ピコ太郎を世界に輩出したプロデューサー 古坂大魔王へのインタビューが実現!“BIG UP!”でも 実際に楽曲配信している彼からの貴重なアドバイスは必見!
インタビュー
ディストーション・ギターの“ジャーン!”よりも
“ピコッ”っていう音の方が悪い気がするんです
YouTubeを介して、日本にいながらピコ太郎を世界中の人気者にしたプロデューサー、古坂大魔王。2000年代初頭から、お笑い芸人としてだけでなく、DJ、音楽プロデューサーとしても活動を続け、音楽を取り巻く時代の変遷を肌で感じてきた彼の眼には、昨今の音楽業界の変容はどのように映っているのだろうか。自らの作品を世の中に発信したいアーティスト予備軍への提言など、今や日本一オーバーグラウンドなプロデューサーからの貴重なアドバイスに耳を傾けてみてほしい。
-イケメン・ビジネス(笑)。
イケメンだったらある程度イケメン・ビジネスで食えるんですけど、それがない人間はどうすればいいだろうって考えたときに、”BIG UP!”のような配信サービスを探していたんです。何より、海外に行ける可能性があるっていうのが大きいですよね。正直、国内の配信のレベルよりも海外の方がマインドが高いんですよ。そういう意味では、海外への可能性があるかないかは大きくて、まず海外に行けるっていうルートを掴んでおくっていう。それがこの”BIG UP!”は革命だなと思います。登録料でキチっとお金を集めて、システム化して、世界的にバズる可能性が誰でも数パーセントはあるっていう。1パーセントあればいいですからね。今まで0だったんで。そのあとに告知はいくらでもできますしね。僕らのNO BOTTOM!(※2003年結成の音楽ユニット)のころは、まだYouTubeもなかったんですけど、イギリスとかのフラッシュ・ムービーを観た人から英語で”音源欲しいんですけど”って連絡が来て、なんとかできないかと思ってたら、渋谷の”GUHROOVY”っていうお店の人が外人と仲が良くて、ディストリビューションを知ってるからって言うんで、そこに置いてたんですよ。しかも日本では10~20枚しか売れないのに、海外だと100枚くらい売れるんですよ。でも、毎回そこに頼んでCDを送って外国で清算するっていうのがすごく大変だったので、他に売る方法ねぇかなって思っていたんです。それを今やらなくていいっていうのはデカいですよ。ただ、やっぱり例を作らないといけないですよね。
-その例として、”BIG UP!”ではKOSAKA DAIMAOU名義で3曲を配信していますね。
正直、このために書き下ろした曲って1曲しかないんですよ(※「X’masDISCO」)。他は単独ライヴで使った曲とか、もともとNO BOTTOM!で作ったやつを作り直しただけで。でも、そういうものでもいいと思うんです。自分の中の新曲じゃなくて、あくまでも世の中における新曲だったらハマるかもしれないし、いろんな有名なアーティストのボツ曲とかもバンバン(”BIG UP!”のような配信サービスに)流してもらえばいいんじゃないですかね。
-今回の「RAINCOAT」はライヴ映像をYouTubeで観ることができますけど、今回のリリースにあたって時代に合わせてブラッシュアップさせるとか、今の古坂さんの音楽志向に合わせて何か手を加えているんですか?
曲の志向はもう20年間ほとんど変わってないですね。今っぽくアレンジすることもできたんですけど、僕はただのデジロックが好きなんです。THE CHEMICAL BROTHERS、UNDERWORLD、THE PRODIGYとか、あの時代の。ただ、当時それをそのままやるとパクリになって嫌なので、三味線を入れたり尺八を入れたり演歌を入れたり子守唄を入れたりしていたんですね。
-THE CHEMICAL BROTHERS、UNDERWORLDの名前が出ましたけど、そもそも古坂さんの世代は歌謡曲とロックの世界もはっきり分かれていて、デジタル・ロックもまだ出てきていないですよね。YMOあたりからも影響を受けているんですか?
いや、僕はYMOを聴いたことがなかったんです。じゃあ、僕はなんでこのテクノ系の音が好きかって自分なりにひもといていくと、もともとゲームのサントラが好きだったんですよ。ゲームには興味ないんですけど、ゲームの曲が好きだったんです。ただ、そういう音楽が好きになったきっかけは、たぶん長州 力のテーマだったと思うんですよ。
-「Power Hall」ですか!?
