【楽曲のマネタイズ講座】楽曲自体がメディアとなる時代 〜歌詞カード&クレジット表記の再構築〜

コラム

音楽コンシェルジュのふくりゅうです。

 

BIG UP!さんよりリクエストいただき「表現者、発信者、アーティストの方々へ向けた役に立ちそうなコラム」というテーマで書きます。

 

今回のテーマは『楽曲のマネタイズ』化。

 

よく言われることですが、CD時代と比べ、ストリーミング再生の単価は低いように感じます。しかし、それは収益化する時系列の捉え方の問題でもあるので、一概には言い切れないことでしょう。

 

大事なのは、CD対ストリーミングという対立軸で捉えないこと。CDもストリーミングもライブもグッズもファンクラブもメディア展開も。様々なアプローチをバランスよく行うことでビジネスを構築することが大事です。

 

さらにいえば、ストリーミングサービスでのPR展開はかつてでいうラジオ・プロモーションに近いと思います。独自性の高いSpotifyのプレイリスト展開、LINE MUSICのデイリーチャート、AWAのコメント機能においては“聴ける音楽カタログの再構築”だと思っています。その上でアーティストへ再生回数に応じて対価が分配されるのは理にかなっていると思います。今後、インフラとなるサービスの広告収益増や有料ユーザー数の増加によってさらに分配額は増えていくことでしょう。
 

本題に入ります。
 

楽曲をマネタイズする上で大事なのはコンテンツの価値をお金に変えること。CDが収益率が高いのは、CD自体の制作費が安いことと作りやすさにあると思います。作品自体の制作費は別ですが、CDパッケージは100円未満で作ったアイテムを1000円〜3000円程度で販売することが可能です。収益性が高いです。ライブ会場での物販はもちろん、M3やボーマスなどボカロ文化圏での即売会でもいまだ主力アイテムです。とはいえ、CDプレイヤーが自宅にあるリスナーも年々減ってきました。カッコいいデザインのCDプレイヤーもなかなかメインストリームで登場してくれません。

 

そんないまの時代にオススメしたいのが“歌詞カード&クレジット表記の再構築”。

 

そうなんです。今回伝えたいのはデジタル最前線な提案ではありませぬ。“枯れた技術の水平思考”、誰もが知っているであろうアイディアです。
 
これまで、歌詞はCDに付属するブックレットか歌詞サイトでチェックしていたと思います。提案したいのがライブ会場やネット通販向けのデザインした“ポストカード型歌詞カード”の販売です。
 
ストリーミング全盛時代、歌詞を見ながら楽曲を聴く機会が減りました。正確にいえばストリーミングサービスで歌詞が連動して楽しめる機能もあるのですが、かなりの頻度で歌詞が登録されていなかったりとまだまだ浸透しきれていません。
 
ファン心理なのですが、好きなアーティストの歌詞カードって欲しくないですか? 楽曲を聴きながら歌詞に浸る楽しさ。楽曲がどうやってできているかのレシピ? クレジット表記を知りたくはないですか?
 
そこで、ライブ会場やネット通販でポストカード型の歌詞カードを販売してみてはいかがでしょうか?
 
12曲入りアルバムだったら、アルバムジャケット分も合わせてセット販売してもいいと思います。デザインは楽曲や歌詞にあった風景写真でもイラストでも、そこはアーティストによる表現の場にもなります。さらに、楽曲制作におけるクレジット表記も明確に書き記し、短いセルフライナーノーツ的な楽曲解説があってもいいかもしれません。
 
ストリーミングサービスやYouTubeで楽曲に出会ったリスナーがよりコアな情報を知りたくなった時、感謝を込めて対価をもっと支払いたいなと思った際に、手に取れるポストカード型の歌詞カードを購入する仕組み、文化が普及したら楽しいなと思いました。
 
妄想は広がります。ポストカード型の歌詞カードを収納するアルバムケースも販売したり、歌詞カードのメッセージ性を頼りに友人へのプレゼントにも活用してみたり。さらには、ポストカード型の歌詞カード自体にQRコードを貼り付けリスニングへ誘導したり。もちろん、著作権登録をされている場合は対応が必要になりますが、ストリーミング時代の楽曲のマネタイズ方法、音楽の楽しみ方の再構築案としてオススメです。
 
アナログな紙素材のアイテムなので、それこそライブ会場では購入者特典としてアーティスト自身がサインすることも可能です。ネット通販でも初期ロットはサイン付きで販売してもいいでしょう。1000枚を越えたら、異なるデザインに切り替えて初期リスナーが得した気分になる企画を考えてもいいかもしれません。人が介在するコミュニケーションは音楽の魅力を価値を増幅してくれます。
 
ちなみに、King Gnu常田大希のお兄さん、King Gnuやmillennium paradeでバイオリンを弾いている常田俊太郎さんがスタートアップとして展開しているデジタルカードコレクトアプリ『utoniq』も、とても参考になることでしょう。アナログなカード型紙展開も可能なユニーク・ワンタイムQRコードでの配信サービス(楽曲はもちろん、様々なコンテンツで応用が可能)。ぜひ、チェックを!!!
 
https://about.utoniq.com

以上、現場からお届けしました。


ふくりゅう

Yahoo!ニュース、Spotify、AWA、J-WAVE、NHK、リアルサウンド、EMTG、音楽主義などで書いたり喋ったり選曲家(プレイリスター)してます。 『キラキラポップ:ジャパン』など担当。著書『ソーシャルネットワーク革命がみるみるわかる本』〈ダイヤモンド社〉
https://twitter.com/fukuryu_76