MORE THE MAN

インタビュー

オリジナル・スカと日本の歌謡をミックスするような
初期スカパラの匂いを継承していきたい

今年も”FUJI ROCK FESTIVAL”に出演した、冷牟田竜之(ex-東京スカパラダイスオーケストラ)率いるMORE THE MANは、オリジナル・スカやUKのTHE SPECIALSを想起させる8人組のスカ・バンドだ。昨年、元晴(ex-SOIL & “PIMP” SESSIONS)と小池隼人が加入し、今年2月からはOhyama”B.M.W”Wataruもサポートで参加。若いメンバーとともに大所帯で、アップデートされた男気溢れるスカを表現している。彼らは今年6月に『Eyes Wide Shut Part.1 – EP』を配信リリースしたが、同作に収録されている「KURODA-BUSHI」に陣内孝則がヴォーカルで参加したバージョンを”BIG UP!”にて配信予定だ。今回は、MORE THE MANというバンドについて、また楽曲に関してや”BIG UP!”の持つ可能性について、冷牟田に訊いた。

-Ohyama(”B.M.W”Wataru)さんはもう常駐なんですか?

一応サポートという形なんですけど、やれるところはすべてやってもらうということに今なっていて、どんどんメンバーの方向に動いている気がします(笑)。

-だんだん最強の布陣になってきたなという感じですね。で、THE MANからMORE THE MANになって2年強ぐらいですが、そもそも冷牟田さんがこのユニットを若手で構成しようとされた理由はどういうところにあったのでしょうか?

デビュー前から数えると、スカパラ(東京スカパラダイスオーケストラ)を21年ぐらいやってたんですけど、同じような編成でやってるバンドがいない、スタイル的にも同じようなものがないなぁと思っていて。僕は初期スカパラっていうものをすごく自分の中で大切にしていて、初期スカパラが持ってた匂いっていうんですかね、そういうものを継承していきたいなって気持ちがあって、僕ももう結構歳ですので、若い人たちにそういうものを引き継いでくれる人がいないかな、と考えていたんです。そういう世代に新しい形で継承するバンドができたらいいなと思って若いメンバーを集めたんですけど。

-冷牟田さんにとってスカやスカパラの初期の音楽性の魅力とは?

スカパラ初期っていうのはTHE SKATALITESなんかが代表するオリジナル・スカと、日本の歌謡をミックスするみたいなことが最初のうちの目標だったんですけど、僕はあのメンバーの中でも最もTHE SPECIALSに影響を受けていて。来日ライヴも見てますし、やっぱりライヴがとにかく衝撃的だったんですよ。そういう部分をスカパラに持ち込んだんですけど、それを未だにやってる感じです。

-実際、20代のミュージシャンでそういうことをやってる奴がいるぞっていうのはどういうところで耳にしたんですか?

いや、集めたメンバーっていうのはまったくスカを聴いたこともなく、いわゆる知らない人たちで。まぁ、偶然そうだったんですけど、いわゆるスカが好きですでにいろんなところで活躍してる人たちは、なかなかメンバーとして誘いづらいところがあって。これはイチからやろうと思ったんですね。なので、どちらかというと、ジャズとかそういうところのシーンにいる人たちを集めたんです。

-今20代でジャズというとRobert Glasper以降のことをやってる人が多いですね。

今は本当に多いですね(笑)。なので、彼らにもドラムの叩き方みたいなところから始まり、いわゆる特徴的なワンドロップってスタイルなんですけど、ハイハットはスティックのここでこのあたりに当ててとか、スネアのヒットの位置はこのへんだとか、そういうところからやりましたね。

-たしかにもともとスカをやってる人、イギリスの黒人とかジャマイカの人以外は、自分から吸収しないとああはならないですよね。

そうですね。例えば、THE SPECIALSは知っててもその奥にあるTHE SKATALITESを知らないとか。やっぱTHE SKATALITESのところまでは1回いかないとどうしても当たり障りのない感じになってしまうところがあって。昔の焼き直しじゃダメだし、ちゃんと現代にアップデートしてるんだけど、ちゃんと昔の音源は聴いて、影響受けてますってところが出ないと、やっぱそれっぽくないんですよね。

-ところで今回の『Eyes Wide Shut Part.1 – EP』ですが、ゴリゴリで男っぽいところやUKの感じとかがすごくしました。

もともとはフル・アルバムを作ろうとしていたんです。ですが諸事情がありまして、録ったところから配信していこうということになって、今前半部分がリリースされてるわけなんですけど。

-それで”Part.1″なんですね。

そうです。全体像が見えると”なんで前半にこういう曲が来てるのか?”っていうのがわかってもらえると思うんですけど、今はまだちょっと全体像を捉えづらい形ですね。ストレートにわかりやすく、ライヴのままのようなアレンジを心掛けて、そのまま録りました。

-のちにリリースされるであろう”Part.2″と込みでアルバムとしては理解することになるんでしょうけど、でも曲単位で聴くと、1曲目の「Lonly Wolf」は割とBPM遅めで、スカというより――