そうです。あの作曲をしたのがP-MODELの平沢 進さんじゃないですか? ああいうピコピコ音ってなんなんだろう? って子供ながらに思ってたんです。あと、藤波辰爾の入場テーマ曲「ドラゴン・スープレックス」のイントロの”ポンッパンポポンッ”っていうところの音がすげぇ好きだったんです。あの音を聴けたのがゲームだったんですよね。だから”ナムコクラシックコレクション”とか、ゲームのサントラ盤ばっかり聴いてたんですよ。”スペースハリアー”とか、”ニンジャウォーリアーズ”とか、”アウトラン”とか、あの当時のゲーセンにあるゲームのサントラ盤があったんですよ、8ビットの。それと、プロレスのテーマ。
-なるほど。「PPAP」のアウトロのマリオみたいなピコピコ音は……。
ゲーム・ミュージックです。
-そこから時間をかけてバキバキの方にいくってすごいですね?
でも僕の中ではあのピコピコ音が、ディストーション・ギターよりも悪いんですよ。”ジャーン!”っていう音よりも”ピコッ”っていう音の方が悪い気がするんです。
-デジタル・ロックやアイドル、アニソンっていう打ち込み系の音楽がある一方、生音のロック・バンドに関してはどうでしょう。どうやって発信していったらいいですかね?
う~ん……これ、逆にみんなどうしてるんですかね? 生音って、最初に言ったように1,000年前に戻ってる気がするので、ライヴだと最高だと思うんですよ。やっぱりライヴの生音には勝てないです。僕らはどんだけ打ち込みをしても、結局本番ではボタンを”ポン”と押すだけなので。バンドって、ライヴだと演奏しているダンスがつくんですよね。当たり前ですけど、”ジャーン”っていう音が振付とリンクしているので、絶対盛り上がるんですよ。だからライヴではバンドには敵わない。現代のオーケストラですよね。問題はそのオーケストラのレコーディング、特にドラムなんです。ギターとかベースは音を鳴らさなくても内部アンプでいくらでもいけちゃうと思うんですけど、ドラムはやっぱり本気でぶっ叩かないと出ない音がありますからね。それをみんなお金をかけてスタジオを借りてやってるんですかね。ドラマーが叩いたドラムって、全部ズレているんですよ。でもそのズレがかっこいいんですよね。だから、ドラムは絶対生で録音した方がいいと思います。
-映像についてもおうかがいしたいのですが、ピコ太郎が世界でブレイクするうえで、ヴィジュアル面でのインパクトが非常に大きかったと思うのですが。
もう、8割ですね。世界を回って一番言われるのは”なんでその服装なんだ?”っていうことなので。
-あのビジュアルのインパクトを最大限に生かすために、常に背景は白なんですか。
そのとおりです。それと、表情が見えないとだめなんでアップ多めという。全体と表情っていうのをなるべく分けたんです。だから”何を見せたいか”をまず決めた方がいいと思うんですよ。それは正直に言った方がいいと思います。例えばバンドだったら”俺は顔を見せたいんだ”っていう人は、顔を見せた方がいいです。”ギターを見せたいんだ”っていう人は、ギターを見せた方がいいです。全員でバランスをとるのは大事なんですけど、自己満足でもいいんですよ。でも、すげぇこだわってほしいですね。映像はどうしても人にやってもらうと、”あぁ、これでOKです”ってなっちゃうんで、やるんだったらもう文句を永久に言い続けられるような人を見つけるか、自分でやるかだと僕は思いますね。映像は本当にこだわらないと。「PPAP」って、自分でソフトを買って、あのPVを作るまでに勝手にプロデュースした女の子のPVを自分で作って、勉強しつつようやく「PPAP」のPVができて。ものすごく時間かかったんですよ、あれ。作ったあと、編集し直して10何回目なんですよ。本当に自分で1コマ1コマ作ったんです。だから、あれが流行ろうと流行らなかろうと、もう十分だったんですよ。だから流行ったときに”あぁ、あそこまでこだわってやったからかな”って思ったんですけどね。
-最後に、”BIG UP!”を使って自分の作品を世の中に発信してみたい、という人たちにメッセージをお願いします!
“すごくハードルの高いことをするんですよ”というのと、”どうでもいいんですよ”っていう、2点ですね。とりあえずやってみて失敗してみるのがいいと思います。まずやってみてください。やってみたら周りになんの反応もないことに気づくので。それで、”どうすれば反応が出るんだろう?”っていうのを精査していくのが一番いいです。1回やっただけで”やっぱり俺ダメだな”って思うのはやめましょう。やってから修正していくっていう感じにすればいいので、まずやってみた方がいい。ただ、ものすごくこだわるっていう意識を持った方がいいです。だから、”まずやってみて、プラス、ものすごく勉強する”っていうことをすれば、きっとたくさんの人に見てもらえると思います。
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