【コラム】パクったと言われないために-トラブル回避のための楽曲著作権まわりの注意点-

コラム

皆さんこんにちは。弁護士をしている小林です。前回と前々回は音源まわりの注意点を中心に取り上げましたが、最終回の今回は、楽曲等の著作権に関する注意点を中心に触れたいと思います。

楽曲まわりの注意点1:パクリ曲といわれないために

皆さんがある曲Xを作曲し公表したところ、その曲の一部が第三者の曲Aの一部と似ているから、XはAのパクり曲であってAの著作権を侵害している、との指摘を受けたとしましょう。この指摘は果たして正当でしょうか。

まず、Xの中で登場するワンフレーズが、Aの曲の一部分aに確かに似ているとしても、そもそもaに著作権で保護される創作性が認められないのであれば、XはAの著作権を侵害することにはなりません。たとえば、aが過去にもよく使われてきたありふれたフレーズであったような場合は、aに創作性は認められません。また、aが数秒のごく短いフレーズであった場合も、創作性が認められない場合が多いでしょう。

では、類似箇所aはワンフレーズに留まらず、またaに創作性も認められるという場合、楽曲の似ている・似ていないはどのように判断していくのでしょうか。この点について、楽曲の類否が問題となった過去の裁判例においては、楽曲の構成要素といえるメロディー、リズム、テンポ、和声(ハーモニー)、形式、コード進行などの観点から両曲を対比する手法がとられています。とりわけ、両曲の楽譜をベースにしてメロディーの類似性が重要視される傾向にあり、そのうえでその他の要素も総合的に考慮して、結論として両楽曲が類似しているかが判断されるといっていいでしょう。

そのため、パクリ曲と言われないためには、まずメロディーが他の楽曲と類似していないかに注意する必要があるということになります。もっとも、XのメロディーがAのものと似ていたとしても、それが偶然の一致であれば、XはAの著作権侵害にはなりません。著作権侵害が成立するためには、XがAに依拠(アクセス)して制作されたことが必要だからです。

しかし、無意識的に、過去に聞いたことがあるメロディーをオリジナルと思い込んで公表する例もないわけではありませんし、依拠したかどうかを直接証明することは簡単ではありません。そこで、裁判では、周辺事情から依拠の有無を推測するという手法が採用されます。Aがたとえ著名楽曲ではなかったとしても、たとえば、業界内部の人間がよく見るサイトでAが紹介されたことがあり、客観的に両曲がそれなりに類似しているという場合には、Aに依拠していたと認定される可能性もあるでしょう。心配であれば、楽曲検索アプリを利用して自分の曲と似た曲がないかチェックしてみるということも考えられるかもしれません。

米国では楽曲のパクり騒動が裁判に発展する例が少なくありません 。いくつかを挙げるだけでも、Ed Sheeranの「Photograph」(地裁にて和解で終了)、Led Zeppelinの「Stairway to Heaven」(6年の法廷闘争を経てLed Zeppelin側勝訴)、Katy Perryの「Dark Horse」など(地裁はKaty Perry側敗訴、控訴審で逆転勝訴)、Childish Gambinoの「This is America」(2021年5月に提訴され審理中)などなど。

気になるのは、2015年にPharrell WilliamsプロデュースによるRobin Thickの「Blurred Lines」の楽曲が、著作権侵害だとして訴えられた事件です。この裁判でWilliams側は敗訴し、約5億円の損害賠償を命じられましたが、その後のインタビューでWilliamsは「特定の楽曲を聴く際に得られる感情を“reverse-engineer(逆行分析)”を通じて、異なる形で似たような感情が抱けるよう楽曲に反映しています。しかし、“Blurred Lines”でその手法を取り入れたところ、大きなトラブルに巻き込まれました」と発言しているそうです。リバースエンジニアリング自体は禁止されていませんが、楽曲が結果的に似るリスクを含む手法ではあるのかもしれません。

