Super Hits!」は50曲しか枠がなく、レコード会社各社に所属するプライオリティアーティストとの競争に勝ち抜かなければいけないため、リストインのハードルも高いと言えます。
対して、「Spotify Radio」は掲載枠が無数にあり、「Daily Mix」も1リスナーあたり最大300曲の掲載枠があるなど、アルゴリズムプレイリストは掲載枠が数多くあります。また、楽曲のスコアさえ担保できればリストインが比較的しやすいという特徴もあります。
アルゴリズムプレイリストの重要性を理解するために重要な2つ目のポイントは、リストイン期間が長い、ないし制限がないことです。
例えばエディトリアルプレイリストである「New Music Wednesday」は1週間でプレイリストが更新されてしまうため、リストインの恩恵を受けられる期間は限られます。他のエディトリアルプレイリストによって掲載期間は異なりますが、だいたい2週間程度でプレイリストから落ちてしまうケースが多い印象です。
対して、アルゴリズムプレイリストはリストイン期間が全体的に長い傾向があり、制限がないプレイリストも存在します。
例えば「Release Radar」の場合、楽曲リリース後最大28日間リストインの対象となります。また、「Spotify Radio」や「Daily Mix」、「Discover Weekly」、「On Repeat」、「Repeat Rewind」は期間の定めがないため、数年前にリリースした楽曲が未だにリストインしている、といったケースも数多く存在します。楽曲のスコアさえ担保し続けることができれば長期間に渡って楽曲を聴いてもらうことが可能です。
ここまでをまとめると、アルゴリズムプレイリストはエディトリアルプレイリストよりもリストインのチャンスが数多くあり、かつエディトリアルプレイリストよりも長く楽曲再生の恩恵を受けることができます。伴って、Spotify経由のロイヤリティを長く安定して受け取り続けるチャンスがあります。
次は実際にアルゴリズムプレイリストにリストインするための具体的なアプローチについて説明します。
アルゴリズムプレイリストにリストインするために有効なアプローチ
アルゴリズムプレイリストに関するSpotifyの定義、及び各種アルゴリズムプレイリストの特徴を踏まえると、リストインにあたりまず重要な指標は「Spotifyのフォロワー数」です。特に「Release Radar」はフォローされることが楽曲掲載の条件となるため、フォロワー数が多いほど「Release Radar」から獲得できるリスナー数/再生数は増大します。
また、以下は当社の推察が含まれますが、もうひとつ重要な指標は「楽曲のスコア」です。スコアを形成している要素は楽曲の再生数、マイライブラリ保存数/率(マイライブラリ保存率をセーブレートと言います。保存数÷リスナー数で算出)、シェア数、スキップレート(30秒未満の視聴でスキップされた率)、楽曲の完全視聴数/率など。大まかにまとめると、対象楽曲が多くのリスナーのお気に入りになり、長くたくさん聴いてもらえるほど楽曲のスコアが上がっていく仕組みになっています。
また、これも当社の経験に基づく推察ですが、楽曲のスコアは累計で算定されているのではなく、「直近の一定期間で算定されている」と思われます。例えば、「累計で100万回再生されているが今月は5,000回しかされていない楽曲」よりも、「先月リリースされて100,000回再生された楽曲」の方が高いスコアがつきます。
例えばXGの場合、「MASCARA」の再生数は最新曲「SHOOTING STAR」よりも多いですが、楽曲のスコアを推察するにあたり参考になるChartmetricの「Spotify Popularity」を比較すると「MASCARA」が69点、「SHOOTING STAR」が80点となっており、直近の再生数が多い「SHOOTING STAR」の方が高いスコアであることが分かります。
上記で説明した重要指標を踏まえ、アルゴリズムプレイリストに入るために重要なアプローチは、当たり前ですが「まず曲を聴いてもらうこと」。プロモーションの基本動作として、Spotifyに対してのピッチング(サブミット)を確実に行い、エディトリアルプレイリスト及び「Release Radar」へのリストインを狙うことです。前述の通りエディトリアルプレイリストはリストインのハードルが高いですが、そもそもピッチしなければ土俵に上がることすらできませんので、確実に行うべきです。また、「Release Radar」はリリース7日前までにピッチすれば確実にリストインできるため、最低でも7日前、できれば14日前にはピッチすべきです。
ピッチングに関する具体的な説明については以下のコラムをご参照ください。
■Spotify for Artistsの活用方法を深く理解する -プレイリストに入るためには?