スカじゃないですね、あれは(笑)。

-ファンクとして捉える人もいると思うんですけど、こういう始まり方は面白いですね。

直球的な曲の中にまったくスカじゃないジャンルのものを入れていくっていうのは、わりとライヴなんかでもやってることで。変化をつけていかないと、どちらも生きないので。僕はクラブ・ミュージックを1990~2000年代にずっと聴いていたので、その影響もあってアシッド・ジャズとかそういうものが入ってるんでしょうね。

-ギターはソリッドだし、どの音も生々しくて。

レコーディングのときもできるだけ一発で録るようにしていて、直しは基本的にはしないっていうスタイルでずっとやっています。パートごとに切り刻んでしまうと、できあがった作品を聴かれる方には違和感はなくても、自分たちの中で違和感が残ってしまうというのがあるし、なんとなく気の流れが寸断されて、ズタズタになるような気がしてて。あまり編集はしないというふうにやってますので、それがやっぱり生々しさとかそういうところに繋がってるのかなと思います。

-3曲目の「Smash」はイントロと本編が全然違いますね。

ライヴでやることを考えて、その場面を切り返していくところに置きたいなと思って、ああいうアレンジにしました。タイトルは”SMASH”(※”FUJI ROCK FESTIVAL”を主催する会社)の日高(正博/”SMASH”の代表取締役社長)さんに捧げる気持ちでやったんですけど(笑)。

-冷牟田さんにとって日高さんはどんな存在ですか?

東京に出てきて間もないころにBLUE TONICってバンドをやっていたんですが、そのときのマネージャーが石飛(智紹)さんって”SMASH”の人で。しょっちゅう麻布の”SMASH”に行って、そのままそこでソファで寝て泊まったりして、ずいぶん前からお世話になっていて。”フジロック(FUJI ROCK FESTIVAL)”の初年度(1997年)は大雨でこけてしまって大失敗だった、なのに次の年もまたやるっていう表明を見たときに、これは絶対にやりたいと思って。開催の2ヶ月ぐらい前ですかね、もうラインナップが発表されていて、そのとき僕、交通事故に遭って入院してたんですけど、病院出てすぐ日高さんのところ行って、”やらしてください”って言って。さすがに”もう全部決まってるよ”って言われて、”でもスケジュールは空けときますので”って、僕が勝手に独走したんです。そしたらひと枠空いたんですよ。それで第2回に出ました。ミッシェル(THEE MICHELLE GUN ELEPHANT)がいてブランキー(BLANKEY JET CITY)がいて、Costello(Elvis Costello)もいて、IGGY POPもいて。そうそうたる面子のなかでやれたんです。まぁそういうことがありますし、スカパラの初期も同じように、FISHBONEが来日するとき、前座をやらせてもらいたいってお願いしに行きましたし、要所要所で常にお願いしに行ってる感じですね。親父世代の典型的な九州気質というか、そういうものを感じてすごく惹かれるんです。

-九州といえば「黒田節」ですが。陣内さんを迎えた「SKA黒田節 / MORE THE MAN feat.陣内孝則」がリリースされますね。

リリースが本当に楽しみです。6月から陣内さんとやりとりさせていただき、アレンジを詰めていったので素晴らしい出来になりました。福岡アンセム曲を陣内さんとご一緒できて幸せです。早速福岡を中心に幅広い世代で話題沸騰中で、改めて陣内さんの影響力のすごさも実感しています。

-この曲は九州の同胞に向けた感じも?

今、福岡で”ミュージックマンス”が展開されてまして、”Sunset Live”(※福岡県糸島市で毎年開催される音楽フェス)も含んだ動きで、毎週末どこかしらでイベントが開催されているんですね。そこで”ミュージックマンス”を総括するテーマ曲として、「黒田節」をSKAで陣内さんを迎えてやるのはどうかと提案がありました。いざやってみるとどういう設定にするのかすごく悩みましたが、陣内さんのアドバイスもあり、僕らが本当に影響を受けた80年代時代を席巻した”めんたいビート”のようなビート感がいいんじゃないかな? と思いつき、そうしました。九州人じゃない 世界中のみなさんにもぜひ聴いてみてほしい自信作です。

-陣内さんが参加した「KURODA-BUSHI」を”BIG UP!”で配信する予定とのことですが、どういうところがこのサービスのいいところだと思われましたか?

ライヴだとどうしても、僕らを昔から見てた世代の人が多かったりするんですけど、そういうところを取っ払って聴いてもらえるチャンスがあるんじゃないかなと思いました。”BIG UP!”はホームページが作れたりもしますし、素晴らしいシステムですよね。そこは十分に使わせてもらおうと思ってるんですけど、僕自身まだ試行錯誤中なので。正解はわかりませんが、なるべく若い世代にも届けて、活動としても組んでやっていきたいと思っていますね。

-”BIG UP!”には若いバンドもいっぱい登録していますが、今の時代のアーティストが世の中に出て行こうとするときにどういう方法があるか、アドバイスをいただければ。

アドバイスできるほどノウハウがないと思うんですけど、まぁ、本当にやりたいことをそのままストレートにやり続けるってことが一番かなと思います。例えば、”これをこうやれば受ける”ってところは多少は必要なんですけど、基本はやりたいことをちゃんとやるっていう、そこが一番大事で、それをやり続けていかない限りはいろんな意味で難しいのかなと思います。

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