メロディー以外にも、著作権法的に2つの曲が似ているかどうかについては、曲のリズム、テンポ、和声(ハーモニー)、形式、コード進行などが総合的に考慮されます。ある曲のイメージに近い曲を作ること自体は著作権法上問題ないものの、それらの要素が似れば似るほど、参考にした曲の単なるイメージに留まらず具体的な表現レベル(≒楽譜レベル)で似てくることになるため、結果的に著作権侵害となるリスクがあがることに注意が必要です。

 

1844年から最新のアメリカでの音楽著作権関連裁判リストについてはご興味あればこちらもご覧ください。いかに多くの著名曲が裁判の対象となっているかわかる興味深い資料です。
 

楽曲まわりの注意点2:FAQ

以下では、過去にBIG UP! 運営側に寄せられた相談内容も含めつつ、これまでのコラムの中では触れられなかった音楽著作権関連の単発FAQをピックアップしたいと思います。

(1)著作権登録について

Q1. 著作権登録されていない曲は無断利用しても著作権侵害とはならないですよね?
A1. No. 著作権は登録の有無と関係なく発生しますので、無断利用すれば原則として著作権侵害となります(もちろん、著作権が発生していないものや切れているものについては利用しても著作権侵害にはなりません)。なお、マルシーマークの有無も著作権の存否とは関係ありません。

Q2. 文化庁に著作権登録することの意味は、文化庁が著作物の内容も確認してそれに著作権があることを公的に証明してくれるということですよね?
A2. No. 著作権登録制度を利用して登録できる事項はいくつかありますが、そのいずれも、登録対象の創作物について著作権があることを証明してくれるものではありません。

(2)曲のアイデア

Q3. 他人の曲Aと同じコード進行の曲Bを作りましたが、BはAの著作権を侵害しますか?
A3. No. 単にコード進行が同じなだけでは、通常、著作権侵害になりません。

Q4. 私の作った曲の独特の世界観やコンセプトが他人に盗用されているのですが、これは著作権侵害となりますか?
A4. No. 著作権によって保護されるのはアイデアではなく具体的な表現です。具体的な表現を離れた曲の世界観やコンセプトは、それが独自のものであってもアイデアにすぎないので、著作権では保護されません。したがって、それが盗用されても著作権侵害にはなりません。

Q5. 4小節までならば他人の曲の一部をコピーしても著作権侵害とならないとよく聞きますが、そうなのですか?
A5. No. たとえ4小節であっても、その部分に創作性が認められるならば、著作権は発生します。したがって、それをコピーして使うと著作権侵害となります。他方で、5小節以上であっても、その部分に創作性が認められないならば、その部分をコピーしても著作権侵害にはなりません。重要なのは、小節の数ではなく、利用する部分に創作性があるかどうかです。

(3)名セリフやキャッチフレーズ、書籍タイトルの歌詞中での利用

Q6. 歌詞の中にアニメや映画の名セリフを含めると著作権侵害となりますか?マンガのキャラクターの必殺技の名前を曲のタイトルとして利用する場合はどうですか?
A6. ケースバイケースの判断となりますが、一般論としては、単語、ごく短い文章表現やありふれた表現には著作権は発生しないので、歌詞に含めたり楽曲タイトルに使っても著作権侵害とはなりません。
ところで、名セリフと言っても様々です。“I’ll be back.”(ターミネーター)や「知らざぁ言って聞かせやしょう」(白浪五人男)程度のものであれば、著作権は発生しません。マンガキャラの必殺技の名前も、通常、著作権は発生しないでしょう。他方、ある程度の長さのある口上としてのキメ台詞であれば、著作権は発生しているでしょう。

Q7. 書籍や歌のタイトルやキャッチフレーズには著作権は発生しないから、歌詞の中で使用しても問題ないですよね?
A7. No. 書籍や歌のタイトル、キャッチフレーズには著作権が発生していないことが多いでしょう。その場合は歌詞の中に入れても問題ないと考えられます。しかしタイトルやキャッチフレーズといっても短いものから長いものまであり、長いものには著作権が発生する場合もあります。Q6と同様、ケースバイケースの判断となります。