https://big-up.style/zine/article/news/20201117-9365
その他に有効なアプローチとして、Pre-saveを通じて楽曲をリリースする前にライブラリ保存数を稼ぐことです。
具体的にはPre-saveを促進するためのページを作成し、SNSでファンにPre-saveを呼びかけることが挙げられます。Pre-saveはSpotifyが公式に提供している機能ではないため、実施するためのハードルが高いのですが、LinkfireやToneden、国内のものですとB.O.Mといったツールを使うことによって可能です。
もうひとつ重要なアプローチとしては、「SNS広告を通じてSpotifyに毎日一定の送客をし続けること」です。また、広告の成功確率を上げるにあたり重要な要素は「広告対象楽曲がある程度セーブレート(ライブラリ保存率)が高いこと」です。
※セーブレートはSpotify for Artistsで算出可能です。対象楽曲のセーブ数÷リスナー数で算出できます。当社の経験上、10%以上ですとセーブレートが高い印象です。
セーブレートの高い楽曲が日別で再生/セーブされ続けると楽曲のスコアが徐々に上がっていき、ある閾値を超えるとアルゴリズムプレイリストインする傾向がある印象です。また、2〜3週間の短期ですとリストインは難しく、1ヶ月以上の長期送客が重要となります。そのため日別の予算は抑えて、毎月定額で広告を出しっぱなしにして、薄く長く送客し続けることで効果が見込めます。
【具体例】
以下が、日別3千円程度、6か月間Instagram広告を配信した某アーティストの結果です(当社にて広告を運用)。 チリ、インドネシア、マレーシア、タイ、メキシコ、シンガポール、ペルーなどで反響があり、アルゴリズムプレイリストからの再生数が増大。実施前と比較してSpotifyフォロワーは6.6倍、月間リスナーは7.5倍、Instagramフォロワー7倍、 YouTubeチャンネル登録者数は1.45倍に成長しました。
なお、上記施策にて広告を実施したのはInstagramストーリーズ/リールで、使用動画については以下規定に則る形で制作しました。
推奨アスペクト比:縦長(9:16)の動画
推奨解像度:1,080 x 1,920ピクセル
ファイルサイズ:500MB以下推奨(最大4GBまで)
動画の秒数:15秒以内(15秒推奨)
サポートする動画コーデック: h.264, VP8
サポートする音声コーデック: AAC, Vorbis
ビットレート:516 kbps 以下
推奨フォーマット:mp4 or mov
Spotifyのアルゴリズムに働きかけるにあたっては「フォロー」と「楽曲再生」の両方を促進したほうがよいため、広告の遷移先としては楽曲ページではなくアーティストのプロフィールページに設定しました(楽曲ページにアーティストのフォローボタンがないため)。
絶対にやってはいけないこと
海外には「再生数の獲得を保証するサービス」があります。こうしたサービスは日本に広告を配信していることもあり、アーティストの方であれば一度は広告を見たことがあるかもしれません。「お金を払えば再生数を上げます」「お金を払えば確実に◎◎プレイリストにリストインできます」など。しかし、こういったサービスには絶対に手を出してはいけません。こうした再生数の不正操作はSpotifyに検知され、重いペナルティを課される可能性が極めて高いからです。
・参考:再生数の獲得を保証するサードパーティの有料サービス
https://artists.spotify.com/ja/help/article/third-party-services-that-guarantee-streams?category=promos-and-playlists
実際、こういったサービスに手を出してペナルティを受けたアーティストを知っています。不正操作によって一時的に再生数を獲得できるかもしれませんが、中長期的に見てメリットはひとつもありませんので、絶対に手を出さないことをオススメいたします。
<金野和磨 プロフィール>
Gerbera Music Agency株式会社 代表取締役。日本大学卒業後、人材サービス会社、音楽ITサービス会社、デジタルマーケティング会社などを経て、音楽業界特化型のインターネット広告代理店として同社を設立。Instagram広告やYouTube広告、TikTok広告をはじめとしたインターネット広告全般を扱い、レコード会社/音楽事務所など160社超の広告プロモーションをサポートしている。最新のアドテクロジーを音楽マーケティングに落とし込めることが強み。
Spotifyプレイリストメディア「Pluto」も運営しています。