(4)映像・ビジュアルの利用

Q8. アルバムジャケットデザインの制作にあたり、有名なお菓子のパッケージ写真をアートワークの一部として利用することは著作権侵害となりますか?
A8. なる場合もあります。アートワークとしての写真全体の一部に小さく写り込んでいるだけのような場合であれば、著作権侵害とはならないこともあります。もっとも、メインビジュアルとして起用されている場合は、使用するパッケージデザイン次第では著作権侵害となる可能性もあり、また、お菓子のイメージを棄損するような使用方法だと、著作権法的に問題がない場合でもトラブルとなる可能性もあります。

Q9. アルバムジャケットデザイン制作にあたり、著名建築物の写真を撮影してそれをキービジュアルにすることは著作権法上問題ありますか?
A9. 基本的に著作権侵害とはなりません。著作権法が定める例外規定により、このような利用は商用利用であっても適法です。ただし建築物によっては、著作権侵害ではない場合でも利用にあたり一定の制限を課す方針を掲げているものもありますので、個別にその建築物のHP等で確認しておくと安心です。

Q10. YouTubeにアップする新曲のMVを作成するにあたり有名テレビ番組の特定のワンシーンのフッテージを1曲の中で何度か使ってインパクトを与えたいが、それぞれ5秒程度の使用であれば著作権法上も問題ないですか?
A10. No. テレビ番組には著作権が発生しています。ワンシーンといえども著作権で守られるので、質問のような使用方法は著作権侵害となると考えられます。

(5)パロディ

Q11. アルバムジャケットデザイン制作にあたり、名盤と言われるジャケ写のビジュアルに一部改変を加えてパロディとして使用したいのですが、原作品へのリスペクトが感じられるのであれば著作権侵害とならないと思ってよいですか?
A11. No. リスペクトがあるかどうかとは関係なく、著作権法上は、無許諾でオリジナル作品に改変を加えてパロディ作品を作ることは違法です。諸外国では、「フェア・ユース」の法理など、パロディ作品において新たな創作的価値が加わっているものは適法と判断されやすい国もありますが、日本にはこのような意味におけるフェア・ユースの制度はありません。なお、オリジナルの作品のビジュアルを利用することなく、その作風や受ける印象のみを模倣して「~っぽい」作品を作る場合は、通常著作権侵害とはなりません。

(6)商標権との関係

Q12. 新曲やニューアルバムのタイトルにしようと思っていた言葉について、誰かが先に商標権をとっていることが判明しました。この場合、商標権をとられている言葉と同じ言葉をタイトルにすると、商標権侵害になってしまうのでしょうか?
A12. No. 曲やアルバムの内容を示すものとしてタイトルを付ける場合は、仮に他人が先に同じ名前の商標権をとっていたとしても、商標権侵害とはなりません。

Q13. 数小節からなる短い曲については商標権も取得できると聞きました。著作権が発生している曲については商標権も自動的に取得したことになるのですか。
A13. No. たとえば正露丸のCMの曲は商標権がとられています。しかし著作権と商標権は別個の権利であり、その曲に著作権が発生している場合でも、商標権は別途登録しなければ権利を取得できません。

さいごに

これで3回にわたる連載を終了します。お読みいただきありがとうございます。3回で扱った内容はいずれも、さらに深堀りすると奥深い問題があるのですが、なるべくシンプルに、いろいろな話題に広く触れられるようにしました。そのため、当初目安としていた各コラムの目標文字数を大幅にオーバーすることになってしまいましたが、許して下さったご担当者様に深く感謝しつつ、少しでもBIG UP!zine読者の皆様の疑問点が解消されるような内容になっていれば嬉しいです。


<小林利明 プロフィール>

弁護士・ニューヨーク州弁護士。骨董通り法律事務所。
東京芸術大学音楽学部非常勤講師、中央大学国際情報学部兼任講師
日常的に、アーティスト、プロダクション、レコード会社の様々な立場の依頼者からのご依頼を受けています。音楽・映像・出版・広告を含むメディア・エンタテインメント業界やスポーツ業界のクライアントへの法務・労務サポートを中心に弁護士業務を行うかたわら、大学で著作権法の講義を担当したり、各種セミナーや企業研修の講師を行っています。著書に『エンタテインメント法実務』(弘文堂、2021〔編著〕)など。

骨董通り法律事務所